著者
篠本 滋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

脳シミュレータの基本要素である神経細胞の入出力関係を定量的に記述した.スパイク発生予測の国際コンペで優勝したMAT (multi-timescale adaptive threshold) modelについての論文を公表し(Kobayashi, Tsubo, and Shinomoto, 2009),それにさらなる改訂をおこない,オリジナルMATモデルの予測能力を保ちながら,オリジナルモデルでは達成できなかった多様な応答形式を実現できるモデルに改良した(Yamauchi, Kim, and Shinomoto, 2011).後者の研究では,オリジナルMATモデルの長所であるスパイク予測能力をそこなわないようにしてIzhikevichによって分類された多様な発火パターン20種類のすべてを実現することを可能にした.著名な外国人研究者を招へいし,質の高い情報収集を行い,またいくつかの国際共同研究を開始した.
著者
前田 淳 本池 洋二
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.170-171, 1976-02-25

東京女子医科大学学会第41回総会 昭和50年9月27日 東京女子医科大学本部講堂
著者
稲庭 恒一
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1 本第三セクター会社アンケート調査は有効回答数1356・回収率65.5%で、これは調査実施時期の第三セクター会社総数3707社の36.6%からの回答に相当するもので、画期的な回答結果であった。2 第三セクター会社の清算(経営破綻)は、98年以降増加の一途をたどり、負債総額の巨額化が目立つこと、所在地方的には東北・北海道・九州で多く見られること、等々を実証的に明らかにした。3 本アンケート調査は、これまで研究されたことのない第三セクター会社の経営状況と会社の内部関係、特に、事業分野・資本規模・経営体制・経営者の姿勢・地方公共団体との連携等、との実態的関係について、多くのことを明らかにしえた。例えば、資本金規模の大きな第三セクター会社ほど経営状況が厳しく、その小さな会社のほうが経営状況が良いとする割合が高い。業種的には、本アンケート結果によれば、「総務省調査」と異なり、経営が厳しいとする割合の高い業種は教育文化関係・運輸道路関係・農林水産関係などであり、経営状況の良い割合の高い業種は公害自然環境保全関係・生活衛生関係などである。地方的には中国・四国・北陸が経営が厳しい割合が高く、中部・関東・北海道・近畿が経営状況が良い割合が高い。地域的には離島・中山間部で厳しく、地方都市・沿岸部・大都市で良い割合が高い。8割近くの第三セクター会社で常勤取締役が居ないが、代表取締役社長が常勤であることが経営状況の良さの割合を高めるわけではない。等々である。4 本アンケートの分析を踏まえ、第三セクター会社経営上考慮すべき若干の提言を行った。
著者
丸山 宏
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1990年代末から、わが国でも外資系を始めとする投資ファンドの活動が活発になった。投資ファンドの経済活動がもたらした影響を検証することは、今後の投資ファンドに対する規制のあり方や企業再生・M&Aに関する政策をめぐる議論のために欠かせない。本研究では、投資ファンド主導の会社更生の事例が増加しているという事実に着目し、投資ファンドが会社更生事件の弁済率に与えた影響を計量的に分析した。不況産業に属している破綻企業の企業買収案件では、同じ(不況)産業内企業(インサイダー)の資金制約のため、その産業外の資金制約の緩い企業(アウトサイダー)が最終買収者になる確率が高くなることが考えられる。投資ファンドが主として不況産業に属する更生会社の再建のスポンサーになることによって、不況産業の弁済率が相対的に上昇し、好況産業と不況産業との弁済率の差が緩和される可能性がある。この仮説を「ディープポケット仮説」と名づけ、他の代替的な仮説と、現実説明力を比較した。1990年から2004年の期間に手続きが開始された会社更生事件を対象とし、投資ファンドの活動がない前半(1990年-1998年)と、投資ファンドがスポンサーとなった会社更生事件が見られるようになった後半(1999年-2004年)の債権弁済率(要弁済額/確定債権総額)の関数を推計した。前半では更生会社が不況産業に属していたことを表すダミー変数が統計的に有意な負の値であったが、後半では有意性は認められなかった。こうした分析結果は、ディープポケット仮説と整合的である。単に投資ファンド主導であるから弁済率が上昇するということではなく、スポンサーが見つかりにくく、弁済率も抑制的な傾向のあった不況産業で投資ファンドがスポンサーとなり、好況産業との弁済率の差を緩和している可能性を検出したことが重要である。このように不況産業での更生案件において、一定の役割を果たしつつあるのであれば、投資ファンド主導の企業倒産処理の増加は、企業倒産処理の効率化にとって望ましいことと考えられる。
著者
中田 裕康
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、近年の大改正を経た新しい倒産法制の下で倒産手続が契約に及ぼす影響を検討した。まず、倒産法改正により直接的影響を受ける各種の契約(賃貸借契約、請負契約等)の検討をした。改正により多くの問題が解決されたが、なお残る問題は少なくない。特に、賃料債権の処分等の効力をどこまで認めるべきかについて、実体法上の検討が必要である。次に、双方未履行双務契約について検討した。今回の改正では、基本的には従来の規律が維持されているが、今後、破産法53条の原則とその例外のあり方についてなお検討する必要がある。根底には、倒産法と平時実体法との関係、及び、倒産手続開始後の契約の帰趨(更に、債務不履行における契約と債権の関係)という大きな問題がある。また、重要な現実的課題である知的財産権ライセンス契約の適切な規律について検討した。ここには、契約上の地位の法的評価という理論的問題と、特許法における登録制度及び通常実施権制度のあり方という制度的問題がある。更に、当初の研究計画から発展する問題として、否認権と契約、及び、新信託法制の下での信託と倒産の関係についても検討した。前者では、新制度の下での否認権と詐害行為取消権との関係を検討し、平常時から倒産時に移る段階での契約のあり方を考察した。後者は、信託財産破産等の新しい法制度の検討をした。本研究により、新しい倒産法制の下での倒産法と契約法の主な問題点を分析することができた。その結果、実体法の検討がなお必要な問題が少なくなく、それらはいずれも基礎的な問題に関わるものであることが確認できた。根本的には、平時実体法における私的自治及び自由競争の尊重の理念と倒産手続における債権者平等及び衡平の理念との接合、並びに、平時実体法自体の規律の問題がある。倒産手続の効率性及び平時及び倒産時の実体法の社会的影響も考慮しなければならない。なお研究を進めていきたい。
著者
佐伯 仁志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、会社法の大改革期にあたって、会社財産の保護を中心とする会社法の犯罪(会社犯罪)がどのような影響を受け、今後どのようなものであるべきかについて、研究しようとするものである。具体的には、第1に、会社法は、近時、自社株式取得規制の抜本的改正や委員会等設置会社の導入など、多くの改正が行われているが、会社法の罰則規定については変更がない。したがって、これらの改正が現行の会社犯罪の解釈にどのような影響を与えるかが検討されなければならない。そのためには、従来の会社犯罪に関する判例・学説を整理することがまず前提作業として必要であるので、このような前提作業を行うとともに、近時の改正が従来の解釈に与える影響について検討を行った。第2に、新しい会社犯罪のあり方を考える上では、諸外国、特に、わが国の会社法に大きな影響を与えている、欧米の会社法および会社犯罪を参照することが有益であると考えられるので、アメリカ合衆国を中心に、比較法的研究を行った。第3に、会社財産の刑法的保護を考える上では、会社財産が危機に瀕した状態における保護も考慮に入れる必要がある。特に、近時の会社法の研究においては、通常時における会社の法律関係を規制する法を理解するためには、危機時における会社の法律関係を規制する倒産法をも視野に入れて考察する必要があるとの考えが有力になって来ているので、会社に関する倒産犯罪、特に会社更生犯罪の研究も行った。第4に、会社犯罪に対する制裁としては、犯罪収益の没収・追徴が、犯罪の抑止および犯罪被害者の救済の両面で重要であり、特に、後者については、法制審議会において答申がなされたので、この点に関する研究も行った。なお、研究成果の公表については、第3および第4については成果の一部を論文として公表したが、第1および第2の部分については、成果の公表するための論文を準備中である。
著者
竹内 富美子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.171-172, 1976-02-25

東京女子医科大学学会第41回総会 昭和50年9月27日 東京女子医科大学本部講堂
著者
大矢知 浩司
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

簿記・会計教育のマルチメディア化された教材として,わが国の代表的な財務データベースである日経NEEDSを利用するMicrosoft Visual BASICによる財務分析システムNDjを開発した。ノートパソコンを前提とした開発であるためコンパクトである。マウスクリックのみで実行可能である。青山学院大学の「コンピュータ会計論」では,サーバーを介して70台のパソコンと接続して一斉授業の教材として利用している。システムの利用には何らかの説明を必要としないが,財務分析式,データの意味するところを説明するマニュアルを『財務分析ツール・アンド・データ』と題して白桃書房より公刊している。本研究の成果である。しかし,教育目的からは完全自動化は問題があった。有価証券報告書から自らのニーズに応じたデータを選択して入力し,Excelなどの表計算ソフトを用いて分析する。さらにグラフ化してレポートにする。この手間暇がなければ学生の身につかないように思われる。余りにも簡単に指標を入手できるので指標を理解できないようである。先ずVisual BASICでの簡単なプログラム作成,有価証券報告書の理解が必要であろう。それにもまして企業に対する理解が基本であろう。本年度は,多少のデバッグと報告書作成の作業を追加的に行った。
著者
山本 弘
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

特殊法人及び金融機関の経営破綻における倒産処理法上の諸問題につき研究を行い、次のような知見を得た。1 デリバティブ取引は、現行破産法61条により当然清算され、その一括清算条項は、破産法上の相殺権の趣旨に照らし有効であること、会社更生等の再建型倒産処理手続においてもデリバティブ取引は当然清算されるべきこと、したがって、金融機関を当事者とするデリバティブ取引につき、「金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律」のような特別の立法措置は本来不要であること。2 民事再生法が一般先取特権者を拘束しない手続であり、一般先取特権付の債券発行を行う特殊法人の再建手続として不適格であること、したがって、民事再生法の施行は、その根拠法令に破産能力を認める規定が存在しない限り、特殊法人を清算するかその事業をどのような形で存続させるかは立法者の裁量に委ねられてているとの結論に影響しないこと。3 改正会社更生法が導入した代理委員強制の制度と、金融機関の更生特例法が定める預金保険機構、投資家保護基金および契約者保護機構の預金者、投資家、契約者の代理権限とはその趣旨が異なること。
著者
中西 正
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、債務者の財産状態が適切に開示されていなければ(企業の情報開示が十分でないなら)、倒産処理手続は、十分にその目的を達成することはできないことを、明らかにすることである。研究の発端は、ドイツ倒産法の機能不全である。すなわち、1877年のドイツ破産法は、制定当初は効果的に機能していた。しかし、その後、破産手続により確保される債務者財産が減少を続け、まず無担保債権に対する配当率の低下が問題となり、次に財団不足に基づく破産申立の棄却や破産手続の廃止の頻発が問題とされるに至った。この点では和議手続も同様であった。その原因は、公示されない別除権が創設され、債務者の財産状態が外部に対してきわめて不明確となったため、支払不能発生時の債務者財産を拘束し破産債権者に分配するという無担保債権者を保護するための制度が機能しなくなったことである。そこで、公示されない担保権につき、五四四条(a)と五四七条(e)をもつアメリカ合衆国連邦倒産法を研究したが、その結果は以下のとおりである。公示されない(後れて公示された)担保権を無効にする制度は、担保権を公示する登記・登録が無担保信用を供与する者に対して有用な情報を提供することを前提としている。ところが、アメリカ合衆国では、無担保信用は財務諸表制度に依拠して供与されている。登記・登録制度の無担保債権者保護機能は、無担保信用が債務者が占有する個々の財産に着目して供与された時代にはそれらはきわめて重要な役割を果たしたが、現代ではそうではない。そこで、以下の如き結論を得ることができた。我が国の財務諸表が債務者の財産状態を正確に反映させること、そのような情報に基づいて無担保信用が供与される実務を確立することが、倒産処理手続が効果的に機能するための、絶対的に必要な条件である。ただし、限定的ではあるが、担保権の公示が決定的な重要性をもつこともあり、そのような場合対抗要件否認が重要な役割を果たす。
著者
吉村 豊雄
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.1-10, 1999-03-20

小稿の目的は、簡単にいえば、近世幕藩体制下の武家が「自己破産」しないのは何故か、江戸版「社会更正法」とでもいうべき近世武家の更正・財政保障システムの実態の一端を紹介することにある。
著者
小野 展克
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.55-70, 2008

This paper shows how the mass media reports the management crisis of companies. Through my research, it is found that media reports could have a huge impact on corporate credibility as well as on the fate of the reported companies. As a result of One-factor ANOVA (analysis of variance) and t Test, I have found that when companies decide on voluntary liquidation such as through debt waivers, the media often uses the words that make readers image about corporate turnaround, such as "rebuilding" and "support." On the other hand, in the case of the legal liquidation such as using the Corporate Rehabilitation Law, words that tend to damage the image of corporate credibility, such as "bankruptcy," and "failure," were used in many media reports. How the media reports company liquidation greatly vary depending on whether companies go bankrupt voluntarily or by using functions of the court.
著者
丸山 宏
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

会社更生法を適用された経営破綻企業の手続終結後の業績を実証的に検討した。とくに、会社更生手続適用前に株式を上場しており、会社更生手続終結後、再び株式上場を行った企業(株式再上場更生会社)に焦点を当て、株価データを利用した分析を行った。研究開始後、世界的な経済不況の影響から株式市場が低迷し、株式公開市場不振もあり、更生会社の再上場の事例は、実質的には5件にとどまった。そのため、特定の時期におけるクロスセクションの分析は断念し、個々の更生事例について、会社更生手続き期間を間に挟んだ前後の期間を対象とする時系列分析を中心とした分析を行った。1990年から2008年までの期間に会社更生手続きが開始された全企業289社について官報からデータを収集し、データベースを作成したが、最終的には、それらのうち、手続き開始前に株式を上場していた企業46社を基本的な分析対象とした。その中に、再上場会社5社も含まれている。分析から得られた主要な結果は、以下のとおりである。(1)再上場更生会社のベータ値(株式市場全体の変動に対する反応係数)は、更生前に比べ、更生後は低下傾向にある。(2)再上場更生会社の再上場後の経営成績は、属する業界の平均を上回る。再上場するか、売却するか、そのまま保持するかは、株式市場の状況や更生のスポンサーがファンドであるか否か、等の要因が影響する。上場後更生会社サンプル数、株価データ数を増加し、統計的検討の精度を向上させるため、研究期間を計画よりも1年以上延長した。
著者
森野 真理 堀内 史朗
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

岡山県英田郡西粟倉村において、現在の小規模林家の森林管理の状況と管理にかかわる問題について調べた。中には篤林家もいるが、近い将来管理放棄は一層進むことが示唆された。その背景には、これまで指摘されてきた経済的な問題だけでなく、立地特性や自然災害への脆弱性など複合的な要因があった。将来の担い手としては、血縁者の可能性は極めて低かった。受け容れには問題もあるが、Iターン者やボランティアなどのよそ者が管理の担い手として期待される。
著者
向後 麻里 斉藤 有深 柏原 由佳 小市 佳代子 市川 幾重 堀地 直也 今井 俊道 足立 満 村山 純一郎 木内 祐二
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.973-981, 2004-12-01
被引用文献数
1 2

日本における肺癌罹患者数は増加傾向にあり, 男性では悪性腫瘍の中で死亡原因の1位となっている. 非小細胞肺癌(non-small-cell lung cancer:NSCLC)は早期診断, 早期切除が原則となってくるが, 進行性肺癌や小細胞肺癌(small-cell lung cancer:SCLC)に対しては外科的切除の適応は少なく, 強力な化学療法や放射線療法が実施されるものの, 5年生存率は1%未満である. 近年, 肺癌の化学療法は, cisplatin(CDDP)と他剤との併用療法が主流でありSCLCではetoposide(VP-16), irinotecan hydrochloride(CPT-11), NSCLCではvinorelbin tartarate(VNR), gemcitabin hydrochloride(GEM)などと併用されている. こうした併用化学療法を安全かつ効率的に実施するためのクリニカル, パス(パス)を用いることは有用と考えられるが, 国内ではいまだ十分には活用されていない. パスとは, 病棟でのチーム医療の「質」と「効率」を同時に保障するために考え出されたマネージメントツールであり, パス導入により, 医療の標準化, チーム医療の推進, 情報の共有などの効果が期待される.
著者
福田 亮子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は人間の持つ感情、情緒を生体信号測定に基づき客観的に評価する手法の提案を目的としている。感情・情緒に関する従来の研究は情報を受容するいわば受動的な状態において行ったものがほとんどであるが、感性を考慮したインターフェイスや環境の設計を行うには、人間がこれらと受動的にも能動的にも関わることから、何らかの行動をしている際、すなわち能動的な状態でどのような感情・情緒が生起するかを把握することも重要である。前年度までのデータをさらに詳細に分析したところ、各種生体信号データのうち精神性発汗量が能動的に作業する際の感情の継時変化をよく反映していることが明らかになった。また実験課題については、比較的単純で練習効果も大きくない電卓を用いた計算作業が行動による感情の変化を観察する上で適しているとの確証が得られた。そこで本年度は、当該課題を遂行する際の行動観察と生体信号計測、ならびに作業前と作業後の主観評価を組み合わせた実験を行った。その結果、印象評価因子には作業前と作業後で共通するものとそうでないものが存在することが示された。前者は対象物の本質的な印象に関わる因子であるのに対し、後者は使用前は見た目をもとにした印象、使用後は課題遂行という行動経験をもとにした印象であり、課題遂行によりその際用いた道具の印象が変化することが明らかになった。このような変化が作業過程のどの部分で生じたかを分析したところ、押すべきボタンが見つからず探しているときなどで精神性発汗量が増加していた上、試行全体においてその変化の頻度が高く変化量も大きい場合は作業後の印象がネガティブなものとなる傾向が認められた。このような手法により感情の変化を引き起こす行動をある程度特定することが可能となったが、その結果は使いやすさを超え利用者の感情に影響を与えるようなインターフェイスや環境の設計に活かすことができるものと考えられる。
著者
松井 利充 伊藤 光宏 中本 賢 BERGEMANN An AARONSON Stu
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

増殖因子受容体の生物学的機能の発現には、リガンド結合にはじまる内因性チロシンキナーゼの活性化が必須であるが、キナーゼ活性を持たない増殖因子型受容体が正常組織にも発現していることが見いだされた。本研究においては私共が見いだしたキナーゼ欠損型のEphファミリー受容体、EphB6の生理機能を解明するために、キナーゼ欠損型受容体ErbB3とEphファミリー受容体研究のそれぞれにおいて世界をリードしている米国の研究者達と共同研究をすすめた。研究代表者松井は3度ニューヨークに赴き、研究分担者であるAaronson、Bergemann、伊藤博士らと本研究領域に関する最新の情報交換を行うともに、in situ hybridization法の技術指導をうけた。また、中本およびBergemann博士を招へいし、本学の院生に直接技術指導を行ってもらった。EphB6受容体発現は、健常人末梢血白血球では主にCD4陽性のTリンパ球の一部に認められるが、CD4+/CD8+胸腺細胞にはより強い発現がみられ、T細胞の分化/成熟に伴う生理的な遺伝子発現調節機構の存在が示唆されることや、既知のEph受容体リガンドの中ではephrinB2がEphB6受容体に高親和性に特異的結合する事を明らかにした。また、世界に先駆けEphB6遺伝子ノックアウトマウスの作製にも成功しが、当該マウスの中枢神経機能の解析をさらに進めるため、クリーブランド・クリニックに移籍した中本賢博士にマウスを送付するとともに、マウス作成にたずさわった松岡博士を派遣し、人的・物的交流をさらにすすめ国際的学術共同研究を推進しており、キナーゼ欠損型の本受容体の生理機能の解明はチロシンキナーゼ型増殖因子受容体を介する細胞間相互作用の活性発現の分子機構にも新しい概念をもたらす可能性があると考えている。
著者
川田 浩一 押切 源一
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

加法的問題に付随する例外集合の密度評価を与えるWooleyの方法を応用する際,DavenportのDiminishing range methodが効力を発揮する場面があることを発見した.この方法は,様々な加法的問題に適用することができ,とくに3乗数及び4乗数のWaring問題に付随する例外集合に対する新しい密度評価等の成果を得た.また,素数か,または2つの素数の積であるような8個の自然数の3乗の和として,充分大きい全ての自然数を表せることを示した.
著者
桑村 雅隆 小川 知之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

散逸系のパターン形成に関する研究として、捕食者の休眠を伴う被食者-捕食者系とよばれる3変数の常微分方程式の解の性質を調べた。また、ショウジョウバエの中腸幹細胞系の増殖と分化の制御機構を数理モデルを通して考察した。これらの結果は、SIAM Journal on Applied Mathematics, vol.71, pp.169-179 (2011), Journal of Biological Dynamics, vol.6, pp.267-276 (2012) 等の論文で公表された。