著者
堀江 真行 朝長 啓造
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.143-154, 2010-12-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
41
被引用文献数
2 2

私たちのゲノムの8%は内在性レトロウイルスによって占められている.内在性レトロウイルスは過去におけるレトロウイルス感染の痕跡であり,現存する唯一の「ウイルス化石」として,ウイルスと宿主との共進化に様々な知見を提供してきた.一方で,複製の際に宿主ゲノムへの組み込み(インテグレーション)を必要としないウイルスの生物系統的な内在化はこれまでは知られていなかった.最近,私たちはヒトをはじめとする多くの哺乳動物のゲノムにマイナス鎖RNAウイルスであるボルナウイルスの遺伝子断片が内在化していることを発見した.これは,生物ゲノムに見つかった初めてのRNAウイルス化石である.さらに,自らは逆転写酵素を有していないボルナウイルスが宿主由来のレトロトランスポゾンを介して宿主DNAへとインテグレーションされる可能性も示された.この発見は,RNAウイルスと宿主との新たな相互作用を示すとともに,遺伝学や細胞生物学をはじめとする多岐にわたる分野に大きな影響を与えた.本稿では,内在性ボルナウイルス因子の発見について概説するとともに,現在次々と発見されているレトロウイルス以外の内在性ウイルス断片についての最新知見を紹介する.
著者
冨永 邦彦 若狭 治毅
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.867-870, 1994-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3

リンパ節はその目的に合致した高度な組織構造を持ち,濾過装置として,抗体産生臓器として生体防御に重要である.リンパ節は皮質と髄質に大別され,皮質にはBリンパ球の集簇するリンパ濾胞が存在する.リンパ液は被膜直下の辺縁洞と呼ばれるリンパ洞に注ぎ,中間洞・髄洞へと流れる間に大食細胞による濾過をうける.血管系の特徴として濾胞周囲に毛細血管後細静脈がありTリンパ球の流入口とされる.濾胞の支持細胞として濾胞樹状細胞が,傍皮質には抗原提示細胞として合指状細網細胞が存在する.
著者
島田 貴仁
出版者
日本環境心理学会
雑誌
環境心理学研究 (ISSN:21891427)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.46-57, 2013 (Released:2017-01-31)
参考文献数
83
被引用文献数
1

犯罪研究のアプローチは,犯罪原因論と犯罪機会論とに大別されるが,環境はその両者に重要な役割を果たしている。本論文では,「環境と犯罪」研究の歴史を概観し,マクロ・ミクロ・メソのスケール間や,犯罪原因論と犯罪機会論の間での視座の変遷と,環境心理学との関連を検討する。「環境と犯罪」研究は,マクロスケールの犯罪原因論から起こり,ミクロスケールの犯罪機会論へシフトした。そして,近年は,近隣やコミュニティといったメソスケールで環境が犯罪の加害と被害に及ぼす影響が議論されている。次に,近年発展している方法論として,データの階層性に着目するマルチレベル分析と,データの空間関係に注目する空間情報科学の手法の2つを取り上げた。最後に,犯罪研究と環境心理学研究の共通点として学際性と問題解決志向を指摘し,犯罪原因論と犯罪機会論とを橋渡しする環境心理学の役割の重要性を議論した。
著者
野尻 洋平
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.124-136, 2009 (Released:2020-03-09)

本論の目的は、D. ライアンの監視社会論の方法的背景を探ることである。その方法として、ライアンの「監視の両義性」テーゼに着目し、その成立過程と方法的背景を検討していく。本論であきらかとなったのは、ライアンの「監視」概念および、監視の両義性を主軸とする監視社会論が、キリスト教的な社会倫理に基づいた方法および視座から導出されているということである。以下の論述は、監視の両義性テーゼが析出される場面を見届けたうえで(2章)、そのテーゼが導出されるような方法および視座が、1980年代後半におけるかれの情報社会論においてすでに現れていたことを検証し(3章)、さらに70年代半ばから80年代前半までのライアンの初期の仕事を跡付けることによって、ライアンの倫理的・思想的背景がキリスト教的社会倫理に基づくことを確認する(4章)。最後に、そのような方法的・思想的背景を携えたライアンが、現代における社会の監視化にいかなる「解決」を与えているのか、さらにはライアンの問いをいかなるかたちで定式化することができるのかについて考察し、結論を述べる(5章)。ライアンは、これまで監視を論じるうえでさまざまな論者によって引用・言及されてきた。しかしながらかれの議論の方法的背景まで検討をくわえたものは存在しないため、上述のような観点からその思考を跡付けし、理論内在的な検討をおこなう必要があるだろう。
著者
大ヶ瀬 浩史 武智 誠 大塚 壽 柴田 大法 菊池 幸 土手 健太郎
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.31-35, 1995-10-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

医療従事者 (看護婦) 10人について, 速乾性擦式アルコール手指消毒剤を用いた5つの手指消毒方法を比較検討した. すなわち, 0.2% (w/v) 塩化ベンザルコニウム含有83% (v/v) エタノール製剤 (ウエルパス®) 3mlを手指にとり積極的に指先と指間を消毒する3ml推奨法, ウエルパス® 3mlを足踏み式ディスペンサーで噴霧式により手指にとり擦り込む日常行っている3ml噴霧法, ウエルパス®をハンディボトルにより1mを噴霧式で手指にとり擦り込む日常の1ml噴霧法, 0.2% (w/v) グルコン酸クロルヘキシジン含有83% (v/v) エタノール製剤 (ヒビスコール®) の専用電動噴霧消毒器 (1回3.2ml) より手指にとり擦り込む日常の自動噴霧法, 日本薬局方消毒用エタノール専用噴霧消毒器 (1回0.8~0.9ml) より手指にとり擦り込む日常のアルコール法の指先・指間の消毒効果を比較した.消毒後, 指先, 指間とも推奨法は他の方法と比較し生残菌数は低値を示し, 有意な差が認められた (Mann-Whitney U検定, p<0.01).さらに消毒後の菌数を各指で比較すると, 3ml噴霧法を除いて母指が最大で, 1ml噴霧法の母指と小指およびアルコール法の母指と示指および小指で有意の差があった (Mann-Whitney U検定, 各p<0.05およびp<0.01).以上より, アルコール手指消毒において十分な薬液量を使用し, 推奨法のように手指全体に薬液が行き渡るように注意を払い, 指先と指間を念入りにラビングする方法が有効であることが示唆された.
著者
粟野 隆
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.381-384, 2005 (Released:2006-05-08)
参考文献数
23

In the last several years, an explosion of papers argue about Japanese modern landscape, there are design of residential gardens, policies of park and landscape of resort and so on. This paper clarifies the formation period of semi-western gardens in Tokyo during the Meiji period and its spatial characteristics, particularly Shiba-niwa (lawn garden), by analyzing the trends in western house construction and relationship between building layout and garden design within premises. The result leads to the following hypothesis. The formation period of Shiba-niwa style overlaps with the period of western building construction boom around the mid-Meiji period (1882 - 1902). The concept of Shiba-niwa was to integrate the juxtaposed arrangement of Japanese and western buildings, typical building layout in modern residential spaces, into coherent landscapes with simple combination of spacious lawns and gently meandering paths, that is a remarkable characteristic reflecting the modernization of traditional garden design.
著者
Kenichi TAMUKAI Shohei MIMAMI Sho KADEKARU Ikki MITSUI Ken MAEDA Yumi UNE
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.20-0480, (Released:2021-01-21)
被引用文献数
2

Post-import from the Republic of Indonesia to Japan in 2017, two juvenile, captive bred Asian small-clawed otters (Aonyx cinereus) exhibited gastrointestinal symptoms, including vomiting, diarrhea, and hematemesis, and died. One of them was examined postmortem. Microscopically, the small intestinal mucosa was necrotic with crypts lined by regenerating large epithelial cells. A gastric cardiac mucosal ulcerative lesion containing fungal yeasts and pseudohyphae morphologically indicated Candida spp. The lymph nodes exhibited marked lymphoid depletion. Canine parvovirus 2 (CPV-2) was isolated from an oral swab, and virus protein 2 (VP2) gene sequencing revealed new CPV-2a. To our knowledge, this is the first new CPV-2a infection report in Asian small-clawed otters. This infection should be considered in gastrointestinal symptom-related cases in this species.
著者
松縄 正登
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18828930)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.805-812, 2009-02-28 (Released:2016-01-25)
参考文献数
9

Serious problems have been occurred by the trading of the data leaked from computers and the one uploaded to Homepages illegally by the file-sharing software program for example Winny recently. Winny was developed by Isamu Kaneko and opened on his homepage, May 6, 2002. Winny has a characteristic to maintain anonymity. Two users of Winny were arrested on the charge of the copyright infringement by Kyoto Police, November 27, 2003. And Isamu Kaneko was also arrested on the charge of their aid, May 10, 2004. And Kaneko was sentenced to fine 1,500,000 yen by Kyoto District Court ,that is “Judgment 2006.12.13”. He is appealing to Osaka High Court now. I would consider the technology of Winny, think the judgment of the Kyoto District Court and talk about the best legal and technical way in the future.
著者
谷藤 幹子
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.263-267, 2016-06-10 (Released:2016-06-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1

In respond to a trend of open science policy in Japan, authors' copyrights in journal articles under a background of open access in science and technology is reported.
著者
岩橋 尊嗣
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.98-106, 1997-02-28 (Released:2010-03-18)
参考文献数
22
著者
近藤 文里
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.65-78, 2000-06-30 (Released:2017-07-28)

本論文は、子どもの時期に受けた前頭葉損傷の後遺症に関する2つの仮説の妥当性を検討した。第1の仮説は、発達の早い時期に前頭葉に損傷を受けた子どもの場合は、障害がすぐには現れず、遅れて現れるとする「障害の遅延生起」仮説である。また、第2の仮説は、子どもの時期に前頭葉に損傷を受けた症例は成人のそれよりも行動の障害がより重いとする仮説である。この仮説を検討するため、従来報告された14症例について損傷時期ごとに分類したうえで、損傷直後とその後の行動特徴の推移を調べた。その結果、第1の仮説は支持されたが、より重要なこととしては発達の時期ごとに特徴的な問題が現れることが明らかになった。また、第2の仮説も支持されたが、子どもの時期に受けた前頭葉損傷のなかでも両側性前頭葉損傷は片側前頭葉損傷よりも重大な行動の障害を示すことが明らかになった。
著者
落合 太郎 大嶺 茉未
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.2_71-2_80, 2016-07-31 (Released:2016-11-15)
参考文献数
11

直接情緒に働きかける音楽は,人の時間経過の感覚に影響を及ぼすと考えられ,モーツアルトのK.265/K.300eキラキラ星変奏曲が同じメロディで12の異なる様式に演奏されている点に注目して感覚時間比の測定を行った。予想と異なり,静かで緩やかな曲が時間の経過が短くむしろダイナミックでアップテンポの曲の方が長く感じるという結果であった。この実験過程で曲ごとに異なる色彩イメージを連想するという副次的結果を得たため「和音」に着目し,派生する色彩感覚を追加実験によって検証した。追加実験ではC(ド)のmajor,minor,sus4,diminishを代表和音としてデザイン学科学生を対象に聞かせた。色彩トーンや色相の連想イメージを聞くと一定の傾向が見られ,先行研究で報告された色聴保持者と共通する結果が得られた。和音は色彩イメージを誘発し,さらに当該色彩を介して環境デザインで指定された機能イメージと連動させることが理論的に可能となるため,和音が「言語」に替わるサインとして空間に機能するということが示唆された。
著者
松田 博子 名取 和幸 破田野 智美
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.69, 2019-03-01 (Released:2019-06-23)
参考文献数
26

好きな色がパーソナリティと関係すると思っている人は少なくないが,パーソナリティが色の好みに影響を及ぼす理由についてはほとんど解明されていない.本研究は調査の季節,場所,対象者の年齢,職業を限定し,11年間継続して,延べ2026名(男性931名,女性1095名)の大学生の調査を行った.75色のカラーチャートから,「好きな色」,「着たい色」,「よく着る色」を選択するよう求め,後日YG性格検査を実施し,約半数の色にパーソナリティとの関係が示された.さらに,選択した「好きな色」,「着たい色」,「よく着る色」の色イメージ得点と,選択者のYG検査のパーソナリティ特性の12尺度得点との相関を求めた.男女とも相関が見られ,自らのパーソナリティによく似たイメージの色を好み,着たいと思い,よく着るという知見が得られた.また情緒安定性,協調性,思考的外向に男女の違いが見いだせた.
著者
藤掛 和広 田中 貴紘 吉原 佑器 米川 隆 稲上 誠 青木 宏文 金森 等
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.134-141, 2019 (Released:2019-01-26)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究では,ドライバエージェントによって運転行動が変容するのか検証した.エージェントのサポートは,「運転支援」「フィードバック」「運転支援とフィードバック」の3種類とした.その結果,エージェントを使用することで運転行動が改善された.運転行動が最も改善された条件は,「運転支援とフィードバック」だった.
著者
菊池 啓
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.245-249, 2014-12-30 (Released:2015-02-28)
参考文献数
29
被引用文献数
1