- 著者
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秋山 雅彦
- 出版者
- 地学団体研究会
- 雑誌
- 地球科学 (ISSN:03666611)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.3, pp.139-147, 2004-05-25 (Released:2017-07-14)
地球大気のCO2濃度と地球表層の温度との間には密接な関係が存在することから,温暖化はCO2を排出する化石燃料の燃焼によってもたらされ,地球温暖化対策が国際的な課題として取り上げられてきている.しかし,大気中のCO2が温室効果に果たす役割は,現在の濃度ですでに飽和になっているため,今後のCO2濃度の上昇は地球温暖化には影響しない,とする見解も提出されている.しかし,この見解は一般には問題視されていない.もし,この見解が科学的に正しいとするならば,地球温暖化対策は大きく軌道修正を迫られることになる.地質時代における地球大気組成の変遷史を検討すると,確かに,大気中のCO2濃度と気温との問には密接な関連が浮かび上がってくる.しかし,両者間の原因と結果という因果関係については明らかになっていない.地球温暖化の原因は化石燃料の燃焼である,と断定する前に,太陽活動の変化にともなう気候変動を含め,科学的にその因果関係を解明するための努力がなされなければならない.