著者
木庭 亮二
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

学校教育において放射線に関する教育はほぼ皆無であるが,実際には様々な分野で使用され,生活の向上に役立っている。それについて啓発活動を行おうとしても,大学の施設教職員では少人数のため,通常の業務の合間に準備を行うのは難しい。啓発活動の開催についてある程度のシステム化がなされれば,大学の施設職員等の少人数で対応が可能と考え本研究を開始した。一般向けに広島大学自然科学研究支援開発センターアイソトープ総合部門主催の実習「目で見る放射線実習」(以下「実習」)を平成19年8月1日に,公開実験「霧箱で放射線・宇宙線を見てみよう」(以下「公開実験」)を同年11月3日に開催した。実習では広島県及び東広島市教育委員会の後援を得て,周辺の中学校,高校へ開催のポスターを配布し,実験や測定に興味のある参加者を募った。参加者は幼児から一般までの16名で身の回りの放射線についての講義を行った後に霧箱を利用した放射線の観察とγ線測定器を利用した身の回りの放射線の測定を行った。内容について参加者からは概ね好評を得たが,主催者としては募集の際の広報の見直しが今後の課題となった。今後は市の広報誌等の活用を考える。公開実験は広島大学大学祭の参加事業として開催した。来場グループごとにスタッフが一人付き,放射線についてポスターを使い説明を行った後,霧箱の観察,γ線測定器を利用した身の回りの放射線の測定を行った。来場者数は乳幼児を除き77名で,概ね好評を得た。スタッフ側の問題点して随時訪れる来場者への対応のために多くの職員の必要数となることが挙げられるが,説明を開始する時間を固定する等で対応は可能と考える。今後はさらに内容や形態を検討し,少人数での効率的な啓発活動の開催を模索する予定である。
著者
沼田 徳重
出版者
岩手大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

[研究目的]小、中、高生の理科離れの対策として、これまで岩手大学技術部及びINS「岩手・ネットワーク・システム」等との共同で子供科学教室、ショッピングセンターでの科学展並びに大学祭での技術展に参加してきた。本研究では、次の段階として「理科」と「もの作り」は楽しいもの作るよろこびをより多くの人に体験して貰うために創意工夫した出前教室に取り組み、理科離れ対策に貢献した。[研究方法・実施結果]平成19年度は次の会場で以下の通り実施した。1.7月北上市で開催された、北上工業匠祭に「台所は電池でいっぱいのテーマで」飲料水・野菜・果物・調味料など身近にあるものを用いて出店した。子供からお年寄りまで多くの参加者から好評を得た。2.8月岩手県矢巾町煙山地区の小学生を対象に夏休み自由研究の参考として「どんなものが電池になるか試してみよう」家庭で身近にあるものを持ってきてもらい、電圧の測定を行った。同時に、電気回路は電子ブロックを用いた「うそ発見器」、「ラジオの製作」、指導者が作ったゲルマニウムラジオを農示した。楽しかったので、次回も開催して欲しいと要望があった。3.10月岩手大学祭に「台所は電池でいっぱい」並びに「電子ブロックを用いた回路作り」と「レゴブロック」を用いたおもちゃ作りを実施し子供だけでなく、大人も夢中になって作った。「実施して感じたこと」子供たちは興味を持って参加した、次に繋がる可能性があることを感じた。また、北上工業匠祭ではロボコンの全国大会に参加した小学生にモーターのこと、プログラムのことなどを質問された。どの会場でも親が子供達より興味を示し、色々な質問が出され楽しい一時であった。最後に出前教室は対象者を絞ること創意工夫に時間をかけ余裕を持つことが必要であると痛感し、次回の参考にしたい。
著者
後藤 清豪 高田 秀志
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2010-DBS-151, no.41, pp.1-8, 2010-11-05

現状のウェブでは検索エンジンや推薦アルゴリズムの発達により,求める情報を容易に得ることが可能である.しかし,明確に求めているわけではないが,与えられれば好奇心が刺激されるような情報である「意外な情報」を得る手段として確立されたものはない.一方で,日常生活においては,人との交流や会話などから「意外な情報」を偶然得られることがある.そこで本研究では,ソーシャルメディアにおいて,意外な情報の提供者になり得る人物を推薦する手法を考える.その一つとして,ソーシャルメディア上のユーザの行動から,被推薦者にとって意外な情報の提供者となり得る人物を推薦する手法を提案する.また,本手法をTwitterを対象として実装し,推薦した人物が被推薦者にとって意外な情報の提供者になり得るかどうかを,他の人物推薦システムと比較して検証する.
著者
田代 祐一 大石 哲也 越村 三幸 藤田 博 長谷川 隆三
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2010-DBS-151, no.40, pp.1-6, 2010-11-05

Web上の情報が増大するにつれ,ユーザが望む情報を推薦したり,フィルタリングしてくれるような技術の必要性が高まっている.近年,普及しているソーシャルメディアのひとつにソーシャルブックマークがあるが,このソーシャルブックマークにおけるあるユーザのブックマーク情報はユーザの嗜好に基づいてフィルタリングされた情報とみなすことができる.そこで,本研究では特定のトピックについて有用な情報を多くブックマークしているユーザを発見し,推薦する手法を提案する.
著者
北山 大輔 李 龍 角谷 和俊
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2010-DBS-151, no.35, pp.1-8, 2010-11-05

ある目的地への行き方を調べるなど旅行の計画を立てる時に,デフォルメ地図は頻繁に利用される.しかしながらデフォルメ地図は過剰な編集や誤った編集によって,ユーザに誤解や誤情報を与えることがある.そのため,地図の信憑性を分析し,デフォルメを評価する手法が必要となる.デフォルメ地図の種類によって,許容される編集と許容されない編集があると考えられる.例えば,道案内をするための地図であれば,参考として書かれている周辺のオブジェクトの位置関係は誤っていても許容されるが,経路上のオブジェクトの位置関係は正確でなければならない.このように,デフォルメの評価はデフォルメの種類ごとに異なると考えられる.そこで本研究では,デフォルメ地図に記載されているオブジェクトの空間的な配置の特性と,表示されているオブジェクト間の意味的な関係に基づきデフォルメ地図を分析する手法を提案する.
著者
清水 かおり 高良剛 ロベルト 金城 俊昭 安慶 名洋克
出版者
沖縄県立看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

離島住民参加型の災害医療対策啓蒙活動として「命どぅ宝・ユイマールプロジェクト」に参加し、離島講習会の開催による離島住民への知識・技術提供を行った。3年間の沖縄県遠隔離島における講習会受講実績は約1,160名(19カ所28回)である。講習会の都度、指導者である保健医療従事者への学習会を実施し、各離島の特徴・対象者を考慮した指導内容、指導方法についての討議、およびフィードバックを行った。内容はプロジェクトのメーリングリスト上でも公開し共有した。平成19年9月には、この講習会を受講した離島住民3人によって、目の前で心肺停止に陥った同僚に対しAEDを用いた心肺蘇生法を実施して救命し、後遺症無く社会復帰を果たした。
著者
岡田 崇 湯本 高行 新居 学 高橋 豐
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2010-DBS-151, no.33, pp.1-8, 2010-11-05

本論文では,Web 上での概念間の共通性に基づいた比較可能性の判定を行う手法を提案する.比較可能性とは概念が持つ重要な特徴が共通しているかどうかを表すものであり,似ているかどうかを表す指標である類似性とは異なる.概念は一般的な言葉を複数用いて説明できる語であり,その説明には他の概念や説明語を用いて表現される.説明語とは一般的に用いられる言葉のことで,それ以上の説明が不要な語である.本研究で扱う概念は商品や機能などに限定している.比較可能性の判定には,概念と説明語から生成した重み付き有向グラフを用いて行う.具体的には,概念の持つ特徴などを説明している文から重要な語を抽出し,それらの集合の関係から判定を行う.提案手法の有用性を評価するために,評価実験を行った.実験により,比較可能な概念間において,共通する重要な特徴が抽出できていることがわかった.
著者
本村 徹太郎 清水 敏之 吉川 正俊
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2010-DBS-151, no.29, pp.1-8, 2010-11-05

近年,多くの XML データが蓄積されるにつれ,XML キーワード検索が重要になっている.有用な結果を得るためには,効果的な検索結果を効率的に求めることだけでなく,検索結果を理解できるような情報を付加することが望ましい.我々は,検索結果の理解支援のために,検索結果と同じ結果を返す代替問合せを取得する方法を提案する.代替問合せは検索結果の異なる側面を表しているため,利用者は検索結果の隠れた関係を推測することで検索結果を深く理解する,あるいは利用者自身の問合せを洗練することなどが可能となる.
著者
押野 泰平 浅野 泰仁 吉川 正俊
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2010-DBS-151, no.27, pp.1-8, 2010-11-05

Web の構造的特徴に基づくグラフパターンは,web 解析や情報検索に重要な役割を果たしている.我々は web の構造情報だけでなく時間情報をも用いた新たなグラフパターンとして,時間グラフパターンというものを提案し研究を行ってきた.これまでの研究では,頻出グラフパターンを列挙することによってサンプルグラフ集合から時間グラフパターンをマイニングする手法を提案した.本稿ではマイニングされたパターンを用いた web 解析として,web サイトを話題の盛り上がり時における三つの役割として一次情報源,盛り上げ役,まとめ役に分類することを試みる.新たなグラフマイニング手法を用いることで,これまで達成できなかった三つの分類が可能になったことを示す.
著者
山本 禎紀 藤田 正範 坂本 竜一 古本 史 安保 佳洋 SULONG Adnan 安保 佳洋
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-9, 1996-07-23

乳量の高い泌乳牛に対して、一時的に飼料摂取量を変化させた場合の熱産生量と体温調節性生理反応の応答性について、秋の常温期と夏の高温期に調べた。熱産生量はTDN摂取に応じて直ちに反応し、常温期での平均熱産生量は明らかに摂取量に応じて変化した。しかし、高温期の熱産生量は常温期に比べて明らかに高く、摂取レベル間の差も常温期ほど明らかではなかった。飼料摂取と気温上昇に伴う体温調節性生理反応の発現順序は、直腸温と体幹部体表温の上昇につづく呼吸数の増加であり、放熱機能の稼動には、体熱量の増加や体温の上昇が必要不可欠であると考えられた。飼料摂取量と各反応レベルとは密接に関係しており、給与飼料量の制限によって体温の上昇をある程度抑制できるものと思われた。なお、心拍数と熱産生量との関係から、平均心拍数を用いた精度の高い熱産生量推定式を提示した(Y=-0.27+0.552X、r=0.95、PE(Sy・x/y^^-)=4.4%、Y=熱産生量(kJ/kg^<0.75>h、X=心拍数(/min))。日本家畜管理学会誌、32(1) : 1-9.1996.1995年10月9日受付1996年2月22日受理
著者
角皆 宏 都築 正男 梅垣 敦紀 森山 知則 陸名 雄一 星 明考 小松 亨
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ガロア理論とは一言で言えば数の対称性の理論であり、中でも構成的ガロア理論は、狙った対称性を具体的明示的に作ることを主眼とする研究である。特に本研究課題では、非可換な対称性(ガロア群)を持つ場合を取り扱い、幾何的な対称性を利用する手法を中心として、主に5次・6次の多項式に関わる場合に対し、様々な特色ある対称性を持つ多項式を具体的に構成した。得られた多項式が簡潔な表示を持つことも意味があり、それにより幾らかの数論的性質も明らかにすることが出来た。
著者
見市 高一 川越 恭二
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2010-DBS-151, no.25, pp.1-7, 2010-11-05

Yahoo! 知恵袋や教えて! goo などの QA サイトで質問回答の検索を行う利用者 (以下,検索利用者と呼ぶ) が多数存在し,日常の疑問の解決や情報交換が行われている.QA サイト内において過去に質問を行った質問者の質問意図と,検索利用者の検索意図との間に差が生じるため,求める回答にも差が生じ,結果的に検索利用者の意図した回答が取得できないという問題が存在する.そこで,検索利用者の検索意図が複数存在することに着目し,これらを入力することでシステムがその意図を反映し,検索利用者の意図した回答の検索が行うことが可能であると考えた.本研究では,この複数存在する検索意図のことを S 項目と定義する.評価実験の結果,Yahoo! 知恵袋の検索結果と比較して,S 項目を用いた回答検索手法の検索精度が向上した.
著者
野沢 純一
出版者
足利工業大学
雑誌
足利工業大学研究集録 (ISSN:0287086X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.23-24, 2008-03

The author has proposed the paper that included the original songs of formulae and terms in the area of electrical and electronic engineering. Music tends to be connected with the long-term memory, and the effect is reported in the musical therapy. The musical activities are performed by the right brain predominance. The use of the songs in the lesson achieves the balance of the brain activity. This paper shows three original songs. The titles are the source of electromagnetic fields, Euler's formula, Fourier transform respectively.
著者
野沢 純一
出版者
足利工業大学
雑誌
足利工業大学研究集録 (ISSN:0287086X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.21-22, 2007-03-20

Music has the beneficial effects in human mind and body. The fact that after the interpretation of arts, neurons in the brain cells grow remarkably has been reported recently. It has been evident to the education that the arts aid in promotion of leaning. The songs of formulae and terms in the area of electrical and electronic engineering relieve beginners of the burden to memorize those. This paper shows three original songs. The titles are the component parts of electric circuits, the solutions of quadratic equation, Laplace transform respectively.
著者
明石 哲郎 河辺 顕 坂本 竜一 宜保 淳也 井上 直子 小島 瑞穂 久野 晃聖 有田 好之 伊藤 鉄英 名和田 新
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.713-718, 2003-06-05
被引用文献数
8

膵仮性嚢胞は, 急性膵炎や慢性膵炎の合併症として, しばしば経験する. しかし, 縦隔内膵仮性嚢胞はまれで, 我々の検索しえた範囲では, 本邦報告例は21例である. また, その治療は, 大多数が嚢胞摘出術や嚢胞ドレナージ術などの外科的治療を受けている. 今回, 我々は抗酵素療法に抵抗性を示す縦隔内膵仮性嚢胞合併膵炎に対しソマトスタチン誘導体投与が奏効し, 保存的に嚢胞の消失を認めた症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
著者
大羽 和子 山本 淳子 伊藤 幸子 藤江 歩巳 竹内 若子
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.234-240, 2002-05-24
被引用文献数
1

日常, 果実や野菜の褐変防止に食塩が用いられる. 酵素的褐変を触媒するポリフェノールオキシダーゼ (PPO) の活性は食塩により阻害されるといわれている. 本研究では, 市販のりんご果肉, ジャガイモ塊茎, 黒緑豆もやし胚軸の粗酵素液中に複数の異なるPPOアイソザイムが存在することを, SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で明らかにした. また各アイソザイムの食塩に対する感受性には若干の差異がみられた. 次に, 食塩によるPPOの阻害様式を明らかにするために, 黒緑豆もやし胚軸からpI 6.7のPPOアイソザイムを硫酸アンモニウム分画, 2種類のカラムクロマトグラフィーにより426倍に精製した. 本酵素は分子量約40kDaのほぼ単一なたんぱく質にまで精製された. 精製酵素のクロロゲン酸 (基質) に対する見かけのKm値は1.3mMであり, 食塩による阻害様式は非拮抗型で, その阻害定数 (Ki) は0.22Mであった.
著者
甲斐 章義
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.231-235, 2005-03-22

広島大学理学部・大学院理学研究科では, 毎年11月初旬の広島大学祭の時期に「理学部・理学研究科公開」が行われている。その一環として, 次世代を担う中高生に「理学」への関心をさらに深めてもらう機会として, 「中学生・高校生による科学シンポジウム」が企画されており, 今年度で7回目を迎えた。ここでは, 自然科学 (数学を含む) に関する日頃の研究活動の成果を, グループあるいは個人で発表する場が設けられており, 多くの学校から熱心な取り組みが毎年発表されている。今年は11月6日 (土) に理学部E002講義室にて開催され, 全部で7校から18件の発表が行われた。その年の研究発表の件数にもよるが, 1つの発表につき, だいたい10分くらいの時間で発表が行われ, その後2〜3分くらいの質疑応答がある。我が校は4年前からこのシンポジウムに毎年参加しており, 2001年度は数学の発表が1件と理科の発表が1件, 2002年度は数学が2件と理科が1件, 2003度は数学が3件, そして今年度は数学が2件, 理科が1件の発表を行った。これらの発表のうち, 数学の取り組みについてごく簡単にではあるが報告したい。
著者
細川 友秀 衣笠 尚子
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.61-70, 2003-03-31
被引用文献数
1

我々の研究室は,地域社会に向けて開かれた大学をめざして教育大学としての特色ある取り組みを模索してきている。その取り組みのひとつとして,1997年の大学祭(藤陵祭)において,研究室の研究内容を地域の人々にプレゼンテーションするという企画をはじめて実施した。以降,この企画を毎年充実させる努力をしつつ6年継続してきた。2002年の企画では,例年のように「卒業研究生は専門分野の研究を理解し,その内容について一般向けのプレゼンテーションと教材化のトレーニングをすること」を主要な目的の一つとして卒業研究に関連した展示を行った。さらにそれに加えて,教材開発を卒論のテーマとする4回生が試作中のアニメーションと様々な食材に繁殖したカビを使って模擬授業を数回実施し,試作のアニメーションと模擬授業に対する実験的評価を得るためにこの機会を利用した。模擬授業は「免疫ことはじめ」というタイトルで小学校高学年から中学生を村象として,高等動物の体を微生物の感染などから守る生体防御機構についてやさしく説明するというテーマで実施された。模擬授業受講者のアンケート回収合計は54名であり,小学1〜3年生8名,小学4〜6年生14名,中学生5名,大学生11名,社会人16名であった。小学高学年から大学生の対象者うち,「理科が大好き」あるいは「理科が好き」と答えた人は,小学高学年57%,中学生40%,大学生82%であり,また,免疫のしくみについて「よく知っている」と答えた人はなく,全員が「知らない」あるいは「少しは知っている」と答えた。このような対象者が模擬授業を受けた後,小学高学年の64%,中学生の80%,大学生の82%がそれぞれ「免疫について興味をもった」と回答した。また,模擬授業の説明について,小学高学年の86%,中学生の全員,大学生の91%が「とても分かりやすい」あるいは「分かりやすい」と回答した。アンケート調査の対象が,マウスを見たりさわったりしようとする人で理科系の研究展示を見ようという人に限定された集団であることや集団が小さいことなどの理由により,アンケートの結果から明確な結論を引き出すことはできないと考える。しかし,模擬授業受講者の反応とアンケート結果は試作教材の内容と授業構成の修正点や改善の方向を考える上で大いに参考になった。2002年度の「マウスといっしょ」全体の企画には,これまでと同様に地域の小中学生とその保護者を中心として多数の人々が参加した。これまでどおり参加者には簡単なアンケートに答えてもらい,展示の感想,評価,研究室への要望を聞いた。アンケート回収分の人数は127人であった。アンケートの回収数が例年の60%程度にとどまったことが注意すべき点である。大学生・社会人の数は昨年とほぼ同じであるのに対し,小学生〜高校生の回答者が減少していることが特徴であった。ただし,今年の小中学生の参加者は過年度からのリピーターや期間中のリピーターが目立った。このことは展示そのものは参加者にとってもう一度行ってみたいと考えさせる魅力があることを示している。新規の参加者を呼び込む努力が足りなかったと考え,この点を来年の課題とする。今後もこの企画を継続することで経験を積むとともに,大学を地域に開放し大学と地域社会との結びつきを強めるための特色ある活動としていくことをめざす。