著者
津野 倫明
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は慶長の役における諸大名の軍事行動を解明することであり、本年度はとくに水軍に編成されていた諸大名(藤堂氏・伊予加藤氏・来島氏など)と朝鮮半島南部の駐留部隊であった諸大名(小早川氏など)およびこれらの軍事行動と密接にかかわる軍目付(熊谷直盛ら7名)に関する史料の調査・分析をした。具体的には研究実施計画にそって以下のような史料調査等を実施した。11月に東京大学史料編纂所で水軍関係の史料を閲覧・筆写し、近江水口加藤文書の影写本については複製も入手した。12月には秋月郷土館で軍目付発給の「鼻請取状」を撮影した。また、1月には東京大学史料編纂所で小早川秀秋に関する文書などを閲覧・筆写した。史料所蔵機関の耐震工事などにとまどい、遅れがでたものの研究実施計画に掲げた調査は遂行した。なお、史料の調査・分析と補完関係にある朝鮮出兵関係図書・日本中近世政治史関係図書も随時、精力的に蒐集していった。上記を含む3年間の調査・分析により、従来未解明であった慶長の役における諸大名の進軍ルート・部隊編成など基本的な動向を解明する所期の目的はある程度達成されたと考えるが、依然として後半の倭城在番体制・帰国時期などに関しては不明な部分が残されている。よって、諸大名の軍事行動と密接にかかわる軍目付にも注目して、これらの点を解明してゆくことが当面の課題と考えられる。なお、これまでの成果もふまえて本年度は裏面に掲載した「朝鮮出兵と長宗我部氏」、『前近代の日本列島と朝鮮半島』(津野執筆は「朝鮮出兵と西国大名」)を発表した。また、とくに本年度の対象とした水軍に関しては口頭報告「慶長の役における四国衆について」を発表し、これにもとづく学術論文「慶長の役における『四国衆』」も、大会成果論集(平成20年度予定)に掲載予定である。
著者
酒田 信親
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

物理的にお互いの声や視界が及ばない離れた多地点間で通信により音声や映像をやり取りし,指示者が遠隔地の作業者に作業を行わせることを遠隔協調作業という.本研究では、Procams(Projector Camera Systems)を、壁や柱や天井などに複数個設置し、人称視点を指示者が選択可能な遠隔協調作業用システムを設計・開発・評価した.その過程で、視野共有システムを用いた時のFat finger problemの解決手法として身体動作画像の拡大縮小表現手法を提案し,評価した.その結果,小さな対象に対する指示に対して作業時間が短縮されることや,指示者が指示をしやすいと感じることが分かった.
著者
平井 上総
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、日本の中世と近世を分かつ兵農分離という概念について、社会の実態や政策理念などの多角的視野から再検討することによって、中世から近世への移行を捉え直すことを目的としている。本年度は、豊臣政権期に成立する大名権力の法が、上位権力との関係や在地との関係などにどれだけ規定されているのかを解明することを目的としていた。まずは太閤検地について、検地条目と呼ばれる法の条文・運用実態を、検地の負担構造解明という視点から検討し、豊臣政権によって取立てられた新規大名が統一政権の方法を真似る形で統治を行なっていたことをあらためて確認した。また、新規大名には統治にあたり統一政権を参考とする傾向があり、統一政権側も安定した統治のためにそれを望んでいたものとみた。新規大名の中には自身の家臣に対して同様に統治の基本方針を示す者もおり、そうした構造が近世的支配構造の展開を進めていったといえる。一方、従来からの大名は独自の支配を展開することが多く、それに対する統一政権側からの対応も一定しない。これは取次関係による指南の有無や、軍役勤仕の度合いによるものとみられる。以上から、統一政権が画一的支配構造を全国に強制する意図をもっていたとはいえず、近世諸藩にみられる支配の多様性は豊臣期の影響が大きかったものとみた。これらの点については、次年度に研究報告を行なう予定である。本年度は他に、織田権力期の和泉国の支配構造について、織田権力が現地勢力(守護代権力)にかなりの部分を委ねていたこと、天正八年の大坂本願寺との講和以後に支配構造の転換が図られたことなどを明らかにした。
著者
齋藤 征人
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
no.47, pp.31-42, 2010-03-31

本研究では,社会福祉士国家資格取得後の現任経験がおおむね3年以上の,社会福祉士の「実践知」形成プロセスの全体構造を明らかにすることを目的に,幅広い職域で実践の渦中にある11名の社会福祉士にインタビュー調査を実施し,これをM-GTA法を用いて質的に分析した.その結果,実践知形成のために,実践を可視化することと,それを促進するための環境づくりの重要性が確認された.また,社会福祉士の養成機関において,人との関わりや視野の広がり,社会福祉的なものの見方・考え方を獲得する機会を保障する必要性が改めて示唆された.
著者
田中 秀和 Tanaka Hidekazu
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.54-58, 2011-03

Since the beginning of this century the expansion of differences in the Japanese society has been clearly visible. The so called gap-widening society has been spreading rapidly. This paper, is about differences in the level of poverty among Japanese people and it suggests some ways to solve them.日本社会においては、21世紀に突入した頃から格差の拡大がより多くの人々に認識されるようになり、「格差社会」に関する議論が盛んに行われてきた。その後、「格差社会」に関するそれは、「貧困」に対する関心を増大させ今日においては、格差よりも貧困に議論の中心は移行してきている。本稿では、これまでの日本社会における格差・貧困に関する議論の動向を整理し、より一層の議論の発展と問題解決に寄与することを目指すものである。また、本稿においては、貧困問題を解決していく方法として、社会福祉士等のソーシャルワーカーや研究者が、個人と社会(環境)両者への働きかけをより強化することを掲げた。
著者
亀山 慶晃
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

水生植物は陸上の植物に比べると無性繁殖への依存性が強く、特に浮遊性の水生植物では植物体が断片化することによるラメット数の増加や、水鳥による長距離散布が集団の維持に大きな役割を果たしている。昨年度までの研究によって、浮遊性の水生植物タヌキモはイヌタヌキモとオオタヌキモの雑種第一代であり、有性繁殖能力は完全に失われているものの、広い範囲に、かつ両親種とは異なる生育地に分布していることが明らかとなった(Kameyama et al.2005)。本年度は、タヌキモがどのように形成され、集団を維持しているのかを明らかにするため、北海道苫小牧市と青森県津軽平野の計33の湖沼からタヌキモ類を採取し、AFLP分析をおこなった。その結果、1)タヌキモ類3種の各集団は大部分が単一のクローンで形成されていること、2)各クローンは複数の集団に認められ、特に津軽平野のタヌキモ5集団は全て単一のクローンであり、同一のクローンが苫小牧市にも分布していること、などが明らかになった。また、親種であるイヌタヌキモとオオタヌキモは完全に異所的に分布しており、両者の遺伝子型をどのように組み合わせても現存するF1雑種、タヌキモの遺伝子型を得ることはできなかった。これらの結果から、1)タヌキモは気候変動が激しかった時代、本来は異なる環境に生育するイヌタヌキモとオオタヌキモが偶然出会ったことで形成され、2)殖芽や切れ藻による無性繁殖によって生き残ってきた、と考えられる。不稔のタヌキモが長期間に渡って集団を維持している背景には、雑種強勢による旺盛な無性繁殖能力、水鳥による長距離散布、交雑による新たな環境への適応、などが関与しているものと推察された。
著者
橋爪 力 GYÖRGY Miklos Nagy FERENC Fülöp
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

反芻家畜のサルソリノール(SAL)によるプロラクチン(PRL)分泌機構の一端をヤギで明らかにしようとした。その結果、長日条件下においてメラトニン(MEL)をヤギに投与するとSALにより誘起されるPRL放出反応は低下すること、またCarbidopaとL-dopa処理により視床下部内ドーパミン(DA)量を増加させると、日長に関係なくSALによるPRL放出反応は抑制されること、さらにレセルピンにより視床下部内DA量を減少させるとSALによるPRL放出反応は修飾されることが明らかになった。このように、反芻家畜のSALによるPRL分泌機構には視床下部のMELやDAが関係していることを明らかにした。
著者
粟島 亨 戸井 崇雄 中村 典嗣 紙 弘和 加藤 吉之介 若林 一敏 宮澤 義幸 李 京
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. VLD, VLSI設計技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.578, pp.23-28, 2004-01-15
被引用文献数
22

動的再構成可能プロセッサDRP(Dynamically Reconfigurable Processor)のCコンパイル環境について報告する.C言語ベースの動作合成エンジンをフロントエンドとすることでDRPに対するソフトウエアライクな開発環境を実現した.C言語の動作記述から自動スケジューラにより制御回路(FSM)とデータパス回路が合成される.制御回路はDRPの状態遷移コントローラー(STC)にマッピングされ,データパス回路は複数のコンテキストに分割された上でPEアレイにマッピングされる.フロントエンド合成とバックエンド合成は統合開発環境により密に統合され,直観的なGUIが提供される.実チップ上のシンボリックデバッグが可能なオンチップ・デバッガも備えた.
著者
福山 透 横島 聡 下川 淳
出版者
名古屋大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008

医薬品として使用されている天然有機化合物、または医薬品としての使用が期待されている天然有機化合物の効率的合成経路の開発を目指し、合成研究を行った。具体的にはエクテナサイジン743、リゼルギン酸、ヒューパジンA、サリノスポラミドなどの合成経路の開発に成功した。また独自に開発した合成経路を応用することで、オセルタミビル、ビンブラスチンなどの新規類縁体合成を行い、新規活性化合物の取得に成功した。
著者
WELFIELD John B. 細谷 千博 塩出 浩和 信田 智人 毛利 勝彦 大内 浩 細谷 千博 WELFIELD Joh
出版者
国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、歴史的経緯を踏まえた上で、政治・経済・防衛・パーセプション・経済援助という多岐にわたる側面から現状を分析した。冷戦後において中国の脅威論が日米両国内で議論されているが、軍事的に見て近い将来に中国は東アジアにおいて日米両国の脅威となる可能性は少ない。唯一の懸念は台湾海峡問題であるが、それに対して日米両国は中国に対して封じ込めなど敵対的な対応をするのではなく、積極的に中国が国際システムに参入することを支援していかなければならない。中国が東アジアの国際秩序形成に建設的な働きをするようになれば、台湾問題においても近い将来平和的な解決手段をみつけることができよう。言い換えれば、中国を孤立させない形で、日米両国が東アジアの新国際秩序形成にイニシアチブをとる必要がある。そのためには、防衛面だけでなく、最近の東アジアの金融不安に対する経済援助やマクロ経済調整、知的所有権問題といった面での経済政策での日米の協力や、環境問題や人口問題などのグローバルな問題においての日米両国の協力が重要になってくる。京都における環境問題国際会議に見られたように、これらの問題において日米両国は必ずしも同じ立場であるとは限らない。だが、たとえ立場が違ったとはいえ、日米両国が協力して中国を含めた新国際秩序形成のために最大限の努力をするのだということは忘れてはならない。
著者
高田 滋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

凝縮相の相変化によって起こる気体の非定常1次元流を気体分子運動論によって調べ主に次の成果を得た.(1)凝縮相に隣接する薄層(境界層)の構造解析から広い適用範囲を持つ線形化問題における相反性に関する一般定理群を発見した.(2)一定の条件を満たす初期状態からは互いに逆向きに進行する2つの膨張波が生じるが,それらの間に真空に成長する高度希薄領域が現れうることを示した.この領域は極めて非平衡で気体温度が強い非等方性を示すことを明らかにした

1 0 0 0 OA 習字初歩

出版者
文部省
巻号頁・発行日
1872
著者
白濱 成希
出版者
北九州工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の主な目的はウェブベースによるソフトウエアコンテストサイトを構築し実際に運用することである。応用事例として国際交流のためのツールとも活用する事を目指した。本ツールで平成21、22年度に九州・沖縄地区を中心とした高専によるリーグ戦を行った。シンガポールのリパブリックポリテクニック校との交流戦でも本ツールを使用した。また初心者用の入門コンテンツ作成や対戦動画配信を行った。
著者
山田 静雄
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は過活動膀胱における病因を膀胱における神経伝達物質受容体異常の面から検証し、その有効かつ安全な薬物療法を確立することを目的とするもので、当該期間で以下の研究成果を得た。1)背椎損傷ラットモデルにおいて、過活動膀胱の徴候である膀胱の不随意収縮波形及び膀胱重量の有意な増大が認められた。2)背椎損傷ラット膀胱への[3H]NMS特異的結合Bmax値の有意な増加が認め、この増加は、膀胱機能曲線の不随意収縮曲線波形における振幅と発現頻度(過活動膀胱の程度)と良好に相関した。3)テストステロン投与による前立腺肥大症モデルラット膀胱において、重量の有意な増加と[3H]NMS特異的結合Bmax値の有意な増加が認められた。以上の結果から、背椎損傷ラットおよび前立肥大ラットの両過活動膀胱モデルにおいて、膀胱ムスカリン性受容体異常が認められ、本病態における抗コリン薬の有効性が示唆された。4)ラット膀胱の受容体標品において、[^3H]αβ-MeATPは飽和性の特異的結合を示した。αβ-MeATP、βγ-MeATP、MRS2273、PPADSおよびsuramineは、いずれも膀胱への[^3H]αβ-MeATP特異的結合を濃度依存的に抑制し、その結合親和性はαβ-MeATP>βγ-MeATP>suramine>PPADS>MRS2273の順であった。これより、ATP(P2X)受容体がラット膀胱に存在することが示され、本受容体は創薬標的分子となることが示唆された。5)トルテロジン(Tol)は経口投与により膀胱mAChRに結合し,その結合様式はOxyと比べ緩徐かつ持続的であった。またTolの唾液分泌抑制作用は,オキシブチニン(Oxy)と比べ有意に減弱することが示された。以上の結果より、TolはOxyよりヒトにおいて口渇の副作用が減弱することが示唆された。