著者
原田 幸明 芳須 弘 山口 仁志 井島 清 井出 邦和 片桐 望
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地球環境問題に対応するサスティナブルな物質・材料の設計・選択・評価に資するための、物質・材料のマテリアル・リスク指標を、"持続的供給リスク"、"環境変動リスク"、および"毒性リスク"としてとらえ、それぞれに対する指標を数値化した。この数値化において、元素ごとに共通の手法を用いることで横断的な比較を可能とし、材料や部材の設計に用いることができるようにした。さらに、これらの指標の適用方法を"持続的供給リスク"を表す関与物質総量を中心に例示した。とくに、リサイクルの適用に関して実際のリサイクル技術の開発と合わせて都市鉱石化の評価に関与物質総量を用いるという新しい適用方法も明らかにした。
著者
中野 大三郎 伊澤 邦彦
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.235-241, 1996-09-30
被引用文献数
4

三重県伊賀盆地の上野市大谷と大山田村甲野の2地点で1988年から1991年に, カワニナを採集し, 母貝の殻高と胚数の関係及び殻高25-30 mmの母貝を用い保育嚢にみられる胚の発育段階による胚構成の季節変化から生殖周期, 保育期間, 年産仔数を検討した。年による生殖周期の基本パターンには大きな相違は認められなかった。夏には発生初期の胚が保育嚢に多く認められ, 1腹の平均胚数は大谷では約1000個, 甲野では約700個と最大を示し, 夏以降秋まで産仔による減少を続ける。越冬した胚は春に産出し, この季節の胚数は最小となり, 大谷及び甲野ともに約250個であった。卵は4月下旬から10月中旬までの長期間にわたり保育嚢に継続して供給され, 4月下旬から8月下旬までに供給された卵は6月下旬から10月中旬に稚貝となり産出されると推定された。8月下旬以降の供給された卵は越冬し, 翌春の4月以降6月までに稚貝となり産出されると推定された。温暖期の4月から10月の胚の成長速度に相違がないと仮定した場合, 再生産力として1母貝当り大谷で1550個/年から2100個/年, 甲野で約1200個/年が見積られた。
著者
馬場 章
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

本研究では、わが国科学技術黎明期たる江戸時代の計量統制に関する従来の研究の問題点に鑑み、彫金・大判・分銅という三家業を営んだ後藤家の分銅に関わる文献・器物資料を対象に調査・整理・分析・考察を行った。また、後藤家の分銅関係の文献資料に構造分析を加え、分銅の製造・流通過程と検定の全貌を解明した。さらに、後藤家伝来の器物資料である各種分銅の精密計測を行い、文献資料と器物資料の相関を解明した。後藤家伝来の分銅のうち、特に「正本分銅」は、後藤家が製造した分銅の基準になったと推測されるので、精緻な重量の測定を行った。平成17年度は以下の3点の研究を行った。1、史料翻刻昨年度に引続き、分銅関係資料の解読作業を行い、未翻刻の一次資料である「分銅御用諸書留」の解読作業を完了した。「分銅御用諸書留」により、近世後期から明治初年にかけての分銅の検定にかかわるプロセスや流通する分銅の公定価格の推移を知ることができ、これまで未解明であった分銅の製造・流通過程と検定の全貌を明らかにした。2、分銅調査未整理の分銅関係の器物資料のうち、千枚分銅模型・「正本分銅」・市中分銅・極小分銅など各種分銅及び分銅製作道具を調査・整理し、1点毎のデータを採取した上で目録を作成し、写真撮影を行った。分銅の重量・寸法に関しては、デジタル機材を活用して精緻な値を求めた。特に、「正本分銅」については、国立科学技術博物館の協力を得て、精緻な重量の測定を実施した。3、報告書の作成上記1、2の調査・作業で得られた成果を掲載した報告書を作成した。ここには分銅・諸道具一式の目録、「正本分銅」の各種データ、分銅関係資料の解読文が掲載される。これらの成果を踏まえ、本研究の目的である後藤家伝来の分銅に関わる文献資料および器物資料の構造化と両者の相関関係を考察し、その結果を論考として掲載した。
著者
渡辺 泰 広川 文彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.20-24, 1975-02-15
被引用文献数
4

1.1970年10月に,土壌の深さ0〜15cmに4種の種子を均一に混合し,年5〜6回の攪拌区と非攪拌区を設けた。3年間にわたり,0〜5,5〜10,10〜15cmの土層に分けて種子を回収し,2,3の発芽条件を連続的に与え,混在種子の発芽反応を実験室で追求した。2地中種子は,休眠陛に関して周期性を示した。初めに埋蔵した一次休眠種子は,越冬中に覚醒し,発生最盛期まで完全に醒めており,シロザ,オオイヌタデ,ツユクサなどは7月下旬,ヒメイヌビェは8月下旬の調査で二次休眠がみられ,そして,11月下旬には再び多くの種子が覚醒していた。3。二次休眠は,種子のあった場所の最高地温によって誘導されるように推察され,0〜5cm内の種子は10〜15cm内の種子よりも早く二次休眠に入った。4.得られた結果をもとに,奉耕,秋耕および中耕の意義について論議した。おわりに,御協力戴いた北海道農試畑作部岡啓技官,池岡正昭技官に謝意を表します。
著者
河合 渓 山口 志織 井手 名誉 五嶋 聖治 中尾 繁
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.105-112, 1994-08-31
被引用文献数
4

北海道北東部に位置するサロマ湖において1990年12月から1993年10月にかけてヒメエゾボラNeputunea arthriticaの生殖周期, 寄生虫による感染個体の割合とこれらの個体の生殖腺発達について検討を行った。組織学的観察により生殖腺と貯精嚢の発達過程を卵巣と精巣は4期, 貯精嚢は3期に区分した。その結果, 雌雄共に1年を周期とした生殖周期が示された。発達過程は卵巣で8月∿11月が回復期, 10月∿4月が成長期, 4月∿7月が成熟期, 5月∿8月が放出終了期であり, 精巣は4月∿5月が回復期, 4月∿7月が成長期, 8月∿12月が成熟期, 11月∿4月が放出終了期であった。また, 貯精嚢は7月∿8月が休止期, 9月∿12月が貯留期, 4月∿6月が放出終了期であった。その結果, 交尾期は4月∿8月, 産卵期は5月∿8月と推定された。また, 雌では放出終了期の個体の割合が非常に低いことが示された。寄生虫に感染した雌個体は生殖巣指数(GSI)の値が周年にわたり非常に低く, 生殖腺はほとんど発達していないと考えられる。一方, 感染雄個体のGSIは低い値を示しているが, 非感染個体のGSIの周期と同調した傾向を示しており, 寄生虫に感染しても生殖腺は発達すると考えられる。寄生虫感染個体の割合を湖内各地で調べたところ, 感染率は0%から60%と様々であったが, 全域の感染率は3.7%と低い値を示した。これらの結果から, 寄生虫の感染はヒメエゾボラの生殖腺の発達に影響を与えているが, 湖全域での産卵抑制の主要な原因にはなっていないと考えられる。
著者
丸山 文裕
出版者
独立行政法人国立大学財務・経営センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本の大学における収入は、長年にわたって専ら政府予算、家計の負担、付属病院など事業収入で構成されてきた。大学システムの規模が小さければ、政府の負担によってのみ大学の運営をすることは可能であろうが、より多くの人々が大学教育を受けようとすると、財政規模は莫大になり、政府の負担だけでは賄えない。これは日本のみならず、高等教育人口がより大きいアメリカでも共通の現象である。本研究課題は、大学の授業料の検討であるが、授業料問題は政府の負担と家計の負担のバランスの問題でもある。本研究では、このバランスをまずデータをもって検討した。他方、大学の経営にとっては、政府予算が削減されると、それを補う方法として授業料の値上げが考えられる。2004年の法人化以後は、国立大学も私立大学と同じように、経営の自立性が求められ、授業料設定も部分的に自由化された。経営の健全化からは、授業料値上げが必要な大学もある。しかし国立大学は国民に安価な授業料で、良質な高等教育機会を提供するという使命を有している。また授業料の値上げは、優秀な学生の確保の点から見て安易にはできない。このように授業料設定は、大学の使命、高等教育機会、大学の経営、学生募集の問題とも密接にかかわっている。本研究は、日本とアメリカの大学での授業料問題を、高等教育費負担、高等教育機会、大学経営、学生募集などの観点から、理論的およびデータを分析し実証的に検討した。そこで得られた数々の知見は、政策的意義を持ち、今後の国立大学授業料水準を考える上で有用と思われる。
著者
堤 裕昭 木村 千寿子 永田 紗矢香 佃 政則 山口 一岩 高橋 徹 木村 成延 立花 正生 小松 利光 門谷 茂
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.165-189, 2006-03-05
被引用文献数
6

有明海では,近年,秋季から初冬に大規模な赤潮が発生し,ノリ養殖漁業に大被害をおよぼしている。水産庁九州漁業調整事務所がまとめた過去の赤潮記録を用いた解析によって,冷却期(10月〜12月)に有明海で発生した赤潮は,1998年以降規模が急に大型化したことが判明した。しかし,赤潮の大規模化を招くような陸域からの栄養塩流入量の増加は,有明海奥部に注ぐ一級河川からの栄養塩負荷量や有明海沿岸での公共用水域水質測定の過去のデータには見られない。本研究では,2002年4月〜2003年4月に,有明海で全域にわたる精密な隔月水質調査を行なった。奥部では7月および10月〜12月において,流入した河川水が表層の塩分を低下させて成層化し,その表層で栄養塩濃度が急上昇して,大規模な赤潮が発生していた。2002年4月〜5月の諫早湾潮受け堤防の開門操作期間には,島原半島側に顕著な湾口流出流が観測された。本研究の調査結果は,1997年の潮受け堤防締めきりが有明海奥部の河口循環流を変化させ,塩分の低下した表層水を湾外へ流出し難くして,1998年以降,毎年冷却期に奥部で大規模な赤潮を起こしてきたことを示している。
著者
玉木 賢策 沖野 郷子 岡村 慶 沖野 郷子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

研究期間内に複数回の海底熱水鉱床探査航海を実施し、まだ未確立の部分の多い海底熱水鉱床の探査手法の確立を目指し、同時に海底熱水鉱床の形成機構に関する研究を実施。海底熱水鉱床が形成される中央海嶺系(実験海域:インド洋)、島弧火山系(伊豆小笠原火山弧)の比較研究により研究を実施する。探査航海に使用する装置としては、有人潜水調査船「しんかい6500」、ROV(Remote Operated Vehicle : 有索無人潜水艇)、海水化学現場分析装置を搭載した採水システム、潜水船等搭載型深海磁力計を使用し、深海探査を実施する。本研究期間中に、中央海嶺および島弧火山系のそれぞれにおいて新たな熱水鉱床を複数発見することを目指す。探査手法として(X)磁気探査手法と(Y)化学探査手法についての開発を行う。
著者
原 靖 郡 健二郎 高田 昌彦 児玉 光正 石川 泰章 栗田 孝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.1124-1129, 1992-07-20
被引用文献数
4

近畿大学医学部泌尿器科において,1988年9月から1990年10月までに950例の上部尿路結石に対してESWL治療を施行した.2回以上ESWLを要した症例(以下難渋群と記す)は110例であった.また,1回のみのESWL治療で完全排石を見た症例のうち無作為に抽出した97症例を対照群とし,2群間を比較し2回以上ESWLを要した原因を統計学的に検討した. その結果,難渋群で有意を持って高かったものは,ESWL以前の自然排石歴(3回以上),水腎症の程度の違い,サンゴ状結石の頻度,中下部尿管結石の頻度であった.また,有意差がないものの両群間において差がみられたものは,難渋群においての結石介在期問が長くPNLの既往が多いことであった. 以上のことより,上記のような状態にある結石で,1回目のESWL治療で砕石が不良であった症例に対しては,ESWL単独治療には限界があると思われ,併用処置や,他の治療法も適時行う治療方針が必要であると考えられた.
著者
釜森 勇樹 川村 新 飯國 洋二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.57, pp.35-38, 2009-05-21

本論文では,ゼロ位相信号解析による広帯域雑音の除去について検討する.ゼロ位相信号とは,全周波数成分の位相をゼロに変換した信号であり,観測信号の振幅スペクトルの逆フーリエ変換として定義される.ゼロ位相信号へ変換することにより,振幅スペクトルの周波数軸方向の周期性を解析し利用することが可能となる.筆者らは,ゼロ位相信号解析の応用例として,白色雑音およびインパルス雑音に対する雑音除去法を提案してきた.本論文では,ゼロ位相信号解析によって,より一般的な広帯域雑音の除去が可能になることを示す.
著者
清家 泰 奥村 稔 三田村 緒佐武 千賀 有希子 矢島 啓 井上 徹教 中村 由行 相崎 守弘 山口 啓子 日向野 純也 山室 真澄 山室 真澄 中野 伸一
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

実験区(高濃度酸素水導入窪地)の他に、対照区(高濃度酸素水導入の影響の及ばない窪地)を設け、比較検討した。湖底直上1m層への高濃度酸素水の導入による改善効果として、明らかになった研究成果の概要を以下に示す。(1)対照区では底層水中に高濃度の硫化水素(H_2S)が観測されたのに対し、実験区ではH_2Sが消失した(H_2S+1/2O_2→H_2O+S^0↓)。(2)対照区では底層水中の溶存酸素(DO)濃度が無酸素に近い状態で推移したのに対し、実験区では窪地全域のDOが増大した。また、対照区では底層水中の酸化還元電位(ORP)が負の領域で推移したのに対し、実験区では正の領域まで上昇した。(3)湖底堆積物中のH_2S濃度を鉛直的にみると、対照区では表層部のみでH_2S濃度の減少が観られたのに対し、実験区では表層から5cm程度の深度まで濃度が激減した。また、メタンCH_4(温暖化ガス)もH_2Sの鉛直分布と同様の傾向を示した。(4)対照区に比べ実験区では、底層水中PO_4^<3->に明瞭な減少傾向が観られた。実験区の湖底泥表面に酸化膜の形成が観られたことから、湖底泥界面における共沈現象及び湖底からのPO_4^<3->の溶出抑制が示唆された。(5)対照区に比べて実験区では、底層水中の無機態窒素(NH_<4+>+NO_<2->+NO_<3->)に減少傾向が観られた。酸素導入により、湖底泥界面における窒素除去機能(硝化・脱窒)が活性化したことを示唆する。湖底堆積物の深度別脱窒活性を観ると、対照区では表層部のみ活性を示したのに対し、実験区では表層から5cm程度の深度まで顕著な活性を示した。この結果は、高濃度酸素水の供給により、脱窒部位が大きく拡大したことを意味する。(6)対照区ではベントス(底生生物)が皆無であったのに対し、実験区では、アサリやサルボウガイのような二枚貝の加入は認められなかったものの、多毛類を中心とするベントスの棲息が確認された。以上のように、松江土建(株)社製の気液溶解装置を用いるWEPシステムは、無酸素水塊への酸素供給を起点に、生物に有毒なH_2Sの消失、温室効果ガスであるCH_4の消失、栄養塩(N,P)の減少及びベントスの復活等に絶大な効果を発揮した。通常、還元的な湖底堆積物に対する自然任せの酸素供給では、その効果は、精々、湖底泥表層部の数mmまでと云われていることを考えると、本システムによる底質改善効果(泥深約0~40mm)は絶大である。このようにWEPシステムは、本研究で対象としたような比較的広範囲の窪地に対して有効であり、特に湖底の底質改善に極めて有効であると云える。今後、ランニングコストの低減が図れれば、有用性はさらに高まるものと考えられる。
著者
江崎 雄治 西岡 八郎 小池 司朗 山内 昌和 菅 桂太
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、地域別の将来人口推計の方法について検討した。主な成果は以下の通りである。(1)世界各国の実状を調査し、コーホート要因法が標準的手法であることを確認した。(2)人口移動に関するより適切な推計モデルについて検討した。(3)独自の質問紙調査を実施し、将来の出生の見通しについて議論を行った。(4)外国人の出生、死亡の将来人口推計に対する影響は小さいことが確かめられた。(5)市町村別世帯数の将来推計について課題を整理した。
著者
伊藤 賢一
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的に掲げた「公共空間の希薄化と個人化傾向を説明する統一的な理論モデルを構築すること」は、十分完成した形には至らなかったものの、ある程度中心的なアイディアを示すことができたと考える。中核となるアイディアはBeck(1986)らが提示しているものと殆ど同型であるが、Beckらが必ずしも結びつけて論じなかった地域コミュニティの変容や、新しいメディアの浸透、消費行動の変化なども、さまざまな社会制度やしくみの組織化にともなう「意図せざる結果」として描くことができるのではないか、というものである。これは、現在起こっている社会変動の一面を捉えるだけでなく、多くの社会理論が指摘している傾向性をまとめあげ、現代社会が直面している大きな社会変動の意味を見通す成果になりうると考える。
著者
秋山 朝子 今井 かおり 石田 幸子 伊藤 健司 小林 正志 中村 秀男 野瀬 和利 津田 孝雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.787-792, 2006-10-05
被引用文献数
1 3

An analytical method for the determination of aromatic compounds exhalated from hand skin has been proposed. The sampling of exhalated aromatic compounds was performed as follows: after the intake of aromatic compounds included in chewing gum or a capsule, exhalated skin gas was collected from a hand. The hand was covered with a sampling bag of poly vinyl fluoride (PVF) for 30min. Then, the inner space of the sampling bag was sprayed with a 25% of ethanol aqueous solution. After removing the hand from the bag, the trapped solution containing skin gas was collected. The aromatic compounds in the trapped solution were extracted to the solid phase as Twister^[○!R] (stir bar coated with poly dimethyl siloxane, Gerstel). Extracts were determined by gas-chromatograph mass spectrometry using a thermo desorption system and a selective ion mode, Linalool, citronellol and geraniol, which are the main components of rose essential oil, were detected from the skin of a hand after an oral intake of rose oil. The exhalated absolute amount of linalool, citronellol and geraniol increased in 30 to 60min, and then decreased after intake. The recoveries of linalool, citronellol and geraniol were 53.5%, 66.7% and 55.1%, respectively. The correlation coefficient of the standard curves for linalool, citronellol and geraniol were 0.9977, 0.9994 and 0.9987, respectively. Each compound exahalated from the skin of a human body during 6 hours after intake was estimated to be, according to the amount of intake, 0.39%, 0.09% and 0.25%, respectively, for one subject. The absolute amount of geraniol exhalated from a hand increased significantly after oral intake for 8 subjects (P<0.025). This is the first report to present hard proof that an aromatic compound was exhalated from human skin after its intake as food.
著者
梅崎 昌裕 河野 泰之 大久保 悟 富田 晋介 蒋 宏偉 西谷 大 中谷 友樹 星川 圭介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地域研究者が土地利用図を作成するために必要な空間情報科学の最新技術について、その有用性と限界を検討した。具体的には、正規化法による地形補正、オブジェクトベースの分類法による土地被覆分類、数値表層モデルの分析による地理的変数の生成が、小地域を対象にした土地利用図の作成に有用であることが明らかになった。さらに、アジア・オセアニア地域における土地利用・土地被覆の変化にかかわるメカニズムの個別性と普遍性を整理した。
著者
川人 祥二
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、極短時間の光の変化を画素単位で捉える排出制御型電荷変調素子 DOM (Draining Only Modulator)を用いた高時間分解撮像デバイスとバイオイメージング、 超高分解能 3 次元計測への応用について研究を行った。DOM 素子を用いて試作した蛍光寿命イメージセンサにより 2.5ns と 10ns の蛍光寿命の差を明確に区別したイメージングが可能であることを示した。DOM 素子を用いた TOF3 次元計測に対しては、極短時間パルス光に対する素子応答を用いた高分解能距離計測方式を考案し、試作により 300μm の分解能(2ps の時間分解能)を得た。
著者
浜元 聡子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、地方分権下のマカッサル海峡島嶼部地域における社会経済的変化をぶんせきすることである。この研究が始められた2005年当時、インドネシア国内における地方分権は、安定した速度で着実に進行していた。なにかが具体的に変化しているというよりは、地方分権という言葉が遠隔の島嶼部にも届き、住民が生計活動上の変化をこの言葉に期待していたといえる。2007年前半ごろから次第にこの状況が悪化しはじめた。要因の第一は、マカッサル海峡地域における自然資源利用が深刻な資源枯渇に直面しているという認識を、末端の零細漁民でさえもつようになったことである。第二に、石油燃料価格の上昇により、より漁獲の多い漁場を求めて海を移動することができなくなった。海を生活世界の基盤としてきた人々の様相が、このふたつの要因により大きく変化し始めた。2005年ごろから、零細漁民やその妻たちを対象とするマイクロクレジットが島嶼部地域に浸透していたが、ここから融資を受ける世帯が急増した。融資を受ける対象にすらなれない世帯は、条件に適する世帯に代理申請を頼むようなこともある。マイクロクレジットそのものは、沿岸部における品行世帯を救済するために。海洋漁業省が主導してきたプログラムである。漁労活動による収入を増加させるための融資は、教育費や生活費に回されるようになった。零細商業を営んでいた人は運転資金が減少し。貧富の差が拡大した。2008年にはもう一度、石油燃料価格の値上げが予定されている。収入が激減し、生活苦が重く圧し掛かる島嶼部の暮らしに、地方分権という言葉に期待されていた社会経済生活の好転は、現実のものとはならなかった。