著者
山田 由美子
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

【目的】精神科領域の薬物を使用している授乳婦において、母乳の継続を判断する上で薬物の母乳移行性が問題となる場合がある。しかし、リスペリドン、セルトラリン、エピリプラゾールなど新薬においては特に母乳移行性に関するデータが少ない。本研究は、リスペリドン服用患者の母乳移行性について検討した。【患者背景及び分析方法】患者背景:患者は妊娠期間中、リスペリドン4mg/日を朝・夕食後2回に分けて服用、コントロールは良好であった。内服を継続していたが、出産後3日目より精神的に不安定となり6mg/日を毎食後3回に分けて服用することに変更となった。患者希望によりピーク濃度の1点のみの採血のため、出産後4日目、服薬1時間後の母乳と血液を患者から採取した。なお、本研究は信州大学医学部医倫理委員会の承認事項を遵守して行った。分析方法:分析カラム;SHISEIDO CAPCELL PAK ACR 3x150 5μm、温度;40℃、流速;0.5ml/min、検出器:クローケムII検出器(ECD検出器)、ガードセル;850mV、E1;400mV、E2;800mV、移動層:0.05Mリン酸緩衝液(pH3.0):メタノール:アセトニトリル(70:15:15)にて行った。前処理:血清0.5mlに20%炭酸ナトリウム溶液1mlを加え、内部標準(100ng/mlミアンセリン)20μl、ジエチルエーテル:イソアミルアルコール(99:1)6mlで抽出後、有機層を0.005M硫酸溶液0.2mlで逆抽出し、HPLCのサンプルとし、75μlをinjectionした。母乳は1mlに20%炭酸ナトリウム溶液2mlを加えた。以降は血清と同じ操作にて調製したが、母乳は100μlをinjectionした。母乳中のリスペリドン測定用の検量線は、母乳の代わりに粉ミルクを用いた。測定検出限界は0.5ng/ml。【結果】患者の血清及び母乳中のリスペリドンの濃度は各々18.6及び1.8ng/mlであり、母乳中への薬物移行の指標となる母乳中濃度/母親血中濃度比(M/P比)は0.096であった。【考察】リスペリドンのHenderson-Hasselbalchの式によるM/P比は0.5又は1.87、pH分配仮説による分配係数は約0.95-2.74である。また、蛋白結合率は90%、半減期3.9hであり、これらのデータから薬学的評価を行うと、リスペリドンの母乳移行はかなり少ないと予想できる。文献では、投与量の1~5%の移行、AUCO-24のM/P比は0.42との報告がある。これらと今回の実測値は、リスペリドンの母乳移行性は少ないことと一致しており、本薬物は計算上の薬学的評価から母乳への移行性を推測可能であることが裏付けられた。
著者
中井 歩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
no.6, pp.191-203, 2007-01

1990年に施行された改訂入管法は,日系南米人,とくに日系ブラジル人を中心とする新しい移 民現象をもたらした。彼らは集住し,エスニック・コミュニティーを構成する。そうした中で,地方 政府はどのような政策対応をするのであろうか。浜松地域における新しい移民現象とそれに起因する 諸問題対する政策対応について,垂直的協業と水平的協業という 2 つの側面から分析する。
著者
成井 惠子
出版者
茨城女子短期大学
雑誌
茨城女子短期大学紀要 (ISSN:02875918)
巻号頁・発行日
no.27, pp.86-68, 2000

情報の生産者である研究者個人のための情報収集,蓄積,解析,発想と仮説と実証,論文発表の準備等の知的活動を,効率的・効果的に進めるために,図書館の伝統的な整理・処理手法である分類・目録の技術が,研究支援のために活用されていく方法とならないかを検討した。目録規則を検討し,アンケートの結果を視野に入れて,必要な要素を抽出するとともに,具体的な文献カード,文献票の試案を作成した。表8,試案カード(票)8
著者
飯島 弘
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.10-19, 1962-04-30

Kawamata Dam is a very slender type arch dam 120m high. The left bank of this dam have many problems for the supporting foundation of arch dam. They are poor topography and grography and groups of fault or seam. Transmitting wall of arch thrust and rock pre-stressing system are wost important treatments of this bank. This paper reports on the process of these foundation treatments from the most primitive idea to the latest design. All geological data which is gained through the investigations and mode tests are translated to mechanical data and they introduced us to the above plan.
著者
脇田 祥尚
出版者
広島工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

過去2ヵ年度の研究にひきつづき、カンボジアを主な調査対象地とし、「東南アジアの土着的住居・集落にみられる計画技術の活用に関する研究」を進めた。これまで、都市居住に焦点をあて、街区居住という視点から宅地割りや路地形態の分析を行うとともに外部空問の利用形態について分析を行ってきた。また街路景観の分析も行ってきた。18年度は、フランス統治期の都市計画と現在の都市構成の関係を明らかにするため、施設分布や道路構成などに着目しながら都市構成に関する研究を行った。また、東南アジアの都市部でランドマークあるいは都市資源として位置づけられるコロニアル建築に焦点をあてそのデザインの特徴ならびに空間利用の変化について分析を試みた。また、外部空間の活発な活用について詳細な分析を行うため市場の空問構成・空間利用についての分析も行った。都市居住の根幹をなす都市住居・ショップハウスにっいての分析では、増改築に着目し、多様な増改築の事例を(1)居住面積の確保、(2)独立性の確保、(3)アクセス経路の変更という3点に整理した。今後さらに東南アジアの都市部では開発圧力が高まり、集合住宅の需要が高まっていくと考えられるが、西洋型の集合住宅の型を導入するのではなく、その地域独自の居住様式に適合した集合住宅の型の検討が望まれる。本研究の成果は、その基礎的研究として位置づけられるが、これら3点の特質をべ一スにしながら冗長性の高い建築計画技術の開発が望まれることが明らかとなった。
著者
細川 利典 平岡 敏洋 太田 光保
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.1736-1744, 1999-04-15
参考文献数
21

順序回路に対するATPGを困難にする構造として平衡再収斂構造を定義し 平衡再収斂構造の段数を削減するアプローチと 経路数を削減するアプローチについて 故障検出効率が十分に上がらない(83?95%)実際の無閉路順序回路を用いて スキャン化率と故障検出効率の解析を行った. その結果 平衡再収斂構造の経路数を削減するアプローチが より少ないスキャン化率で十分に高い故障検出効率(99%以上)を達成できるという点で効果的であることが分かった. また平衡再収斂構造の経路数を削減するアプローチは従来故障検出効率の向上に効果的であると知られている順序深度を削減するアプローチよりも効果的であることが分かった.We define a balanced reconvergence structure that makes ATPG for sequential circuits difficult. We compared an approach that reduces the number of paths of balanced reconvergence structures (path reduction approach) with an approach that reduces the depth of balanced reconvergence structures (depth reduction approach) for practical acyclic sequential circuits the fault efficiencies of which are not enough high. Experimental results show that the path reduction approach is more effective than the depth reduction approach because fewer scan flip-flops are required to achieve a high fault efficiency (99%). The results also show that the path reduction approach is more effective than a conventional sequential depth reduction approach.
著者
岡本 慎平
出版者
広島哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:04952200)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.73-87, 2011

In this paper, I argue about "the logic of practice" that J.S.Mill treated in the last chapter of "A System of Logic". The logic of practice, which is also called "the art of life", is referred as his ethical perspective by many scholars. Nevertheless, its position in "A System of Logic" itself tends hardly to be discussed. They are liable to overlook that "the art of life" is an important part of "A System of Logic" and closely related to the other parts of this work. Therefore, I will examine what is the structure of theinference that Mill stated mainly in Book.II and how it is used in the art of life.Here are derived the following consequences. Mill's syllogism is characterized as a passage "from particulars to particulars" . This inference is employed in the art of life that is the inference in an imperative mood, in the same way as is done in scientific inference in an indicative mood. Moreover. "narrow sense induction" is characterizedas a passage "from particulars to generals ", while "ratiocination" as a passage "fromgenerals to particulars". In the art of life, the former is used as "the art of the legislator" and the latter as "the art of the judge". Finally, by both operations, rules of our life are progressively improved.
著者
堀 賀貴
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.64, no.522, pp.301-306, 1999

In the early Archaic period, viewpoints to look all chambers were found in the front space open-air of the doorways to chambers. In the late Archaic tombs providing central hall-like spaces, visitors entered the hall-like spaces beyond the doorways in order to look at all chambers. The viewpoint was moved from the space open to sky into the hall-like space. In examples in the 6th century B.C., for instance a wide room with pillars at Tomb of the Capitals, the wide room was used for two different purposes, such as the chamber and the viewpoints, in transition between early and late Archaic tombs. In the 4th century B.C. Etruscan tombs, so-called Sotto Faciata, had the place for the viewpoints that was spatially independent of the chambers.
著者
吉田 清
出版者
九州女子大学・九州女子短期大学
雑誌
九州女子大学紀要. 人文・社会科学編 (ISSN:09162151)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.29-46, 1999-02

D. H. Lawrenceは(古代)エトルリア民族に本能的な関心をいだき、彼等と彼自身を同一視した。Lawrenceが晩年の1927年に執筆したEtruscan Places (1932)はエトルリア地方の気候、風土、自然について述べると同時に、エトルリア民族の歴史、性格、芸術、宗教を考察し、彼の思想が端的に表われた紀行文である。本論はエトルリア民族の主要な芸術石棺像、奉献像、墳墓内の壁画、キマイラ等の考察を通して、彼等の死生観を分析し、その生の世界を探ることを目的とする。エトルリア文化はその初期段階において、死に直面し、死を意識した文化であった。しかし、一方において、彼等が生に目を向けた時、意識下より意識の表面へと湧きでた生の芸術、宗教が発達した。その結果、当時の地中海諸国はギリシヤ芸術、文明の影響を免れることは不可能であったが、エトルリア民族特有の芸術、宗教が生まれるに到った。エトルリア民族最大の関心は生の世界であり、生きることそのもの、つまり、生を鋭敏に意識することで彼等の芸術は表現された。生は喜びであると同時に驚異であり、死後も永遠、無限の生の世界へ永続すると言う考えのもとにエトルリア民族の宗教は生まれた。エトルリア民族の芸術、宗教を考慮する時、ローマのVilla Giulia博物館所蔵の石棺の夫婦像に認められる微笑はエトルリア民族の死生観を象徴し、彼等(夫婦)は死後、喜ばしき驚異の生の旅へ、生の始源、永遠、無限へと旅立つ姿を表わしていると考えられる。
著者
高橋 陽子 玄田 有史
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.29-49, 2004-01-31

20万人に達する高校中退者および中学卒非進学者の労働市場には,高校卒以上に就業環境の悪化が予想されるものの,その実像は明らかでない.本稿では35歳以下の無業者に関する調査を用いて実証分析し,高校中退者は卒業者に比べて,明らかに学校をやめた直後に正社員となる確率が低いことを確認した.ただしそれと同時に,中退だから正社員になりにくいという傾向は,年齢を経るに従って解消されていくこともわかった.さらに中退者は学校をやめた直後に正社員となりにくいが,正社員となった後の就業継続でみれば,高校や中学の卒業者との違いは存在しないことも発見された.中退者が正社員としての就業が困難なのも,継続志向の弱さや認知能力といった資質のせいではなく,高卒以上に本人能力や志向に適った就業機会に出会いにくいことの結果である.
著者
柳瀬 隆史 仲尾 由雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.29, pp.151-158, 2000-03-21

本稿では、メールマガジンサービスから配信されるニュース情報を対象にして、注目ニュースを自動抽出する手法を提案する。同時期に複数のメールマガジンから配信された記事内容を分析した結果、多くの記事で報じられた話題には注目に値するものが多く、同一話題を扱った記事の多くは記事見出しの比較で判定可能なことが分かった。そこで、見出しの類似性に基づいて配信記事群をグループ化し、各グループ中の記事数などをもとに話題性が高いと思われるグループを選別する実験を試みた。グループ化の結果により抽出した注目ニュースと週刊メールマガジンの掲載記事との比較などにより、各グループに含まれる記事数を適切に制御すれば、話題性の高い情報を含んだ注目ニュースを効率的に抽出できる見込みが得られた。In this paper, we propose a method of automatic extraction of noteworthy topics using news articles delivered by e-mail newsletter services. At first we manually analyzed a set of articles delivered in a week by several e-mail newsletter services, and found that most of the topics reported in many different articles are noteworthy ones and it is possible to judge the semantic identity of articles with comparison of their headlines. Then we made an experiment of automatic extraction of noteworthy topics. In the experiment we classifyed delivered articles into groups based on the similarity of their headlines, and choose some groups based on the number of articles in each group.
著者
沢崎 久木
出版者
日本フランス語フランス文学会
雑誌
フランス語フランス文学研究 (ISSN:04254929)
巻号頁・発行日
no.83, pp.24-33, 2003-10-21

この小論は,フローベールの『ボヴァリー夫人』の中から,女主人公エンマが過去を振り返る場面を三つ選び,その草稿を検討して,フローベールにおける創造と記憶について考察したものである.小説中エンマは,まだ見ぬ恋人や憧れのパリの生活を空想する一方で,絶えず過去の思い出を振り返っている.エンマばかりではなく,他の作中人物,シャルルやルオー爺さん,薬剤師オメーにいたるまで,しばしば懐古にふけるさまが描かれている.回想は,いわゆるボヴァリスムと対をなす,この小説に描かれている心理の重要な一面であり,また,小説内ですでに語られた事柄に繰り返し言及することで,事件に乏しいこの物語に重層性を与え,かつ作中人物の生きる世界の閉鎖性・単調さを強調していると言える.一方草稿研究は,作家の作品創作の過程をたどり,この記憶という主題に関して言えば,フローベールがこうしたエピソードをどのように構想し,小説内の回想の効果をいかに活用したかを明らかにする.特に例に挙げるような回想場面では,作中人物が(小説内の)自分の過去を振り返るのみならず,自作の最初の読者である作家自身が,そのエピソードを書きながら,執筆中の小説のすでに書き終えた部分(とその草稿),あるいは執筆中のエピソードのためのセナリオや草稿の記憶を想起しているわけで,推敲の跡に,その作家自身の創作の記憶,エクリチュールの記憶,個々のパッセージの推敲だけではなく,小説全体を通しての推敲というものをたどることができるのではないだろうか.