著者
水田 英實
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

西欧中世思想におけるキリスト教および哲学のインカルチュレーション(文化内開花)のあり方をトマス・アクィナスの哲学思想の立脚点から解明し、さらに非ヨーロッパ世界におけるキリスト教および哲学のインカルチュレーションの可能性を問うた。これにより、今日の多文化社会において異文化受容という課題を果たすために、哲学の果たしうる役割を模索する手掛かりを得て研究成果を取りまとめ、図書・雑誌に論文として発表した。
著者
内藤 林 高木 健 細田 龍介
出版者
大阪大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1986

船舶が大洋中を航行し種々の事態に遭遇した時、船舶としての機能を喪失しないように航行するためには高度に知能化された船舶にする必要がある。従来、船長を始めとする人間がこの役割を果たしていたが無人化船を考えた場合にこの代役をどのようにシステム化するか考えることが重要な課題となる。本研究成果の概要は次のとおりである。(1)大洋航行中の船舶の航海能力という概念を明確にすることができ、そのことによって評価方式に一つの指針を与えることができた。(2)船体運動、抵抗増加、船速低下及びそれらの計算の基礎になる流体力の計算、船体主要目の入力、計算結果の出力形式など既開発プログラムの統合化を行い、一貫した計算が可能になった。(3)荒天中を航行する船舶にとって台風(低気圧)情報は大切である。この台風情報の精度がどの位の精度で必要なのか、情報の不正確さの度合が船速などの予測精度にどのように効いてくるのか等を数量的に明確にした。(4)船長の持っている知能をプロダクションルールの形式で表現した。次に数理計算(SUMUT法)で求められた最適航路(最短時間航路)に一致するように前記のプロダクションルールを修正あるいは付加した。その結果、多大な時間を要する数理計算の結果とほとんど変わらない航路をプロダクションルールの方法で決定でき、計算時間の短縮を実現できた。(5)計算結果をデータベース化して「データベース型避航システム」を作成した。これにより経験をデータベースの型で保存でき学習能力を身につけることになった。(6)これらの研究を通じて、船舶耐航性分野の研究成果と持絶操船分野の研究成果を容易に取り込めるシステムの考え方を操縦することができた。
著者
西村 一之
出版者
日本女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

近年、人文社会科学の領域では、植民地研究の蓄積が進んでいる。しかし、それらの多くが生活世界とはある意味かけ離れた感があることを否めない。また、かつて日本が植民統治してきた朝鮮半島、台湾、南洋群島などをめぐる、植民地研究は未だ手薄である。本研究は、日本の植民地支配が50年間に亘った台湾をその対象とした。台湾社会では、現在その生活世界の様ざまな場面で、日本の植民統治と関連する事象、また台湾の人によってそれを言及される事象が、私たちの前に示される。本研究で現地調査の対象となった漁業領域においても、それは同様である。調査地である台湾東部における漁業は、日本人漁業移民の移住と公的機関による漁港の築港を伴う開発に由来する。日本人漁業移民は、移民村と呼ばれる場所に集住していた。1930年代後半より周辺地域に暮らす台湾の人びと(漢人/先住民アミ)が、日本人主体の漁業領域に参入する。このとき、日本人漁民との問で顔の見える関係性のなかでの技術移転が行われた。この技術移転は、1945年以降に実施された国民党政府による漁業振興策の中でも継続した。こうした1945年をはさんだ約10年間を経て、調査地は1980年代半ばまで東部地区を代表する近海漁業基地となった。植民統治期からこの地を代表してきたカジキ突棒漁は、船長を中心とした漁法だが、戦後活躍してきた彼らの多くが日本人漁民との漁撈を経験している。そして、彼らの持つ漁撈技術を始めとする「船長の力」は、漁撈の成功を目的としている。その力の起源をめぐっては、日本人漁民との漁撈経験が重要な位置を占めている。実際に彼が、日本人漁民とともに漁撈にあたったのは、若年の頃のごく短い期間でしかない。しかし、このときに習い覚えたと言及することは、彼らの社会内部に通用する「民俗知識」の中に、日本植民統治期の影響が取り込まれていることを示している。これをある種の翻訳過程の結果としてとらえることが出来る。以上を踏まえての研究成果の一部はすでに国際ワークショップの場や台湾の学術雑誌に投稿を通じて公表している。
著者
生田 美智子
出版者
大阪外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

平成14年度は、国外ではモスクワの外交史料館、ペテルブルグの海軍文書館、ナショナル図書館、国内では、神戸市立博物館、長崎県立図書館、長崎市立博物館で関連史料を調査・閲覧した。平成15年度は、国外ではロシア海軍文書館、ナショナル図書館、国立歴史文書館、東洋学研究所、国内では、戸田郷土資料館、下田開国資料館、根室郷土資料保存センターで関連史料の調査・分析を行った。ペテルブルグ国際会議では「強いられた旅行者:日本人の見たペテルブルグ」、ヨーロッパ日本研究協会(於ワルシャワ)では「江戸時代の日露相互イメージ」、モスクワの第7回日露フォーラムでは「17-19世紀にロシアに渡った日本人漂流民」と、題して報告し、各国の学者と意見・情報を交換した平成16年度は、モスクワの国立図書館、エストニアの国立文書館で史料の調査・分析を行い、タルトゥ学派の文化記号論者と知見を交換した。国内では長崎県立図書館、シーボルト記念館で関連史料の調査・分析をおこなった。ウラジオストクの日露国際シンポジウムで「江戸時代における日露相互観-ステレオタイプとその変遷」と題して報告した。平成17年度は、国外ではペテルブルグの海軍文書館、ナショナル図書館、東洋学研究所、クラスノヤルスク国立文書館で、国内では、赤間本陣伊藤家で史料を調査・分析した。上海で開催された第四回アジア研究者国際大会で「江戸期の日露関係の鏡としての外交儀礼」、ウラジオストクで開催された第21回日露極東シンポジウムでは「外交儀礼から見た江戸時代の日露交渉(第一回と第二回遣日使節の比較)」と題して報告した。国内では、京都大学で開催されたロシア・東欧学会で「外交儀礼から見た幕末の日露交渉(第三回遣日使節を中心に)」と題し報告した。外交関係をみるだけでは分らない変化が儀礼をみることにより分かるとの結論に達し、成果報告集『身体から読み直す幕末日露交渉史-外交儀礼を中心に』にまとめた。
著者
若曽根 健治
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

(1)ドイツの13世紀から18世紀におよぶ長い歴史をもつウァフェーデ(Urfehde[報復放棄の誓約])とその制度は、大きく三つの形態と段階を経てきた。(a)「騎士的ウァフェーデ」は貴族領主層相互のフェーデ(権利の要求を掲げた敵対関係とこれに伴う実力の行使)の過程で捕らえられた騎士が報復放棄の誓約を捕らえた側におこなった。(b)「騎士的市民的ウァフェーデ」は、市民勢力の興隆の中で騎士と市民とのフェーデ終結において交わされた。(c)「市民的ウァフェーデ(市民的都市司直的ウァフェーデ)」は、都市司直(都市参事会)にとって望ましくない行為のゆえに司直に捕らえられた市民が司直に交わした、復讐断念の誓約である。また市民的ウァフェーデにおいては、包括的抽象的に言い表わされた理由(例えば「逸脱」・「違反」等)によって捕捉され、ウァフェーデが誓約された。とりわけ市民的ウァフェーデは14、15世紀に広く展開し、都市・市民の社会的規律化に著しく寄与した。(2)この市民的都市司直的ウァフェーデの盛行は、市民の正当な告訴行為を妨げることが少なからずあった。このことが、カール五世刑事裁判令(カロリーナ・1532年)20条からわかる。都市司直もしくは裁判官から被った拷問によって受けた損害(「恥辱、苦痛、経費および損失」)の賠償を市民が裁判所に訴え出ようとするときに、司直もしく裁判官は、市民に、「ウァフェーデに助力」することによって妨害してはならない、と。帝国の裁判所は皇帝法(ローマ法)に基づく裁判制度の改革によって、裁量と恣意による都市刑事司法の弊害に対応しようしとしていた。
著者
横山 英 曽田 三郎 楠瀬 正明
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

1.本研究課題に関する内外の論文・著書の調査・収集につとめると共に, 問題点の整理を行った.2.新聞類・政書類・地方志類を広く検索して史料の収集につとめ, それを基礎にした研究の一部は別記の如く発表し, または発表を予定している.3.外務省外交史料館所蔵の中国近代地方自治関係文書の目録の整理を完了し, 『外務省外交史料館所蔵諮議局・省議会関係史料目録』の書名で印刷・公表し, 内外の関係方面へ配布した.
著者
田中 進 貴島 勝郎
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
no.174, pp.357-363, 1993-12
被引用文献数
3 1

It is of importance to evaluate the ship manoeuvring motion, such as the berthing in a harbour, the drifting behaviour of a disabled ship. A significant part of the lateral hydrodynamic forces acting on a ship will be due to cross flow drag, as the ship's drift velocity becomes relatively larger compared to the ahead speed. For the prediction of ship manoeuvrability at larger drifting angles, it will be required to estimate the cross flow forces accurately. In this paper, a calculation is given to the longitudinal distribution of the cross flow drag coefficient over the length of ship moving transversely. The theoretical method on basis of vortex model developed by the authors is applied to the Wigley hull and a container ship hull. By comparing with the measured results of captive model tests, the prediction results agree well with model tests. Therefore, this method will be useful for practical prediction of cross flow forces acting on a ship moving laterally, taking into account the forms of the ship's cross sections.
著者
家島 彦一 PETROV Petar GUVENC Bozku 鈴木 均 寺島 憲治 佐原 徹哉 飯塚 正人 新免 康 黒木 英充 西尾 哲夫 林 徹 羽田 亨一 永田 雄三 中野 暁雄 上岡 弘二 CUVENC Bozku
出版者
東京外国語大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本プロジェクトは、広域的観点から、西は東欧・トルコから東は中国沿岸部までを調査対象とし、様々な特徴をもつ諸集団が移動・共存するイスラム圏の多元的社会において、共生システムがどのように機能しているかを、とくに聖者廟に焦点を当てて調査研究した。平成6年度はブルガリア・トルコの東地中海・黒海地域を重点地域とし、共生システムの実態について調査した。平成7年度は、ペルシア湾岸地域(イラン・パキスタン)を重点地域とし、主にヒズル廟に関する現地調査を実施した。平成8年度は、さらに東方に対象地域を広げ、中国沿岸部と中央アジア(新疆・ウズベキスタン)を中心に聖者廟などの調査を実施し、あわせてトルコとイランでヒズル信仰に関する補充調査を行なった。共生システムの様相の解明を目指す本研究で中心的に調査したのは、伝統的共生システムとして位置づけられる聖者廟信仰・巡礼の実態である。とくにヒズル廟に着目し、地域社会の共生システムとしていかに機能しているか、どのように変化しつつあるかについて情報を収集した。その結果、ヒズル信仰がきわめて広域的な現象であり、多様な諸集団の共存に重要な役割を果たしていることが明らかになった。まず、トルコでの調査では、ヒズル信仰が広範に見られること、それが様々な土着的ヴァリエイションをもっていることが判明した。ペルシア湾岸地域では、ヒズル廟の分布と海民たちのヒズル廟をめぐる儀礼の実態調査を行った結果、ペルシア湾岸やインダス河流域の各地にヒズル廟が広範に分布し、信仰対象として重要な役割を担っていることが明らかになった。ヒズル廟の分布および廟の建築上の構造・内部状況を相互比較し、ヒズル廟相互のネットワークについてもデータを収集した。興味深いのは、元来海民の信仰であったヒズル廟が現在ではむしろ安産・子育てなどの信仰となり、広域地域間の人の移動を支える機能を示している点である。さらに中国では、広州・泉州などでの海上信仰の検討を通じて、イスラムのヒズル信仰が南宋時代に中国に伝わり、媽祖信仰に影響を与えたという推論を得た。また、中央アジアの中国・新疆にも広範にイスラム聖者廟が分布しているが、墓守や巡礼者に対する聞き取り調査を行った結果、ヒズル廟などと同様、聖者廟巡礼が多民族居住地域における広域的な社会統合の上で占める重要性が明らかになった。聖者廟の調査と並行して、多角的な視点から共生システムの様相を調査研究した。一つは、定期市の調査である。イラン北部のウルミエ湖周辺における調査では、いくつかの定期市サークルが形作られていることが判明した。また、パキスタンではイスラマバ-ド周辺の定期市、新疆ではカシュガルの都市および農村のバザ-ルで聞き取り調査を実施し、地域的なネットワークの実態を把握した。他方、ブルガリアでは、聞き取り調査により伝統的な共生システムがいかに機能しているかについて情報収集を行い、宗教的ネットワークを中心として伝統的システムとともに、現在の共生システムがどのような状況にあるかについて興味深い知見を得た。キプロス・レバノン・シリアでは現在、宗教・民族対立をヨーロッパによる植民地支配の遺産ととらえ、かっての共生システムの回復を試みている様子を調査した。いま一つは、言語学的観点から共生システムをとらえるための調査で、多様な民族・宗教集団が共存するイスラエル・オマーン・ウズベキスタンで実施した。イスラエルでは、ユダヤ・イスラム・キリスト3教徒の共存に関する言語学的・民俗学的データを収集した。また、ウズベキスタンでは多言語使用状況の調査を行い、共和国独立後、ウズベク語公用語化・ラテン文字表記への転換といった政策にもかかわらず、上からの「脱ロシア化」が定着とはほど遠い実態が明らかになった。以上のように、イスラム圏の異民族多重社会においては、多様な諸集団の共存を存立させる様々なレベルにおける共生システムが広域的な規模で機能している。とくに、代表的なものとして、聖者廟信仰・巡礼の実態が体系的かつ具体的に明らかになった。
著者
中原 精一
出版者
明治大学短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究は1909年の南アフリカ連邦憲法の前史もふくめて、おおよそ100年間の南アフリカ憲法史を展望し、南アフリカ憲法とアパルトヘイト法体系とのつながりを考察したものである。南アフリカ憲法はアパルトヘイトをぬきにしては考えられないのである。南アフリカ共和国の憲法史は、巧妙にカムフラ-ジュされたアパルトヘイト史といえる。したがって、南アフリカ共和国憲法には、近代憲法の要請する基本的人権の保障を定める条項を、遂に掲げることがなかった。1983年憲法でカラ-ドやインド人を参加させた国会を実現させたが、全人口の5分の4を占めるアフリカ人が直接国政に参加することはできなかった。そのためアフリカ人を差別する法律が大量に制定されて、彼らを苦しめたのである。いってみれば南アフリカ共和国憲法史の底流にはアフリカ人の受難史が存在していたということである。しかし、1976年のソエト事件をきっかけに、アパルトヘイト政策に対する国際的批判が高まり、1980年代に入ると単に批判するだけではなく、国際的経済制裁によって、アパルトヘイト政策に反省を促すようになった。1983年憲法はそれに応えるものとして制定されたものであったが、もちろん不十分なものであった。そして、政府は1985年以降から不道徳法や雑婚禁止法など主要なアパルトヘイト法を廃止するようになった。さらに反アパルトヘイト法闘争を続けてきたアフリカ人政党を合法化し、ANC副議長のN.マンデラを釈放して、これらの政党と話し合いの場をつくる努力をはじめた。そして、本年2月1日にデクラ-ク大統領は集団地域法、土地法及び人口登録法の廃止を宣言した。これら一連の政策変更によって、アパルトヘイト法体系は消滅して、新しい憲法が誕生するのが間近かとなった。この研究はいまもっとも動いている南アフリカ憲法史を展望しているということがいえるのである。
著者
松井 孝典 阿部 彩子 杉田 精司 大野 宗祐
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では, 堆積岩及び各種氷の衝突脱ガス過程における化学反応過程の解明を目的として実験を行った. また, 脱ガス過程からの反応生成物が, 地球気候システムに及ぼす影響の定量的評価を行った. 結果として, (1)衝撃脱ガスによるCO2の発生は, 先行研究の推定より非常に高圧でのみ起きることと(2)白亜期末の巨大隕石衝突後には, 従来想定されていたCO2の大量発生ではなくCOが大量に発生したらしいこと, (3)COが大量発生した場合には, 強力な温室効果が起きることが分かった.
著者
岡本 秀毅
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

トリフルオロアセチルアミノ基を持つフタルイミドおよび, ナフタルイミド誘導体はアミドプロトンの解離により単一クロモフォアでマルチカラー発光を示すことを見いだした. このプロトン解離は, I-と紫外光照射でも誘起される意外な現象を発見し, I-検出および生成したアミドアニオンの陽イオンへの応答により, マルチセンシングの可能性が示された. また, 6-アミノフタリドにピコリルアミノレセプターを導入し, アミノフタリド色素を持つ初めてのセンサーを合成することができた.
著者
根本 正之 小林 茂樹 川島 榮 金木 良三
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.198-204, 1983-10-25
被引用文献数
2

永年草地の強害草であるエゾノギシギシの生態的特性を把握するため、静岡県富士宮市の朝霧高原に位置する優占草種の異なる採草地を対象に調査した結果、以下のことが判明した。1. ラジノクローバー優占草地やオーチャードグラスが優占していてもその株化が進行している草地ではエゾノギシギシの被度が高かった。オーチャードグラスとラジノクローバーが混在するケンタッキーブルーグラス優占草地では、生育する雑草の種数は多かったが、エゾノギシギシも含めそれらの発生量は少なかった。リードカナリーグラスを5年前に追播し、それが優占している草地では、そこに生育する雑草の種数、量とも少なく、エゾノギシギシは確認できなかった。2. 5月上旬、草地内の裸地には多くのエゾノギシギシの芽ばえが発生した。大きな裸地ほど多数の芽ばえを許容できるが、裸地内の芽ばえの発生は不均質であった。3. エゾノギシギシはラジクノローバーおよびケンタッキーブルーグラス優占草地ではこれらの牧草よりも草丈が高くなるが、リードカナリーグラス優占草地ではそれによって被われた。またエゾノギシギシの主茎の直径はリードカナリーグラス<ケンタッキーブルーグラス<ラジノクローバー<エゾノギシギシ純群落の順に大きくなった。4. エゾノギシギシの出現頻度が高い草地に形成されたリードカナリーグラスのパッチの内部では、エゾノギシギシはパッチの中心部に近い個体ほど徒長し、茎は細く、一株当りの茎数は少なかった。一方葉は立ち上がり受光体勢をよくするが、リードカナリーグラスとの競合期間の最も長い中心部では枯死消滅していた。