著者
ナラキョウイクダイガクスウガクケンキュウカイ 奈良教育大学数学研究会
出版者
奈良教育大学数学研究会誌刊行会
雑誌
飛火野 : 奈良教育大学数学研究会誌
巻号頁・発行日
vol.6, 1990-06-30

「現場からの報告」特集号【表紙】【目次】【巻頭言】【近況報告】河上哲【特集 ―教育現場から―】散数雑話―小学1年生の教室から― 上田善彦/中学校からの報告 木下善博・吉田徹・林田晃典/洋上研修に参加して 丸井理恵/『回想』 松田佳延/最近の奈教大と数学教室における情報教育の動向 菅原民生【論説】学校数学の教育性 平林一栄/対称式と不等式 菅原民生【'89年度数研活動をふり返って】研修旅行 岡亮治/夏の『算数・数学教室』 伊藤英彦ほか/教育実習を終えて 西仲規博・江川祐子/学祭を通して 栗本明徳【1989年度卒業・修士論文】【編集後記】
著者
大平 栄子
出版者
都留文科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

現在までに出版されている分離独立文学テクスト、関連する映画・テレビドラマ、民謡などを網羅的に収集し、分析し、分離独立文学の全体像を把握した。これにより、分離独立文学が、インド英語文学全体の中において極めて重要な位置を占めることを確認し、インド英語文学の体系的把握に向けた第一歩を踏み出すことができた。また、分離独立文学研究書を網羅的に収集し、研究史の整理、および研究動向の分析・評価を行なった。同課題に関連するインドの研究者や、同テーマを素材とする映画監督との意見交換、および分離独立体験者の家族からの聞き取り調査などを行い、課題に関する総合的理解を深めた。また、分離独立に関する最新の歴史研究を検討し、争点を検討し、従来の見解がどのように変更されているかを確認した。分離独立文学は女性と社会的弱者に甚大な被害をもたらすことになったため、ジェンダー研究の視点から分離独立文学研究の深化を図った。暴力の被害者としての女性というイメージを反復するテクストとは異なる、宗教紛争を超克するジェンダーの視点をもつヴィジョンが提示されているテクストの存在を探ることにより、分離独立をめぐる多様な視点を浮き彫りにした。
著者
奈良教育大学数学研究会 ナラキョウイクダイガクスウガクケンキュウカイ
出版者
奈良教育大学数学研究会誌刊行会
雑誌
飛火野 : 奈良教育大学数学研究会誌
巻号頁・発行日
vol.8, 1992-07-03

【表紙】【目次】【巻頭言】森裕美子【数学教室からの近況報告】神保敏弥【オイラーの標数の物語】菅原民生【菅原先生に教わって】藤田隆【菅原先生の思い出】中嶋憲作・丸井理恵・土井真弓・門田青【偏在度の解析】坂口杲一【アメリカで生活して】重松敬一【MATHEMATICS IN AMERICA】前田幸英【Life in the United States】前田幸英【一太郎の数式入力アイデア集】梅沢喜治【初心者のためのTeXの使い方】森田直人【ロータス1-2-3入門】坂倉亜樹・清水三奈【プログラミング入門】神保敏弥【アークタンジェントハイパポリック物語】山田智子【中学校からの報告】廣瀬保善【算数散歩】上田喜彦【ある授業から】西仲則博【1991年度数研活動】研修旅行 猪奥崇/夏の「算数・数学教室」北村友彦・橋本和弘・渡邊智子・渡辺美香・新内伸幸・中村英則・松永智穂/教育実習 坂倉亜樹・甘中良和/大学祭 竹川宏孝【1991年度卒業・修士論文要約】【編集後記】
著者
熊江 隆 荒川 はつ子 内山 巖雄
出版者
国立公衆衛生院
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

ラットを用いた基礎的研究の成果を多くの学会に報告した。Wistar系ラットでは、成熟後の22週齢から45週齢において非特異免疫能に変化が認められた。さらに、通常飼育の対照群と強制運動群及び自発的運動群の体重に著明な違いが認められたが、隔離ストレス群と対照群の体重はほとんど差がなかった。また、肺胞マクロファージの活性酸素産生能には、これらの群間でほとんど差が認められなかった。肺における生体内活性酸素バランスをみるために、ミトコンドリア及びミクロソーム分画におけるスーパーオキシド産生、抗酸化機構としてスーパーオキシドディスムターゼ活性等の測定を行ったが、これらの群間でほとんど差が認められず、成熟後からのストレス負荷では生体内活性酸素バランスへの影響が小さいように思われた。また、肺胞マクロファージ活性をみる目的で行った蛍光測定に関する研究成果はLuminescenceに掲載された。一方、食事調査方法の開発、競技選手の食習慣等の調査成績、さらに心理的調査に関する知見はEnviron.Health Prevent.Med.、臨床スポーツ医学、体力・栄養・免疫学雑誌に掲載された。また、大学駅伝選手における好中球の活性酸素種産生能の変化を検討した結果はInt.J.Sports.Med.に掲載され、ジョギング愛好家のNatural Killer細胞活性と好中球の活性酸素種産生能の変化を検討した成果はJ.Phys.Fit.Nutr.Immunol.に掲載された。さらに、血清より生体内活性酸素バランスを評価する方法として、活性酸素種の消去能力をみる総抗酸化能の測定方法を確立し、その機序や大学駅伝選手における変化について学会で報告した。一方、65歳以上の地域住民を対象者とし、運動習慣の有無による生体内活性酸素バランスの違いを血清の抗酸化物質量や総抗酸化能等を測定して検討したが、男女共に運動習慣の影響は認められなかった。
著者
岩垣 丞恒 新居 利広
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

長距離選手の持久性能力の指標は最大酸素摂取量とされるが、一流選手になるほどperformanceとこの関係が成立していない。この背景を血液中の赤血球指標(RBC、MCV、MCHなど)に求め、赤血球指標の特徴との関係を検討した。先ず、大きな矛盾点が見出された。4年間に亘る長距離選手の赤血球指標を縦断的に測定すると、持久性トレーニングに伴い、赤血球数(RBC)が低下し、血液粘性も低下してくることであった。これらの低下は酸素摂取量の立場から見ると、負の条件下になるが、現実的には、このような変化のなかで自己のperformanceが亢進していた。この背景を赤血球指標としてのMCV、MCHで見ると、RBC低下にしたがってMCV、MCHの代償的増加が出現していた。MCVのこのような変化は少なくともplasma lipidsとの間の生化学的要因にあると予測した。リン脂質を多く含むplasma HDLには赤血球膜脂質を構成する物質が多い。そこで、MCVとplasma HDLとの相互関係を調べると、有意な相関係数を示す群とこれらの関係が成立しない群に分かれ、それぞれおよそ50%づつであった。赤血球膜PCとplasma PCとの間にはLCATを介した相互関係が存在することから、plasma PCとplasma HDLとの関係を調べると、これらの関係は直線的な比例関係にはなかった。MCVとplasma HDLとの関係が成立しない群では、plasma PCが有意に低かった。すなわち、MCVとplasma HDL関係の成立には、plasma PC量の存在があった。これらの結果から、持久性トレーニングに伴う代償的なMCVの増大にはplasma PC量が関係し、LCATの働きは赤血球膜PCを増加させることになり、赤血球膜PCの増加は膜の流動性、しいては変形能を高め、赤血球を柔らかくしていることになる。そこで、これらのmechanismについて、exhaustion exercise、カテコールアミン、機械的刺激による要因について再検討した。その結果、運動に関するこれらの因子すべてが、赤血球PCを増加させ、赤血球膜の流動性を高めていた。これらの結果から、運動やトレーニングの必要性は赤血球膜機能の宿命に存在していることが考えられた。
著者
宮宅 潔
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、張家山漢簡「二年律令」をはじめとした新出法制史料を中心としつつ、中国辺境地域から出土した木簡史料にも依拠して、秦漢時代の刑罰制度、爵制、地方統治制度などに改めて考察を加えた。刑罰制度については、主に労役刑制度に焦点を絞り、数種類の無期労役刑が労役の強度という単一の基準によって段階づけられていたのではなく、家族・財産の没収の有無、刑徒の地位が子孫に継承されるか否か、といった複数の条件の相違によってそれらの軽重が定められていたことを明らかにした。同時に、没収制度が前漢文帝期に廃止されていることに着目し、この時代に無期労役刑が消滅し、すべての労役刑に刑期が設けられたことの背景、意味についても新たな見方を提示した。文帝期はまた、漢帝国の地方制度にも変革が起こった時代、具体的には諸侯王に対する締め付けが強化され、郡県制を通した全領土の直轄統治に向けて舵がきられた時代と考えられてきた。だが「二年律令」に見える諸侯王関連の規定は、必ずしも皇帝と諸侯王たちとの、不断の緊張関係が存在したことを明示するものではない。少なくとも文帝期には、諸侯王国の存在を前提とした地方統治が志向されていたものと考えられる。爵制に関していえば、「二年律令」には有爵者の特権を規定した条文が数多く含まれる。従来の爵制研究では、中国での研究は特権の存在を自明のこととして捉える傾向にあった一方で、我が国においては爵の持つ本質的な意義はそれら特権とは別の部分にあるとの所説が有力であった。改めて「二年律令」の諸規定を検討すると、確かにその中には実効性のない、やがては空文化したであろう特権も含まれるものの、いくつかの特権は確かに存在していた。それらが有爵者の社会的地位を規定し、君主への求心力を生み出していたと考えるべきである。
著者
青山 裕二 安部 恵 板垣 千尋 冨岡(高橋) 佳奈絵 阿部 由希 礒部 明彦 松本 仁
出版者
修紅短期大学
雑誌
修紅短期大学紀要 (ISSN:13498002)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.75-82, 2007

アルコール過剰摂取は若い人々にとって重大は健康問題の一つになっている。そこで、アルコールパッチテストとaldehyde dehydrogenae 2のE487KのSNPを検出する事によって、アルコール感受性を調べた。アルコールパッチテストの結果は本学学生17人中70.6%、本学大学祭の参加者は104人中77.8%が耐性であった。毛髪を用いたALDH2遺伝子解析は本学食物栄養学科学生につてのみ行ったが、全て野生型/野生型homogygote(ALDH2^*1/2^*1)と野生型/変異型 heterogygote(ALDH2^*1/2^*2)であった。本研究では変異型/変異型homozygote(ALDH2^*2/2^*2)の遺伝子は被験者の中には発見できなかった。この結果はアルコールパッチテストの結果と良く一致した。東北地方の住人、特に一関近辺に住む人々は旧モンゴロイド系のヒトが多いことが明らかとなった。
著者
森 靖博 笠井 唯克 岩島 広明 藤本 雅子 江原 雄一 桑島 広太郎 水谷 豪 池田 昌弘 毛利 謙三 安田 順一 田邊 俊一郎 広瀬 尚志 住友 伸一郎 玄 景華 高井 良招 兼松 宣武
出版者
朝日大学
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.7-10, 2006-06-25

平成13年10月1日より平成16年12月31日までの3年3ヶ月間の朝日大学歯学部附属病院での歯科救急外来における患者受診状況について報告する.1.調査期間中の受診患者総数は4,729人であり,一日あたり平均3.98人であった.2.受診患者数は年々わずかながら増加傾向を認めた.3.性差別受診患者数は男性がやや多かった.4.時間帯別受診患者数では,平日は21時台,土曜日は13時台,日曜および祝日は9時台がそれぞれ最も多かった.また各日0時以降の受診患者数は減少する傾向を認めた.5.年代別受診患者数は20歳代が最も多く,次いで30歳代,10歳未満の順に多く,比較的に若い年代の受診が多かった.6.曜日別受診患者数では日曜日が最も多く,次いで土曜日が多く,土,日曜日に集中する傾向がみられた.7.疾患別の受診患者数では,歯周組織疾患が最も多かった.
著者
松本 耕二 北村 尚浩 國本 明徳
出版者
山口県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、体育・スポーツ領域におけるボランティアの多様性に着目し、これまで日常的な活動に携わる「コミュニティ・ボランティア」と、一時的に単発的にかかわる「イベントボランティア」の活動意識における類似点および相違点を明らかにすることを目的としている。平成14年度は、主に青少年スポーツ(健常・体育スポーツ領域)と障害者スポーツ(障害・福祉領域)の活動参加者を対象とした団体(NPO法人スペシャルオリンピックス日本)やイベント(第10回全国中学校駅伝大会、第3回山口県障害者スポーツ大会、2002スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・東京大会)への質問紙調査を実施しデータ収集を実施した。平成15年度は、研究成果の公表(日本体育学会、山口県体育学会)と活動継続性に着目した調査(2004スペシャルオリンピックス日本冬季ナショナルゲーム・長野大会)を中心に実施した。これらの調査等で収集したデータは、逐次、集計・分析し、研究成果を下記の通り発表・公表している。(1)障害者スポーツ・ボランティアの活動継続に関する一考察-バーンアウト尺度の適用-(2)障害者スポーツイベントにおけるボランティアの参加動機-性別、年代別、活動経験別による比較-(3)動員型イベントボランティアの活動満足と継続性に関する考察(4)障害者スポーツイベントにおけるボランティアコーチの参加動機(5)スポーツ・ボランティアの参加動機と組織コミットメントと継続意欲-地域の障害者スポーツを支えるボランティア-本研究の目的とするボランティア参加者の没我度と活動継続性については組織コミットメントを中心に分析・公表したが、活動領域(活動内容レベル)、活動対象・内容別の比較検討が課題となっており未だ明らかになっていない。早急に進めたい。以後、実際に活動するボランティアの活動継続性への影響、所属団体の持つ活動の指向性(競技指向や社会的活動指向など)との類似・相違点さぐり、課題や問題点を明らかにすることとしたい。
著者
山本 教人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

2年度間に、「九州一周駅伝」を報じた西日本新聞の記事をテキストに、新聞がどのようなやり方で駅伝を社会的に意味ある出来事して物語ってきたのかの検討を行った。また、駅伝についてのメディア・テキストを物語としてとらえ、その構造を分析する研究を行った。結果として、今日の新聞の駅伝記事は、主張を明確に表明せず、結論を曖昧にするような書き方で構成されていることが明らかとなった。このような記事の有する曖昧さは、今日の駅伝記事が個人情報を中心に構成されているということとともに、多様な解釈を読み手にもたらすことになると考えられた。また、九州一周駅伝の物語は、語りの多様性を限りなく広げていくようなやり方と、逆にそれに制限を課すようなやり方、そして制限された語りにさらに多様性をもたらすようなやり方で構造化されていた。こうした駅伝記事の物語としての構造が、読み手の多様な関心を引きつけることのできるひとつの要因であると考えられた。このような結果から、読者の「能動的な読み」とは、実はテキストの構造自体が可能とするものであるということができ、近年必ずしも評判が芳しいとはいえないメディア・メッセージの内容分析の意義が改めて確認された。
著者
松崎 昇
出版者
上武大学
雑誌
上武大学経営情報学部紀要 (ISSN:09155929)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.15-51, 2005-12-28

現在、わが国の財政は膨大な累積債務を抱えている。この累積財政赤字を打開するためには、支出の大幅な削減ならびに増税が必要となる。だが財政の抜本的な再建は、現行の体勢のままでは、実現困難であろう。なぜならば、現代国家は政治的ケインズ主義ゆえに財政収支の構造的赤字体質をもっているからであり、より根本的には、近代意識は未来世代に対する責任感を持ち合わせていないからである。この事態を真に受け止め乗り越えるためには、未来世代に対する認識を抜本的に改める必要がある。未来への視座、ないし未来からの視座を第一義的な基準として、財政的国家観を組み立て直すという作業である。その結果として登場してくる見地が、収入面からみた無税国家論および支出面からみた最小限国家論であり、合わせて無税・最小限国家論である。(なお債務を返済する際などには、政府による大量発券という手段も、可能な場合には併用したい。)また、このような確固たる未来的視座をもって現実と切り結ぶことによってはじめて、現在・現代の累積財政赤字問題も解決可能となるであろう。
著者
伊藤 圭子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

特別支援教育を成功させるために、応用行動分析学の理論を家庭科に導入する意義を検討し、家庭科と家庭とが連携した小学校家庭科における学習プログラムの開発を目的とする。応用行動分析学を用いた家庭科学習プログラムの枠組みの課題として、学校や行政機関による保護者を対象とした家庭科学習内容の実施、教師と保護者との連携強化の必要性、子どもの生活への主体的活用を促す学習教材の検討の3点が提起された。
著者
湯淺 太一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1279-1283, 2004-12-15

ACM/ICPCの日本国内予選が去る7月2日に開催された。世界大会やアジア地区予選と異なり、日本国内予選はインターネットを使って行われる。インターネットを使って問題をダウンロードし、解答プログラムを送付し、判定結果を受け取る。この点を除けば、世界大会やアジア地区予選と基本的に同じルールで競技を行う。今年度は44校199チームが参加し、うち26チームが国内予選を通過し、12月に愛媛大学で開催されるアジア地区予選への出場権を獲得した。
著者
遠城 明雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、1910〜40年代の地方都市における地域住民組織の存立形態および再編成と、その組織を基盤とした民衆運動の特徴を明らかにすることにある。主なフィールドは福岡県の主要都市であるが、比較研究のため下関市と仙台市でも調査を実施した。得られた知見は以下の通りである。(1)1910年代初に、全国的に米価騰貴問題が発生した際に、既存の地域住民組織がその一時的救済に大きな役割を果した。またいくつかの都市では各種議員の選出に際して、住民組織が中心となって「予選」を実施しており、これらの点から、当該期では地域住民組織が社会秩序の維持において中心的役割を果したことが明らかとなった。(2)1920年代半に、地域住民組織をめぐって行政、政党・政派、住民の間で矛盾と葛藤が高まり、その再編成が生じた。その背景には、都市化に伴う住民の社会階層の変化、普選による民衆の政治参加の拡大、社会の不安定化への対策として行政による「都市共同体」の創出、といった複数の要因があったことが明らかになった。(3)この再編成によって生まれた地域住民組織が民衆運動の基盤となったことが明らかになった。特に、門司市が中心となった昭和初期の電灯・電車料金の値下げ運動において、市会議員や既成・無産政党と並んで、町総代を核とした地域住民が運動の担い手どなり、地域独占事業への批判を展開したことが明らかとなった。(4)1940年、地域住民組織は国家によって再構築されるが、本研究からも明らかなように、この組織を行政の末端組織としてのみ理解することは不十分である。本研究は、近代化と都市化という現象を、民衆の視点と経験、行動様式から明らかにした。これは歴史地理的事実の解明にとどまらず、都市住民を主体とした「公共性」および「共同性」のあり方を再考する上でも、多くの知見を提供するものである。