著者
佐伯 年詩雄
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.25-44, 2015-10-15 (Released:2016-10-07)

2020年7月、再び東京でオリンピックが開かれる。周知のように、現代五輪は様々な欲望を刺激し、それをパワーゲームに組織する巨大な装置である。そして、「復興五輪」のキャッチフレーズに典型化されるように、このグローバルイベントには「理想と現実」、「ブランドと偽物」、「本音と建て前」が交錯している。本稿は、この東京五輪大会の「招致過程」、「招致計画」をケースにして、この状況を「虚と実」の視点で整理し、オリンピックが直面している根本問題を明らかにする。 始めに、東京五輪招致の動機と背景を取り上げ、それが石原元都知事による都の臨海副都心開発計画破綻の累積債務清算という「負のレガシー」処理であることを示す。 次に招致活動を取り上げ、五輪招致「オールジャパン」の捏造を、「広島・長崎共催五輪構想」の消滅との対比、「震災復興」の政治的利用の分析によって明らかにする。 次いで東京五輪レガシー戦略を取り上げ、新国立競技場建設問題、開催計画書におけるレガシー約束を分析し、五輪競技と市民スポーツの現実との乖離等から、レガシー戦略の失敗を指摘する。 特に、「オリンピック・レガシー戦略」は、近年提唱され、世界的にも好意的に受け取止められているものであるが、その虚実を明らかにすることによって、それは、行き詰まっている五輪大会の存在意義を再構築し、五輪イデオロギーを再建しようとするIOCのあらたなパワー戦略であることを示す。 最後に、この視点からIOCの新政策「アジェンダ2020」を取り上げ、それがIOCと現代五輪の権力保持を意図するヘゲモニー戦略であることを明らかにする。
著者
大里 俊明 渡部 寿一 進藤 孝一郎 大熊 理弘 本庄 華織 杉尾 啓徳 麓 健太朗 上山 憲司 中村 博彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.820-826, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
27

STA-MCA bypass術は主幹動脈閉塞性脳血管障害の再発予防を目的として現在広く行われている. しかし歴史的にbypass術に対する否定的な研究が発表された経緯があり, 同手術の有効性を証明すべく本邦で行われたJapanese EC-IC bypass Trial (JET study) によりその優位性が証明されるに至った. その後再びbypass術が否定されたCarotid Occlusion Surgery Study (COSS) が発表され, 現在もその検証が進んでいる. 今後JETとCOSSの結果の乖離を解明すべく周術期合併症を含めた本邦でのreal world resultsを発表していくことが必要と思われる. さらに急性期bypass術, 再生医療との協力などSTA-MCA bypass術の将来の可能性も期待される.
著者
古賀 敬 内藤 正俊 秋吉 祐一郎 白水 圭 浅山 勲 Tatsunobu Abe
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.148-152, 2002-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
12

Sciatic nerve palsy is a proble troublesome complication of total hip arthroplasty. It may be caused by direct injury or over-traction at the time of operation. We investigated the effects of the hip and knee positions on the blood flow of the sciatic nerve of dogs. Tweyty hip joints of 10 adult mongrel dogs were examined.The blood flow in the sciatic nerve was measured using a Laser Doppler Flowmetry, at varying angles of flexion (90°, 120°, 150°) and internal rotation (0°, 30°) of the hip joint and angles of flexion of the knee (0°, 30°, 60°, 90°). This study showed that the blood flow in the sciatic nerve decreases with increasing flexion angle and increasing internal rotation angle of the hip joint, and that decreases in the flexion angle of the knee joint result in especially pronounced decreases in blood flow. We consider that the position of the hip and knee positions are considered a significant risk factor in total hip arthroplasty parformed with over-lengthening. Our results suggest that surgeons should pay attention to knee extension and the flexion and internal rotation positions of the hip tp prevent sciatic nerve palsy as a complication of total hip arthroplasty.
著者
周 珈愉 井上 哲浩
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.72-88, 2015-09-30 (Released:2020-05-12)
参考文献数
17

本論では,媒体の垣根を越えて活用されているクリエイティブ技術の一つであるARを用いたマーケティング・コミュニケーションが態度ならびに意図の形成に与える効果を論じる。視覚,触覚,嗅覚,聴覚,味覚などを現実世界と拡張融合することができるAR技術の可能性は,市場規模からも相当であるにも関わらず,ARに関するマーケティング分野での過去の研究は少ない。本論では,実際にTVメディアで用いられたTVCMにAR技術を仮想し,視聴者本人を拡張融合したTVCMを用いた環境,App環境,そしてHP環境を構築し,一般線形モデルならびに多母集団構造方程式モデリングを用いて態度ならびに意図形成構造の異質性を明らかにした。その結果,HP,App,ARという3つのプラットフォーム環境での態度形成構造が異質であることが確認され,ARを用いたマーケティング・コミュニケーションの場合は快楽主義が,Appを活用したコミュニケーションの場合は実用主義が,HPを活用したコミュニケーションの場合は関与が重要となることが確認された。
著者
別府 万寿博 三輪 幸治 大野 友則 塩見 昌紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E (ISSN:18806066)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.178-191, 2007 (Released:2007-03-20)
参考文献数
16
被引用文献数
4 3

本研究は,鋼製の剛飛翔体がコンクリート板に高速度で衝突した際に生じる局部破壊について検討を行ったものである.まず,高速衝突実験を行うために,質量50g~1000gの飛翔体が衝突速度約100~500m/sとなる性能を有する高圧空気式発射装置を開発した.次に,この装置を用いて普通および高強度コンクリート板に対する高速衝突実験を行い,飛翔体の衝突速度やコンクリート板の板厚・強度の相違が破壊に及ぼす影響を調べた.実験の結果,衝突速度および板厚の大小によってコンクリートの破壊モードが変化することが明らかとなった.また,表面破壊,裏面剥離の破壊プロセスを高速度ビデオカメラで可視化し,破壊の様子を観察するとともに,破壊が進展する際の条件について考察した.
著者
高橋 尚志 黒部 明 浅田 和雄
出版者
一般社団法人 日本高圧力技術協会
雑誌
圧力技術 (ISSN:03870154)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.190-199, 1992-07-25 (Released:2010-08-05)
参考文献数
10

This paper describes an outline of computer simulation techniques for material failuers under a High Velocity Impact Phenomena.Basic equations are solved by finite difference method and material models are taken into onsideration of strain rate effect, thermal softning effect, Tillotson's state equation for thermodynanic effect and espcially Mescall's failure criteria.We are justified for this techniques that are very effective, becase we compared calculation results with experimental ones and confirmed that both are good fitable.
著者
周藤 利一 越澤 明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.2, pp.95-104, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
33

本研究は、大韓民国の開発制限区域 (グリーンベルト ) 制度の歴史及び効果を取り扱っている。韓国のグリーンベルトは、日本と英国の制度に倣って導入された経緯があるが、土地利用や建築行為に対して何ら補償なしに極めて厳格な規制を課すなどの特徴を有する。本研究は、既往研究や既存資料に加えて未公開資料や関係者の証言などに基づき、日本の制度との関係を考察するとともに、韓国のグリーンベルトの歴史、現状及び課題を分析し、政策決定及び都市計画の観点からみた制度の効果を検証する。
著者
清水 茂
出版者
The Society of Agricultural Meteorology of Japan
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.69-73, 1964-11-05 (Released:2010-02-25)
被引用文献数
1 1
著者
岸波 華彦 糸山 克寿 西田 健次 中臺 一博
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.271-274, 2021 (Released:2021-04-28)
参考文献数
11

In recent years, many kinds of sensors have been studied to recognize the environment, and they are used for AR and VR applications and for SLAM. Although ultrasonic signals with high directivity and high resolution are often used, there are problems such as ultrasonic exposure and grating noise at the rising edge. In this paper, we propose a new active sensing method based on audible sounds that is robust to environmental noise by combining weighting likelihood functions and standing waves. Compared to ultrasonic signals, audible sound tends to spread out, which leads to misalignment of distance estimates and loss of map consistency over time. Therefore, we derive the effective azimuth angle based on the directional characteristics of the speaker and calculate the likelihood of the presence or absence of obstacles using the observation model. In addition, we introduce occupancy grid mapping to produce a map that best explains the estimated distances. We performed real-world two-dimensional environment recognition experiments using the proposed method to detect and map surrounding obstacles, and showed the effectiveness of the method.
著者
河合 美香 那須 清吾 豊田 裕貴
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.21-31, 2017 (Released:2019-03-05)
参考文献数
17

本研究では、日本企業がビッグデータ、IOTなどの概念が先行しているわりには、うまく進んでいないことを問題意識としている。この問題意識から、データを使ったビジネス変革をデジタルトランスフォーメーションと呼び、初動のステップに影響する要素を事例から抽出し、それらの事象から質的比較分析(QCA分析: Qualitative Comparative Analysis)を用いた分析を行い、メカニズムを明らかにすることを目的とする。事例から導きだした原因要素が結果に関連するメカニズムを分析することによって、QCAのアプローチが事例にもとづく研究に有効であることを示し、デジタルトランスフォーメーションを進める上での必要要素によるメカニズムのパターンを抽出した。
著者
中 尚義 五十里 啓司 成澤 海舟 橋本 巨
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会論文集 (ISSN:13465260)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.71-81, 2016 (Released:2016-12-31)
参考文献数
22

トンボは飛翔のための空気力を得るために三次元的な流れを生成している.しかしながら,トンボの自由飛翔時の三次元流れは実験的には未だ明らかでない.本研究では実験的に三次元流れを明らかとするため,断層撮影を用いた可視化実験およびPIV解析を行った.断層撮影では測定の再現性が重要となることから,可視化実験にはトンボの羽ばたき運動を模擬した羽ばたきシミュレータを使用した.流れの可視化は前方および側面方向の2方向から行った.その結果,直線飛翔時のトンボは翅の中央部において後方に向かって強い流れを生成していることが確認された.また,翅の基部方向に向かって流れが引き寄せられていることが明らかとなった.これは後方に向かう強い流れによって横方向から流れが引っ張られていると考えられる.このことから,直線飛翔時のトンボは翼幅方向の余分な流れを作らず,後方への強い流れのみを生成しているといえる.
著者
久保田 進彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.67-79, 2020-01-11 (Released:2020-01-11)
参考文献数
37
被引用文献数
1 3

デジタル化は現代の消費環境を特徴づける重要な要素の1つである。社会生活や経済活動の各所にデジタル技術が用いられることで,消費環境は大きく変化している。それではデジタル化が進展する中で,企業や組織のブランド戦略はどのような方向を目指すべきであろうか。本研究ではこうした問題意識に基づき,Bardhi and Eckhardt(2017)によって提示された「リキッド消費」を鍵概念としながら,デジタル社会におけるブランド戦略について俯瞰的に検討していく。具体的には,まずKubota(2020)における議論を引き継ぐかたちで,リキッド消費をブランド消費行動の観点から再検討する。そしてここから,文脈への適合と消費の手軽さがもたらす心地よさの重要性を指摘する。つづいて「裾野を広げる戦略」と「生活の中に溶け込む戦略」という,リキッド消費に対応した2つのブランド戦略を提案する。そして最後に,研究全体を振り返るとともに,限界点や今後の課題について議論する。
著者
前田 修平 竹村 和人 小林 ちあき
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.449-458, 2021 (Released:2021-04-14)
参考文献数
17
被引用文献数
3

本研究では、ユーラシアパターン―ユーラシア北部において冬季に卓越するテレコネクションパターン―に関連する惑星波の変調を、JRA-55を使用した合成図分析により解析し、波―平均流相互作用を含むユーラシアパターンの力学的メカニズムを明らかにする。 平年偏差の点からは、ユーラシアパターンは、北ヨーロッパ、中西部シベリア、および日本に作用中心を持つ、等価順圧な鉛直構造をした定常ロスビー波型のテレコネクションとして知られている。一方、帯状平均からのずれの観点では、ユーラシアパターンは、東アジアの冬季モンスーンに関連する惑星波の活動度を変調する。 強化された東アジア冬季モンスーンに対応するユーラシアパターンの正位相では、対流圏のユーラシア中部から北太平洋において東方・上方に伝播する惑星波が平年より強まる。この惑星波の強化には、東アジアにおける帯状平均から擾乱への傾圧エネルギー変換が寄与する。強化され東方・上方に伝播した惑星波は、上部対流圏で収束し、それにより中高緯度の直接循環偏差と、中緯度下部対流圏への寒気流出を引き起こす。これらの結果は、ユーラシアパターンは主に惑星波の活動に関係する全球的な力学モードの1つであることを示す。
著者
岡崎 貴世
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.274, 2009 (Released:2009-09-02)

【目的】冷蔵庫は毎日の食事で私たちが口にするものを保存している場所であるため、衛生には特に注意を払い清潔に保っておきたい。しかし、台所のシンクやガスコンロ周りなど汚れが目につきやすい箇所は掃除の頻度が高いが、冷蔵庫は温度が低く菌に汚染されにくいというイメージがあり、定期的に掃除を行う家庭は少ないのではないのかと考えられる。そこで一般家庭の冷蔵庫の細菌汚染状況及び掃除頻度を調査した。【方法】調査は本学学生86名を対象とし、2008年6月17日から7月16日に実施した。細菌検査は、生菌数用・標準寒天と大腸菌・大腸菌群用XM-G寒天(フードスタンプ「ニッスイ」)を使用し、冷蔵庫の棚とドアポケットの2ヶ所を検査した。冷蔵庫の掃除頻度は、自記式アンケートで調査を行った。【結果・考察】調査した全ての冷蔵庫から一般生菌が検出された。また、4割を超える冷蔵庫から大腸菌群が検出された。掃除頻度の低い冷蔵庫ほど検出される菌数は多い傾向にあったが、各冷蔵庫でばらつきがみられた。庫内の汚染状況は、ドアポケットより棚の方が菌の検出率が高かった。これは、棚に置いている他の食材からの汚染が原因のひとつと考えられた。冷蔵庫の掃除は、「年に1回程度している冷蔵庫」では年末やお盆前など決まった時期に行っていることが分かった。しかし、「年に2~3回している冷蔵庫」は『気が向いた時』や『汚れた時』など、不定期に掃除を行っているケースが多く、汚れた部分のみを掃除している可能性が考えられた。今回の結果より、各家庭の掃除頻度は予想以上に低く、また冷蔵庫は多くの細菌に汚染されていることが明らかとなった。
著者
酒井 正士 片岡 豪人 工藤 聰
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.85-90,66, 2002-02-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
38

ホスファチジルセリン (PS) は脳に存在する主要な酸性りん脂質であり, 古くから脳機能との関連で研究が進められてきた。1986年にはDelwaideらが, 牛脳由来ホスファチジルセリン (牛脳PS) を老人性痴呆症患者に経口投与することにより症状が回復することを初めて報告した。これ以後, 欧米で10件を超える二重盲検試験が行われ, いずれの場合にも老人性痴呆症に対する有効性が確認されている。特に494人の老人患者を対象としたイタリアにおける臨床試験では, 抗痴呆剤として牛脳PSを摂取することにより, 副作用は認められず行動と知的能力のパラメータが改善されることが示されている。しかしながら, 牛脳には感染性スポンジ脳症を媒介する恐れもあることから, 安全性の観点から見て食品素材としては適していない。また, 牛脳から得られるPS量はそれほど多くなく, 安全で充分な量を確保できる天然素材は他に見当たらない。この問題を解決するため, ホスホリパーゼDを用いて大豆レシチンとL-セリンとを原料にPS (大豆転移PS) を製造する技術が開発された。大豆転移PSの脂肪酸組成は牛脳PSとはかなり異なるが, 牛脳PSと同様にスコポラミンで誘発した齧歯類の記憶障害を回復させた。さらに, 老齢ラットに大豆転移PSを連日投与した結果, 牛脳PSと同様に水迷路試験の成績が回復したことから, 大豆転移PSも牛脳PSと同様の効果を持つことが期待される。

2 0 0 0 OA 神/王/justice

著者
石井 三記
出版者
The Japanese Association of Sociology of Law
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.46, pp.100-106, 1994-04-30 (Released:2009-01-15)