著者
金川 智惠
出版者
追手門学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、自己概念を対人的・文化的・時間的文脈の3点から総合的に検討することであった。study1では「主語」の様態が自己概念の状況即応的組織化に及ぼす影響を検討し、状況即応性の程度は主語の様態によること、study2では自己概念の状況即応的組織化の対人状況における適応的機能を検討し、(1)肯定的な自己側面へのアクセスが求められる状況と否定的な自己側面へのアクセスが要求される場合では、同じ個人であっても情動反応が異なり、(2)後者は前者に比べて自己評価が低く、またうつ気分等の否定的情動が支配的になること、しかしこの後肯定的な自己側面へのアクセス強化をすると、自己評価や肯定的情動が再度高まること、study3では、自己概念の組織化における時間経過の影響を検討し、自己概念の組織化は時間経過より状況の影響をより強く受けることを見出した。以上の結果、特に、Study2とstudy3の結果は、否定的感情が喚起された場合、その制御に自己概念の肯定的側面・要素へのアクセスを強化することが効果的であることを示しており、将来的には企業現場での予防的メンタルヘルスの実現への一助になると考えられる。
著者
高橋 和哉 中村 勝一 山崎 克之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.1065-1066, 2010-06-01

超音波測距センサを用いた人群観測ネットワークを設計・実装した.人検出時間率の考え方により人群観測を実現し,計算時間も実用上問題ないことを実証することで,コストやプライバシーの課題を解決した人群観測の実用性を示した.
著者
石田 亨 村上 陽平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.675-682, 2010-06-01
被引用文献数
1

Wikipediaなどの集合知を形成する取組みが,Web上での知識の集積に大きく寄与し始めている.現在進んでいる集合知の形成が,文章,写真,動画などを組み上げていくコンテンツ指向の集合知であるのに対し,本論文で扱うのはサービスを組み上げるサービス指向の集合知である.サービス指向の集合知は,これまでもいくつか試みられているが,Wikipediaのような典型的な成功例はまだ現れていない.本論文ではWebサービスを要素として集合知を形成する枠組みをサービスグリッドと呼び,大学や研究機関などの非営利組織を中心とする公共的なサービスグリッドの制度設計を試みる.特に,サービス提供者,サービス利用者,サービスグリッド運営者という3種のステークホルダーの立場から,それぞれ(1)知的財産権,(2)応用システム,(3)連邦制運営について議論を深める.
著者
吉田 香 川添 禎浩 寺本 敬子
出版者
京都光華女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

微量元素はヒトや動物が生体を正常に維持する上で必要なものが多く、ヒトは生命を維持していく上で適量摂取していく必要がある。微量元素が不足すると欠乏症状が生じ、体調に異変が生じる。しかし、これらの元素を過剰摂取すると健康被害を起こすことも知られている。アルミニウムはわずかな過剰摂取のために神経障害などの健康被害をひき起こす可能性がある元素である。近年、人々の健康への関心が高まり、種々の健康食品を利用する人が増えている。そのため、食品のみから摂る場合には注意する必要のなかった栄養素の過剰摂取が食品とサプリメントを合わせて摂ることにより、起こる可能性がある。昨年度の研究の結果、サプリメントの中には非常にアルミニウム濃度が高いものがあった。そこで、今年度は種々のサプリメントについて微量元素量を測定した。その結果、野菜、ビール酵母、ウコンなどの天然原料由来のサプリメントでアルミニウム含有量が高いものがあった。また、これらのサプリメントの中には、アルミニウムと同時にマンガン、鉄および亜鉛量なども高いものがあった。天然原料由来のサプリメントの摂取によるアルミニウムを含めた微量元素の過剰摂取が健康に及ぼす影響に注意する必要がある。そのひとつの例として、アルミニウム過剰摂取が動物の行動へ与える影響を調べるため、マウスに飲料水として乳酸アルミニウム溶液を与え、マウスの行動(回転カゴ)に及ぼすアルミニウムの影響を観察した。その結果、行動の低下が観察された。ただし、個体差が大きかったため、以後継続して観察を行う必要がある。
著者
糟谷 圭吾
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究では、走査型電子顕微鏡を用いたカーボンナノチューブ(CNT)の成長過程のその場観察、および、レーザを用いたCNTの位置を制御したヒンポイント合成を行い、成果をあげることができた。CNTのその場では、走査型電子顕微鏡内で局所的にCVD合成を行い、その成長過程を従来の走査型電子顕微鏡で直接観察することを可能にするための局所Cの装置を開発した。本装置の加熱可能な温度の範囲と実現可能な圧力の範囲を計測し、定量化することで装置の設計を一般化した知識にした。開発した局所CVD装置を用いて単層CNTの成長過程を断続的に観察した結果、散発的に成長を行い、一度成長したCNTは合成を続けても成長を続けないことが明らかになった、この結果から単層CNTの成長過程として、花火のように散発的に一瞬で成長を行うメカニズムが考えられる。レーザを用いた位置制御成長では、任意の位置に直径約1μmの円状で単層CNTをピンポイントで合成することに成功した。本研究では、効率的にCNTを合成するためにEnergy Confining Layerと呼ぶ多層基板を開発した。この基板を用いることで、基板上に照射されたレーザは効率的に熱エネルギに変換され、基板表層にあるCNTの触媒に伝えられる。この基板を用いることで初めてシリコンの平面基板上に局所的にピンポイント合成することができた。また、本手法を用いることで従来の合成方法では出来なかった1秒という短時間でのCVD合成に成功した。この短時間での合成を応用することで、レーザを描画することで任意の形でCNTを基板上にパターニングすることが可能となった。本手法を用いることで、CNTを用いたさまざまなナノデバイスの開発を容易に行うことが可能である。本結果はJapanese Journal Applied Physics誌に掲載された。
著者
木村 智樹
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

木星極域の周期的な高エネルギー粒子加速・オーロラ発光等との関連が示唆されている準周期的低周波電波バースト現象Quasi-Periodic burst(以下、QPバースト)は、木星極域磁気圏における周期的で強力な粒子加速過程の情報を反映する重要な現象だと考えられている。しかし、その周期性(数分、15分、40分変動)の決定要因・発生領域・発生機構等の詳細は長年不明であった。本研究では、それらの根源的物理過程を考え、極域における粒子加速過程解明を目標に研究を行った。まず研究代表者は、カッシーニ探査機の波動データに基づき、励起機構に密接に関連のある、電波の偏波特性や到来方向を解析した。その結果、QPバーストの励起機構や伝搬過程に、新しい観測的制約を与える事ができた。また、電波伝搬モデリングと木星の低・高緯度領域で得られた偏波観測結果を組み合わせ、QPバーストの放射源位置や伝搬モードについて議論した。その結果、同現象はある特定の放射源位置とモードをもって励起している事が示唆された。さらに、示唆された放射源位置において、観測や伝搬モデリングと整合する波動が励起される可能性を、波動励起の理論計算に基づいて検証を行った。その結果、極域における高エネルギー粒子によって、観測・モデリングと整合する電波が励起される事が実証された。上記研究結果に関して、国内外の複数の学会において発表を行った。また、上記研究に関連する研究結果が、学術誌(Journal of Geophysical Research誌)に採択された。
著者
向井 正 LYKAWKA P.S. P.S. Lykawka
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

海王星軌道以遠に発見されている氷天体(太陽系外縁天体;TNOsと呼ぶ)の空間分布とそれらの起源について、諸天体の軌道進化の数値シミュレーションに基づく研究を行った。加えて、木星以遠の巨大ガス惑星や、惑星系外縁部の初期環境や、その後の進化の過程を明らかにした。大規模数値シミュレーションは、N体系の軌道進化を50億年にわたって追跡するもので、得られた結果は、現在の観測量と比較検討した。その結果、TNOsのみならず、巨大惑星の軌道進化や、天体軌道の力学共鳴の過程、太陽系の起源と進化について有益な成果が得られた。主な成果を列挙すると、(1)カイパーベルト全域の太陽系外縁天体の軌道分布に基づく分類を突施し、それらの空間構造の起源を明らかにした。この際、「新惑星」の存在を仮定すると、太陽系外縁天体の軌道分布の特異性が説明できるというモデルを提案した。(2)地球サイズの新惑星による影響が、太陽系の起源と進化シナリオに与える制約を明らかにした。(3)海王星軌道に発見されているトロヤ群の起源と軌道進化の数値シミュレーションから、海王星トロヤ群がその場で生まれたものと、海王星移動時に捕獲されたものの混合群である事を示した。(4)カイパーベルトに発見されているハウメア衝突族の起源を明らかにするために、衝突破片の軌道進化の数値シミュレーションを実行し、この族が生まれてきた過程を明確にした。また、今後、新メンバーが観測によって発見される可能性を示唆した。これらの結果は、4件の雑誌論文と6件の国内外の学会で発表した。
著者
長田 康敬
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

コンピュータの超高速化, 高機能化にともなって集積回路が超微細化加工されるに従い, 従来のクロックによる同期式システムの考えだけでは正しい動作が保障されないため, 要求/応答制御信号を用いた非同期システムが注目されている. 本研究では, 相対遅延モデルを提案し, これに基づく非同期システムやパイプラインシステムを設計し, これらをFPGA上に実装し, 評価を行うものである. 研究の途中で, D-素子や2線論理実装ライブラリ, また, 非同期システムの検証手法, 時相論理の新しい体系などを提案している.
著者
蔵本 由紀
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:07272997)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.810-840, 2008-03-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
大志万 直人 吉村 令慧 藤 浩明 塩崎 一郎 笠谷 貴史 藤井 郁子 藤 浩明 塩崎 一郎 笠谷 貴史 山崎 明 藤井 郁子 下泉 政志 村上 英記 山口 覚 上嶋 誠 新貝 雅文
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本海の鳥取県沖の海域と陸域での観測を連携させた電場・磁場観測を実施した。観測は、1)鳥取県と兵庫県の県境付近沖の海域を含む測線と、2)隠岐諸島周辺海域の日本海を含む測線で実施した。これらの測線に沿って、海域では海底磁力電位差計、および海底地電位差計を用いた観測を、また、陸域では、長周期電場・磁場観測を実施した。得られた広域比抵抗構造モデルによると、陸域では上部地殻が高比抵抗領域、下部地殻が低比抵抗領域として検出された。さらに日本海下深部に低比抵抗領域が見出された。
著者
牧野 冬生 亘 純吉 菊地 靖 ヘルブリング ユルック ライスリス メリー
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、「都市貧困者と隣接性を伴う居住」、「都市における多元的帰属意識と場所性」、「『共通の枠組み』に関する理論と方法」の3つの問題系に関して、メトロマニラ貧困地域を中心に人類学的フィールドワークと建築学的実測調査を軸にした調査を実施した。過密な都市空間における生活者の生活形態及び共同体を分析し、多元性を有する特徴的な帰属形態の様相を明らかにすると共に、住民との相互批判的な対話を可能とする「共通の枠組み」として空間実践モデルを検討した。
著者
能登 一二三 山内 和久 石坂 哲 濱松 美博 中山 正敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.57-62, 2006-04-13

通信の高度化に伴い増幅器の低歪化,高効率化が求められている.両立する一つの方法としてダイオードを用いた簡易なプリディストーション型のリニアライザがある.ダイオードを用いたリニアライザは既に報告されているが,そのAM-AM特性は単調増加,もしくは単調増加であった.そのためゲインエクスパンジョンをもつAB級増幅器などに適用するとある電力範囲ではむしろAM-AM特性を悪化させ十分な歪み補償効果が得られないという問題があった.これを解決するために今回,通過量がいったん減少し,その後増加するAM-AM特性を有するアンチパラレル型直列ダイオードリニアライザを提案する.今回,解析的にその動作原理を示し,歪み補償の効果を実証する.
著者
井上 正允 西 晃央 藤田 景子
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中学入学後に急増する「数学嫌い」。この原因は、学習量の増加や学習内容が難しくなったことだけでは説明ができない。本研究では酒井朗等の「学校適応」研究が指摘した「中1から中2にかけて起こる『学校不適応』」に着目し、公立の小中一貫校と附属の小学校・中学校の小中連携研究にコミットし、算数・数学における「中1ギャップ」の表れ方について分析を試みた。数学の授業でも中1から中2にかけて「考えようとしない」「正解が出ればそれでいい」「結果がよければそれでいい」とする生徒が増えることをつきとめた。この背景には中学校の数学の授業があり、中学校の授業改革が求められる。