著者
田邊 繁子
出版者
法制史学会
雑誌
法制史研究 (ISSN:04412508)
巻号頁・発行日
vol.1966, no.16, pp.30-61,iii, 1967-03-30 (Released:2009-11-16)

Ancient Indian Laws are all very religious. The same holds good of the Law of Manu which I deal with here. In this Law, one who indulges in anti-social behavior must be punished, but on the other hand, he must be purified by himself in practicing the penance ordered by the law. Because an anti-social behavior is considered sinful from the point of view of religion and at the same time it is composed of criminal offence. These two are not considered separately at this time.There are two sorts of sins and crimes. One is a great sin or crime, and the other is a secondary sin or crime. I examined purifications and punishments for those sins and crimes.
著者
中野 三敏 板坂 耀子 渡辺 憲司 松崎 仁 迫 徹朗 今井 源衛
出版者
九州大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

「学海日録」の翻字作業は順調に進み、完成した原稿が続々と代表者のもとに寄せられた。出版元の岩波書店によって整理され、活字が組まれるのを受けて、最後まで残る難読箇所の解読のため、代表者及び分担者は岩波書店に借り出されている「学海日録」の原本との照合を行なった。その結果、解読不能として残ったのはほんのわずかとなった。昨年11月に『学海日録』第7巻が岩波書店によって刊行され、以下隔月に続刊されている。3月14日には第3回配本の第9巻が出る。翻字作業と並行して、依田学海の「学海遺稿」その他の詩文草稿類の目録作成にも従事し、それらと「学海日録」、及び吉川弘文館から刊行されている別宅日記「墨水別墅雑録」との比較を行なった。あくまでも「学海日録」読解に資するためであるため、比較対照は不十分に終わったが、詩文と日録を読み比べる時の便は保証され得る。また、学海における詩文と日録の占める位置が互いに補い合う性格のものであることが確認できたのも、幕末・明治の代表的文人の精神生活を知る上で大いなる手がかりとなった。また、「学海日録」が幕末・明治文化史の一級資料たることが改めて認識された。特に明治の文学者達の動向や文学観、作品評価や人間性などにおいて、全く新しい知見を与えてくれることも少くなく、明治文学史の大幅な書きかえを必要とする場合もあることを言い添えておきたい。今後は「学海日録」の一番有効な索引のあり方を模索しつつ、具体化を図ってゆくつもりである。
著者
上山 一
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、GCC諸国におけるイスラム銀行の費用構造について、同地域の銀行部門に共通して見られる特徴との関連において実証的に分析することを目的とする。分析結果から、通常の銀行よりも経営規模の小さかったイスラム銀行は、経営資源の拡大を通じて、イスラム金融による資金運用業務に積極的に取り組んできた。しかし、GCC諸国のイスラム銀行部門では、費用面で、規模の経済性や範囲の経済性を観察できなかった。これら背景については、イスラム銀行の経営規模が小さく、規模の経済を享受できる段階に達していないこと、そしてGCC諸国の金融制度がイスラム銀行による業務多角化の取組に対して負の影響を与えた可能性が挙げられる。
著者
井本 泰治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.123, no.6, pp.377-386, 2003 (Released:2003-06-03)
参考文献数
42
被引用文献数
1 3

I have pursued research on lysozymes for 42 years. During that time, I made Several new findings, some of them by chance. My enjoyment of the following areas is reviewed: the story of tryptophan; protease digestion mechanisms; peptide mapping with RP-HPLC; gene engineering; renaturation of protein; catalytic residues; fluctuation and function; stabilization; folding; antigenecity; tolerance; and various lysozymes.
著者
吉田 聡 村松 康行
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.63-70, 1994-01-31 (Released:2011-10-21)
参考文献数
21
被引用文献数
20

1991年に日本国内で採取(一部市場で購入)したキノコ117試料について,137Cs,134Cs及び40Kを分析した。この結果を1989年と1990年に得た結果と合わせて考察したところ,全部で124種類(284試料)のキノコ中の137Csの濃度は,<3から16300 Bq/kg-乾燥重量(<0.4から1250 Bq/kg-湿重量)まで種類によって大きく異なった。これに対して,40Kの濃度は比較的一定であった。中央値は137Cs:53,40K:1180Bq/kg-乾燥重量であった。チェルノブイリ事故に起源をもつ134Csの濃度は全体的に低く,1991年には11試料のみで検出された。134Cs/137Cs比を用いて求めたチェルノブイリ事故起源の137Csの割合は低く,日本産のキノコ中の137Csは,主として1960年代に行われた核実験からのフォールアウトに起源を持つことが示唆された。採取したキノコを菌根菌と腐生菌の2つに分類したところ,前者の方が高い137Cs濃度を示した。日本人がキノコ(主として野生キノコ)を食べることにより137Csから受ける実効線量当量を試算したところ1.3×10-6Sv以下と非常に低い値であった。これは,自然界から受ける線量の約0.05%以下であった。
著者
塩澤 健一
出版者
中央大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

2006年3月12日、政府の発表した米軍再編案に絡んで山口県岩国市で住民投票が行われた。現在厚木基地に配備されている空母艦載機57機の岩国基地への移駐に「反対」が圧倒的多数を占めたこの住民投票について、同年6月から7月にかけて郵送調査を行った。住民投票の有権者であった合併前の旧岩国市内の住民2,101名を対象として行い、最終的な有効回答数は743件、転居・不着分等を除いた調査対象者に占める回答率は35.8%であった。基地を抱える住民の感情は見た目の投票結果以上に複雑であり、「反対」票が全て移駐案の「白紙撤回」の意思表示というわけではない。そこで本調査では、あくまで「白紙撤回」を求めるのか、条件付きで移駐受け入れを望むのかという点について尋ねた。実際の投票行動とのクロスデータを見ると、住民投票で反対票を投じた人の中にも「条件付き受け入れ」を望む回答は約3割に上り、市長選で「移駐反対派」の井原に投票した人で見ても、やはり同様の傾向が確認できる。また、住民投票を棄権した人の多くは「条件付き受け入れ」を求めていることが明らかとなった。すなわち、同一の争点について尋ねた場合でも、その尋ね方、選択肢の提示の仕方によって、「民意」の表れ方が異なることが、本調査のデータから明らかとなった。90年代後半に同じ米軍基地問題に関して沖縄で実施された2つの住民投票などとの比較も踏まえて考慮すると、特定の政策争点に関する「民意」は一回の、一種類の投票によってのみ一義的に決まるわけではないということが理解できる。
著者
矢島 宏紀
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

平成23年度も、図書を購入して前年度に引き続き研究動向の整理に努めた。その結果、アメリカ独立革命史研究においてこれまで相対的に低い関心しか寄せられてこなかった先住民や独立反対派(ロイヤリスト)に着目した研究が昨今多数現れていることが分かった。ロイヤリストや英国国教会にも関わる大西洋史の文脈でも最新の研究が多数見られ、私の研究テーマがアメリカにおける研究動向と乖離していないことが確認できた。昨年以来、南部におけるアメリカ主教派遣問題を中心としたアメリカ植民地と英国国教会の関係を探る論文の執筆を目標としていた。これについては手稿吏料の収集および解読が困難を極めることもあり、残念ながら平成23年度内に成果を発表することは叶わなかった。南部植民地における宗教に着目した研究が本邦において寡少である現状にあって本研究は完成すれば日本の初期アメリカ研究に一定の貢献ができると思われるため、今後も継続していく予定である。以上のように英国国教会と本国との関係を探る研究は未だ途中であるが、修士論文で注目したジョナサン・バウチャーという人物の伝記的考察を『東京大学アメリカ太平洋研究』12号に掲載した。これは一人物の分析を通じて独立革命当時の南部植民地における政治社会の実相に迫ることを意図したものである。バウチャーは革命期アメリカにおいて最も保守的な人物とされてきたが、彼のアメリカ植民地における軌跡を丹念に追ったところ、反動的とまでは言えないことが分かった。こうしたバウチャーが結果的に亡命を余儀なくされたのは、愛国派による詭弁的論難や暴力を伴う迫害を受けたことによる。ただし、彼は教会統治論上明らかに保守的であり、愛国派とは思想的に対立する要素を本来的に有していたとも言える。一方、愛国派の教会観も一枚岩的ではなかった。上で挙げた本国国教会の動向と合わせて、革命期アメリカの複雑な宗教状況を今後も考察していくつもりである。
著者
青峰 正裕 大和 孝子 西森 敦子 仁後 亮介 松岡 伴実
出版者
中村学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ストレスに対しては視床下部-下垂体-副腎系が密接に関与している。しかし、糖尿病患者ではストレスに対する抵抗性の低下がしばしば報告されている。そこで本研究ではラットを糖尿病にし、さらに副腎を摘出してストレス負荷前後の行動や脳海馬神経伝達物質セロトニン放出を調べた。その結果糖尿病では総移動距離の減少傾向を示し、副腎摘出は多少行動の低下を引き起こしたが有意ではなかった。一方、セロトニン放出もストレス負荷前後での副腎除去の有意な影響はみられなかった。糖尿病プラス副腎除去は高い死亡率を引き起こし十分な実験例数を確保できなかったが、少なくとも今回の実験系では副腎の関与の程度は大ではないことが示唆された。
著者
葛西 佳奈 栗林 佳奈子 福島 洋子 大西 由希子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Japanese Lournal of Maternal Health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.161-170, 2006-04-01
被引用文献数
1 2

緊急に母体搬送を余儀なくされる産婦は,胎児のリスクが高く,緊急帝王切開となる場合も多い。特に,搬送入院直後に分娩にいたる産婦では搬送後の医療環境への適応準備が整っておらず,心理的にも非常に危機的な状況にあることが考えられる。今回,われわれは緊急母体搬送直後に分娩にいたった産婦10例の搬送前後の心理的傾向についての質的分析と搬送後の心理的回復過程の構造化を試みた。結果,8例は緊急帝王切開にいたり,搬送時の産婦の認識は「現実認識」「現実認識困難」に分かれた。「現実認識」はさらに「搬送が決まり安心」と「搬送への諦め」に,「現実認識困難」は「混迷状態」と「強度の防衛状態」に分かれた。母体搬送後の心理的回復の過程は,(1)「動揺・混乱」の段階を経て,次に(2)「混乱の自覚」,(3)「搬送時の混乱の表出と不安の解消」,(4)「予期的・具体的不安の表出」,そして最終的に(5)「母親役割行動への表現」の段階へといたることが明らかとなった。
著者
増田 研 波佐間 逸博 宮地 歌織 山本 秀樹 野村 亜由美 宮本 真二 田川 玄 田宮 奈菜子 佐藤 廉也 野口 真理子 林 玲子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題は日本のアフリカ研究者による初めての高齢者研究であり、かつ、人類学と公衆衛生学・保健学を組み合わせた方法論を採用したため、期間を通じてそのアプローチのあり方について模索を続けた。成果として書籍(編著)を公刊したほか、日本アフリカ学会におけるフォーラムの開催、日本アフリカ学会の学術誌『アフリカ研究』に特集を組んだことがあげられる。検討を通じて、都市部貧困層高齢者の課題、アフリカにおける高齢者イメージの解体、生業基盤によるケアのあり方の違いといった探求課題を整理できたことも成果である。
著者
前川 仁 子安 大士
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、拡張現実における仮想物体描画の位置決めに、シーン中の画像特徴群を用いる。このため、3DのCGシミュレーションによる局所特徴量の評価法を提案した。これによって、隠蔽のある状況での各種局所特徴量の経時的な追跡評価が行えるようになった。また、モバイルデバイスの自己位置推定法について、機械センサからの加速度データとカメラからの画像特徴を、それぞれの観測の不確かさに応じて統合する手法を示し、実験的に検証した。さらに、仮想物体描画のために、シーンの代表物体の影から光源位置を推定する手法を提案し、仮想物体の影付けに適用した。これらによるプロトタイプシステムのアンドロイド端末への実装も行った。
著者
越後 和徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SAT, 衛星通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.24, pp.1-6, 2011-05-02

2007年末に1億人に達した我が国の携帯電話の加入者数は、2011年2月末には1億1,823万人に達し、国民一人一人が携帯電話を所有する時代が実現されつつある。また、そのうち98.7%が第3世代移動通信システム(IMT-2000)の利用者であり、いつでもどこでも、様々なアプリケーションやサービスを享受することができるようになりっつある。一方で、近年のiPhoneをはじめとする、スマートフォンの登場により、今後ますます携帯電話の多様化、高度化が予想され、それらに対する利用者のニーズへの対応や、限られた周波数の中で急増するデータトラピックへの対策が求められているところ。このような中、昨年12月にNTTドコモが、第3.9世代移動通信システムと呼ばれるLTE(Long Term Evolution)の商用サービスを開始し注目を集めている。一方、国際電気通信連合(ITU)では、そのLTEの後継である第4世代移動通信システム(IMT-Advanced)の国際標準化に向けた審議が行われており、既に将来の移動通信システムの実現に向けた、検討が進められている。我が国においては、これら検討に関して、関係する国々や関連団体等と連携を図り、第4世代移動通信システムの候補となる技術の提案を行うなど、国際標準化活動に積極的に貢献しているところである。本講演では、この第4世代移動通信システムに関する最新の国際標準化動向など、移動通信政策の最近の動向についてご紹介する。
著者
内貴 滋
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、我が国が道州制を将来の目標として、国と地方の構造改革を進めているこの時期に、地方自治の母国といわれる英国において地方構造の一層制への改革、スコットランド独立に象徴される分権政府への権限委譲問題、地域の決定を尊重する地域主義法の成立など大きな構造改革が進展している状況を明らかにし、その課題を分析することにより、日英双方の国と地方の構造改革への新たな提言を行う。