著者
ブランディ シェリル・リン 内藤 明子
出版者
愛知医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

1.今年度の調査期間:平成15年6月2.対象者及びデータ収集:今年度は、本研究の最終対象者である私立病院看護部長1名に面接調査を行った。前年度同様、電話連絡及び依頼文書を郵送し、了解を得た後、半構成面接を行った。面接はテープに録音され、研究者によりフィールドノートが記載された。約2年間の調査期間に合計16名の面接調査が終了し、データ飽和状態となり、調査を終了した。3.データ分析及び結果:シャッツマンのグラウンデッドセオリーテクニックをデータ分析に用い、複数のステップを経て中核次元を導いた。次いで、ディメンションの有する特性あるいは特徴について分析し、各次元と特性が、全体像を表す概念(その他すべてを説明しうる性質をもつ次元)になる要件を有すかどうか吟味した。最後の分析段階で、データを、内容、条件、行動、結果からなる説明表に整理した。各次元あるいは概念は、対象者からの実際のデータ、及び看護・管理・フェミニストの文献から詳細に説明可能、且つ支持可能である。本研究を代表する全体概念は「自己評価」及びその特性である「自信」であった。J.B.ミラーの「真実性(authenticity)」の概念が、本研究の全体概念の理解に最適であり、日本の女性看護管理者が、仕事へ取り組みながら真実性を見出した経緯を理解することが、今後の日本の看護管理実践と教育の向上に役立つと考えられる。4.研究成果の公表:本研究の初期の結果は、2003年11月3日に、カナダ・トロントで行われた第37回シグマ・セタ・タウ国際大会において、ポスター及び口演発表で報告された。最終結果については、2004年4月30日〜5月4日に、カナダ・バンフで行われる健康に関する質的研究学会において、口演発表される予定である。なお、米国の『看護管理学雑誌』への投稿準備中である。
著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.A11-A18, 2007

環境省が行なった「ガンカモ科鳥類の生息調査」の結果と気象庁による積雪の深さと最低気温の記録をもちいて北海道,東北地方,中部地方日本海側で越冬するハクチョウ類とカモ類の越冬数におよぼす積雪や気温の影響について解析した.北海道のカモ類を除き,ハクチョウ類もカモ類も年々記録数が増加する傾向があった.気象要因については,東北および中部地方の日本海側の地域では,ハクチョウ類は気温の,カモ類は積雪の影響を強く受けることがわかった.気温は開水面の凍結を通してねぐらや休息地の状況に影響を与え,積雪は水田などの採食地での食物の採りやすさに影響を与えると考えられる.したがって,ハクチョウ類は給餌への依存度が高く,止水域をおもな生息地としているために気温の影響を強く受け,カモ類は,水田などが重要な採食地になっているので,積雪による影響を強く受けると考えられる.
著者
伊藤 俊一
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

・室町幕府は、設立当初より寺社本所領や遠隔地武家領の保護という土地所有秩序の維持・再建を目指していたが、内乱の継続により、前線の守護に権限を与えざるを得ず、政策が実施されないという問題を抱えていた。・守護の在京は南北朝内乱期当初より断続的に見られるが、貞治年間以降の在京は、在京が継続すると共に、在京奉行人の登場に象徴される守護の在京政務機構の整備を伴っており、それ以前とは質が違う。・在京奉行人は、人夫や兵根米の徴収、役夫工米や即位段銭の徴収、寺社本所領をめぐる紛争処理などの業務を担当した。・在京奉行人の登場により、寺社本所領主はこのルートを通じて、所領・所役の問題を直接に守護へ訴えることができるようになる。守護関係者と寺社本所関係者との間の日常的な接触も増える。・守護の在京政務機構の登場により、室町幕府の命令が守護によって遵行されないという問題に一定の解決がもたらされ、室町期荘園制の秩序が安定した。・守護在京制の確立により、京都は幕府を中心に、寺社・貴族などの諸権門、各地方への足がかりを持つ守護とその配下が集住し、利害を調整する場となった。そのような「在京人」社会を統御する存在として「室町殿」が立ち現れたと考えられる。・以上の成果は、室町期荘園制の成り立ちと室町幕府の性格を再考する重要な契機と成り得る。
著者
佐藤 和夫 井谷 惠子 橋本 紀子 木村 涼子 小山 静子 片岡 洋子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、日本が男女共同参画社会をめざすためには、男女共学、共修がどのように実施されるべきかについて、高校を対象に分析検討を行った。男女共学、共修は男女平等教育にとって必要な基礎的条件ではあるが、隠れたカリキュラムにおけるジェンダーに無自覚なまま共学、共修を実施しても、共学、共修がただちに男女平等教育には結びつかない。そのため、男女共学や共修の現状を明らかにしながら、男女平等をつくるための共学、共修とはどうあるべきなのかについて、以下の3つの調査領域における研究において析出した。1,福島県の男女共学化および共修の現状調査福島県は、男女共同参画社会の実現のための施策の一環として、長らく残っていた別学高校をすべて共学化した。その共学化実現過程や高校の現状について、聞き取りと観察および質問紙調査を組み合わせて分析、考察した。2,関西(大阪)の私立高校の共学化戦略と共学、別学の現状調査福島県とは対照的に公立高校はすべて共学だった大阪府では、私立高校が別学校を提供してきた。近年、共学化が進んでいる大阪の私立学校での別学、共学の経営戦略および生徒への質問紙調査によって、共学、別学の比較検討を行った。3,高校での体育共習の指導場面の観察調査男女共修の高校の体育の授業場面において、教師の声かけが生徒が男子か女子かで異なること、そこに教師のジェンダー観があらわれ、ジェンダーの利用と再生産が行われていることなどについて、授業観察の分析を行った。
著者
堀 準一 小椋 正
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

日本人一般小児に顎関節症がどの程度の発症頻度があるかを鹿児島大学のグループが1984年に調査した結果によると9.8%(10〜18才)であった。すなわち,10人に1人の割合で三大症状(顎関節雑音,顎関節部疼痛,開口障害)のうちどれか一つの症状があることが解った。また,顎関節症の初発症状は顎関節雑音であり,初発期は中学生で高校生になると激増することも解った。その後,多くの研究者による顎関節症の発症頻度についての報告がなされ,この疾患が増加傾向にあるといわれているが,調査の方法(アンケート調査,問診,臨床診査など)や症状(前期三大症状の他,頭痛や異常顎運動など)の取り扱い方の違いなどのため比較出来るものがなく,増加しているかどうかは解っていなかった。そこで今回著者らは,顎関節症の発症頻度が日本人一般小児において8年前より増加しているかどうかを同一の方法論によって確かめることにした。また,顎関節症の発症頻度に地域差や環境差があるかどうかを確認するために,東京都と8年前に調査した鹿児島市において行った。その結果によると,小学生(5,6年生)2.0%から8.0%,中学生8.1%から12.5%,高校生12.0%から17.2%へと全てにおいて増加していることが解った。さらに,顎関節症の発症頻度は東京都内中学生11.9%に対し,鹿児島市内中学生12.5%で,東京都内高校生17.6%に対し,鹿児島市内高校生は17.2%と殆ど差がなかった。しかし,東京都内と鹿児島市内の中学生,高校生ともに顎関節症の発症頻度は男子よりも女子が高頻度を示したが,統計的な有意差は示さなかった。以上のように,若年者顎関節症は地域差はないものの増加傾向にあることが確認されたことを考えると,この疾患の予防法を早期に確立する必要に迫られている事が解る。今後,この研究を継続し予防法を確立する予定である。
著者
小野 裕次郎 名児耶 厚
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.26, pp.336-337, 2010-08-21

東京都内の私立高校において,高校受験雑誌に掲載されている情報をもとに分析を行った.まずは,全サンプルを使用して分析を行ったが特筆すべき構造は発見できなかった.そこで,高校のデータはいくつかのサンプル群毎に異なった構造を持つと仮定し,男子校・女子高・共学校にデータを分割し解析を行った.その結果,男子校・女子高等それぞれのデータで有意な構造が発見できた.本研究では,高等学校を解析する上での分類の必要性と合わせて,男子校・女子高等見出された有意な構造について述べる.
著者
亀田 温子 池谷 寿夫 遠藤 恵子 入江 直子
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1 公立高校の男女共学進行状況の動向研究・戦後の男女共学制度実施の中で、現在も公立高校の男女別学率が高いのは、宮城県、福島県、群馬県、栃木県、埼玉県など、北関東、東北地方の県である。しかし、1990年代以降15歳人口減少期に入り高校再編成計画のなかで、男女共学化への動きが具体的に進行している。本研究では、その実態をとらえた。・福島県については、1994年から始まった公立高校の男女共学化10年計画により2003年で、すべて男女共学校となった。その背景、実施のプロセス、推進に向けた市民運動の力、を分析。・宮城県、群馬県については、教育委員会の明確な方針と指導により学校再編計画により共学化進行計画が進みつつある。全部ではないが、いわゆるエリート校の共学計画も進んでいる。・埼玉県については、苦情処理委員会への苦情から「共学推進」の勧告が出される形で、問題が顕在化した。同窓会などを中心に強い共学反対運動が展開した。高校再編計画でも実質的に女子高が統廃合になるケースはあるものの、共学方針は出されぬまま、戦後50年を経てもエリート校の男女別学を存続する「現状維持」体制としている。2 大学共学化把握のための資料作り戦後の大学に見る男女共学化、近年共学化の動きをとらえる資料作りをおこなった。3 ドイツ・アメリカの動向研究・ドイツについては、新たな男女共学ついての動きをドイツの男女共学の中心的研究者であるヴィーラントの協力を得、現地調査を行うことから現在の状況をとらえた。・アメリカについては共学大学における女子学生の支援プログラムから、実際の動きを捉えた。
著者
手塚 甫
出版者
北里大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

本課題の根本史料たる小学校教員養成学校卒業生の成績証明書に関し.昨年度その所在を確認しておいたが、本年度、現地に赴き、ウイーン市の小学校男子教員養成学校及びヴィーナー・ノイシュタット市の小学校教員養成学校に関し、1880年から1905年に至る全史科の写真撮影を完了した。合計約6000枚に及び、目下、その現像作業と平行して、鋭意整理を進めており、間もなく完了する。予定である.本卒業成績証明書には、卒業成績の他、出身地、信仰、父親の職業、奨学金取得の有無及びその額も記されており、これらを分析することによって、本課題の解明に大きな手懸りを得るものと期待している。なお数量的分析のみでなく、数人の指導的人物については、これまで伝記的に不明だった部分のいくつかを明らかにすることも出来た。尤もウィーン市の女子教員養成学校における当該期間の史料は、第二次大戦時の戦火によって焼失してしまったため完璧を期し得ないのは甚だ遺憾である。当面史料の分析を急ぎ出来るだけ早い機会にその成果を発表する予定である。なお、この分野に関する研究は、オーストリアに於ても手がつけられていないので、機会が得られれば是非ドイツ語でも発表したいと思っている.
著者
坂東 健二郎 松口 徹也 大西 智和 柿元 協子
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

Renin-Angiotensin系(RA系)は血液量と血圧を正常に保つシステムであるが、一部の器官では局所でACE(Angiotensin converting enzyme)がAII(Angiotensin II)を産生し、近傍のAT1(Angiotensin II type 1)受容体に働く組織RA系が存在している。我々は、骨芽細胞で組織RA系に必要な機能的AT1受容体、AT2受容体とACEの発現を確認した。骨芽細胞や軟骨芽細胞をAIIで刺激すると骨分化への影響は認められなかったものの、ERK、AMPK、Sykなどの細胞内シグナル分子が影響を受け、ケモカインの発現が促進された。骨組織中でAIIの局所濃度が高まれば、骨組織RA系が働くと考えられる。
著者
芥野 隆文
巻号頁・発行日
2010-03

Supervisor:浅野哲夫
著者
牧 孝 中野 正博 長 哲二 吉村 厚 吉永 春馬 上原 周三 星 正治 名越 千恵子 鬼塚 昌彦 小西 圭介 豊福 不可依 高木 望 豊島 耕一
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.221-233, 1983-06-01

体内深部の癌の放射線治療に負パイ(π^-)中間子を使用する利点は, 体表面から患部までの正常組織には低LET放射線で且つ付与する線量は少なく, π^-中間子のrest energy領域での患部にはBragg peak効果とスター形成による高LET放射線で且つ付与する線量は大きく従って治療効果比が大きいと理論的に高く評価される事である. 我国内では物理学的・医学的に治療応用の為の具体的な実験研究は未だ行われていない. 我々は特にπ中間子が正常組織を飛行中のプラトー領域での高LET粒子の発生に注目しその影響を調べた. この論文は第1報として, 国立高エネルギー物理学研究所の12GeV陽子シンクロトロン加速器を用いて発生させた運動量150, 173MeV/cのπ中間子を人体模疑物質ルサイトに照射し, 正・負パイ(π^±)中間子の飛程と捕捉・吸収の後の残存曲線の実験結果を示す. 飛程は理論値とよく一致した. 残存曲線にはπ^+とπ^-中間子では差異が認められた. またピーク・プラトー比は約10対1と予想値よりはるかによい結果を得たことを報告する.(1983年3月7日 受付)
著者
五十嵐 誠 望月 優子 高橋 和也 中井 陽一 本山 秀明 馬場 彩 望月 優子 高橋 和也 中井 陽一 本山 秀明
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

研究成果の概要:南極ドームふじ基地において掘削された氷床コアおよそ100m分についてイオン濃度分析を実施し、硝酸イオン濃度プロファイル中の十数箇所に超新星爆発起源と思われる高濃度スパイクを検出した。本研究ではこれらの発現年代を正確に推定するため、ドームふじ氷床コアの硫酸イオン濃度測定結果と大規模火山噴火年代との関連性を考慮して、誤差1年以内の氷の堆積年代(深度と年代の関係)を求めた。
著者
松丸 秀夫 朝比奈 菊雄 加藤 仁
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.117-122, 1978-02-01

木枯しが吹き出すと落ちつかなくなり, そして雪が降る頃には時々姿を消し, 黒くなった顔で現われる人種, スキーの楽しさにとりつかれた人達-."スキー狂師"であることを自他共に認めておられる薬学人もあちらこちらに数多いようである.そこで, このような方々の間での隠された逸話や思い出話の一端なりとも御被露していただこうと先生方にお集りいただいたが, 出席を予定されていた津田先生には御都合がつかず, 紙上参加の形で思い出話を寄せていただいた.
著者
林 正久
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.28-37, 1977-11

第16次南極観測隊員として,1975年12月12日から1976年2月15日まで,昭和基地南東部の一流域を選び,雪渓の融水流の測定を行った.この流域は,雪渓の融水によって涵養されている.調査期間中に,4.8×10^3 tonの雪が消失し,そのうち3.1×10^3 tonが融水流として観測された.このことは,極地露岩地域の雪渓の消耗は,主として融水流の形をとるということができる.気候要素との関係をみてみると,気温が氷点以上になることが多かった1月上・中旬は,雪渓の消耗量は気温に影響され,氷点を越えることの少ない1月下旬以降は,日射量の変化が流出量を左右しているといえる.
著者
森 陽太
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

バテライト形炭酸カルシウムはその熱力学的不安定性から自然界にはほとんど存在しない。しかしながら100nm程度の一次粒子が凝集して二次粒子を形成していることから多孔質体であることが期待されている。材料利用を視野に入れた場合、生成メカニズムや粒子径の制御などその基礎的物性を知ることが重要になる。昨年度はこれらの基礎的物性について引き続き検討を行った。天然セルロースに対しTEMPO触媒酸化を適用することでセルロースミクロフィブリル表面にカルボキシル基を導入することができる。この試料に対し軽微な機械処理することで出発物質に応じた径を有するセルロースナノファイバーゲルが得られる。このセルロースナノファイバと形炭酸カルシウムを複合化についても研究を行った。複合化処理としては未乾燥のナノファイバーフィルムに塩化カルシウム水溶液と炭酸カリウム水溶液を交互に通過させることにより試料の作製を行っている。この試料ではフィルム表面での若干の炭酸カルシウム生成が確認されている。また、セルロースナノファイバーゲル中で緩やかに炭酸カルシウムを結晶成長させた場合、他の高分子ゲル中では見られない200μm程度の特異的な形状を有する結晶が得られた。この花弁状の結晶はセルロースナノファイバの径には依存せず、セルロースナノファイバのような高結晶性で商アスペクト比を有するゲル中で物理的拘束を受けることで特異的に生成すると考えられる。これらの詳細な生成メカニズムについては現在検討中である。