著者
佐藤 道生 住吉 朋彦 堀川 貴司 陳 捷 山田 尚子 島田 翔太 山崎 明
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日本漢籍の中で明治期以降日本国外に所在を移し、現在も国外の公共機関に所蔵されるものについて書誌調査を行なうことを目的とする。2008年度から2011年度にかけて調査を実施した国外の日本漢籍所蔵機関は8箇所で、その内、アメリカ合衆国・カリフォルニア大学バークレー校東アジア図書館所蔵の日本漢籍については目録を編集し、貴重書の解題を作成した。
著者
武居 渡
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

近年、ろう学校幼児部の中で、遊びを通して手話によるコミュニケーションを深める実践は多くなされているが、小学以降の教科学習を可能にするためには、一定以上の手話力が求められる。そのためには、教師と子どもとの手話による会話だけでなく、いつでも同じ表現を見ることができ、また繰り返し使うことのできる手話ビデオ教材が有効であると考えられた。本研究では、幼稚部の活動の中で用いることのできる手話ビデオ教材を作成し、手話の力を小学以降の教科学習につなげていくモデルを提案した。平成17年度に行ったろう学校教員へのインタビュー調査により、行事や幼児が日常体験している身近な出来事を題材にした手話エピソードが教育現場で使いやすいということが明らかになったため、平成18年度は、演劇活動も行っており、日本手話が第一言語であるろう者2名の協力を得て、ろう児の身近な話題について約20のエピソードを手話で表現してもらい、それをビデオ収録した。その上で、収録したビデオを、ろう学校教員(ろう教員2名,聴者教員2名,難聴学級教員1名)に見てもらい、子どもの教育的観点からエピソードの修正を行い、より教材として適切なストーリーになるよう改良を行った。その上で再度、子ども向けに改良されたエピソードを手話が第一言語であるろう者に手話で語ってもらい、スタジオで撮影を行った。編集作業を行った後、最終的に作成された教材として、幼稚部の子どもたちにとって身近な12の話題から構成された手話ビデオが出来上がった。本来であれば、そのビデオをろう学校の幼稚部に配布し、実際の教育実践の中で使ってもらった上で評価を行う必要があるが、時間的に問に合わず、いくつかのろう学校に配布するだけで終わってしまった。今後、ビデオを使ったモデル授業の提案や現場の先生との研究授業の積み重ねなどをしていくことが必要であろう。
著者
熊田 俊吾
出版者
金沢大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,乾燥地植林前後での炭素動態を解析・予測・評価可能な技術を開発することにある。本年度は,対象地である西オーストラリアにて炭素動態に関する調査を行うとともに,(1)林間閉鎖度と土壌炭素量の関係について解析を加え,土壌炭素量を推算するための土壌炭素動態モデルを構築した。また,(2)塩湖での温暖化ガス発生量および有機物分解速度についてまとめた。さらに,(3)対象地の塩湖を終点とする乾燥地森林生態系の炭素収支を推算するとともに,炭素動態解析のためのフレームワークを構築した。以下の点が明らかとなった。(1)林間閉鎖度と土壌炭素量の関係について調査結果と解析を加え,林間閉鎖度をパラメータとした土壌炭素量を推算するための土壌炭素動態モデルを構築した。モデルによる土壌炭素量の推算値は,林間閉鎖度と土壌炭素量の実測値の関係をよく再現した。この構築したモデルと林間閉鎖度分布を用いて研究対象地全体の土壌炭素量の推算が可能となった。(2)塩湖土壌呼吸の測定結果について解析を加え,塩湖から放出される二酸化炭素フラックスとメタンフラックスについてまとめた。解析の結果,塩湖からの温暖化ガス発生量としては,二酸化炭素がメタンよりも2~3オーダー大きいことがわかった。また,高塩分,高pH条件下にもかかわらず,塩湖での有機物分解速度は極端に遅いものではないことがわかった。(3)対象地の塩湖を終点とした乾燥地森林生態系における炭素動態解析のためのフレームワークを構築し,炭素収支を推算した。その結果,林地から年間流出する総リター量のうち約1/3が塩湖に流入すると推算され,さらに塩湖からの炭素放出量は対象地全体の総炭素放出量の約1/5を占めると推算された。提案した解析手法は,世界中に広く分布する塩湖を有する乾燥地森林生態系に対して有用であり,植林実施時の炭素固定量評価モデルへの応用に期待できる。
著者
橋本 誠志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.128, pp.91-98, 2006-11-30

ネットワーク上に個人データが流出した場合、司法手続による救済は本質上手続終結に長時間を要する。このデジタル情報の即時流通性との間のタイムラグにより、データの2次流出が発生し、手続中に被害が拡大し、今後その役割を十分に果たしえなくなることが考えられる。この問題への対応として、筆者は自動実行型代替的紛争処理(ADR)機能を有する電子的自力救済型個人データ保護制度の設計を試みてきた。本稿では、特に制度運営のための制度参加者の費用負担方法を検討する。These days, it is difficult for the present judicial system to play a part as a main framework for relief of privacy infringement due to serious time lag problems between strict judicial procedures and instantaneous data circulation on the network. The author has architected a remedy system, using an electronic self-help approach, against deteriorations to privacy infringement in the trouble of occurrence of personal data leak on the Internet. This paper suggests user's cost responsibility for this system.
著者
谷村 雅子 大熊 加奈子 小板谷 典子
出版者
国立成育医療センター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

家族の生活時間記録から、家族間の生活行動の関係や家庭環境の関与等の多次元解析が可能なデータベースシステムの作成方法を考案し、1987年の1歳6カ月児416名と親の調査資料をデータベース化して、子どもの対人経験について解析した。核家族で父親の帰宅が遅いと、対人経験の時間も相手も物理的に減少することが示された。更に、20年後の調査で、対人経験を減少させる要因が増えていることが示唆された。
著者
下渡 敏治 上原 秀樹 ロイ キンシュック 高樋 さち子 長坂 貞郎 宮部 和幸 長坂 貞郎 宮部 和幸
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

(1) 3カ年に亘るフィールド調査によってモンスーン・アジアにおける自然災害の実態と経済発展等による人為的要因及び気候変動など自然的要因との因果関係が明らかとなった。(2) 専門分野を異にする専門家による共同研究及び学際的な研究方法確立への道筋が開かれた。(3) モンスーン・アジア特有の気象条件の下での農業・食料システムの実態と接近方法についての試論的なフレームワークを提示することができた。研究成果は報告書に纏めて公表し、最終的な青果物は「自然災害とフードシステム」として出版に向けた準備をすすめる。
著者
大原 久友 浦上 清 石井 格 瀧ケ平 武昭
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.32-43, 1969-09-30

著者らは,日本のいろいろな環境条件下において適応した搾乳器を選択し,その性能を明らかにするために機械搾乳に関する一連の研究を実施している。今回はスウェーデンアルファラバル会社において製作された旧型のP77と新型のHP87の搾乳に及ぼす影響について比較研究した結果について報告する。この研究は,冬季間においてバケット型とミルキングパーラーにて用いたパイプライン型の搾乳器について実施したものである。その結果を要約するとつぎのごとくである。1. P77とHP87型のものについて比較した結果は表のごとくである。以上のように,HP87で搾乳するときはP77に比してバケット型で乳量が14%,ミルキングパーラーのパイプライン型で10%,それぞれ増加した。特に,HP87を用いた時には後搾りの乳量がかなり低減した。[table] 2. HP87を用いた時には,搾乳に要した時間が極端に短縮された。このようにミルカーの種類と後搾りおよび搾乳のための所要時間とはきわめて関係が深い。ミルキングパーラーにおけるパイプライン型の場合もバケット型の場合と同様である。3. 1分間あたり搾乳に対する産乳量は時間が進むとともに変化するが,一般的にいうと搾乳を始めてから1〜2分後に最高となり,この間に3〜3.4kgの牛乳が流出される。4.比較的大型な酪農場におけるHP87,P77と国産搾乳器による搾乳の所要時間および残乳量を調査すると,HP87の性能はきわめて高く,機械搾乳に要する所要時間も短縮され残乳量もきわめて少なくなった。以上のごとく,新しい型式のHPミルカーはバケット型でもパイプライン型でも産乳量を多くし,機械搾乳に要する時間を短縮せしめ,著しく残乳量を少なくする上に効果があることが確認された。
著者
寺尾 裕
出版者
東海大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

船体は波浪中向かい波航行時において、波漂流力を受ける現象があり、これは波浪中の抵抗増加として知られている。それに対して波浪推進という考え方がある。これは波浪推進器を用いて波浪中での船体の波浪中の抵抗減少と推力増加をはかるものである。波浪推進は船体前部に振動する水中翼を取り付けた構造をもつ新しい推進装置である。水中に置かれた翼は船体運動に対する大きな減衰力として働き、波浪中の船体運動を減少させる。これにより抵抗増加を押さえると共に、水中翼が波浪中より推力を発生させる。そのためにこの装置は船体の推進装置として働くばかりでなく、船の乗り心地の改善にも役立つ。ここではその波浪推進の基礎的な現象解明のための研究を行い、数値解析を行い船体と振動する水中翼の干渉問題について研究した。そのためにEWSを購入し、Fortran数値計算プログラムを開発し数値計算により現象解明をはかった。数値計算法は2次元の境界要素法プログラムとし、数値計算精度を高め、高速に計算できる事を主眼に置き開発を行った。船体と翼は単純な形状とし計算をおこなった。プログラムは今までのグリーン関数(Source singularity)法に、翼面の渦を表す渦特異項を組み入れプログラムを開発した。また自由表面境界は与えられた波ポテンシャルにより時間と共に変化し、それに従い境界条件も変化する。また船体の運動も時間に従い運動をするプログラムとした。船体と翼はそれぞれ波浪中で運動する。翼は船体とある相対位置で取り付け、その位置で船体とは独立に同じ周波数でピッチ運動をするものとした。また翼の発生する渦は時間と共に船体後方に流出させた。これらの方法で翼と船体の干渉効果について計算をおこない、翼水深により渦の発生に大きな異差があることがる事がわかった。
著者
宮腰 宏 今井 忠男 佐々木 久郎
出版者
秋田大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

地下空間は,地上の空間に比較し,その潜在的特性である恒温性,放射線遮断性,耐振動性などの特徴を有する。しかしながら,地上との換気経路が限定されるため,その閉鎖性が欠点として挙げられ,災害や火災などの事故対策の十分な検討を行う必要がある。これらのことから,地下空間の通気および換気状況の把握は,安全工学上重要と考えられ,地下空間の形状・容積等と換気係数との関係は空間の基礎設計資料となりうるものであり,数値計算による予測解析における妥当性の判定資料としても必要である。本研究においては,地下風道ネットワークに接して配置され,片側換気状態にある地下空間の漏洩ガスの対流拡散状況をモデル実験によって明らかにし,数値差分法による予測解析モデルの妥当性を調べた。その結果,換気流と密度の異なったメタンなどの可燃性ガスあるいは有害ガスが漏洩した状況下での,空間の形状,容積を種々に変化させ,総合的な地下空間内のレイヤ形成,3次元ガス対流拡散現象および換気特性を実験的に明らかにした。また,地下空間内の換気流量,換気回数,換気流の特性,ガス濃度の変動・周波数特性,非定常的なガスの漏洩に対する応答特性を調べ,地下空間の換気制御に必要なデータを総合的に示した。また、差分法による漏洩ガス対流拡散の数値シミュレーションを実施し,実験値との比較検討を行った結果,正方形に近い空間形状は比較的実験に近い結果となるが,浅い場合や深い空間形状の複雑なガス対流拡散状況に対しての相違が大きいことがわかった。
著者
岡田 禎人 鈴木 勝一 中山 隆 渡辺 治
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1930-1933, 2004-12-01
被引用文献数
3

症例は54歳の女性で,下腹部痛を主訴に来院した.下腹部に腫瘤を認め皮膚が一部自壊し便汁が流出していた.また尿中にも便が混じっていた.腹部CTでは骨盤内の腫瘤と前腹壁に膿瘍腔を認めた.注腸ではS状結腸からガストログラフィンが腹腔内に流出していた.また膀胱鏡では膀院内に便汁を認めた.患者は20年以上子宮内避妊具(intrauterine contraceotivedevice;以下,IUD)を装着していた.IUDを除去する際に行った子宮内スメアでは放線菌塊を認めたため,IUDの長期装着に伴い子宮骨盤放線菌症を来たし,これがS状結腸,膀胱,腹壁に進展し瘻孔を形成したものと診断した.絶食,抗生剤投与を行ったが改善が見られなかったため,手術により痩孔の切除と膿瘍のドレナージを行った.術後経過は良好で,腹壁の膿瘍は消失した.術後7か月の現在再発を認めていない.
著者
中村 智裕 山田 悌士
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

近年,感染性医療廃棄物の処理問題は病院経営の上で重要視されつつある.特に感染性排液の処理については,その量は年々増える傾向であり,各施設によってその処理方法が問題となっている.今回われわれはその中でも泌尿器科の経尿道的手術時に発生する大量の感染性廃液の処理について着目した.これまでこれら手術時に発生する廃液の処理は感染性廃棄物専用のプラスチックバケツに廃液をため消毒剤入り凝固材によって固形化し焼却あるいは埋め立てなどの処理をしていた.しかし,この方法では,手術途中でのバケツ交換による手術の中断や廃棄するバケツの重量が重すぎ移送が困難,環境破壊などの問題を抱えていた.しかし一度の手術に出る廃液の量も多く廃棄コストの問題もあった.そこでわれわれは手術室改築にともない,この廃液処理に歯科用吸引装置を利用し,手術を中断することなく自動で廃液を吸引し,感染性廃水処理槽で非感染性処理水とした後,一般雑排水として排水するバキュームシステムを考案した.この処理システムは泌尿器科の経尿道的手術時に対応できるようバケツに金属メッシュフィルタやレベルセンサを取り付けた.また,4室同時に手術ができるようセントラル配管方式にした.さらに,使用後も容易に片付けができるように消毒や洗浄がしやすい構造に改良をした.これによりスタッフの労力の軽減や処理費用の削減,手術室の効率的運用などが可能となった.しかし,このシステムは地下に感染性汚水を処理するための処理槽を設けたり,各部屋をつなぐ配管工事が必要であったりとイニシャルコストが非常にかかる欠点がある.そこで現在はこれらの大がかりな設備を必要としない,あるいは既存の手術室にも設置が可能なシステムも考案中である.
著者
津田 英二
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度はこの研究助成の最終年度であり、3年間の研究成果をまとめ、次のステップにつなげる努力をした。第一に、この研究機関中に整備した研究フィールド(特に神戸大学大学院総合人間科学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センターのサテライト施設のびやかスペースあーち」)において、インフォーマルサービスの形成過程とその支援のあり方について実践的研究を遂行し、データの獲得と分析を行なった。第二に、インフォーマルサービスの充実に向けた先駆的実践について、継続して情報収集と分析し、研究ネットワークの形成を行った。第三に、2006年9月に群馬大学で行われた日本特殊教育学会での口頭発表、同月にイギリスのオープンユニバーシティで行われた研究集会で口頭発表を行なった。第四に、研究論文として『Brithish Journal of Learning Disabilities』誌や『福祉教育ボランティア学習学会年報』、神戸ヒューマンコミュニティ創成研究センター編『人間像の発明』などに研究成果を発表した。第五に、理念や概念の検証、実践的研究に関するデータ、先駆的実践の整理や分析などを整理し、口頭発表や研究論文発表などをふまえて3年間の研究成果を『インクルーシヴな地域社会をめざす拠点づくり』という冊子にまとめ、刊行した。
著者
小原 清弘 長坂 充 鍵政 豊彦 正井 一夫 宮崎 光夫
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.299-300, 1994-09-20
被引用文献数
1

近年、大規模なデータベースの高速検索や高信頼性の要求、ダウンサイジングや規模に応じたスケーラプルな構成が可能などの理由により、並列計算機上で動作する、並列RDBシステムが注目されている。このような並列RDBシステムの性能を決める最も重要な要素の一つに、プロセス(プロセッサ)間通信性能がある。プロセス間通信方式の中では、ソケットを用いたTCP/IPが最もポピュラーである。しかし、並列RDBシステム内の通信方式として採用するには一回の通信当りのプロセッサの負荷が重すぎ、システム全体の性能向上の阻害要因となってしまう。本稿では、メモリ間直接通信と呼ぶ、分散メモリ(疎結合)型並列計算機内の通信方式を用いた、並列RDBシステムの通信高速化方式を示す。最初に、分散メモリ型並列計算機内の高速なプロセス間通信方式である、メモリ間直接通信を示す。そして、メモリ間直接通信の並列RDBシステムヘの適用方法を示す。
著者
大野 出
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度〜平成15年度における研究課題「日本近世における老荘思想の解釈に関する研究」の一つの到達点として、平成15年度、東方学会・国際東方学者会議のシンポジウム「林希逸『三子〓斎口義』と東アジア三国の近世文化」(代表・池田知久)の企画にChairpersonとして参画し、池田知久、小島毅、中野三敏、山城喜憲、周啓成、王廸、崔在穆、宮崎修多(以上敬称略.なお、周啓成氏については、中国におけるSARSの流行とこれによる出国手続の複雑化、長期化にともない来日できず、同氏の研究発表については代読がなされた)らとシンポジウムにおいて議論を行なったが、このシンポジウムにおける研究発表内容については、『国際東方学者会議・シンポジウムIII資料集』としてまとめられ、会議当日、会場(日本教育会館)において配布された。なお、同シンポジウムにおいて研究代表者(大野出)は午前の部(第I部)の司会を担当し、午後の部では「実学としての『老子〓斎口義』」と題する研究発表を行ない、午前の部に引き続き討論に参加した。この研究発表については、その要旨を中国語訳(王廸訳)とともに報告書に掲載した(英文による要約も加えた)。また、平成13年度以降にあっては、日本近世における老荘思想の受容という問題から、老荘思想および道教の受容へと視野を広げた研究に取り組んできた。その過程において、日本における霊籤の受容という問題の重要性を発見するに至った。このことが平成15年度までの当該研究から平成16年度の基盤研究(C)(2)「日本における霊籤の受容と展開に関する思想的研究」への発想が生まれる契機となった。
著者
古賀 崇
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、日本および諸外国の制度に関する比較研究を通じ、「政府情報の保存・アクセス」について「情報管理」と「法制度」の側面から学際的知見を獲得することを目指した。中心的な成果としては以下の論文を上梓することができた。(1)日本での「政府情報の保存・アクセス」に関する最近の政策動向について、「公文書」「政府ウェブサイト」「政府刊行物」という中心的動向を意識しつつ、これらの枠を越えての「電子環境下での包括的な政府情報管理の必要性」という観点で論じた。(2)米国アリゾナ州での「電子的な政府情報の保存・アクセス」の取り組みについて、従来の「図書館的枠組み」「文書館的枠組み」を越えた枠組みをモデルとして想定していること、またオープン・ソフトウェアを駆使しつつ政府機関自身が柔軟な「保存・アクセス」のシステムを構築していること、を論じた。本研究ではこれらに加え、「MLA連携(博物館・図書館・博物館の連携)」についても、「政府情報の保存・アクセス」というテーマとのつながりを意識しつつ、成果を示すことができた。
著者
木村 憲彰
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

これまで、重い電子系における重い電子の起源、あるいは超伝導の形成において、スピン軌道相互作用の役割がよくわかっていなかった。本研究では結晶の空間反転対称性の破れによってあらわになるスピン軌道相互作用を、ドハース・ファンアルフェン効果をはじめとする輸送現象の測定によって明らかにし、質量増強のスピン依存性、異方的常磁性対破壊効果によって増強された超伝導上部臨界磁場を明らかにした。また、超伝導揺らぎの可能性や空間反転対称性の破れに共通した特異な超伝導状態を見出した。
著者
宇沢 美子
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、19世紀から20世紀転換期のアメリカ文学における日本観の変遷を扱うことを目的とする。元祖黄禍はジンギスカン率いるモンゴル民族軍によるヨーロッパ侵略の形をとったが、その悪夢は、アジアからの移民の増加と日本の軍事力の増大により、19世紀から20世紀転換期にアメリカで再燃した。本研究は、東洋による西洋(領土/仕事/女性)の支配に対する懸念である黄禍論に対する異議申し立てを、西洋と東洋を相対化する視点を模索した(人種的/文化的)ユーラシアンたちの作品に見出そうとする。中国系カナダ人ウィニフレッド・リーヴ(オノト・ワタンナ)の日本小説は、蝶々夫人やお菊さんなどで定着しつつあった、西洋(男性)による東洋(女性)の支配というジェンダー/性で織りなされたオリエンタリズムの関係を脱し、世紀転換期にアメリカで取りざたされた「新しい女」の日本版を作り出し、国籍を超えた女性同士の「心」と「神経」による「シンパシー」を模索した。自身のユーラシア性を文化翻訳者に見出していたと思われるこの作家は、日本の浦島伝説を、西欧の人魚伝説とあわせ、浦島太郎ではなく、あとに残される乙姫の物語へと翻案し、出世作『日本鶯』を書いた。ヨネ・ノグチの朝顔嬢小説は、蝶々夫人やコミックオペラ「芸者」に対する批判を含み、ワタンナの日本小説に対するパロディとして意図されたものだが、あまりに過激なジャポニスムとの戯れゆえに、またゲンジロウ・エトウのジャポニスム装丁ゆえに、かえって出来の悪い日本小説として受容された。白人作家ウォラス・アーウィンが生み出したハシムラ東郷は、日露戦争後の黄禍論や東洋人排斥運動を直接的な背景とし登場した擬似日本人だが.幾度となく「黄禍」と呼ばれた賢い道化のスラップスティックは、黄禍論の(イ)ロジックのみならず、ジャポニスムや日本小説のウェットな感性をも完壁に笑いのめした。
著者
高島 千鶴
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,炭酸水素塩泉,硫黄泉および含マンガン鉱泉で生じる堆積物に焦点を当て,水-鉱物-微生物相互作用についての研究を行った.炭酸塩堆積物(トラバーチン)については流速と堆積物組織と微生物の分布との関係について明らかにした.鉄酸化物については微小電極を用いて堆積物表面でシアノバクテリアの代謝活動を確認し,硫黄泉では硫黄酸化細菌の代謝による水質変化を認識した.さらに,鉱泉中のマンガンの起源を特定し,そこで生じるマンガン酸化物の沈殿に微生物の関与を認定した.