著者
松木 武彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

日本列島と朝鮮半島における紀元前5世紀頃から紀元後7世紀までの武器・武具の発達過程を考古資料によってあとづけ、それぞれの地域における武器組成の変化から戦術および軍事組織の変遷過程を考察した。その結果、日本列島では紀元後1世紀以降に武器組成が単純化して儀器化が著しくなるのに対し、朝鮮半島では武器組成が複雑さを保ち、騎馬戦用の武器も含みながら日本列島よりは実戦的な発達を示すことが明らかになった。その背景として、北部の騎馬勢力との軍事的緊張が継続した朝鮮半島と、そこから離れた島嶼部であった日本列島との間の政治的・軍事的環境の違いを想定した。さらに、日本列島と朝鮮半島の武器・武具の組成・技術・形態を時期ごとに比較し、その変化をたどった。その結果、両地域の武器・武具は当初は共通するが、紀元後1世紀から4世紀にかけて親縁度が低くなり、5世紀に再び接近し、6世紀にはまた親縁度が低下する状況がみてとれた。その背景として、5世紀に両地域の政治勢力間で、軍事的側面を含む相互交流がもっとも強まったという歴史的事情を推測した。最後に、両地域の武器の比較を象徴性や認知の側面から深化させ、組成の差、意匠の選択、形態パターンという、言説的なものから暗黙的なものにいたるさまざまな位相での差異が、全体として「地域色」と総称される器物の空間的な変異を構成していることを分析し、それが両地域間のアイデンティティの形成に重要な影響を与えた可能性を指摘した。
著者
月田 承一郎 月田 早智子
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

初年度においてケ-ジド化合物を用いた凍結システムが完成したので、2年度は、このシステムの評価も兼ねて、2種類の実験を行った。第一の実験は、ATP非存在下でアクチンフィラメントにフルデコレ-ションしたミオシンサブフラグメント1(S1)がATP濃度の急激な上昇に伴い、どのようにしてアクチンフィラメントから離れていくかを追跡しようというものである。ケ-ジドATP存在下でS1のアクチンフィラメントへの結合様式があまり変わらないのを確認したのち、このようなサンプルに光を照射し、その後の変化をディ-プエッチングレプリカ像のコマ取り写真として解析した。その結果、S1が光照射後15ミリ秒あたりからアクチンフィラメントから離脱しはじめ、その結合様式を大きく変えていく様子を初めて捉えることに成功した。得られた像が持つ意味を正確に理解するためには、まだ、多くの実験を進めなくてはならないと思われるが、少なくともこの実験によって、我々の開発したシステムにより、滑り運動系における蛋白質相互作用をきわめて高時間分解能の電子顕微鏡像として追跡できるという確信が得られた。第二の実験は、無負荷の状態で最高速度で収縮している瞬間の単離筋原線維を急速凍結し、そのクロスブリッジの様子を観察しようとするものである。この収縮は極めて短時間で終わってしまうため、ケ-ジド化合物のシステムを用いる必要がある。現在、光照射後最大収縮速度で短縮中の筋原線維の急速凍結に成功し、そのディ-プエッチングレプリカ像を得つつある。このような方法により得られる像が筋収縮の分子機構を考えるうえで重要な情報を与えてくれるものと期持出来る。以上、我々が開発したケ-ジド化合物を利用した急速凍結システムは、ほぼ完成しており、このシステムがきわめて強力な研究手段となりうることが証明された。
著者
澤田 紘次
出版者
八戸工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

本研究は、結露に関するアンケート調査、結露被害の実地調査、室内の温湿度の測定調査からなっている。第1章では、アンケート調査結果について報告した。公営集合住宅約1000戸を対象とし、回収率は61%である。調査した住棟は建設年次により、平面タイプ、断熱仕様が異なり、6種類に分類される。アンケート調査結果によると、押入に被害の多い平面タイプと壁に被害の多い断熱仕様の住棟があった。アンケート項目で、結露に関係が深いのは、建物の種別、住戸位置、家族数などである。使用暖房器具と結露との関係は明確ではなかった。結露で困っていることの内容の記述では、73%もの住戸が切々と訴えている。窓が凍って開かない、窓からの流下水で畳が濡れる(33%)、押入の湿気・カビ(15%)、壁のカビ(17%)などが多い。第2章では結露被害の実地調査結果について撮影した写真を中心にして報告した。被害を訴えている住戸では、いずれも黒いカビが発生しており、生活に支障をきたすものであった。調査した住戸に共通していることは、換気に対する意識の低さである。第3章では、室内の温湿度の測定結果について報告した。昭和63年1月から2月にかけて、6戸について各一週間測定した。6戸を通じて、室内が常識を越えた高湿度になっている例は無かった。窓上の壁・梁型部分が断熱されていないタイプの住戸の中で、結露・カビが発生している住戸と発生していない住戸があった。前者は、開放型ストーブを使っていた。室内の露点温度は他の住戸に比較して高くないが、室温が居間でも7〜15℃と低く、このことが結露の要因である。後者では、北和室の窓前にFF式ストーブを置き、襖・扉を全て開放して、北側の室温度を高く保ち、非暖房室となる場所を無くしていた。全体の調査を通じて、同種の住棟でも、住まい方により結露発生に差があることが分った。住まい方と結露との関係について分析を続けたい。
著者
竹内 康 久保 和幸 西澤 辰男 姫野 賢治 松井 邦人 丸山 暉彦 前川 亮太 神谷 恵三
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高速で移動しながら連続的にたわみを計測する試験機は, 各国で開発が進められており,それを用いて舗装の支持性能を評価した結果は,舗装の維持管理に活用されつつある。 このような試験機の開発にあたり, 高速で移動する車両により計測されるたわみの特性を把握することを目的として,既存の車両に変位計を取り付け,いくつかの試験路において連続たわみの測定を行った。また,収集したデータを用いて舗装の健全性を評価する方法について検討を行った. 本研究では, 載荷位置直下のたわみと載荷位置から 45cm 離れた位置のたわみの差を用いて,舗装表面付近の健全性を評価する方法を提案し,比較的たわみの大きい健全な舗装に対して FWD 試験で得られるたわみと相関の高い結果が得られることを確認した。
著者
開發 一郎 山中 勤 近藤 昭彦 小野寺 真一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1998年から2002年までの河川水文データーの内、2001年と2002年のデータはまだ補正解析を要したので、1998年から2000年までの河川水文データを集中的に解析した。その結果、4月から10月までに流出が見られ、降雨に対する流出のレスポンスは明確であり、3月・4月には降雨-流出や凍土融解-流出という寒冷乾燥地域の水文特性を把握した。また、既存資料によるセルベ川流域の流出解析と水収支計算から降水量の約60%が蒸発散であった。自動水循環ステーション(WaCS)モニタリングを2002年6月から開始し、データ処理と現象解析を実施したが、2002年末からWaCSの電源系の故障のため解析に耐えうるデータがその後十分取得できなかった。2002年夏のデータ解析から、降雨に対応して4月から11月までの間が地中水循環の活発な時期であり、2003年8月には流域内の河川・湧水の集中水文調査(土壌ほかの一般調査を含む)から、降水量の多かった2003年の河川流量は2002年に比べて源流域で3倍,流下距離が30kmの下流域で数十倍であったことや流下距離が10km以前の河川は地下水流出域,それ以降は地下水涵養域であることおよび主流路に対して30km付近では周囲からの地下水が流出している場となっていることが示唆された。セルベ川とトーラー川の地表水・地中水の水質分析と同位体比分析の結果から、セルベ川流域の浅層地下水の平均対流時間が約1.3年でトーラー川のそれは約30年であることが分かった。モンゴル国自然環境省の自然環境モニタリングステーションのトーラー川流域からモンゴル全土にかけての土壌水分と地表面植生のルーチンデータの時空間解析を行い、降水量の植生への影響を明らかにし、今後の衛星リモートセンシングのための基本解析結果を得た。
著者
堀 彰 本堂 武夫 成田 英器 深澤 倫子 堀 彰
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

ラマン散乱および中性子非弾性散乱スペクトルに見られる南極の氷床コア氷の特徴は、プロトンの秩序化を反映すると解釈されてきた。この秩序化を結晶構造から明らかにすることを念頭に、本研究では、主にX線回折法を用いて南極深層氷の結晶構造に関する以下の研究を行った。(1)X線回折法による結晶組織の評価X線回折法によりVostok深層コアの氷試料ロッキング・カーブを測定し、その幅から転位密度を求めた。転位密度は深さとともに減少し、最も深い3600m以深の氷の転位密度は10^8 1/m^2程度の低い値を示した。この氷が底部の湖の水が再凍結して成長したためであると考えられる。(2)粉末X線回折法による結晶構造の評価粉末X線回折測定では試料深さ依存性は見られなかった。また、プロトンが秩序化した秩序相(氷XI)に特有の(1121)反射の測定結果は、強度が非常に弱く、強力な光源である放射光を用いた実験が必要である。また、X線散漫散乱測定も今後の課題である。(3)粉末X線回折法による格子定数測定粉末X線回折測定データをリートベルト法で解析し、各深度の氷の格子定数を求めた。南極氷床氷は実験室の氷よりも格子定数が大きく、かつ深さの増大とともに格子定数も増加した。粉末化による残留応力の開放と、空気ハイドレートの解離で生じた空気の取り込みが原因として考えられる。(4)ラマン散乱による変形を受けた氷の格子振動モードの測定氷試料を変形させてラマン散乱測定を行ったが、スペクトルには特に変化は観測されなかったことから、南極氷床氷の特徴は氷の変形によるものではないと考えられる。(5)クラスレート・ハイドレートの生成過程と氷の結晶構造分子動力学シミュレーションの結果、気体分子は、これまで考えられてきた格子間位置(Tu)を安定位置とするのではなく、水素結合の間に入り込んで部分的に特有の構造を作ることが明らかになった。
著者
渡部 潤一 青木 和光 河北 秀世
出版者
国立天文台
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

太陽系天体の中でも、低温で凍ったまま46億年間経過している彗星は原始太陽系の化石である。太陽に近づくと熱によりその成分を蒸発させることから、その成分分析によりどの程度の温度で氷結したかが推定できるが、一般に上限値に限られ、また揮発成分を失った短周期彗星には使えない。本研究では、低温領域で温度と明確な相関がある水素原子の核スピン状態の差:オルソ・パラ比によって彗星氷結温度を求めようとしたものである。水分子でこの方法を適用しようとすると、地球大気の水蒸気が邪魔となる欠点があったため、水素原子が三つあって彗星に含まれるアンモニアに注目した。アンモニアは蒸発後、光解離により、NH2という分子となって、母分子のアンモニアの情報を保ちながら、オルソ、パラそれぞれの輝線を発する。高分散分光で輝線分離ができれば、オルソ・パラ比を知ることができ、さらにはアンモニアのオルソ・パラ比を推定できる。平成16年度は、国立天文台ハワイ観測所の口径8mすばる望遠鏡の高分散分光器HDSを用いた観測結果をもとに、ヨーロッパのデータも用いながら、本研究のまとめを行った。これによって、7つの彗星についてのスピン温度がすべて30K前後に集中していることがはっきりした。この解釈としては、彗星が誕生した場所の温度を示しているという可能性の他に、元々アンモニア分子が誕生した原始太陽系星雲のもととなった分子雲の温度を示している可能性もある。これらの可能性のどちらが正しいかを検証するためには、アンモニア分子以外の観測を行う必要がある。そこでわれわれは急遽メタン分子のオルソ・パラ比を考慮に入れ、すばる望遠鏡などによる観測を行ったところ、これについてもアンモニア同様30Kの温度を示すことが判明した。現在、これらのデータを慎重に検討しているところであり、本研究によって、当初の目的よりも先に進んでしまったことは、望外の喜ばしい結果である。
著者
安田 二郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

研究課題の一環として、許嵩撰『健康実録』(全二〇巻)に対して総合的な分析と考察を試みた。明らかにした主たる論点は、以下のごとくである。1.『健康実録』は、六朝史に関する基礎的知識も不十分な許崇が、基づく文献を精読することもなく、忽忽裏にあらわしたハサミとノリの編纂物にほかならず、しかも、構成上の調整も誤りの訂正も未遂行のままの、未完の稿本とこそ捉えられなければならない。2.各王朝の興亡は予じめ天によって決められているという定命論、それと密接に関連する、帝王を生み出す土地は固定していないという王気移動論が、全篇を貫ぬく根幹のパラダイムである。3.許嵩は、江陵を都とした後梁王朝を、王気が健康から去って長安へ帰着する天の定めの予兆として捉え、独自の意義を付与している。4.同書撰述の動機と目的は、玄宗に拮抗して即位した粛宗の正当性と、その即位の地たる霊武が、長安に代る唐王朝の新帝都たるべきを、王気移動論に基づいて主張することにあった。5.しかしながら、その主張に反して、至徳二載(757A.D.)年末、長安は帝都として再確定を見ることとなり、このため許嵩は、断筆を余儀なくされた。6.『健康実録』は、余りにも現代史に過ぎた歴史叙述にはかならず、自らが革新する思想をもって余りにも直哉に自己投企し、それ故に精神的に爆死せねばならなかった、唐代中期の一知識人許嵩の墓標という言い方も、決して的をはずしてはいない。
著者
新宮 学
出版者
山形大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

これまでの国内での文献調査に加えて、北京の国家図書館や台湾の国家図書館で行った文献調査により得られた新たな知見をもとに、研究成果の一部を論文「陳建の『皇明資治通紀』の禁書とその続編出版(一)」としてを公表した。論文では、第1に、皇明通紀の成り立ちと原刻本、および陳建の経歴と執筆意図について明らかにした。第2に、明朝における禁書指定の経緯について考察した。第3に、これまでの文献調査をもとに皇明通紀に関係する続編の全体像についてその概要を紹介するとともに、皇明通紀とその続編が盛んに出版される明末の社会背景やその読者層についても考察を加えた。皇明通紀は、元末至正十一年(1351)以来、王朝創設期の洪武40年間のことを記した「皇明啓運録」と、永楽から正徳年間にいたる8代124年間のことを記した続編とを併せて「通紀」の名を冠して合刻したものである。嘉靖三十四年(1555)に家刻本として刊行された。代々、科挙の郷試合格者(挙人)を輩出する家に育ったとはいえ、地方官の官歴しかない広東の陳建が本書を著したのは、祖宗の如き「盛世」に引き戻すべく社会秩序の再建を目指そうとする経世の志に基づくものであった。本書が禁書に指定されたのは、隆慶五年(1571)のことであり、この時期木版印刷による出版が空前の規模で拡大傾向を示す中で、王朝側が自らのプライオリティとしての「国史」編纂と出版に対して危機感を抱いたからであると考えられる。これまで嘉靖原刻本の存在は十分に知られていなかったが、台湾の国家図書館に収蔵する42巻本、12冊が、嘉靖原刻本の完本であることを現地での文献調査により確認した。ただ目録『国家図書館善本書志初編』では、『新刊校正皇明資治通紀』と著録されているが、本書のどこにも「新刊校正」と題する記載は見えず、かえって「皇明歴朝資治通紀」の題簽5件の存在を確認しえたので、『皇明歴朝資治通紀』前編八巻後編三十四巻と著録すべきである。またその残欠本(存13巻、5冊)が、東京大学東洋文化研究所の大木文庫に所蔵されていることを新たに発見した。
著者
寺島 修一
出版者
武庫川女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

歌学書所引『万葉集』データベースの作成を目指し、以下の作業を行った。歌学書本文の電子テキスト化を進行した。電子テキスト化を終えたのは、『俊頼髄脳』(日本歌学大系本、京大本「無名抄」、関大本「俊秘抄」、松平文庫本「唯独自見抄」)『奥義抄』(日本歌学大系本、大東急文庫本)『袖中抄』(日本歌学大系本、歌論歌学集成本)『八雲御抄』(伝伏見院筆本)である。これらは底本とそれに対する校異という形を取らず、同一の歌学書であっても伝本ごとに独立した本文テキストとしてある。このような形にしたのはデータベースとして完成したときに伝本ごとの本文が独立して参照できるようにするためである。データの形式は基本的に国文学研究資料館の「原本テキストデータベース」の初期入力に準じて整形してある。また、新編国歌大観所収の『万葉集』から西本願寺本訓を抽出し、電子化テキストとして整形した。歌学書本文から『万葉集』歌を抽出する際に参照する本文としては、公開されているものの中では西本願寺本訓が最も適当であると判断した。これらのデータに基づき歌学書所引『万葉集』のデータベースの作成に着手した。歌学書各伝本ごとに万葉歌を抽出し、『万葉集』西本願寺本訓と対応させた。この作業過程において類歌検索プログラムを用いて自動化を試み、その結果に対してさらに手を加えた。類歌検索プログラムは古典文学データベースの研究会において手ほどきを受けたものである。以上のとおり、データベース化の基礎作業を進行させた。
著者
渕上 倫子 寺本 あい
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

冷凍耐性の悪い食品のテクスチャー改善を目的として、ゲル状食品(卵豆腐、寒天、高粘弾性寒天、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、κ-カラギーナン・ローカストビーンガム混合、カードラン、脱アシル型ジェラン、ネイティブ型ジェランなどのゲル)および卵黄を約-20℃、100〜686MPaの高圧力下(高圧冷凍後大気圧下の-30℃で保存)、または、大気圧下の冷凍庫中(-20℃、-30℃、-80℃)で冷凍し、解凍後の外観、離水量、物性(ゲル:クリープメータによる破断強度解析、卵黄:粘弾性測定)と微細構造(クライオ走査電子顕微鏡観察)を比較した。また、凍害防御物質として各種糖類(蔗糖、トレハロース、グルコース、糖アルコール等)の役割について検討した。更に、-20℃で高圧力処理中の試料の温度変化を測定することにより、-20℃での液相→氷Iへの相転移の挙動を検討した。その結果、200〜400MPaでは-20℃でも凍っておらず、圧力解除時に急速な試料の温度上昇がみられた。過冷却温度が低く圧力解除時に短時間に凍結し、微細な氷結晶が多数生成したため、圧力移動凍結品は良好であった。大気圧下や100、686MPaでは過冷却温度が高く、少ない核を中心として大きな結晶ができたため、離水も多く解凍後の品質が悪化した。5%、10%、20%と糖濃度の増加に伴い凍結点が低下し、解凍後の物性と微細構造が良好となったが、糖の種類により大差なかった。また、ゲルの種類により冷凍耐性や物性変化の様相が異なった。カードランやネイティブ型ジェランガム(脱アシル型ジェランガムは悪い)、ι-カラギーナンのゲルは冷凍耐性が良く、普通の寒天より高粘弾性寒天のほうが離水が少なく良好であった。κ-カラギーナンにローカストビーンガムを添加すると冷凍耐性が向上した。卵黄は200MPa以上でタンパク質の変性による粘度上昇が顕著であったが、蔗糖添加により卵黄の流動性が増し、冷凍および高圧力によるレオロジー変化が抑えられた。
著者
樋口 雄三 小谷 泰則 樋口 博信 峰岸 由紀子
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.278-281, 1996-09-01

気功経験者と未経験者を被験者とし、30分間の瞑想を行い、その前後における内分泌及び免疫能の変化を測定した。血漿コルチゾール、アドレナリン、β-エンドルフィン、ドーパミンは減少した。β-エンドルフィンは、経験者の一部において増加した例がみられた。ナチュラルキラー細胞活性は、有意な変化はみられなかった。これらのことから瞑想によって交感神経活動が低下し、脳の活動の低下しているものと考えられる。
著者
大賀 睦夫
出版者
香川大学
雑誌
香川大学經濟論叢 (ISSN:03893030)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.1-32, 2004-03-01
著者
奥谷 猛 中田 善徳 日野 雅夫
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会学術論文誌 : Nippon Seramikkusu Kyokai gakujutsu ronbunshi (ISSN:18821022)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1152, pp.709-711, 1991-08-01
被引用文献数
1 1

The chlorination of a mixture of rice hull ashes and carbon containing alkaline and alkaline earth salts was investigated by FT-IR-PAS. It was thought that the relative ratio of totally symmetric SiO_4 stretching vibration (v_1) to antisymmetric SiO_4 degenerate stretching vibration (v_3) in infrared frequencies for SiO_2 whose constituent oxygen atoms occupy the corners of a tetra-hedron shows structural changes of SiO_2 network. The results of v_1/v_3 of SiO_2 before and after chlorination showed that the values of v_1/v_3 increased and the chlorination was accelerated because K^+ increased. The v_1/v_3 of SiO_2 by addition of Na^+, Mg^<2+> and Ca^<2+> was smaller than that of K^+ and these additives did not accelerate the chlorination. KCl, NaCl, MgCl_2 and CaCl_2 which formed during the chlorination melted at 900℃.
著者
米田 文孝 中谷 伸生 長谷 洋一 木庭 元晴 原田 正俊
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

従来, インド国内の石窟寺院の造営時期は前期石窟と後期石窟とに明確に区分され, その間に造営中断期を設定して論説されてきました。しかし, 本研究で造営中断期に塔院(礼拝堂)と僧院を同一窟内に造営する事例を確認し, 5世紀以降の後期石窟で主流となる先駆的形態の出現確認と, その結果として造営中断期の設定自体の再検討という, 重要な成果を獲得しました。あわせて, 看過されていた中小石窟の現状報告が保存・修復の必要性を提起し, 保存修復や復元事業の契機になることも期待できます。
著者
羽鳥 浩三 長岡 正範 赤居 正美 鈴木 康司 服部 信孝
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

パーキンソン病(PD)のリハビリテーション(リハ)の効果を明らかにするためには、PD の動作緩慢や無動などの運動障害を客観的に評価することが求められる。近年、 PD の疲労感、うつ状態などの非運動症状が運動症状に少なからず影響をおよぼすと考えられる。 私たちはこのような背景から非運動症状の影響を受けにくい運動障害を検討するため、随意運動と反射の複合運動である嚥下障害に着目した。口に入れた食塊は、口から咽頭を経由して食道に送り込まれる。私たちは嚥下造影検査を用いて咽頭期の嚥下運動に密接に関わる舌骨の運動を PD と健常対照(NC)で比較検討した。その結果、PD では NC に比し咽頭期での舌骨の運動範囲の狭小化と平均移動速度の遅延を認めた。また、この結果は PD の日常生活動作の指標となる Unified Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS)の動作緩慢に関する評価項目と正相関を示した。 本結果は、咽頭期の嚥下において PD では舌骨の運動障害が存在し、この運動障害は PD の動作緩慢と関連する可能性を示唆する。このことは、PD の嚥下障害に対する抗 PD薬の調整やリハの評価に対してさらに有用な情報を提供する可能性を指摘した。
著者
奥谷 昌之 村上 健司
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

近年、製膜技術は様々な方式が開発・実用化されているが、その多くは高温加熱や真空を要する。最近は低融点材料基板上への製膜の需要が多く、本研究グループでは沿面放電技術に着目した。沿面放電は誘電体バリア放電に分類され、常温・大気圧下で高エネルギープラズマが平面上に発生することが特徴である。本研究では、この技術を酸化亜鉛の製膜へ応用するとともに、ダイレクトパターニングへの利用を試みた。