著者
狩野 方伸 崎村 建司 少作 隆子 岸本 泰司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

これまでの研究を継続・発展させ、平成25年度に以下の研究を行った。脳スライス及びin vivoの個体脳の解析は狩野が、培養海馬ニューロンの解析は少作が、行動学的解析は岸本と狩野が担当した。また、遺伝子改変マウスの維持は崎村が担当した。1. 内因性カンナビノイド(eCB)系によるNMDA受容体機能調節のメカニズム: 逆行性シナプス伝達を担うeCBである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)の合成酵素DGLαの欠損マウスと、2-AGの受容体であるCB1の欠損マウスの側坐核中型有棘ニューロンの興奮性シナプスにおいて、NMDA受容体機能の低下が認められた。その原因として、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の寄与が低下していることを示す電気生理学的所見を得た。2.大脳基底核の運動学習におけるeCB系の役割: 3レバーオペラント課題のマウスへの適用について、平成24年度に引き続き検討した。3.分界条床核の抑制性シナプス伝達の2-AGによる逆行性伝達抑圧のメカニズム:分界条床核の抑制性シナプスの逆行性伝達抑圧が、eCB系遺伝子改変マウスにおいてどのように変化しているかについて、継続して電気生理学的解析を行った。4.eCB系の海馬機能における役割: eCB系遺伝子改変マウスにおいて、瞬目反射条件付けのLI (latent inhibition)課題に関する解析を継続した。5.eCB系の抗炎症作用:U87-MGヒト悪性グリオーマ細胞における、NF-kBシグナルを介する炎症作用に注目し、グリアのeCB系による抗炎症作用のメカニズムを調べるための条件検討を行った。
著者
角田 雅照 大杉 直樹 門田暁人 松本 健一 佐藤慎一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.1155-1164, 2005-05-15
被引用文献数
12

ソフトウェア開発における工数予測を目的として,過去のソフトウェア開発プロジェクトにおいて記録された多種類のソフトウェアメトリクス値を入力データとし,協調フィルタリングにより予測工数を求める方法を提案する.協調フィルタリングは,未計測の値(欠損値)が大量に含まれているデータを入力とした場合でも予測が行えるという特長があるが,ソフトウェア工数予測に適用する方法はこれまで提案されていない.提案方法では,まず,入力となるメトリクス値を正規化し,値域を揃える.次に,正規化したメトリクス値を用いて,予測対象(開発中)のプロジェクトと,過去に行われたプロジェクトとの類似度を計算する.最後に,類似度の高い(予測対象プロジェクトと類似した)プロジェクトの工数を類似度で加重平均した値を,予測対象プロジェクトの工数とする.ケーススタディとして,株式会社NTTデータにおいて1 081件のソフトウェアプロジェクトから計測された14種類のメトリクス(約60%の欠損値を含む)を用いて試験工数を予測した.その結果,提案方法は従来方法(欠損値処理法を用いたステップワイズ重回帰分析)よりも高い精度を示し,予測試験工数の相対誤差の平均値(1プロジェクトあたり)が22.11から0.79に改善された.To predict software development effort, this paper proposes an effort prediction method based on the Collaborative Filtering (CF) which uses as input various software metrics recorded in past software development projects. The CF has an advantage that it can conduct a prediction using "defective" input data containing a large amount of missing values. There are, however, no researches which propose a method for applying the CF to Software effort prediction. Our proposal consists of three steps. In the first step, we normalize values of metrics to equalize their value range. In the next step, we compute the similarity between target (current) project and past (completed) project using normalized values. In the last step, we estimate the effort of target project by computing the weighted sum of efforts of high-similarity projects (that are similar to the target project) using the similarity of each project as a weight. In a case study to evaluate our method, we predicted the test process effort using 1,081 software projects including 14 metrics whose missing value rate is 60%, which have been recorded at NTT DATA Corporation. As a result, the accuracy of our method showed better performance than conventional methods (stepwise multiple regression models); and, the average accuracy per project was improved from 22.11 to 0.79.
著者
加藤 雅啓
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.152-159, 1975-03-31
被引用文献数
2

Detailed observation is made for the scales and the position of sori in Davallia divaricata, its close relatives, D. dimorpha and several species in Davalliaceae with the result that the following species have non-peltate scales besides Leucostegia and D. divaricata already described: all species of Araiostegia, D. dimorpha, close relatives of D. divaricata and Davallodes viscidulum, and that the sori are placed at the end of veins in Leucostegia, at the bending point and junction of veins in Araiostegia, at the bending point in Davallodes and at the junction in Davallia. These characters are discussed taxonomically. The definitions of Araiostegia, Davallia and Davallodes are revised on the basis of such characters as scales, soral position, hairs and the arrangement of basal pinnules on a pinna. According to this definition, D. divaricata, its close relatives and D. dimorpha are here transferred to Araiostegia.
著者
Duc Tuan Dinh Mai Thi Quynh Le Cuong Duc Vuong Futoshi Hasebe Kouichi Morita
出版者
日本熱帯医学会
雑誌
Tropical Medicine and Health (ISSN:13488945)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.3-7, 2011 (Released:2011-03-24)
参考文献数
13
被引用文献数
22 53

We designed a new set of primers for reverse transcriptase loop-mediated isothermal amplification (RT-LAMP) to specifically amplify the HA gene of avian influenza viruses subtype H5N1. By testing nine H5N1 virus strains and 41 clinical samples collected in Northern Vietnam, we found that the new primers showed higher sensitivity and specificity than the previously published RT-LAMP primers and were comparable to the RT-PCR method currently recommended by WHO. These results suggest that our RT-LAMP assay may be a better choice as a diagnostic tool for current H5N1 influenza virus infection.
著者
藤田 喜久
出版者
国立大学法人琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では,沖縄県下の離島地域に生息するヤシガニ資源の保全を目的として,1)離島地域におけるヤシガニの生息状況調査,2)野外調査機会を利用したヤシガニ資源保全に関する教育啓発,を行った.1) 沖縄県下の離島地域におけるヤシガニの生息状況調査沖縄県下の各島におけるヤシガニの生息状況を解明するため,南大東島,宮古島,多良間島,波照間島において,(1)海岸部におけるヤシガニ小型個体の生息状況調査と,(2)夜間踏査によるヤシガニの生息状況調査を行った.宮古島,多良間島,波照間島の3島におけるヤシガニの個体数は,宮古島では南部および北西部の海岸,多良間島では北部海岸,波照間島では北部および南西部の海岸で,それぞれ多く見られ,今後,これらの地域で特に資源の保全を図る必要があると思われた.特に,多良間島での個体数は極めて多く,夏期の調査では2kgを超える大型個体も複数観察された.また,宮古島と多良間島の海岸において,飛沫転石帯の転石下より甲長2cm未満の小型ヤシガニを複数個体(宮古島1個体,多良間島3個体)発見した.一方,南大東島では,ヤシガニ個体は洞穴内にてわずか1個体しか発見できず,資源量が激減している可能性が示唆された.2) 野外調査機会を利用したヤシガニ資源保全に関する教育啓発野外調査のために離島地域を訪れた際に,地域の博物館や公民館等(南大東島島まるごと館,宮古島市総博物館,多良間村ふるさと民俗学習館,波照間公民館)において,ヤシガニについての聞き取り調査を兼ねた談話を行った.特筆すべきは,宮古島市総合博物館との2度の協議により,2009年7月21日~8月30目に「ヤシガニと人の暮らし展」が開催されることが決定したことである.本研究の過程でヤシガニの様々な生態資料(写真,動画)が集まったので,それらを有効に活用することができると思われる.
著者
渡辺 美郎 平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A45-A55, 2011 (Released:2011-09-11)
参考文献数
16
被引用文献数
1

繁殖期と冬期のヒクイナ Porzana fusca の生息個体数を調査するために,兵庫県神戸市付近の約43.75km2内の河川や溜池,農地で2009年1月から6月に録音再生法をもちいて調査を行なった.冬期には, 190地点で鳴き声再生した結果,合計76羽(1月)と66羽(2月)のヒクイナが記録された.環境区分ごとの1月と2月の調査地点あたりの個体数は,中規模河川(N=55)が0.62羽と0.62羽,小規模河川(N=49)が0.18羽と0.29羽,池(N=78)が0.41羽と0.23羽,農地(N=7)が0.14羽と0.29羽であった.一方,繁殖期には,合計169地点で調査を行ない,合計81羽(5月)と45羽(6月)が記録された.環境区分ごとの5月と6月の調査地点あたりの個体数は,中規模河川(N=48)が0.79羽と0.46羽,小規模河川(N=49)が0.31羽と0.18羽,池(N=65)が0.38羽と0.17羽,農地(N=7)が0.38羽と0.38羽であった.農地を除く3環境区分の個体数は,冬期および繁殖期とも有意に異なっており,中規模河川がもっとも多く記録された.池の調査地における生息の有無と池の面積および池内の湿地性植物の面積を比較した.ヒクイナの生息が確認された池の面積(±SD)は,2.87±3.62ha(冬期)と2.69±3.20ha(繁殖期),生息が確認されなかった池は2.89±2.72ha(冬期)と3.16±3.16ha(繁殖期)で,両者の間には有意な違いは得られなかった.しかし,ヒクイナが生息していた池の湿地性植物の面積は,0.27±0.21ha(冬期)と0.28±0.22ha(繁殖期)で,生息していなかった池より湿地性植物の面積が有意に広かった.このことから,ヒクイナの生息には湿地性植物の面積が重要であることがわかった.調査地で,越冬期と繁殖期に70羽以上のヒクイナが記録されたのは,調査地には溜池が多くあることで,良好な生息環境が多く存在することが一因になっていると考えられる.
著者
小池 和彦 森屋 恭爾 新谷 良澄
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

C型慢性肝炎患者においては、いくつかの肝細胞内機能異常が見出さている。核を介した遺伝情報システム異常、小胞体や核における蛋白合成・輸送・分解の異常、そしてミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の異常である。私たちはこれまで、主にC型肝炎ウイルス(HCV)コア遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを用いて、HCVの肝発癌への直接的な作用を明らかにしてきた。発癌前の肝ではMAPKシグナル伝達経路が活性化され、HCVは細胞内の遺伝情報システムの異常をもたらすことが明らかとなった。一方、コア蛋白は肝において炎症不在下に酸化ストレス(ROS)発生を亢進させている。コア蛋白を発現している肝細胞ではミトコンドリア機能の異常が存在し、それが酸化ストレス産生に関与していることが明らかにされた。これまでのデータでは、ミトコンドリアのコンプレックス1が主な障害箇所であったが、今回、ミトコンドリア・シャペロンであるプロヒビチンを介してコンプレックス4の機能障害も引き起こし、酸化ストレスの増加へ繋がることも明らかとなった。今回、免疫抑制剤であるタクロリムスがコア蛋白によって引き起こされている肝細胞ミトコンドリア電子伝達系機能障害の改善を介して、脂肪酸増加→PPARα活性化→酸化ストレス増加→ミトコンドリア機能障害→脂肪酸増加という負のスパイラルを改善することが明らかになった。HCVを排除できないC型慢性肝炎患者における肝疾患進行抑制へ向けて重要な意義をもつと考えられる。
著者
芦野 訓和
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

現代社会においては、直接の契約当事者以外の者が関連しながら、複雑で立体的な法律関係を作り出していることは少なくない。本研究では、請負契約におけるそのような関与者である「下請負人」に焦点を当て、その者の法的地位について検討を行った。下請負人は、元請負契約においては直接の当事者ではなく、立法過程においても必ずしも意識はされていなかったが、多角的法律関係の関与者として、一定の要件を満たした場合には、法的地位を認めるべきである。
著者
小田 淳一
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

本報告はブレモンの構造主義的物語分析モデルを『千一夜物語』に適用したシロンヴァルのモティーフ索引から,人物間の報奨/懲罰という二項体系のモティーフ群をデータとして,それらの関係をネットワークで表すことを試みた.その結果,報奨/懲罰のような二項的関係性をネットワークによって明確に可視化出来ること,また次数中心性の出次/入次を,或る人物の動作主/受動主としての機能と読み替え得ることが明らかになった.
著者
二タ村 森 大川 晃次郎
出版者
一般社団法人日本エネルギー学会
雑誌
石炭科学会議発表論文集
巻号頁・発行日
no.30, pp.19-22, 1993-10-25

In the hydrogenolysis of trans-stilbene under nitrogen at 380℃, coal liquefaction residues (CLR) act as duplex hydrogen transfer agents donating their inherent hydrogens and shuttling ones from hydrogen donor solvents.