著者
吉田 健 橋本 勉 佃 和民
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報
巻号頁・発行日
vol.9, pp.26-28, 1975

品種, 播種期, 窒素施用量, 秋刈等の条件を組合わせて播種量と雪害の関係について3ケ年検討した。その結果果, これらの条件には右左されず, 播種量が多くなると徒長気味の生育をする場合でも雪害の少なくなる傾向が認められ, 収量も高くなった。
著者
田崎 和江 沢田 順弘 鈴木 徳行 飯泉 滋 高須 晃 石賀 裕明
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

ODPの伊豆・小笠原弧の深海底掘削が行なわれた後,昨年度は,船上での成果を“Proceedings of the Ocean Drilling Program(Vol.126)"にまとめ公表した。それに次いで,今年度は,各研究者が専門的な立場で,より詳細な陸上での成果を“Scientific Volume"にまとめた。さらに,日本人の研究成果は,地学雑誌,月刊「海洋」,月刊「地球」に特集号を組み,日本語でも成果を発表した。研究代表者の田崎は,これらの報告書,雑誌にすべて論文を投稿し,当補助金により購入した電子顕微鏡をフルに活用し,3年間で40編の成果を得ることができた。伊豆・小笠原弧の深海底堆積物のうち,特に,火山砂,軽石に注目しXRD,SEM,TEM,FTーIR,マイクロESCA等の機器類により,鉱物組成を検討した。その結果,火山性堆積物の中に,有機物の存在を認めた。スメクタイト,沸石などの熱水変質鉱物の中に,グロ-コナイトやセラドナイトが共存し,その化学組成は,CH,CO,CーCCooHの化学結合を持つことが明らかとなった。今まで,グロ-コナイトの生因の一つに有機物が関与するという説があったが,今回の研究結果で,それが証明された。さらに特筆することは,この火山性堆積物の中に,多量のバクテリア化石を,電子顕微鏡で明らかにしたことである。200℃前後の熱水の循環があり,火山ガラスや造岩鉱物が変質する中にバクテリアが存在し,化石化して保存されていた事実は,深海底にブラックスモ-カ-が存在していたことを示唆している。さらに,グロ-コナイトの生成に,バクテリアが関与していることも暗示している。深海底における物質循環において,有機と無機の境界は不明りょうであり,両者の相互作用により有機炭素からグラファイトが生成される過程も,電子顕微鏡により追跡することができた。これらの研究成果は,国際誌chemical Greologyに投稿した。
著者
栗山 弘
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術 (ISSN:04541871)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.15-19, 1981-11-30

わが国で最も雪深い地域の一つを通る国道17号線の,長岡から新潟・群馬県境までの,約100kmの道路の除雪量は2,000万m^3と推測されている(建設省長岡国道工事事務所).道路100kmでこれだけであるから,わが国の全積雪地域で処理される雪の量は,ぼう大なものであり,そのために費されるエネルギーの量もまた,ぼう大であるに違いないが,いまだ実態は把握されていない.いろいろな雪処理において,消費エネルギーのいくらかでも節減できれば,現今の社会的要請である省エネルギーに備えるし,除雪経費の低減にも寄与できよう.雪害対策に関係する方々の参考のために,雪処理のエネルギーについて,除雪での身近な例をとり上げて,少し述べてみよう.
著者
長田 和雄 西尾 文彦 樋口 敬二
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.17-24, 1988-03

昭和基地周辺での海氷の状態と海塩輸送の関係を知る目的で, 降雪, 飛雪および海氷上の積雪を採取した。得た試料の融水の電気伝導度の測定結果から, 海塩の輸送機構を推論した。試料の電気伝導度は, 降雪で2.5-18μS/cm, ブリザード時の飛雪および海氷上の積雪で20-(10)^3μS/cm(一部は(10)^4μS/cm以上)で(10)^2μS/cm程度の場合が多かった。海氷上の積雪の存在状況と電気伝導度の関係は, 海氷の露出した地域の存在により, 海氷上の積雪の電気伝導度が高い値を示した。ブリザード時には, 降雪に起因する飛雪と, 塩分の高い積雪層の削剥に起因する飛雪とが混在して輸送されると考えられる。また, 塩分の高い積雪層の削剥起因する飛雪の水分を蒸発させる諸条件が整えば, 海塩粒子の生成する可能性を示した。
著者
WESTERHOVEN J.N アンソニー・スコット ラウシュ 笹森 建英 畠山 篤
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

巻頭論文では地域の歴史を概観し、文化の独自性について述べる。次に、高木恭藏作「婆々宿」を踏まえて、ラウシュは津軽地方の文化的・社会的な特徴を五感で分かるような例を利用しながら詳しく分析する。長部日出雄作「津軽じょんから節」は津軽三味線の演奏家の生涯についての物語である。オタゴ大学のジョンソン協力者は津軽三味線の最近の動向について調査し、若者にまで支持される津軽三味線の魅力の理由について明らかにしている。長部日出雄作「津軽世去れ節」は、津軽民謡に多大な影響を与えた伝説的な三味線奏者であった嘉瀬の桃(黒川桃太郎1886-1931)の生涯を追った小説である。これらの小説、また多くの文献に記述される4点の津軽民謡についてウェスタホーベンはその歌詞を英訳し意味を分析する。かつて盛んに歌われていた歌詞が歌われなくなった原因ついても考察している。長部日出雄作「雪の中の声」は霊能者のお告げによって、息子が母親に殺された話である。霊能者ゴミソ、イタコは津軽に特有な民間信仰である。笹森はこの両者の特質・差違を明確に示し、さらに第3の霊能者ヨリについても指摘している。笹森はこれらについて、先行研究を踏まえて、医学・心理学の面から鋭く考察している。畠山篤は津軽の鬼伝説を23の事例から分析することによって、後の大和朝による仏教、神道の鬼概念としてではなく、地域の古層にあった自然宗教の名残として鬼説話が存在していることを明らかにした。逆境に耐え抜く津軽人の精神力の強さを象徴している物語である高木恭藏作「相野」がこの報告書を終える。文献表は、英語による過去の研究にはなかった新しい資料が豊富に収集されており、付録,補遺では人名、地名、その他の語彙が詳細に解説されている。この報告書で始めて示された語彙も少なくない。英訳に関して、「婆々宿」以外はすべて初あての翻訳である。掲載した37点のカラー写真の大半はオリジナルの資料である。
著者
平井 英二 山口 幸祐 北村 守次 丁子 哲治 村本 健一郎 上木 勝司 全 浩 李 敏熙 宮崎 元一 QUAN Hao LEE Min-Hee 庄田 丈夫 李 敏煕 小村 純子 山口 幸裕 鍛治 利幸
出版者
北陸大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

1.吉林省環境保護局吉林省の劉 淑塋副省長,吉林大学環境科学系の杜 尭国教授らによれば,同省は人口約2,500万人,面積約19万km^2であり,両者とも中国の約2%である。東部は長白山を望み,櫟などの木材資源が豊富であり,中部は松遼平原が広がり,農業が発達している。西部は大草原であり,羊・馬の放牧地である。基幹産業は長春市の自動車,吉林市の化学工業である。大気汚染は,従来から低硫黄(0.4%以下)の石炭を使用せていたが,工業の発展にともない省外の石炭を輸入のため,低硫黄の石炭の確保が困難となり,大気汚染が進行中である。水質汚濁として,地表水のCODは8ppm程度であり,有機物による汚染が進んでいる。さらに,同省の図們江開発にも言及した。また。吉林大学の環境関係の研究は太陽光,粉塵,微生物等の自然界由来の物質を有効利用して汚染物質を低減する研究が集中的に行なわれている。図們江開発にも関係するので,吉林省からの帰路を利用して,大連経済技術開発区を見学と調査を実施した。2.研究成果森林衰退の原因は多くの研究者が様々な地域で研究している。観測,測定が行なわれた地域によって,気象,土壌,樹種,大気中の汚染物質濃度などが異なるため,重要な因子が異なってくる。即ち,土壌酸性化/アルミニウム毒作用説,オゾン説,マグネシウム欠乏説,ストレス説,窒素栄養過剰説があるが,関与している因子が多いことが,この問題を難しいものとしいる。酸性降水は土壌と接触することによって速やかに中和される。この中和反応は多岐であり,炭酸塩の溶解反応,陽及び陰イオンの交換反応,アルミニウムの溶出反応,二酸化炭素の溶解反応がある。これらの反応を総合的にを数式化し,実験と比較し,酸性降水による河川水質のメカニズムを正確に解明できた。β線吸収法による浮遊粒子の解析から黄砂現象の評価するに,黄砂の彼来により酸性雨の成分であるSO_4^<2->とNO_3^-に影響を及ぼし,日本海側における冬期のSO_4^<2->濃度が異常に高い原因の一つに黄砂が関与している可能性が高いことが明らかになった。酸性雨・雪の現象をレーダによって定量的に観測するため,一般的に地上観測データとの重畳によって行なう.そして両者の観測から,レーダ観測で得られるレーダ反射因子(Z)と地上観測で得た降雨や降雪強度(R)の関係を求める。このZ-R関係が求まればレーダ反射因子(Z)から降雨や降雪強度を推定できる。研究ではXバンドレーダを使用し,降雪についてZ-R関係を求めた。短い期間に分割すると良い相関がえられた。3.STRATEGY FOR AIR POLLUTION CONTROL IN EAST ASIAの刊行特に中国は硫黄酸化物が主成分である大気汚染物質の影響が深刻である。よって大都市である重慶市での研究・調査を1991年度から実施すると同時に,大気汚染とその対策のついてのシンポジウムを,重慶市環境保護局と平井班が主催し,1992年10月に同市で「中日大気汚染防止対策シンポジウム-重慶‘92」を開催した。本研究班の全員と四川省,重慶市の研究者や行政担当者が多数参加し,重慶市のマスコミにも大きな関心をあたえた。これらの発表は大気汚染のデータも含むが,大気汚染についての基礎的な事項や環日本海各国の酸性雨の現状,酸性雨の分析,土壌の中和反応機構,湖沼・森林への影響,環境行政,火力発電所の排ガスや環境保全などの多方面にわたっている。これらの発表論文に最近の研究成果を追加して翻訳し,1冊の書に纏めて刊行し,今後に工業化される東アジアの諸国の大気汚染対策に役たてれば,かけがえのない地球のボ-ダレスな環境の解決の一つとなると考えた。これが1994年度の科学研究補助金研究成果公開促進費に採択され,今春に刊行する。東アジア諸国に配布するが,平成8年度の国際学術研究にも活用する予定である。
著者
曽根 敏雄 原田 鉱一郎 岩花 剛 森 淳子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

パルサは永久凍土の丘状の地形で、日本では大雪山だけにその存在が知られている。これまで大雪山のパルサには変化が生じていると考えられてきたが、基本的な情報が不足していた。そこでパルサの分布状態を記載し、地温観測、電気探査法による永久凍土核の推定を行った。その結果、2010年に生じた急激なパルサの分布面積の減少を捉えることができた。また永久凍土の温度が高いことが判った。大雪山の高山帯の気温変化を復元した結果、現在パルサの大部分が残存しているものであると考えられた。
著者
佐藤 修 大木 靖衛
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1、新潟県下の降水の酸性物質の状況:新潟大学積雪地域災害研究センターで行った降水の化学分析結果、新潟県衛生公害研究所の発表した資料を整理し、酸性物質の降下状況を把握した。新潟県の山間部には3〜5g/m^2の硫酸イオンと1〜2gの硝酸イオンが降下している。硫酸イオンは冬の降雪期に多い特徴がある。雪の中の酸性物質は積雪期の温暖な日に流出する。2、沢水・湧水・河川水の変化:沢水・湧水の調査は花崗岩地帯で過去に分析結果のある丹沢湖の周辺で行った。現段階では、沢水・湧水に酸性降下物の影響は見られなかった。新潟県下の沢水の連続観測の機器は現在雪の下で、データ解析は今後のこととなる。河川の水の分析結果を、小林純が行った20年以上前の河川の分析データと比較した。分析誤差範囲内で両者は一致し、新潟県下の河川の流域では平均的な意味では、酸性降下物の影響で化学風化が活発になったとは見えない。3、土壌の酸性化調査:花崗岩地帯の土壌のpHは5〜6の範囲で普通の酸性の褐色森林土壌よりpHが高い。花崗岩地帯の崩壊地の土壌のpHが過去に測定された例は見あたらない。比較の対象がないので、酸性化したかどうかは今回の調査からは結論を出すことができなかった。4、まとめ:チェコ、ポーランド、ドイツでは酸性雨の影響で土壌が荒廃し、崩壊が起こっていると報告されているが、わが国では今回の調査ではその証拠はつかめなかった。おそらくわが国では影響が見られないのは、降水量が多いこと、地形が急峻で水が長時間とどまらないこと等が影響している。
著者
青木 幸一
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

電極上に電解合成した導電性高分子膜は、電気化学的なスイッチングにより、導電体(酸化体)と絶縁体(還元体)との間で相変化を起こす。イオン性溶液中で還元膜を電気化学的に酸化すると、電極に接した部分はイオンの放出または取り込みを伴って電子導電体になり、それ自身が電極として作用する。その結果、導電層が電極表面から溶液/膜界面へ向かって成長すると考えられ、本研究室では、この成長を導電層伝播機構と名付けて理論的に取り扱い、成長速度を測定してきた。導電膜を還元すると、膜全体にわたって均一に絶縁体化することがわかった。それ故、膜の酸化還元を繰り返すと、膜の電極近傍では酸化状態、溶液に近い側では還元状態をとる。すなわち、イオンの膜への取り込み量に動的分布を作ることができる。この分布をマクロ的に拡大するため、電極から引き剥した膜の一端に別の電極を取り付けてスイッチングを行うと、膜の長さ方向に酸化と還元体の分布が形成できた。ポリアニリン膜における電位と導電種の濃度との関係をスペクトロメトリーにより測定したところ、大きなヒステリシスのために、不可逆性が重要な問題になった。酸化方向の膜の変化では、電位の変化速度に依存しなかったため、平衡に近い状態が得られた。電位と導電種の対数濃度との関係はネルンスト式で表される直線からはずれ、ある電位で急激に折れ曲がることが分かった。この電位はパーコレーション閾値電位と考えられ、電極と電子的につながった酸化体と電子的につながらない酸化体との線形結合によってネルンストプロットを説明した。また、誘導電流を利用した抵抗測定に成功した。現在、そのpH依存性について実験が進行中である。
著者
黒子 浩 Gaedike Reinhard
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.49-69, 2006-01-10

ササベリガ科は,世界から約100種が記載される小さな科で(Gaedike, 1996),わが国からはMeyrick(1931),一色(1957),森内(1982),Gaedike & Kuroko (2000),奥(2003)により2属5種が記録されているが,固定に問題のあるものが含まれている.これらを整理し,2新記録種を追加,6新種を記載した.本科は派生形質として後脛筋全面に固い剛毛を有し,前翅後縁に謝状の鱗片総をもつ.Epermenia属には腹部第1-2筋に発香毛を蔵したポケット状の嚢(共通派生形質)があるが,二次的に欠除した種もある. ササベリガ科は以前はYponomeutoidea(スガ上将)におかれたが,近年は独立の上将Epermenioidea(ササベリガ上科)が創られ,その下におかれる(Minet, 1983). 1. Phaulernis fulviguttella (Zeller, 1835) キモンクロササベリガ 前翅長5.0-6.0mm.森内(1982)によりP. monticolaとして記載されたが,ヨーロッパからロシアにかけ広く分布するvulviguttellaのシノニムとされた(Gaedike, 1993).前翅後縁の歯状鱗毛総は二次的に欠除.また本属は腹部に発香毛をもたない.ヨーロッパから日本まで広く分布.寄主植物は海外でセリ科のミツバグサ属,マルバトウキ属,シシウド属が知られる. 2. Phaulernis pulchra Gaedike, 1993 トサカササベリガ(新称) 比較的大型で前翅長6.0-7.0mm.前翅にEを横にしたような橙赤色紋がある(和名はこの斑紋の特徴に由来する).前翅後縁に歯状鱗毛総をもつ.ロシア沿海州より記載された美麗種である.日本新記録. 3. Phaulernis chasanica Gaedike, 1993 ウスグロヒメササベリガ 前翅長5.0-5.7mm.前翅中央に橙褐色部があり,一見ヒメササベリガに似るが,基半部が灰白色をなさないので区別できる.ロシア沿海州から記載された.日本では奥(2003)により盛岡から記録されたが,図示されるのはこれが初めてである. 4. Epermenia (Cataplectica) sugisimai sp. nov.シロオビササベリガ(新称) 前翅長4.0mm.前翅後縁に歯状鱗毛総をもたない.第2腹筋のポケットは短い.前翅は暗褐色地に,後縁から中室に達する2本の白い細い帯がある.分布は北海道. 5. Epermenia (Calotripis) shimekii sp. nov. ウスチャオオササベリガ(新称) 大型で前翅長7.0-7.5mm.他の種より前翅の幅が広く,翅頂は鈎形に曲がる.森内(1982)により誤ってstrictellaとして固定された種である.外見上はヨーロッパからシベリアに分布するE. illigella (Hubner) に似るが,交尾器の特徴で区別される.Calotripis亜属に含まれる種は全て前翅後縁に鱗毛総,腹部にポケットを有する.本州に分布する. 6.Epermenia (Calotripis) ijimai sp. nov. シベチャササベリガ(新称) 前翅長6.2mm.標茶で採れた1♂により記載された種で,前翅の中央から先端部にかけて橙褐色の鱗粉があり一見ヒメササベリガに似るが,中室端に黒点をもたない.北海道に分布. 7.Epermernia (Calotripis) strictella (Wocke,1867) ハイイロオオササベリガ(新称) 前翅長6.5-7.5mmに達するわが国で最も大型の種である.前翅は細長く,灰白色地に灰黒色の鱗紛を散らし,斑紋に変異が多い.日本,韓国,ロシア,ヨーロッパ,アフリカ,カナダ,北アメリカと殆ど汎世界的分布を示す.寄主植物は,海外でセリ科のFerula属,ミツバグサ属が知られる. 8.Epermenia (Calotripis) uedai sp. nov. ニセトベラササベリガ(新称) 前翅長5.7mm.前翅は一見トベラササベリガに似るが,中室内にチョコレート褐色の縦斑があり,中室端には黒点なく,代わりに白色紋がある.沖縄に分布. 9.Epermenia (Calotripis) siniovi Gaedike, 1993 シシウドササベリガ(新称) 前翅長5.0-6.0mm,前翅は灰褐色をしているが斑紋に変異が多く,前翅基半部の灰白色のもの(普通型),中室内に黒色縦条のあるもの(黒条型),褐色の強いもの(褐色型),全体が灰黒色を帯びるもの(暗色型)があるので,斑紋のみによる同定は要注意.極東ロシアに分布.寄主植物はシシウド.日本新記録(国後島を除く). 10.Epermenia (Calotripis) muraseae Gaedike & Kuroko, 2000 トベラササベリガ(新称) 前翅長4.8-6.0mm.前翅斑紋はシシウドササベリガ(普通型)によく似ているが,中室端に明瞭な黒点をもつので区別できる.なお本種の♂交尾器aedeagus内にあるcornutusの基方の渦巻き形の構造は,他種との重要な区別点となる.三重県,和歌山県,奄美大島,沖縄に分布.幼虫はトベラの果実内に穿入し内容物を食べる. 11.Epermenia (Epermeniold) fuscomaculata sp. nov. チャマダラササベリガ(新称) 前翅長4.0-5.5mm.小型で前翅は長披針形,黄褐色をした3本の横帯(最初の帯は前縁のみ)があり,個体により横帯の間と中室端に黒点のあるものがある.屋久島,奄美大島,沖縄,台湾に分布. 12.Epermenia (Epermeniola) pseudofuscomaculata sp. nov. ニセチャマダラササベリガ(新称) 前翅長4.0-5.0mm.前種に酷似しているが,前翅には概して黒鱗の散布が多く,前翅2/3にある黒点がやや横長で白色鱗で囲まれ,さらにその外側が黒鱗で縁取られる.交尾器(雄のuncus,雌のsignum)による同定か確実である.沖縄に分布. 13.Epermenia (Epermeniola) thailandica Gaedike, 1987 ヒメササベリガ 前翅長5.5-7.0mm.前翅の基方1/3は灰白色,それより先の部分は淡黄褐色の鱗粉で覆われる.中室端の黒点は幾分横長で白色鱗で囲まれる.雄には腹部基部に発香毛を含むポケットのあるものと,無いものとがあるが,原因は不明.沖縄の個体群は小型(翅長4.0mm)で, signumの形にも僅かな差がみられる.日本(本州,九州:本島および沖縄),ロシア,タイに分布.
著者
関谷 直人
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1586, pp.14-15, 2009-02-20
参考文献数
3
著者
小林 浩
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.828-834, 1988-07-01

2型糖鎖抗原に属するSialyl SSEA-1抗原を用いて婦人科疾患, 特に卵巣癌に対する腫瘍マーカーとしての有用性について検討するとともに, CA125との関連についても検討した. 子宮筋腫, 子宮内膜症, 良性卵巣腫瘍患者の平均値±標準偏差および陽性率は, 28.5±12.2U/ml(16.1%), 33.2±13.5U/ml (31.3%)および30.0±30.3U/ml (11.6%)であり, 子宮内膜症患者に比較的高い陽性率を認めた. 卵巣癌患者の臨床進行期別にその平均値±標準偏差および陽性率を求めると, I期は28.9±15.3U/ml(20.1%), II期は45.3±30.7U/ml(43.8%), III期は182.3±643.3U/ml(50.0%)およびIV期は63.2±70.4U/ml (72.2%)とその陽性率は臨床進行期が進むにつれて上昇した. また, 治療経過に伴うSialyl SSEA-1の変動は予後とよく相関した. CA125とのコンビネーションアッセイでは, Sialyl SSEA-1陽性でCA125陰性例は1例しか存在しなかつた. しかし, CA125と異なり, Sialyl SSEA-1は妊娠による影響が少ないため, 卵巣腫瘍合併妊娠における有用性はCA125より優れていた. 一方, 各種疾患腹水中や体液中のSialyl SSEA-1濃度を測定した結果, CA125と同様にチョコレート嚢胞内容液, 羊水中および卵巣癌患者腹水中に極めて高濃度の抗原が存在した. さらに, 子宮内膜症患者の腹水中濃度も比較的高値を示すため, これが血中濃度に反映している可能性が示唆された. 以上より, Sialyl SSEA-1抗原はCA125と同様, 子宮内膜症で比較的高値を示す傾向を認めたが, その陽性率はCA125より低率であつた. また, 卵巣癌の血清学的診断における有用性に関しては, 卵巣癌全体では47.2%に陽性を認め, 臨床的には予後をよく反映したが, 早期癌における陽性率が低く, 早期発見には不適当であつた. さらにCA125とのオーバーラップを認めたため, コンビネーションアッセイによる陽性率の上昇は期待できなかつた.
著者
中尾 央
出版者
京都大学文学部科学哲学科学史研究室
雑誌
科学哲学科学史研究 (ISSN:18839177)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.45-64, 2010-02-28

This paper partly defends and partly criticizes Sterelny's maneuver on the meme's-eye view through comparison with Blackmore, Dennett, and Distin's arguments. His maneuver consists of two parts: the coevolution of memes and us, and meme's usefulness and modularity. I argue that Sterelny's maneuver is partly successful in that the coevolution of memes and us can defend the meme's-eye view against the claim that memes are unnecessary for the explanation of cultural evolution, comparing this first part of the maneuver with Blackmore and Dennett's "memetic drive". Moreover, Sterelny argues that meme's usefulness and modularity can also save the meme's-eye view and are important for memetic evolution. While defending the latter view referring to Distin's arguments, I argue that these properties can be explained in terms of our cognitive and social environments, therefore we cannot use these properties when defending the meme's-eye view. Finally, by considering whether the modified version of Sterelny's maneuver can be applied to other cases or not, I investigate the future of the meme's-eye view.
著者
宮本 比呂志
出版者
佐賀大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

今年度は歯性感染症患者10例の排膿を用い、遺伝子法と培養法で検出菌の比較を行った。唾液の菌叢解析には、基礎疾患がなく口腔内に疾患のない健常者10名の唾液を用いた。歯性感染症患者の排膿は、滅菌スワプもしくは穿刺吸引で膿汁を採取した。培養法には4種の培地(羊血液寒天,BTB,チョコレート寒天,ブルセラ半流動)を使用し、37℃,好気および嫌気条件で培養した。一方、遺伝子法は試料からDNAを抽出し,16S ribosomal RNA遺伝子の一部(約580b p)をPCR法で増幅した。得られたPCR産物を大腸菌にクローニングした後,塩基配列を決定した。決定した配列はBLASTを用いて相同性検索を行い,菌種を同定した。健常者の唾液はすべての被験者においてStreptococcus属が最も多く検出された。優占菌は、個人差はあるもののStreptococcus属,Neisseria属,Actinomyces属,Granulicatella属,Gemella属,Prevotella属であった。排膿では、培養法と遺伝子法とで検出菌が一致したのは10症例中1症例のみであった。培養法では10症例中4症例において起炎菌が同定できなかったが、遺伝子法ではすべての症例において起炎菌が推測できた。遺伝子法は、従来の培養法では検出困難とされるVBN菌も含めた試料中の細菌叢を網羅的にかつ短時間で検出可能であった。本研究で開発した方法が、口腔内という常在菌が多数存在する中から起炎菌を同定する際に有効であり、口腔常在菌の変動解析に十分使用できることが確認された。生活習慣病のリスクアセスメントツールが確立できた。
著者
金山 権 座間 紘一 座間 紘一 小松 出 任 雲 金山 権
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本調査研究が目指したことは、中国の内陸地域、沿海地域、外国の三極関係の枠組みの中で、(1)地域間の商品、労働力、資本の流れ、(2)地域開発の波及効果および開発後の地域間経済関係の変化と地域経済構造の変化、(3)地域開発に対する中央政府、地方政府の対応、(4)外資、沿海部企業の内陸部地域への進出のあり方などを分析することを通じて、中国の地域格差是正と統一市場形成のあり方を占おうとするものであった。成果では、西部地域と国内・国際経済ないし企業とのリンケージに関する研究として最初の1,2、3章がそれに当てられている。第1章は、マクロ指標の分析を通じて、西部地区経済は全体としてはまだその国内・国際的リンケージは弱く、それは、西部経済の発展が遅れた結果であると同時に、西部経済発展の阻害要因にもなっている事を明らかにしている。2,3章は,それは自動車、ミシンの個別企業と紡織産業での産業と個別企業におけるリンケージのあり方を取り上げている。その他の研究は西部地域や四川省の産業開発、産業集積、農業の産業化、農村の近代化、少数民族地区の開発、生態建設など、西部地区開発をめぐる多様な問題を取り扱っている。中国側の強力研究者の論攷も含めて、多様な側面を多角的に、深く掘り下げたものとなったと思われる。成果は以下の10編の論文から構成されている。(1)西部地域と国内・国際経済とのリンケージ、(2)中国進出日系企業の沿海地域と西部地域のリンケージ、(3)東部地域紡績企業の西部地域進出の展開と問題点、(4)中国西部地区工業化の若干の問題、(5)資金投入と経済成長、(6)西部地域における産業集積の形成と発展、(7)四川省少数民族地区での西部大開発効果、(8)「社会主義新農村建設」と「三農」問題の解決、(9)四川省農業産業化の発展、(10)四川省の生態建設、である。