著者
大瀧龍 重安 哲也 浦上 美佐子 松野 浩嗣
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.308-318, 2011-01-15

本論文では,自然災害発生時に効果的に災害救援活動を支援することを目的とした被災情報提供システムについて検討する.具体的には,災害発生直後にもシステムの運用を可能とするために,少ない通信機材でネットワークを構成すること,ならびに,避難所の存在位置の偏りに影響を受けずにバックボーン回線を実現するための指向性アンテナを有する幹線基地局を適切に配置するアルゴリズムについて提案する.また,提案したアルゴリズムの有効性を評価するために,柳井市をモデルとしたネットワーク適用例を示した結果について報告する.This paper discusses the development of a disaster information system that effectively supports disaster relief activities. The proposed algorithm designs the backbone shelter links of wireless nodes so that shelter locations are not biased, enabling the operation of the disaster information system with a small number of operators. In order to clarify the effectiveness of the proposed algorithm, this paper reports results of sample network modeled on Yanai city, constructed by the proposed algorithm.
著者
赤坂 信
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

初年度は高垣(クネ)に関する一般的知見を得るために、北海道、山形県、長野県、島根県の事例を中心に現地踏査と文献収集をおこなった。次年度は関東地方、とくに千葉県北西部に位置する江戸川低地に分布するクネについて調査を実施した。松戸市北西部から流山市南部につづく江戸川低地には、農地(畑と水田)がひろがり、微高地に立地する農家が点在している。ほぼ矩形の農家の敷地のまわりに巡らされたクネと呼ばれる刈込まれた高い生垣(高さ4.5〜6m)がみられる。今回対象地とした南北2km東西1kmの範囲では約60か所(クネの跡が認められるものも含めて)のクネが分布していることがわかった。クネを構成している樹種は、江戸川に近い方と遠い方で異なることや南向きと北向きで異なる傾向がみられた。モチノキは至る所で用いられているが、ツバキも多用されている。イヌマキは寒さと乾燥に弱いため、北部や江戸川に近い方にはみられない。全方位ともすべてツバキというクネもあるが、方位によって樹種をかえているものがほとんどである。南側にモチノキ、北側にツバキあるいはケヤキ、そして枯れあがった部分の下にイヌマキを用いているものがみられる。農家は戦後に入植したところもあるが、古いところで150年から500年前からの入植という。クネの手入れは自分でやるところと植木職に委託するところがある。年1回の手入れ(刈込み)で植木職10人手間(1万6千円1人)というコストである。高い位置での作業なので、職人も若いもののなり手がいないということである。後継者の不足は同じような理由で島根県出雲地方でも同様であった。
著者
倉橋 正恵
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

世界最大規模を誇るボストン美術館浮世絵版画コレクションの中で、その大部分を占める歌川派役者絵のうち4850点を整理・考証・目録化した。さらに、コレクションのデータベースを構築し、当該館のHP上でのデータベース公開にデータを組み込む事によって世界的な浮世絵研究、歌舞伎研究の基礎を整え、今後の研究発展のための土台を築いた。
著者
吉村 徳重
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.37-68, 1960-07-31
著者
徳永 英明 田中 道治
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-11, 2004-05-30

本研究の目的は、知的障害児および健常児の自己意識について、自己の変容に対するイメージと理想の自己イメージに着目しながら、その様相を明らかにし、両イメージの関係を発達的に検討することにあった。語彙年齢をもとに区分された3段階の発達レベルの知的障害児および健常児にインタビューし、変容の自己イメージについては、内容領域、程度、重要度の観点から検討した。また、理想の自己イメージについては、内容領域、願望度の点から検討を加えた。その結果、知的障害児が『社会性』の面で、健常児が『能力・身体』の面で自己の変容および理想を認めやすいという特徴がみられた。また、健常児において、変容の程度-変容の重要度-理想の願望度が密接に関連し合っているのに対し、知的障害児においては、特に、変容の程度-理想の願望度で正の相関の傾向が示された。さらに、発達が進むにつれ、知的障害児の場合、『社会性』のもつ意味がより重要になってくることが示唆された。
著者
青木 薫
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.46-48, 2001-01-05
著者
金子 晃
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は偏微分方程式とトモグラフィに関連した数学の問題の理論的研究と計算機を援用した実践研究を主題とした継続的なものであり,今期の科学研究費受領期間中においては,主として以下のような研究を行い,成果を得た.(1)冪型の非線型項を持つ非線型熱方程式に対する藤田型の爆発の臨界指数は,錐の開きを識別できたが,放物型や柱状などのさらに狭い領域に対しては,有界領域との区別さえできない.これに対し,対数型の非線型項を導入すると,これらが区別できることを期待して,その一般論を構築した.特に,log uと1/log uを補間した函数logg uのp冪とuの積の形の非線型項に対して,任意の領域においてpに対する爆発の臨界指数が確定することを示した.具体的な領域に対するこの新しい臨界指数の決定は将来の課題として残された.(2)平面2値画像の2方向投影データからの再構成は,ほとんどの場合に一意性が無く,得られる解の関係や,よい条件を持つ解の探索はあまり明らかにされていない.本研究では,スイッチング演算により解の集合に有向グラフの構造を与え,その諸性質を調べることで,この問題への新たな接近法を開発した.こうして導入されたスイッチンググラフについて,さまざまな連結性,特にハミルトン性など,多くの興味深い結果が得られた.また,多くの未解決予想も得られ,新しい研究分野を拓いた.(3)代数幾何符号を画像に組み込む方法を発展させ,自動修復画像やマスク,電子透かしへの応用等を与えた.(4)逆畳み込みはトモグラフィの反転公式と同様,代表的な非適切問題である.ある種の正則化計算を導入して逆畳み込みを計算することにより,焦点のずれた実写写真の焦点補正を行い,この手法の実用性を確認した.本研究は,適切な逆畳み込みのパラメータを自動検出するところまで進めてから発表予定である.
著者
吉田 邦彦 早川 和男 亘理 格 人見 剛 遠藤 乾 藤谷 武史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

第1は、平成大合併の動きとの関連での中山間地の動向調査で、とくに合併を拒否した基礎自治体に留意して、(1)平成大合併の経緯ないし(2)その理由の検討(日米で合併が説かれる際の相違)、(3)居住福祉に及ぼす影響、(4)合併が拒否される場合の根拠、ないしその際の苦境などを含めて、成果報告をした。空洞化する農林業、地方都市の再生のあり方も併せて検討した。また第2に、それと関連して、自治体の財政破綻・貧困地区の再生と「新たな公共」の担い手としての非営利団体の研究を行い、破綻自治体問題の居住福祉に及ぼす影響、今後の対策(その際の各種非営利団体の役割)などにつき、シンポを企画し、労働者協同組合とも連携して、草の根の居住福祉のための非営利団体の活動の調査を通じて、成果も発表し、さらに、「新たな公共」を担う小規模非営利団体の活動を基礎付ける立法化(「協同労働の協同組合法」)に着目して、それを学問理論的・実践的な検討を行った。さらに第3に、財政難の中山間地がこの時期も被災したことに鑑みて(能登震災、中越沖地震)、そこからの再生のあり方を検討した。すなわち、阪神大震災と比較した中山間地の震災の特性、近時の平成大合併の影響、住宅補償の進捗度、コミュニティ維持の確保の検証、商店街の復興の展望など調査しており、今後の課題として残したい。最後に第4として、グローバリズムと地方自治との交錯(補完性原理との関係)を扱い、本研究が注目する補完性原理は、EUの統治システムであり、それに倣う広域行政のシステムの構築をも、本研究は目的とした。そして、グローバリズムの進行とともに、地方自治と国際法ないし国際的取り決めとの交錯現象が、注目されるに至っており、そうした「国際地方自治論」と言われる問題に関する学会に参加して示唆を得ており、その成果をまとめたい。
著者
堀江 秀樹
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.135-138, 2008-01-15
被引用文献数
1

ホウレンソウの葉の表面に白色で球状の穎粒が頻繁に観察される.異物ではないかとの消費者の疑問に答えるため,解析を行った.本頼粒の直径は0.1〜0.2mm程度であり,葉の表面から出た突起に接続していた.白色穎粒は水には溶けず,クロロフォルム/メタノールで破壊された.硫酸アンモニウム溶液中で球にくぼみが観察された.水分は約90%含まれていた.このことから,本穎粒は,脂溶性の半透膜中に水溶液が閉じこめられたものと推定できる.本顆粒の水抽出液を分析した結果,遊離糖は含まれず,シュウ酸,クエン酸,リンゴ酸を含んでいた.
著者
山崎 岳
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

明朝と莫朝大越との外交に関わる中越両国の文献を収集し、これを両国国境をまたぐ人々の活動に焦点をあてて読み解くことで、これまでの政府間の外交関係史では注目されていなかった国境地帯の基層社会の実態を明らかにした。特に、現代中国で壮族、ヴェトナムでヌン族やタイー族等に分類されるタイ系の言語を母語とする人々が、歴史的にも両国間関係において重要な役割を果たしてきたことが立証された。
著者
三宮 真智子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は, 人間の情報処理に対する科学的探究心の育成を重視した問題解決志向のコミュニケーション学習プログラムの開発を目指し, 次の3つの成果を上げた。(1) 一般社会人として必要なコミュニケーション能力を構成する知識, スキルを体系化した。(2) ミスコミュニケーション・データベースを試作した。(3) コミュニケーションがうまくいったり失敗したりするのはなぜなのかを科学的に探究する学習プログラムを開発した