著者
小松 孝彰 前田 克彦 池本 誠也 細矢 剛 小松 孝彰 小川 義和 細矢 剛 久永 美津子
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

国内外の博物館を調査した結果、人々の科学リテラシーの涵養に資する展示を実現するために、多くの場合、展示評価が活用されており、それを展示開発に組織的・継続的に取り入れ、効率的・効果的に実施していくことが重要であることがわかった。また、これまで諸文献において扱われていなかった展示評価の各調査手法の効果的・効率的な実施方法に関して、調査の試行・実践を通して多くの具体的な知見を得ることができた。
著者
小川 侃
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

今年度においては,前年度の成果を踏まえて,さらに諸科学のなかで機能している構造や機能の概念を探究した。1)諸科学に分化している構造理論を全体として可能にしている構造概念がどのような哲学的・存在論的意味をもつかを検討した。とくに構造主義的な方向の今世紀最大の言語学者,ロマン・ヤコブソンや,構造人類学者レヴィ・ストロースなどの言語学・民族学の領域での構造概念を取り上げ,さらにル-マンなどの新しい構造論的社会科学理論のうちの構造概念を批判的に洗いなおし,存在論的に構築しなおすことを試みた。とりわけ記号や構造の概念のもつ存在論的な基本的な意味を吟味した。これは,アリストテレス的な「質量と形式からの構成」という存在の見方が構造理論のなかでどこまで維持されえ,また解体されるべきかという問いにかかわったのである。2)次いで,構造の存在論にかかわる本研究は,さらに,政治体制一般についての研究に具体化の道を見出し,その手始めとして幕末における「後期水戸学」の大義名分論が構造論的な思想に近いことを発見した。3)最後に,初年度および2年度の研究の成果にもとづいて,構造論的存在論としての現象学の体系化を企てている。さしあたり部分と全体や,接近と遠隔,対峙性と背馳性などの構造論的な諸概念をそれらを可能にする「基底づけ」の概念とともに再構成している。

1 0 0 0 OA 豪傑の少時

著者
宮崎繁吉 著
出版者
大学館
巻号頁・発行日
1900
著者
沈 学順 木本 昌秀 住 明正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.217-236, 1998-04-25
被引用文献数
7

実測SSTを与えた大気循環モデルの10年間積分(1979-1988)を用いて、広域インドモンスーンの年々変動とそれと関連したユーラシア大陸上の陸面プロセスについて調べた。用いたモデルは東大気候システム研究センターと国立環境研究所の共同開発によるものである。南アジアモンスーン域における上下の西風シアをモンスーンの強弱の指標として用いた。モデルでシミュレートされたモンスーン環境の年々変動は観測と良い対応を示した。モデルのモンスーン変動にはユーラシア大陸上で顕著な前兆現象が見い出された。弱いモンスーンの前の冬に、北緯50°より南のほうで積雪がより多く、強いモンスーンの前にはパターンが全く逆になっている。季節の進行とともに、春にはモンスーンの強弱に応じて土壌水分等にも顕著なコントラストが見られた。これらのシグナルは観測の統計結果及び他のモデル実験結果と整合的である。陸面での熱収支解析により、雪解けの遅いチベット高原では積雪のアルベド効果が顕著であり、その西の標高の低い区域では土壌水分偏差による蒸発偏差や増えた雲量によるアルベド効果の方が卓越していることが見い出された。冬〜春の陸面プロセス偏差が引き続き夏のモンスーンの強弱に定量的にどの程度のインパクトをもつかを数値実験によって調べた。このモデルでは、陸面プロセスはボジティブフィートバックとして働きはするが、モンスーン循環の偏差の符号を決定する程の影響力はない。ENSOによる熱帯東西循環の変化の直接的な影響が量的にはより支配的役割を果たすようである。
著者
中村 洋介
出版者
公文国際学園中等部・高等部
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

丹沢山地の標高1,000m以上に分布するブナ林の衰退状況を把握し、その要因について地形学的、気候学的に明らかにすることを目的に調査した。調査は現地踏査、植生調査および1960年代から現在までの空中写真の判読である。調査対象地域はおもに丹沢山地の畔ケ丸-大室山-蛭ケ岳-丹沢山-塔ノ岳の主稜線部である。調査の結果、おもに西向き・南向き斜面でブナの枯損・枯死が多く、風の通り道となる鞍部でも顕著であった。この西向き・南向き斜面には主稜線部でササ草原が多いことが判読され、この周辺においてもブナの枯損・枯死が多くみられた。冬季の踏査では、ブナの枯損・枯死がまとまってみられる場所や西向き・南向きのササ草原で相対的に積雪量が少ない、または積雪がほとんどないことが明らかになった。空中写真により1960年代から現在までのブナ林周辺の植生変化を判読すると、かつてはブナ林であったと推測される落葉広葉樹林が西向き・南向き斜面で減少し、ササ草原が拡大していることが明らかとなった。丹沢山地玄倉川流域の主稜線部では、現在でも崩壊地が多く分布し、崩壊地の谷頭はササ草原になっていることが多かった。このような崩壊地の谷頭でブナの枯損・枯死がみられる。崩壊地の谷頭では風が集まるため相対的に強風になることが多かった。丹沢山地の風向分布は、冬季は季節風由来の西風が多く、ササ草原上の偏形樹も西風を示していた。夏季は南風が卓越していた。現在、主稜線部でブナが立ち枯れている南西向き斜面と健全なブナ林が広がる北東向き斜面において年間の気温をデータロガーによって観測中である。現地踏査では、ブナハバチによるブナの葉の食害が5月を中心に多く見られ、この食害が西向き・南向きの風衝地側で多いことが認められた。食害に遭っているブナでも風上側の北または東側のブナの葉は健全である。
著者
立花 義裕
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.697-715, 1995-06-25
被引用文献数
3

北海道石狩平野の降雪分布の特性について統計的な研究を行った。主に1982から1991年の冬季のAMeDAS毎時降水量データ用いて調べたREOF (rotated empirical orthogonal function)解析の結果、第1成分(31%)は山雪のパターン、第2成分(11%)は石狩平野を中心とする里雪のパターンになることがわかった。二つの成分の時間的な変化を調べたところ、里雪型は冬の後半に、また、昼間よりは早朝に多いことがわかった。次に、里雪型の降雪をもたらす気象条件を総観場及びメソスケール場の関連に着目して調べた。その結果里雪型の降雪が生じる場合には、北西季節風とは反対向きの寒冷な気流が海岸部の地表付近に存在していることが明らかになった。特に、降雪が1日以上持続する場合は、寒冷な気流は石狩川全流域におよぶ。この事実は、持続する里雪と北海道内陸部に形成される寒気のプールとの関連を示唆する。すなわち、カタバ風によって内陸の山から平野部に流れこんだ寒気が持続的に海上に流出する際に、海岸付近に収束帯形成され、持続的な降雪がもたらされると考えられる。さらに、里雪型降雪の際の総観揚を統計的に調べた結果、偏西風が非常に弱く、上空の気温が非常に低いことがわかった。このような総観場は、カタバ風の発生に好都合であり、上記の推測と整合的である。また、これらの総観場の特徴は他の日本海側の降雪域の特徴に似ていることもわかった。
著者
中井 裕一郎 坂本 知己 寺嶋 智巳 北村 兼三
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.581-588, 1995-11-01
被引用文献数
2

常緑針葉樹林では森林樹冠層の冠雪量が多いことから,降雪期における遮断蒸発量が大きくなる可能性がある。これは水資源としての積雪水量の損失であり,このような降雪の遮断蒸発量を気候条件や森林状態によって評価することが森林管理上重要である。このため,降雪の遮断蒸発量を調べることを目的として,札幌市の密な21年生トドマツ林において冠雪量の収支に関する観測を行った。まず,冠雪重量の連続測定の結果,冠雪量の時間変化から蒸発量の日変化および冠雪量の冬期間を通じた変動特性が得られた。冠雪としての保水量は最大20mm以上になった。真冬日の連続する厳冬期は冠雪が長期間継続して維持されたが,より温暖な時期には降雪中と降雪直後をのぞいて冠雪の完全な消失がしばしばみられた。次に,森林内外の降水量の収支によって1〜2月の8〜14日間ごとの積算蒸発量を求めた結果,各期間の平均蒸発量は0.7〜2.3mm・d^<-1>の範囲にあった。
著者
長谷川 学 塚本 直也
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衞生學雜誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.782-785, 2009-09-15
被引用文献数
1 2

In accordance with the Declaration of the Environment Leaders of the Eight on Children's Environmental Health (Miami Declaration) in 1997, the Japanese government (the Ministry of Environment, Japan) organized a commission tasked to discuss issues related to the present situation of the environmental health of children (Advisory Commission for Children's Environmental Health). Epidemiological research on children's environmental health has been recommended as one of the priority projects by the commission because the effects of environmental factors on children's health are clarified by only studies using children as subjects, particularly, a birth cohort study, and not by animal experiments. The Advisory Committee of Epidemiological Research on Children's Environmental Health was established in 2007 and decided to start a nationwide birth cohort study following up children from pregnancy to 12 years old. Under the Advisory Committee, a working group composed of scientific experts, including epidemiologists, toxicologists, obstetricians, orthopedists, and statisticians, was organized in 2008. Pilot studies are going to be conducted in several areas in Japan with the support of the working group. Study hypotheses will also be decided by the working group soon. The full-scale survey will start in 2010.<br>
著者
大森 保 藤村 弘行
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

サンゴ礁における炭酸系変動の時系列観測により、瀬底島サンゴ群集は二酸化炭素濃度=945ppmvに達すると石灰化速度がゼロになること、および、アラゴナイト飽和度が1(平衡状態)となる結果が得られた。IPCC報告書の数値予測モデルによれば、早ければ21世紀末以降に、大気中の二酸化炭素濃度が950ppmvレベルに達し、アラゴナイト質骨格を形成する海洋生物の生存が極度に脅かされ、サンゴ礁生態系激変の可能性が示唆される。サンゴ飼育水槽実験により、光ストレス・農薬・有害化学物質ストレスに対する代謝応答(光合成・石灰化)、枝状サンゴの骨格形成における量元素(Sr, Mg, U)の取り込み応答、稚サンゴの骨格形成の応答等について解明した。さらに、サンゴの骨格形成における基質タンパク質の効果について解明した。
著者
柳井 徳磨 後藤 俊二 杢野 弥生 平田 暁大 酒井 洋樹 柵木 利昭 吉川 泰弘
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.41-48, 2003-03

サル類,特にマカク属において結核症は依然として重要な感染症である。アカゲザルに発生した牛型結核症および非定型抗酸菌症(鳥型結核菌症)の病理学的特徴について示す。アカゲザルの群れに牛型結核菌症が集団発生した。13例が急性の経過で瀕死に陥り,剖検では,肺,脾臓,肝臓,リンパ節および胸壁に著明な黄白色結節が認められた。組織学的には,いずれも肺および付属リンパ節,肝臓および脾臓に中心部が高度な乾酪壊死を示す結節状病変がみられた。結節状病変では,中心部は高度に乾酪壊死し、これを取り囲んで類上皮細胞,稀にランゲルハンス型巨細胞,さらにリンパ球の浸潤が認められた。抗酸菌染色では,乾酪壊死巣内には,少数の陽性桿菌が認められた。一方,非定型抗酸菌は,SIVに感染し免疫抑制状態にあるアカゲザルの腸管の粘膜と腸間膜リンパ節に肉芽腫性病変を引き起こした。多数の抗酸菌を容れた泡沫様大食細胞が肥厚した腸管粘膜および腸間膜リンパ節に認められた。マカク属は結核菌と非定型抗酸菌の双方に高い感受性を示すことから,集団発生の可能性に留意する必要がある。