著者
K.Ikeda
出版者
イタリア学会
雑誌
イタリア学会誌 (ISSN:03872947)
巻号頁・発行日
no.8, pp.133-136, 1959-12-30

第三回国際イタリア文学会が、一九五九年四月、南仏プロヴァンスのエクス大学で開催されることについては、昨年度の本誌上をかりて簡単に紹介しておいたが、あいにくわが国からの参加者はいなかった様子である。ところで最近到いたイタリアの学会紀要や文芸雑誌をみると、国際学会の内容がかなり詳細に報告されている。そこで、一九五九年度第二号の「レッテレ、イタリアーネ」誌Lettere Italianeに発表されたエットレ、カッチァ教授Ettore Cacciaの報告「ペトラルカとペトラルキズモ-第三回国際イタリア文学会報」Il Petrarca e il Petrarchismo., III Congresso dell' Associazione Internazionaleper gli studi di Lingna e Letteratura italiana等を参照して、今回の学会でどのような問題が論議されたのか、又、主な研究発表の傾向といった点を参考までに記しておきたい。
著者
阿部 好一 黒坂 俊昭 塚田 康弘 上倉 庸敬 岡田 行雄
出版者
神戸学院女子短期大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

舞台における空間と時間について, その特色を明らかにし, 併せて現代演劇の独自性と将来への展望を考察した. 舞台の空間については, その一種の「曖昧さ」に着目した. たとえば映画では, カメラは対象を接写から遠景にいたるまで様々の距離において把えることが出来る. この事実は, 映画空間が観客の目にとって自由に縮小・拡大するのと同じ意味を持つ. 演劇の場合, 観客にとって舞台空間はつねに一定の大きさと形態をしか持てない. だから時にはストーリー展開に直接関係のない夾雑物まで観客の目にさらけだす. このことは舞台空間の不自由さと否定的に考えられているが, チェーホフやウェスカーの作品のある場面のように, 舞台上のふたつの人物群が互いに無関係な行動, 台詞をとることによって本来の意味以上の深い意味を表わすことがある. この「多義性」は極めて演劇的な表現である. と我々は考える. ついで舞台の時間については, その「流動性」に着目した. 映画に比べ演劇は, 時間の転換が不自由であると言われてきたが, 現代演劇では自由で柔軟な時間構造を持つようになってきている. それらは主として演出の技法によって試みられてきたが, 近年はシェーファーの『アマデウス』のように, ドラマトウルギーそのものに自由な流動性を持つものが現われている. その流動性は, ドラマに一種の「抽象性」をとりいれることによって保証されている, と我々は考える. 現代演劇にあらたな可能性をもたらすものは, 「再生された異化」であろう, と我々は推定する. 演劇のコミュニケーションは, 舞台上の人物相互のあいだに行なわれるものと, 舞台・客席のあいだに行なわれるものとの二重構造を示している. しかし実際の演劇の場では, 多くの観客はこの両者を混同し, 舞台上の人物に同化しがちである. だからこそブレヒトは「異化」が必要であると考えた. 現代演劇はこの異化を, あたらしい技法によって, 再活性化するのだ.
著者
孫 勇 宮里 達郎
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は酸素が不純物として存在している場合、3C-SiC薄膜のエピ成長に与える影響を明かにすることを目的とする。酸素は空気中でも多く存在し、薄膜原料や成長雰囲気への混入、薄膜の支持基板のシリコン結晶中の吸蔵酸素などから、酸素が不純物としてSiC薄膜の性質に与える影響を解明することが薄膜のエピ成長にとても重要な課題である。本研究では、水素プラズマスパッタリング法を用いてシリコン基板上に3C-SiC薄膜を作製し、二つの方法によって不純物酸素の影響を調べた。第一に、プラズマ成長雰囲気に微量な酸素ガスを導入し薄膜の性質に与える影響を調べる。第二に、シリコン基板中の酸素含有量を変え、基板中酸素が薄膜性質に与える影響を調べる。研究の結果、次の事実を明らかにした。まず、プラズマ成長雰囲気に微量な酸素を導入した場合、酸素は薄膜に導入され安定な構造を形成する。これにより薄膜の結晶性が悪化し抵抗率やドーパントの活性化率などに影響を与えると考えられる。同じ酸素量を導入した場合、約650℃で微小なSiO2結晶相が形成され、これが核となって異常な速度でウエスカーが成長する。結果としてSiC薄膜に多数のウエスカーが観察される。約850℃前後で薄膜がSiCの微粒子になり荷電粒子の移動度に相当な影響を与えると思われる。約950℃前後に薄膜は層状構造になり組成もずれ、Si/C比は約1:1からC-richになる。次に、通常シリコンウエハの強度を保つためにある程度の酸素が導入されている。基板中酸素の影響を調べるために、我々はシリコン基板に電流を流し電子と酸素欠陥との相互作用によって酸素の影響が拡大され、その影響が実際に観察できるようになった。650℃以上の成長温度では、この酸素の影響が無視できなくなる。つまり、酸素を多く含むシリコン基板は、SiC薄膜の支持基板として適切ではないことを判明した。成長温度が650℃を超えると、酸素欠陥からシリコン基板が蒸発しはじめ、基板空洞化が進む。基板の空洞化によりSiC薄膜の結晶性を著しく劣化させることが判った。
著者
渡部 直樹
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.25-41, 2008-10

樫原正勝教授退官記念号論文生物の進化から,制度や科学的知識の進化に至るまで,高次から低次にいたるまで,すべての進化は,何らかの定向性の性格を持ちうるといえる。この場合,一見ラマルク的に見える進化も,広い意味でのダーウィニズムの枠組みの中で,説明可能であり,生物学における進化も社会制度の進化も,基本的には,同じ方法で説明できる(方法の一元性)。また,ダーウィニズムの,遺伝―変異―淘汰,の過程は,状況の論理の応用によって,次の問題解決の図式,問題(P1)→暫定的解決(TT)→誤り排除(EE)→問題(P2)によって説明できる。更に,制度や科学的知識のような,ポパーのいう世界3 (人間精神の産物)における進化は,生物体のような世界1 (物的世界)における進化と比べて,合理的な推測と批判が大きな要素となり,そのため,あたかも定向進化や獲得形質の遺伝と言えるような状況も,進化過程の中に見出しやすくなる。
著者
瀬尾晶子
雑誌
臨眼
巻号頁・発行日
vol.41, pp.933-937, 1987
被引用文献数
2
著者
松田 眞一 吉田 英雄
出版者
一般社団法人 軽金属学会
雑誌
軽金属 (ISSN:04515994)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.483-489, 2003 (Released:2007-03-30)
参考文献数
43
被引用文献数
3 3
著者
内田 薫 天満 勉 岩下 正雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1553-1554, 1986-10-01

可変長パイプライン方式を実現するためにデータ駆動アーキテクチャを採用した画像処理プロセッサImPP(Image Pipelined Processor:μPD7281)においては、データを多数生成することにより並列性の高い処理を行うことが可能であるが、同時に処理可能なデータ量にはハードウェアの容量からくる制限があるため、容量以上のトークン生成を行うプログラムでは実行時にプロセッサ内のキューオーバーフローが発生し、処理の続行が不可能となる。特にImPP用の高級言語ではオーバーフローが発生しないように流量がソフトウェア的に制御されたオブジェクトを生成するコンパイラの実現が不可欠であり、そのための流量制御法を検討したので報告する。
著者
レムケ アンドジェ B. スタム デェアドレ C. 水谷 長志 :訳 中村 節子 :訳
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.101-123, 1996 (Released:2001-04-01)
参考文献数
24

アート・アーカイヴズという言葉は,美術資料を集めるところを意味するとともに,美術に関する刊行物そのものを指す場合がある。アート・アーカイヴズを六つのカテゴリーに分類するとともに,アーカイヴズの歴史を,アーカイヴズ一般とアート・アーカイヴズに分けて論ずる。また,現代におけるアート・アーカイヴズについて,その利用,資料と方法,配列とアクセス,保存,スタッフ・トレーニング,刊行物,助成,主要なアート・アーカイヴズ,関連アーカイヴズ,将来展望を述べる。
著者
Hideki Sasaki Hiroshi Akiyama Yoshifumi Yoshida Kazunari Kondo Yoshiaki Amakura Yoshimasa Kasahara Tamio Maitani
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.2514-2518, 2006 (Released:2006-12-01)
参考文献数
21
被引用文献数
15 20

In autumn 2004, many Japanese patients with renal failure developed cryptogenic encephalopathy by consuming sugihiratake mushroom, a Japanese delicacy. To elucidate the relationship between the cryptogenic cases and this mushroom, we conducted a multivariate analysis of metabolites in ‘Probably Toxic’ sugihiratake collected from the area of encephalopathy outbreaks, and ‘Probably Safe’ sugihiratake collected from unaffected areas using UPLC/ToF MS. The results indicate that the presence of milligram quantities of vitamin D-like compounds per 10 g of dried sugihiratake from the areas of encephalopathy outbreaks. Two hypotheses to induce the encephalopathy are proposed: the found metabolites are (1) vitamin D agonists, which induce acute and severe hypercalcemia and/or hyperammonemia and/or vitamin D toxicity, or (2) vitamin D antagonists, which induce acute and severe hypocalcemia.
著者
瀬川 晃
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.1-53, 1986-09-30

論説
著者
土井 政和 岡田 行雄 正木 祐史 渕野 貴生 井上 宜裕 武内 謙治 金澤 真理 佐々木 光明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、(1)社会内処遇について理論的実証的検討を行い、(2)更生保護基本法要網試案を作成することであった。目的(1)との関連では、前年度までの研究の成果として刑事立法研究会編『更生保護制度改革のゆくえ-犯罪をした人の社会復帰のために』(現代人文社・2007年5月)を公表した。いくつかの事件をきっかけに誕生した「更生保護の在り方を考える有識者会議」の提言は、傾聴すべき改善案を含む一方で、監視強化の方向性をも内包したものであった。その方向性は更生保護法にも引き継がれている。それは、指導監督と補導援護を統合し、援助とケースワークを基本に実施してきた従来の実務動向とは逆行するものと評価できよう。本書では、そこに欠けている歴史的視点や一貫した社会的援助の理念、保護観察対象者の法的地位及び国際準則等について分析検討を行った。これらの成果を生かす形で、更生保護立法に対する働きかけも継続的に行った。参議院法務委員会参考人意見陳述(6月5日):土井政和「更生保護法案についての意見」、更生保護法案審議中の参議院法務委員会等に対する「更生保護法案についての意見」提出(2007年5月4日)、「『仮釈放,仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則の一部を改正する省令案』に関する意見募集」(法務省:案件番号300110003)に対する意見書提出(2007年9月4日)、「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則の制定について(意見募集)」(法務省:案件番号300110006)に対する意見書提出(2008年3月10日)がこれである。目的(2)の達成のため、最終年度における研究会の過半を費やして、要綱試案策定に力を注いだ。その成果は、現在取りまとめ中であるが、龍谷大学矯正・保護研究センター2007年度研究年報に掲載の予定(8月刊行予定)である。