著者
許 南浩 阪口 政清 片岡 健
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

REIC/Dkk-3発現アデノウイルスベクター(Ad-REIC)のスキルス胃癌への適用スキルス胃癌は進行が早く腹膜やリンパ節に転移しやすい難治性のがんの一つである。現在、本がん種を標的とした有効な治療法がない。本年度では、Ad-REICのスキルス胃癌への有効性を検討する目的で、胃がん腹膜播種動物モデルを新規に開発した。Ad-REICを服腔内に投与したところ、胃がん細胞株の腹膜播種の有為な抑制が観察された。これは、Ad-REICの直接効果(がん細胞特異的細胞死誘導)とAd-REICにより誤標的された正常細胞を介した間接効果(正常細胞がIL-7を産生してNK細胞の活性化を誘導)によることが明らかとなった(論文準備中)。Ad-REICの改良Ad-REICによるアポトーシス誘導作用を高めるために、強力な遺伝子発現システムを独自に開発した。結果、従来のプロモーター(CAGやCMV)を用いた遺伝子発現システムに比較して顕著な遺伝子発現増強効果(各種遺伝子で、100倍から1000倍)が達成された。このシステムをAd-REICに組み込むことにより、現存のAd-REICを上回る治療効果が期待できる(論文準備中)。分泌REIC/Dkk-3タンパク質の機能の解明分泌型REIC/Dkk-3も免疫系を介した間接的抗腫瘍効果を示す。REIC/Dkk-3の発現組織と分泌されたREIC/Dkk-3を積極的に取り込む細胞の同定を行ったところ、分泌されたREIC/Dkk-3は末梢血単球の樹上細胞様細胞への分化・増殖を制御している可能性が示唆された。REIC/Dkk-3ノックアウトマウスの作製癌抑制遺伝子REIC/Dkk-3の主要ドメインであるEXON 5、6を全身性にノックアウトしたマウスの作成を行っていたが、2009年10月に、ホモノックアウトマウスの作成に成功した。
著者
真栄田裕行
雑誌
耳喉頭頸
巻号頁・発行日
vol.70, pp.179-182, 1998
被引用文献数
4
著者
河村 公隆 渡辺 興亜 中塚 武 大河内 直彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、グリーンランド(Site-J)で採取した氷床コア中に生物起源の脂肪酸を検索し、炭素数7から32の脂肪酸を検出した。海洋生物起源の脂肪酸(C_<12>-C_<18>)の濃度は、1930-1950年代に高く1970年代にいったん減少した後、1980年代に増加することがわかった。濃度増加が認められた時代は、温暖な時期に相当しており、この時期には海氷の後退と低気圧活動の活発化によって海水表面からの大気への物質輸送が強化されたものと考えられる。また、シュウ酸(炭素数2のジカルボン酸)から炭素数11までのジカルボン酸を検出した。ジカルボン酸の炭素数分布の特徴は、コハク酸(C_4)がほとんどの試料で優位を示したことであったが、19世紀以前は優位でなかったアゼライン酸(C_9)が20世紀になって急激な濃度増加をし、1940年代に大きなピークを示した。アゼライン酸は生物起源の不飽和脂肪酸の光化学反応によって選択的に生成される有機物であることから、この結果は、海洋生物由来の有機物の大気への寄与がこの時期に大きく増加したことを示すとともに、それらが大気中で光化学的に酸化されたことを意味する。南極H15アイスコア中にUCM炭化水素やPAHを検出したことにより、人為起源物質が南極氷床まで大気輸送され、保存されていることが明らかとなった。これらの濃度は1900年以降増加しており、この結果はグリーンランドアイスコアの傾向と一致した。このことから、1900年代以降、全球的に大気中の人為起源物質が増加したことが示唆された。不飽和脂肪酸や低分子ジカルボン酸の組成比から推定された大気の酸化能力は、過去350年間において大きく変動したと考えられる。アゼライン酸とその前駆体である不飽和脂肪酸の濃度比は、1970年代以降急激に増加しており、南極における対流圏の光化学的酸化能力が、1970年代以降、成層圏オゾン濃度の現象に対応して増大している可能性が示唆された。
著者
田瀬 和浩 佐藤 尚親 田村 健一 眞田 康治 小松 敏憲
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.249-256, 2008-10-15
被引用文献数
1

海外で育成されたフェストロリウム13品種の越冬性を,多雪・非土壌凍結の北農研と寡雪・上壌凍結の根釧農試で2か年評価したところ,「Prior」はメドウフェスクの「ハルサカエ」と同程度に,「Felina」はペレニアルライグラスの「ポコロ」と同程度に越冬性に優れた。それ以外の品種は「ポコロ」よりも越冬性が劣った。また越冬性に関与する耐凍性と雪腐病抵抗性について自然および人為環境条件下で評価したところ,「Prior」は耐凍性よりも雪腐病抵抗性に優れ,逆に「Felina」は雪腐病抵抗性よりも耐凍性に優れることが明らかになった。既存フェストロリウム品種の中にメドウフェスクと同程度に越冬性あるいは耐凍性に優れる品種が認められたことから,冬期気象条件の厳しい道東でも利用可能なフェストロリウム品種の育成は可能と考えられる。
著者
千秋 博紀
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、天体衝突によって作られた蒸気の塊(以下衝突蒸気雲と呼ぶ)の内部で進行する化学反応系を、数値的にシミュレーションし、どのガス種が、どれだけ作られるのかを求める。衝突蒸気雲は、形成直後はきわめて高温・高圧だが、急激に膨張・冷却する。高温・高圧の条件下では化学反応の速度は速く、容易に化学平衡が達成される。これに対し、膨張・冷却が進むと、化学平衡はもはや達成されなくなる。従来の研究では、膨張過程のある瞬間で化学反応がクエンチ(停止)すると考え、単純に衝突蒸気雲の膨張のタイムスケールと、ある化学種がかかわる反応のタイムスケールとの比較から、膨張・冷却後の衝突蒸気雲の組成を見積もってきた。本研究では昨年度までに、開発した1次元球対称モデルを用いて得られる結果について、ガス成分の種類や量について議論を重ね、論文の準備を行ってきた。しかし一連の議論の中で、蒸気雲中の化学反応ネットワークは、系全体がサブシステムに細分化されてゆき、サブシステムの中で局所平衡が達成されるように進むことが明らかになってきた。この描像は従来考えられていたものとは異なっており、この性質をうまく使うことでガス種同士の相対存在度から逆に衝突条件を求めることができるようになるかも知れない。ただし、どのガス種組合せでサブシステムを構成するようになるのかは、温度圧力条件(衝突条件)だけでなく、初期組成にも依存する。本研究では今後も、衝突蒸気雲が地球システムに与える影響を議論するための、幅広いパラメタ空間でのシミュレーションなどを続けてゆく。
著者
藤崎 和香 西田 眞也
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.160-163, 2009

Temporal synchrony is a critical condition for integrating information coming from different sensory modalities such as vision, audition and touch. However, how we take correspondence between the signals coming from different sensory modalities is still unclear. This paper first summarizes a series of psychophysical experiments on audio-visual temporal synchrony perception, conducted by us over the past several years (Fujisaki, Koene, Arnold, Johnston, & Nishida, 2006; Fujisaki & Nishida, 2005, 2007, 2008; Fujisaki, Shimojo, Kashino, & Nishida, 2004), and introduces our proposed model for audio-visual synchrony detection (Fujisaki & Nishida, 2005). The latter part of the paper introduces some of our more recent works on crossmodal temporal synchrony perception including tactile modality, which compare temporal frequency limits obtained with synchrony-asynchrony discrimination experiments between audio-tactile, visuo-tactile, and audio-visual stimulus pairs.
著者
高橋 庸哉 佐藤 昇
出版者
北海道教育大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

1.「雪」に関するコンテンツの拡充セスナー機から撮影した流氷写真・ビデオ、クリオネや降雪粒子のビデオ、ヒグマなどに関するページを制作した。また、「降ってくる雪」中の「ルーペで見てみよう!」コーナーを視覚的なものに改良した。2006年度のトップページアクセス数は11万4千余件であった。2.学校教育現場での実践と内容の妥当性検討雪に関する関するコンテンツを利用した授業等を行い、その内容妥当性の検証を進めた。また、前年度に制作したLAN対応リアルタイム気象データモニタリングシステムを市内小学校4校に展開し、実地試験を進めた。2006年12月に札幌市内小学校の研究授業を行った。3.教育現場でのコンテンツ利用の促進方法の実施雪の学習に関する教員向けセミナーを実施し、全道各地から53名の参加があった。雪たんけん館を活用した模擬授業及び授業作りワークショップ、雪たんけん館やITをどう生かすかをテーマとした討論・講演などを行った。事後アンケートによると、セミナー内容に関する満足度は5段階評価で4.5、参加者の98%が教室ですぐに使える情報があったと答えた。また、天気情報と大気の実験に関する小学校教員ワークショップを企画・実施した。4.コンテンツ利用状況調査札幌市内小学校(209校)を対象としたアンケートを行い、次の結果が得られた:a)Webページ「北海道雪たんけん館」を使った実践を行った学校が12%あった,b)「雪」を教育素材として、どう思うかも問いに対して、70%は取り上げるべきと答えた。また、これまでに4回実施した雪の学習研究会参加者のうち小学校教員にコンテンツ利用状況に関するアンケートを実施した。31%が北海道雪たんけん館を授業で使ったことがある、あるいは同僚が使っているのを見たと答えた。実際に授業で活用し得るコンテンツであることが示された。
著者
酒井 昭 高樋 勇 渡辺 富夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.412-420, 1963-12-25

寒風害の原因を明らかにする目的で2年間にわたって, 支笏湖に面するアカエゾマツの植栽地で被害調査を行なうとともに, 現地および札幌で2,3の関連実験を行なった。1.寒風害のあらわれる時期は土壌の凍結開始時期, 凍結深度, 外気温, 風の強さ, 積雪量等によって異なるが, 害がもっとも進行するのは厳寒期である。2.アカエゾマツでは害は最初葉に現われ, 葉の色は濃緑色から黄緑色, ついで黄または黄褐色に変わる。葉の変化の度合がすすむにつれて落葉も著しくなる。苗の風のあたる側の枝の裏葉が最初に害を受ける。なお害の度合に対応して葉や枝の含有量が低下するが, 主幹, 根の含水量は著しい害を受けても正常なものとほとんど変らない。3.植栽地の被害調査の結果, 防風帯のない地区では大部分の苗木が枯れているが, 防風帯の風下の地区では害がほとんど認められない。また苗木が雪で埋まりやすい凹地では害が少なく突出部では害が著しい。4.葉や枝に流動パラフィンを塗布して水分の蒸散を抑えた苗では害が少なかった。以上の結果から寒風害は土壌凍結のため水分が地上部に補給されがたい状態にある苗が冬季間の風のために, 水をうばわれやすい葉, 頂芽, 側枝等が耐えうる限界を越えて脱水されるためにおこると考えられる。
著者
川田 邦夫 小林 武彦 船木 實 酒井 英男 広岡 公夫
出版者
富山大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

南極氷床などに見られる火山灰を含む汚れ層は、しっかりした自然残留磁化をもっていることが知られており、その磁化の獲得機構を明らかにしようとするのが、この研究である。このため一方で、雪粒子に磁性をもつ岩石粉末を混ぜ、低温室に保持しながら地球磁場による磁化獲得の過程を時間毎に磁化測定と顕微鏡観察を行って調ベ、他方、北アルプス立山にある比較的古い氷体を残す雪渓の雪氷試料について自然磁化獲得の実際を調ベた。実験室の研究では自然雪や人工的にふるい分けした雪などに各種磁性物質の粉末を混入したものを初期試料とし、約-20℃、-10℃、-2℃等の条件下で保持したものを調ベたが、磁性粒子を含む雪氷の磁場方向への磁化獲得の機構は雪氷の変態に伴って磁性粒子がある時期に向きの自由度を持ち、その過程で磁場方向に向いた状態で定着するものという結果を得た。乾雪の場合、雪粒子の結合が丈夫になっていく過程では焼結によって変態が進行するが、最初無方位に弱く付着していた磁性粒子は水分子の表面拡散や昇華による結合部への移動に伴い、雪粒から離れて向きを変える機会を得、外部磁場による力を受けた状態で再付着したり、結合部のくびれた部分などに集まり気味に固定される。このことは少し厚めに製作したアニリン固定法による雪氷試料の薄片観察により確認できた。湿雪の場合、ざらめゆきへの変態となるが、雪粒子表面にある水膜によって磁性粒子は容易に自由度を得る。そして凍結・融解のくり返される中で雪粒同士の結合部のくびれや凹部に強く集合した状態で磁場方向に配向気味に固定されることがわかった。野外の雪渓で採取された試料は中緯度にある氷河や雪渓で見られる湿雪の変態によって氷化に至ったものと考えられる。現段階で詳細な結論までには至っていないが、汚れ層の部位に磁化の集中化が現われていて、氷体の流動に関わる知見を得る可能性をもつ。
著者
永野 元彦 小早川 恵三 政池 明
出版者
福井工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

超高エネルギー宇宙線を観測する方法として、超高エネルギー宇宙線が大気中で作る空気シャワー中の電子が窒素分子を励起して発する蛍光を、遠く離れた場所に設置した望遠鏡で観測する方法が実施されている。また観測有効面積をより大きくするため、国際宇宙ステーションに望遠鏡を設置し観測するEUSO計画が日、欧、米の共同研究として推進されている。これらの観測で宇宙線のエネルギーを決定するには、大気中での電子による窒素分子の発光効率が基本であるが、十分なデータは存在しなかった。本研究は大気を模したチェンバー内で、電子による発光効率、発光時間の気圧依存性を測定することを目的とする。実験は、放射性同位元素^<90>Sr→^<90>Y→^<90>Zrのβ崩壊を利用して行った。N^+_2及びN_2の主な発光波長315,337,357,381,391,400nmを中心としたバンド幅10nmの干渉フィルターをとりつけた6波長領域で測定をおこなった。本測定中に乾燥空気中の値が従来の結果とかなり差があることが判明したため、乾燥空気中での再測定をおこない、結果をAstroparticle Physicsに投稿した。主な結果は以下のとおりである。(1)バンド幅中に2本のラインが入っている場合には、それぞれの観測光子数と発光時間の気圧依存性から、二成分解析をおこない、計7本のラインにつき発光効率及びその密度、温度依存関数のパラメータを決定した。(2)宇宙線観測に必要な300-410nmでの発光光子数は1気圧、20℃の大気中で、1電子、1mあたり3.75±0.15である。この値はこれまで実験で使用されていた値より17%大きい。(3)この結果を使うと、Fly's EyeやHiRes実験で決めた宇宙線のエネルギーは平均10%大きく見積もっている。
著者
永澤 六郎
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.29, no.339, pp.15-16, 1917-01-30
著者
木下 誠一
出版者
北海道大学
雑誌
低温科學
巻号頁・発行日
vol.10, pp.13-26, 1953-03-25
著者
竹野 忠夫 中村 祐二 朱 学雷 西岡 牧人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

現在,大きな環境問題の原因として挙げられるすすに関して,その生成機構および抑制方法は見つかっておらず,未だ不明な点が多い.すすはNOxと並ぶ2大燃焼排出物であり,火炎中のその生成機構を理解することは我々人類にとって重要な課題である.これまでの研究報告によれば,すすはその前駆物質であるPAH(多環芳香族炭化水素)からできるとされているが,PAHの生成機構さえも十分に理解されていない部分が多い.そこで本研究では,対向流拡散火炎中を対象として,数値計算および実験を通じてPAHの生成機構を理解することを目的とする.まず平成10年度においては,約100種の成分と正逆500組の素反応を考慮したHai-Wangにより開発された化学反応機構を用いた数値計算により,PAHの中で最も重要な働きを示すベンゼン生成に関する知見を得た.その結果,C3系の反応物がPAHの基であるベンゼン環の生成に最も顕著であることがわかった.平成11年度においては,対向流拡散火炎中のベンゼンおよびその生成に関わると言われているC3系およびC4系の成分に着目し,それらの濃度測定をGC/MS(ガスクロマトグラフィー/質量分析計)を用いて行った.また得られた実験結果と数値計算で得た知見との比較・検証を行った.その結果,数値計算ではベンゼンおよびC3,C4系炭化水素の量を約半分以下にしか見積もらないことがわかった.また,ベンゼン生成領域は数値計算よりも定温領域に移り,それがすす発生に関係した影響であることも指摘できた.しかしGC/MSで得られる情報もまだ十分ではないので,上記で推測されたすす生成に関する物理を確実に述べるには,実験装置の工夫,または数値計算において別の反応モデルを用い,より総合的な評価をする必要がある.
著者
飯島 和子
出版者
千葉県立衛生短期大学
雑誌
千葉県立衛生短期大学紀要 (ISSN:02885034)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.17-21, 1987

今まで,雪の野山は活動しにくい,また一般に雪の世界の生き物は眠っていると思われていたため,積極的に観察に行こうとする人は少なかった。しかし,天候の安 定した時期であれば,山スキーやクロスカントリースキーを使って,容易に歩き回ることができる。実際に観察に出かけてみると,雪特有や現象や,雪上に残された動物の生活の跡を見ることができる.今回は,3月上旬に八甲田山麓において行われた雪上自然観察会での観察事項を報告するが,理科教育的な視点からも雪の特質や生物と環境との関係を考える上での好適な題材となると思われる。期日 1987隼3月7日〜8日 観察コース 八甲田山麓,青森県立青年の家周辺 参加者(財)日本自然保護協会自然観察指導員 他,45人 講師(財)日本自然保護協会研究員 青森県立青年の家職員他,5人
著者
高松 進 一谷 多喜郎
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.82-85, 1986-01-25

本邦未報告の Pythium okanoganense Lipps によるムギ褐色雪腐病の発生を確認した。病徴は P. iwayamai および P. paddicum による既知の褐色雪腐病の場合と同様であった。1982年から1984年にかけて福井県北東部地帯で調査したところ, 本菌は, 157圃場のうち10圃場で分離され, うち2圃場では最優占種であった。本菌は乾田で分離され, 湿田では分離されなかった。コムギ1品種(ナンブコムギ)とオオムギ2品種 (べんけいむぎ, ミユキオオムギ)に対して接種したところ, いずれの品種も雪腐症状を呈したが, ナンブコムギはべんけいむぎ, ミユキオオムギに比べて発病程度が低かった。P. iwayamai と P. paddicum に比べて病原力はやや弱いが, 本菌はわが国におけるムギ褐色雪腐病菌の一つと考えられた。
著者
和田 直也
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.前年度得られた成果を、本年度ソウルで開催された国際生態学会で口頭発表した。2.本年度は、周北極植物チョウノスケソウの開花結実繁殖様式を調べる予定であったが、調査地における開花個体数が例年に比較して非常に少なかったため、当初の調査予定を変更し、チョウノスケソウを除くバラ科高山植物の花粉発芽の温度依存性を明らかにすることを第一の目的とした。次に、少数ながら採取できたチョウノスケソウの種子を用い、同科雪田植物のチングルマの種子と比較することで、両種の発芽特性と温度依存性を明らかにすることを第二の目的とした。富山県立山山地で採取したサンプルを実験室内の恒温器で培養・栽培し、以下に示す結果を得た。3-1.周北極植物ではないが、チョウノスケソウと同所的に生育しているバラ科の風衝地高山植物、ミヤマダイコンソウおよびミヤマキンバイと同科雪田植物であるチングルマについて、花粉発芽の温度依存性を調査した。その結果、花粉の発芽率および花粉管の伸長量ともに、風衝地植物であるミヤマダイコンソウは最適温度がともに低く10℃〜15℃であった。それに対し、同科雪田植物であるチングルマは、前年の結果と同様に最適温度が20℃であることが確かめられた。風衝地にも雪田地にも生育しているミヤマキンバイでは、前記両種の中間的なパフォーマンスを示した。これらのことから、風衝地に生育している植物は周北極植物に限らず、花粉の発芽と花粉管伸長の最適温度が雪田植物よりも低く、開花時の低温環境に適応している可能性が示唆された。3-2.周北極植物・風衝地植物であるチョウノスケソウは、低温湿潤処理を行わなくとも種子が発芽することが分かった。チングルマは低温湿潤処理を行わなければほとんど発芽しなかった。また種子の最適発芽温度はチョウノスケソウの方が5℃低かった。30℃以上の高温環境では、チングルマの種子の方が耐性が高かった。以上のことより、花粉および種子の発芽ともに、風衝地植物はより低温環境に雪田植物はより高温環境に適応していることが示唆された。従って、温暖化がそれぞれの種の繁殖成功に及ぼす影響も異なることが予想された。
著者
佐藤 信之助 吉岡 昌二郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会北陸支部会報 (ISSN:0388791X)
巻号頁・発行日
no.6, pp.11-14, 1972-03-25

1.13種の寒地型イネ科牧草類を用いて生育特性を比較し, 主として北陸の低標高地帯における季節生産性について検討した。2.2カ年合計収量はトールフェスク>オーチャードグラス>リードキャナリーグラスの順に上位を占めたが, 平衡的な季節生産性の点ではトールフェスク, リードキャナリーグラスがすぐれていた。3.上位3草種について検討した結果, 季節的な収量の変動は単位面積あたり茎数および一茎重の変動と関連しているが, それぞれ草種毎に違いが認められ, 特にリードキャナリーグラスの盛夏以降の収量が高い水準で維持されたのがいちじるしく特徴的であった。4.その他の草種では夏枯れの影響がいちじるしく, そのことが季節生産性および維持年限に大きく影響するものとみられた。5.各草種とも雪害による直接的な被害は軽るく, むしろ融雪後の急激な生育の点で季節生産性に大きく影響するものと思われる。