著者
倉田 正一 重田 定義
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.3, no.9, pp.471-479, 1961-11

The Japanese "Kana" typewrite is going to be widely used in offices. But the arrangement of letters and numbers on the keyboard is not standardized among various manufactures. A study was made to determine the ideal arragement in the keyboard for maximum efficiency in man-machine system. On the side of machine, sizes of various keyboards, loads for each row as conferred by hands, and fingers were measured. And on the side of man, the physiological capacities of fingers were analyzed. Working area of fingers or motion of upper extramities related to typwriting, anatomical position of the finger phalanges, electromyogramm, tapping rate and compound reaction time were observed on skilled and unskilled typists. It is suggested from the analysis of the data secured in these investigations that keys of the "Kana" typewriter are not so arranged that the load of each finger is fitted to the physiological capabilities of the finger.
著者
河瀬 斌 山口 則之 清水 克悦 三谷 慎二 堀口 崇 荻野 雅宏
出版者
慶応義塾大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

【目的】低温による脳保護作用のメカニズムを検討し、脳のみの局所低体温法を確立する。【方法】(1)スナネズミ一過性前脳虚血モデルを用い海馬における遅発性神経細胞死を算出する一方で、オートラジオグラフィー法により蛋白合成能を、また免疫組織化学により各種蛋白の生成を、常体温と低体温とでそれぞれ比較した。(2)ラット一過性前脳虚血モデルを用い、線条体におけるdopamine・ adenosineとその代謝産物の生成を、虚血中低体温と虚血後低体温とで比較した。(3)成猫に低温人工髄液を脳室脳槽灌流し、脳冷却の程度と脳内温度較差を測定した。また、臨床使用目的にて脳温測定用センサーを組み込んだ脳室脳槽灌流用ドレナージチューブを作成した。【結果】(1)低体温により海馬CA1領域の遅発性神経細胞死は抑制されるが、これに先立ち(i)同部の蛋白合成能の回復が促進される。(ii)ストレス蛋白発現が抑制される一方で、即初期遺伝子c-Junが正常より強く発現する。c-Fosの発現は変化しない。以上より、低体温は虚血ストレスそれ自体を減弱する一方で、蛋白代謝を早期に回復させ、細胞の生存に影響を及ぼす即初期遺伝子の発現を促す。(2)(i)虚血中低体温はdopamineの放出を抑制する一方、adenosineの放出には影響しないが再灌流時のadenosineの減少は抑制する。(ii)虚血後低体温はadenosineの代謝を抑制して細胞外液中の濃度を高く保つが、dopamine代謝には影響しない。(3)低温人工髄液灌流により成猫において脳深部に2〜3℃の冷却効果が見られたが、皮質ではその冷却効果は少ない。脳血流量は一過性に減少するがその後回復し、血圧や血液ガスには影響はない。脳温測定用センサーを組み込み、かつ従来のものと材質・外径に差がない脳室脳槽灌流用ドレナージチューブが完成した。【総括】以上より(3)の脳虚血に対する局所低体温療法は(1)(2)の補助治療法を組み合わせることで臨床応用が更に期待できる。
著者
阿部 直哉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.9-14, 2002-08-02
被引用文献数
4

タッチパッドを用いたCVK方式入力装置の概要を述べるとともに、従来の入力装置との比較を通して、本装置の特徴を考察した。CVK方式は、タッチパッド上に仮想的に置かれたキー(操作キー)に指で触れることで、ディスプレイに表示されたキー(可視キー)の配列から、目的のキーを選択し、指を離した瞬間、入力を確定するという仕組みを持つ。本装置は、非常に小型でありながら、タッチパネルなどと同様、キー配列を自由に変更できるため、初心者に分かりやすいインターフェースを作り出すことができる。その一方、操作キーと可視キーが1対1に対応しているため、習熟に伴って、キーボードに近い、高速な入力も可能である。他にも、操作が単純、疲れが少ないなど多くの長所を併せ持つ。
著者
石原 嘉夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.308-310, 2002-03-15

本誌2月号(2001年)の山田昭彦氏の「コンピュータの歴史を残そう!」という記事と創立40周年記念展示会(3月,慶大日吉)と"「情報世紀」の主役たち"展(3?6月,国立科学博物館上野)とで,情報処理分野の歴史を残す必要を刺激された.今では日頃当たり前のように操作されているキーボードの文字配列などについて,筆者が関与した迷走とその反省を述べておきたい.
著者
鋤柄 増根
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

自己報告(self-report)形式のパーソナリティ検査において,常に問題になるのは,回答の歪みを検出する方法の開発とその発生機序である。検出方法には,従来からさまざまな方法が考案されてきた。その中で,比較的最近提案されたものに項目反応理論に基づいたperson-fitがある。本課題における,はじめの研究は「person-fitによるパーソナリティ検査における逸脱回答の検出」であり,person-fit指標の有効性を検討した結果,悪く見せようとする受検態度の検出には有効であるが,よく見せようとする受検態度を検出することは難しいことが明らかになった。この検討のなかで,パーソナリティ検査における逸脱回答と能力検査におけるそれとの違いも明らかになった。次の「性格記述用語の反対語調査による性格次元の双極・単極性の検討」では,黙従傾向を逆転項目で検討しようとするときの逆転項目作成の基礎資料を提供すると同時に,性格次元の双極・単極性を検討するものでもある。双極性である性格特性に関しては,その特性を中程度に持っている個人が「どちらでもない」と回答する。一方,単極性の性格特性には「どちらでもない」という回答は本来ありえないはずなので,単極性の性格特性に対して「どちらでもない」と回答するのはその特性をもたない個人であることになる。以上の点を検討するための基礎資料ともなる。最後の「逆転項目によるパーソナリティ検査における黙従傾向の検討」は,反応の偏りの一つである黙従傾向を,ミネソタ多面人格目録(MMPI)のHy尺度とPt尺度について,逆転項目を利用して検討したものである。ここでは,Bentler, Jackson, & Messick(1971)が指摘したagreement acquiescence(是認黙従傾向)とacceptance acquiescence(受認黙従傾向)の2つの黙従傾向を潜在構造分析によって分析した結果,是認黙従傾向は,尺度得点にほとんど影響していなかったが,受認黙従傾向は中程度の影響を持っていた。しかし,その影響は,潜在特性による影響に比べてかなり小さいことも明らかになった。
著者
西村 亜希子 水谷 令子 岡野 節子
出版者
鈴鹿大学短期大学部
雑誌
鈴鹿短期大学紀要 (ISSN:09158421)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.73-78, 1996

乾麺の調理過程での食塩量変化と摂取時の食塩量を把握することを目的として,ひやむぎ食塩量とゆで時間,ゆで麺の水洗いの関係,さらにつけ麺・かけ麺の二種類の食べかたでの食塩摂取量について実験を行った。その結果,ゆでることで機械打ち・手延べひやむぎともに食塩量は20%以下に減少し,さらにゆで麺を洗うことで5%以下になった。ゆで時間の長短は食塩濃度に関係しなかった。また食べ方についてはつけ麺のほうがかけ麺より食塩摂取量が有意に少なくなった。この食べ方での実際の食塩摂取量はつけ麺で使用材料から計算した値の24%,かけ麺で40%であった。
著者
佐々木 百恵 長谷川 智子 上原 佳子 北野 華奈恵 礪波 利圭
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

看護師及び乳がん患者のリンパ浮腫に対する知識,認識及びケアの実施状況を明らかにすることを目的とし,看護師 383 名及び乳がん患者 526 名,計 909 名を対象に自記式質問紙調査を実施した。質問紙は研究者が独自に作成したリンパ浮腫の認識等に対するものと, 作田らのリンパ浮腫知識スケールを使用した。その結果,有効回答数 630 名(69%)であり,看護師の 7 割以上がリンパ浮腫ケアに対し不安を感じており,そのほとんどが知識に対する不安であった。
著者
長島 一郎 吉村 智昭 内山 泰生 欄木 龍大 糸井 達哉
出版者
大成建設株式会社技術センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

地震時に震源近傍で観測される地震動波形を、時々刻々コンピュータに伝送し、震源から離れた想定地点における主要動の地震動波形を、その到達前に計算して推定する「入力地震動波形のリアルタイム推定手法」を提案し、実際の地震観測記録を用いて有効性を実証した。インターネット回線を利用したデータ伝送試験も実施し、伝送時間遅れを実測すると共に、有効性を実証した。本研究のように想定地点における地震動波形を事前に推定する技術が確立されれば、これらの情報を用いた地震防災システムの信頼性と適用性が飛躍的に向上する効果が期待される。
著者
岡田 成幸 谷口 仁士 井戸田 秀樹 林 勝朗 竹内 慎一 名知 典之 中嶋 唯貴 島田 佳和 石田 隆司
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本邦の主要住家である木造建物(倒壊により死者発生危険度が特に高いとされている構造形式)について、地震からの構造健全性を微動のカオス挙動を測定する手法を応用して逐次監視し、さらに監視結果である物理指標を居住者に分かり易い防災情報(生命安全性)に変換し提供(リスクコミュニケーション)することにより、構造ヘルスモニタリングを人的被害軽減化対策システムとして防災に有効活用させる方途を考究した。
著者
富田 悦次 高橋 治久 西野 哲朗 若月 光夫 垂井 淳
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

最大クリークを抽出する新しいアルゴリズムMCSを開発し,格段に高速であることを明らかにした.これにより,従来では100日以上かかっても解けなかった幾つかの問題を100秒以内で解くことに成功した.最大クリーク問題が多項式時間的に可解となる基本的結果も確立した.また,最大クリーク抽出アルゴリズムがハイパーグラフにおいても効率的に稼働する様に拡張した.更に,これらのアルゴリズムをデータマイニングなどの実問題に応用して有効な結果を得た.
著者
志村 正子
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

これまでに集積したデータを分析し、今年度は特に運動が精神状態に及ぼす影響とその個人差に関する研究の学会報告を行った。一方、運動の対精神影響に関する実験を評価テストを一部交換して続行し、音楽の効果に関してもジャンルの異なる曲を用いてさらに実験を重ねた。音楽が精神状態に及ぼす影響は、これまでの検討でも概して曲の性質によく対応していたが、躍動的な音楽としてロック音楽を、静かで明るいクラシック音楽としてヴォルフ・フェラーリのマドンナの宝石を用いても、不安・緊張・抑うつ・攻撃・混乱などのネガティブな気分の低減はマドンナの宝石で著しく、活動性の高まりはロック音楽の方でやや大きかった。また、マドンナの宝石による抑うつの低減は、内向性格あるいはタイプA傾向のもので大きい、音楽を聴いて集中度が高まったのは特性不安の低いものであった等、効果の個人差も認められた。2カ月間程度の有酸素的運動の精神影響としては、不安と抑うつの低減が再認され、新たに検討したCMIにおいても身体的・精神的自覚症がともに減少傾向にあった。さらに、2年度にわたる実験的検討の結果、運動の対精神影響は、身体的影響よりも認めやすいだけでなく、それらの効果は、性別、年齢の高低、性格、心理・行動傾向などの個人的特性によっては異ならないことが明らかになった。種々の運動種目毎に、短期的・即効的な対精神影響を評価しても、ネガティブな気分の低減と爽快な気分の増大という精神影響は著明であり、かつ運動種目による差異は認め難かった。運動・音楽いずれにも著明な好ましい精神影響を認めたが、音楽の効果が曲や聴く側の性質に依存しやすいのに対して、運動の効果は、運動の種類や人を選ばず認められる傾向にあった。運動はメンタルヘルスを目的として処方できる可能性が大きいと評価された。
著者
新田 啓子
出版者
一橋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

当該研究の最終年にあたる平成17年度は、これまで研究してきた1920年代の芸術作品に関する研究をまとめる傍ら、現代大衆文化において価値転覆的な表象を担ってきた新たなパッシングのモデル(黒人文化にとどまらないもの)を広く分析し、業績にまとめた。ここで主となった調査対象は、従来知られるパッシングの常套を反転する行為,すなわち、白人歌手が黒人になりすましてデビューする、異性愛芸術家が同性愛者になりすますことにより己の創作に価値を付与するといった、米国では1980年代初頭より顕著になった攪乱的パッシングの文化的背景である。具体的には、192,30年代の舞台芸術および映画産業におけるパッシング的演目の取り締まりを問題にしたが、これらは明治学院大学言語文化研究所における講演、東京大学・表象文化論学会におけるシンポジウムで公表された。同時に、アジア人男性のジェンダーと合衆国の軍事文化を含意したパッシング表象の分析も行った。これらは『言語文化』、『F-GENSジャーナル』、お茶の水女子大学COEシンポジウム、アメリカ比較文学会にて発表された。なお、主に20世紀ハリウッド映画を素材とした以上の研究実績の他、以下3点の個別的研究を行った。すなわち、異性装とセクシュアリティについての理論的考察(『現代思想』)、ある米国女性大衆歌手の演技についての考察(『ユリイカ』)、モダニズム作家・アーネスト・ヘミングウェイのジェンダー・人種表象(『ヘミングウェイ研究』)についての考察である。こうして、文献資料のみならず図象や聴覚資料をも紹介しつつ、大衆文化の想像力にも広く影響を与えたと思われるパッシングの政治学を描くことで、本研究はひとまず終了された。これはまた、1920年代に始まる黒人文化が結晶化した一つの問題系が、現代の表現文化にいかに受け継がれてきたか、その道筋を検証する作業にもなった。