著者
岩田 圭示
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本年度はアルタイ山地のカトーン川中流および上流地域のザスーリン層、シャシクナール層について補足的な野外調査と珪質堆積岩のサンプリングを行い、また、これらの地層に相当する層準と考えられる他の地層についても野外調査、珪質堆積岩のサンプリングを行ない化学薬品処理によって放散虫化石の抽出に努めた。またバテーネフ山地のブリズナヤ地域の下部カンブリア系の珪質岩に含まれる珪質海綿骨針化石の抽出と観察、同定をおこなった。この結果、シャシクナール層の珪質頁岩からこれまでに少なくとも4つの新たな種属と思われる放散虫化石を見い出し、記載・分類を行い研究結果の一部についてRussian Geology & Geophysics誌に投稿した。また、アルタイおよびバテーネフ山地のカンブリア紀前期-後期およびオルドビス紀早期の放散虫化石群集、前期カンブリア紀海綿骨針化石群集に関するこれまでの研究成果について9月17日-22日に米国、カリフォルニア州ブレアスデンで開かれた第9回国際放散虫シンプジウムにて3編の論文発表をおこなった。また,オーストラリアや中国などのデータを含めカンブリア紀における放散虫化石の層位的分布を整理検討し、暫定な化石帯区分表を作成した。また放散虫類の初期進化のプロセスについての検討も行った。さらにカンブリア紀前期-後期の珪質海綿骨針化石の暫定的な化石帯区分表も作した。最後に本年度は研究の最終年度であるのでこれまで4年間の研究結果の総括と研究実績報告書の作成を行った。
著者
大橋 照枝
出版者
麗澤大学
雑誌
麗澤経済研究 (ISSN:09196706)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.19-34, 2007-09

The HSM was advocated by Ohashi in 2000, and then in 2005 a joint researcher Dr. Hong X. Nguyen joined the effort to develop the indicator, until Ver. 3. This paper deals with the "Human Satisfaction Measure (HSM), a sustainable social welfare indicator. The paper covers the following elements: (1) Examining two papers (Easterlin, 2003 and Vemuri/Costanza, 2006) that have been advocated as the nature of happiness or a measure of satisfaction; (2) Suggesting that it is indispensable to incorporate the "sustainable development or sustainability" as a indicator of satisfaction or happiness; (3) Demonstrating the superiority of the HSM through the comparison among seven international indicators including the HSM in terms of the "sustainable development" or sustainability; (4) Reviewing the versions 3-(1) and (2) of HSM using "distance to target (DtT) method, developed in 2005, and referring to the ambiguity of sustainability in Japan that the version 3-(2), in particular, indicates; and (5) Aiming at the upgrade of a weighted research using the Analytic Hierarchy Process (AHP) method so as to put the version 3 of the HSM into practical use as an indicator for policy planning.
著者
高階 於莵次
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.5, no.52, pp.67-68, 1893-02-15
著者
上野 一彦 長澤 泰子 菊池 けい子 津田 望 松田 祥子 牟田 悦子
出版者
東京学芸大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

本研究グループは、中枢神経系の発達の遅れやかたよりから、コミュニケーション能力の発達不全、種々の学習能力の習得困難、協調運動の発達不全、さらには情緒・行動面で不適応症状をもちやすいLD(学習障害)児を研究対象とし、その実態解明と具体的な教育的援助の方法探究のために、主として二つの側面からの研究を行った。第一は、LDの生育歴にみられる障害徴候と問題行動、およびWISCーRによる心理学的能力を下位項目としたデータベースの作成である。6才〜14才のLD及びボーダーラインLD、比較のための軽度精神延滞(MR)、約200名の面接と心理診断を行い、知的能力から精神発達の4つの水準(MR、ボーダーラインLD、低IQ・LD、高IQ・LD)と、情報処理過程によるモデルに立脚した個人内差の特徴から、各LD群の類型化を試み、それらのレベルと特性の二次元空間内での問題症状の発生時期と内容、行動特徴について分析・検討し、治療教育につながる指導プログラムの手がかりを得た。第二は、感覚様相の処理特性からくるコミュニケーション行動中の受容能力および表出能力の発達のかたよりにたいする具体的援助の一方法として、同時提示法によるサイン言語法の開発とその適用研究である。この研究は、英国の障害児教育現場で広く普及しているマカトン(MAKATON)法のサインとシンボルの日本版作成作業に取り組んだ。今年、第1から第9ステージにおける約330の核語彙の選定、基本的サイン作成を完了し、サインに対応するシンボルと言語指導プログラムを作成した。
著者
[編集部]
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.5, no.53, pp.114-116, 1893-03-15
著者
松良 俊明 渡辺 守 坂東 忠司
出版者
京都教育大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

休止期間中の学校プールに生息する昆虫(主としてトンボ幼虫)を、理科や環境教育の教材として利用することを目指し、次のような項目について研究を行った。(1)プールに生息するヤゴや他の昆虫の種類構成。(2)優占種となっているヤゴの生活史。(3)なぜその種が優占種となっているかの理由。(4)植物プランクトンはヤゴの餌となる植食性昆虫のエネルギー源である。この植物プランクトンの種類構成と季節的変動を知る。京都市及び三重県津市での2年間の調査と実験の結果、以下のような知見が得られた。(1)京都市の小学校プールには8種のヤゴが確認されたが、最も高密かつ普遍的に見られたのはタイリクアカネ幼虫であった。ヤゴ以外にも、コマツモムシ、ゲンゴロウ類、ミズカマキリ、フタバカゲロウ、ユスリカ類などの幼虫が観察された。一方、津市では17種のヤゴが確認されたが、本来タイリクアカネが分布しないため、替わってシオカラトンボ、ノシメトンボ、ショウジョウトンボのヤゴが優占していた。(2)タイリクアカネは秋に産卵し、卵は晩秋から孵化し始める。ヤゴは春に急速に成長し、5月末から羽化を開始する。(3)タイリクアカネは水に直接産卵するタイプであること、他の種に先駆けて孵化するため、他の種のヤゴは本種の餌となっていることの理由により、タイリクアカネが優占種となっている。(4)プールに優占する植物プランクトンは緑藻のコスマリウム等であり、これらは砂ぼこりや枯葉、あるいは飲水に来た動物によりプールに持ち込まれたと考えられる。
著者
丹羽 甲子郎
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.4, no.43, pp.176-179, 1892-05-15
著者
牛田 憲行
出版者
愛知教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

世界で唯一最多のニュ-トリノ・エマルジョン(νEm)反応(FNAL E531)を解析しその荷電カレント(C.D)反応における終状態二次粒子(SHOWER Ns,GREY Ng,BLACK Nb)の多重度、角分布、エネルギ-分布、各粒子相互の相関を調べた。W依存性とKNO scalingの様子から〈Ns〉はPROJECTILE粒子の種類によらず、むしろ標的に依ることがわかった。Nbの角分布、エネルギ-分布からこれが核からの蒸発粒子であることが明確となった。Ngについては、陽子・EMULSION(pEm)反応と比べ多重度の低い所ではνEmの方が多く、逆に高い所では逆になっていて、νEmとpEmとでPROJECTILEの核内相互作用の違いによるNgの頻度の差が浮き彫りにされた。〈Ns〉はW^2に依存して漸次増加するのに対して〈Ng〉も〈Nb〉もW^2の値によらずほぼ一定となった。NbとNgとの間には強い相関があり、これらはUNIVERSALな勾配をもつが、Nsと無関係である。Ngの角分布はpEmに比べ前方への傾きは緩やかで、Ngの前後方の放出比はpEmよりも小さく、pEmの場合よりも多く後方に放出される。νEmにおける核効果を解く鍵がNgであり特に後方に出るNgが重要で(核子標的の場合後方放出は禁止される)、さらに300MeV/c以上の後方放出Ng(CUMULATIVE PROTON;CP)生成について約700例のC.C反応を完全解析してCUMULATIVE EFFECTを調べた。CPの運動量自乗分布の勾配は他のνNeやハドロン実験での値と良い一致をし〈A〉=80の場合でもNUCLEARE SCALINGが成立していることがわかった。CPの生成率はA^αに依存し他の泡箱実験と本研究のデ-タから20≦A≦80にたいしてα=0.68となりA^<2/3>に依存することがわかった。また10≦Eν≦200GeVにわたってCPの生成率にエネルギ-依存性がないことがわかった。後方放出Ngと前方放出Ngの間には相関があり、核内のSUCCESIVEなREINTERACTIONの過程から前方陽子が増えると後方陽子も増えるというCP生成模型が有効であると考えられる。
著者
北田 葉子
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

トスカナ大公国の宮廷について、とくにフィレンツェ人高位役職者に着目して研究を進めてきた。その結果、フィレンツェ人は第5代トスカナ大公フェルディナンド2世の時代に急増していることが確認された。フェルディナンド2世時代には、フィレンツェ人が封建的称号を獲得し、市民から封建貴族へと変わっていく時代であり、この封建貴族化の現象と宮廷人の急増はリンクしていると考えられる。これまでの研究では、フィレンツェでは元老院議員になること、騎士団に入ることなどさまざまな名誉への道があり、宮廷は決して中心的な役割を果たすことはなかったとされてきた。しかし本研究により、フェルディナンド2世の時代には、封建貴族となったフィレンツェ人は宮廷に入り、そのほかの名誉を求めなくなる傾向があると分かった。しかも彼らは宮廷の最高職である大執事などに就き、その肩書きによって政府の最高機関である国務評議会にまで参加していた。つまり宮廷職は、そのほかの名誉をしのぐ最高の名誉ある職になったのである。また宮廷文化については、当時の宮廷に出入りするエリートたちが、ギリシア・ローマ神話をどのように受け入れていったかについて考察したが、その結果、神話の「マニュアル」といったものが存在し、それが大きな影響力を持っていたことが分かった。このマニュアルには、神々をどのような姿で表すのかを具体的にイメージで示すものもあり、そのイメージは、画家たちにも利用された。絵画や祝祭装飾でそのイメージは具体化するが、具体化されたイメージは再び祝祭の記録や絵画の説明の中で描写されていた。このように「マニュアル」に書かれた神々のイメージは、ビジュアルから再び書物となって循環し、それによって宮廷に出入りし、祝祭や絵画をつぶさに見ることのできるエリート層に、典型的な神々のイメージを与えていったのである。
著者
夏目 武子
出版者
文学教育研究者集団
雑誌
文学と教育 (ISSN:02876205)
巻号頁・発行日
no.170, pp.12-21, 1995-08-01
著者
西村 欣也 森 司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

エゾアカガエル(Rana pirica)のオタマジャクシとエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は、雪解けの後の北海道の池に成立する生物群集の創始者である。エゾサンショウウオ幼生は発生時のある条件で、口顎が発達した「広顎型」になる。広顎型の個体はオタマジャクシや同種の幼生を丸のみで捕食する「捕食型」である一方、エゾアカガエルのオタマジャクシは、エゾサンショウウオ幼生の捕食危機に曝されると、頭胴部を膨らませた「膨満型」になる。膨満型は、広顎型エゾサンショウウオ幼生の丸のみ型の捕食に対抗する「防御型」である。このように、これら2種の両生類の形態は可塑的で互いの捕食-被食関係に対して適応をはかっているものと解釈できる。この事実を出発点として、誘導防御・攻撃形質に関する理論的・実験的研究を発展させた。エゾアカガエルのオタマジャクシは、池の生物群集内の捕食者一般に対しても、防御形態を発現する。もっとも頻繁に出会う強力な捕食者であるヤゴによって防御形体誘導実験を行った結果、その誘導形体は、エゾサンショウウオ幼生によって誘導される防御形態とは異なっていた。エゾアカガエルのオタマジャクシは、,丸のみ型捕食者(エゾサンショウウオの幼生)に対するスペシャリスト的防御形態と、被丸のみ型の捕食者に対するジェネラリスト的防御形態の2つの異なる形態を臨機応変に発現する能力を有していることが分かった。
著者
安田 章人
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は、カメルーン共和国・ベヌエ国立公園を調査地とし、現代アフリカにおけるスポーツハンティングを基盤とした自然保護政策と地域住民の関係に焦点を当て、人と野生動物の共存関係の構築を前提とした住民参加型自然保護政策のあり方を探求することを目的としている。採用第2年度目にあたる2008年度は、研究成果をまとめ、発信することを重点として研究活動をおこなった。詳細は、次項の一覧を参照していただきたい。これまでの研究成果をまとめた2本の論文が、査読を経て学会誌に掲載された。また、もう1本も印刷中・刊行予定である。学術雑誌および商業誌への執筆もおこない、4本(うち1本は国際ワークショップのプロシーディング集)が刊行済みあるいは刊行予定である。研究発表に関しては、今年度は海外での発表に精力的に取り組んだ。その結果、ケニア・ナイロビおよびカメルーン・ヤウンデでの国際ワークショップでの発表をおこなった。研究発表以外にも、他の研究者との関係作りをおこなうことができたことも、大きな成果であった。また、国内でも学会発表をおこなうとともに、これまでのようにアウトリーチ活動の一環として、高校での授業もおこなった。年度末に調査地であるカメルーン北部へ赴き、2ヶ月間の補完調査をおこなった。現在、このデータをまとめ、これまでの成果と融合させ、2009年度内の博士論文の完成および学位の取得のために尽力している次第である。
著者
西村 秀夫
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究課題では、英語史研究により有効な史的コーパスの構築に向けて、Helsinki Corpusの規模、収録されたテキストの種類および選択の基準、ジャンル分け等について再検討を行った。具体的には、Helsinki Corpusのサンプル部分を当該テキスト全体、同一テキストの別の箇所からのサンプル、同一ジャンルに属する別のテキストからのサンプルなどと比較しながら言語研究を行うことによって、史的コーパスとしての適正な規模とはどのようなものかを考察した。さらに、テキストの種類や選択の基準、ジャンル分け等が適切かどうかについても検討した。また、1999年に公刊されたICAME Corpus Collection on CD-ROM(第2版)に新たに収録された5つの通時的コーパスの中から、特にCorpus of Early English Correspondence Samplerを取り上げ、その有効性についても検証した。
著者
川村 邦光 荻野 美穂 杉原 達 冨山 一郎 真鍋 昌賢 中村 生雄
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は平成12年度から14年度の科研「戦死者をめぐる宗教・文化の研究」を発展させる意図のもとに計画し、平成15年度から17年度の3年間にわたって実施された。課題名「近代日本における宗教とナショナリズム・国家をめぐる総合的研究」の研究目的は、近代日本における宗教と国家との関係を研究することにある。国家の宗教政策、また靖国神社や神社神道、国家神道が国民の信仰生活に対してどのような影響を及ぼしたのか、宗教がナショナリズムの形成においてどのように関与したのか、この二つが主要なテーマである。この研究課題を進めるために、「文化/批評」研究会を組織し、3年にわたり、16回の研究会を開催することができた。また、研究会の案内・報告などのために、ニューズレター「cultures/critiques」を刊行し、23号に達した。本研究会では、大阪大学や他の大学の教員や大学院生に参加を呼びかけ、研究分担者をはじめとし、他大学の研究者、また大阪大学の大学院生に発表やコメントを依頼して、他大学の様々な研究分野の研究者との交流をはかることができたとともに、若手研究者の養成と大学院教育の充実をはかることができたと考える。本研究の報告書として、6名の寄稿者をえて、283頁に及ぶ冊子を刊行することができた。ここでは、研究分担者、大阪大学大学院の院生、他大学の研究者にも研究会での発表に基づいて、原稿を執筆してもらい、研究成果の公表と共有化をはかった。研究目的の大半を達成できたと考えるが、調査や研究の成果が論文のなかに反映させることができなかったため、今後ともこの研究会を続行することにしている。