著者
田中 満
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, 1979-09-15

ある基礎地盤の地震時の耐震性を振動三軸試験により検討した。検討手順は次のようである。地盤のせん断弾性定数Gのひずみ依存性は振動三軸試験で求め, 減衰のひずみ依存性は既往の研究から引用した。これらのひずみ依存性を考慮した地盤モデルにより地震応答計算を行い地中の所定深部分に作用すると考えられるせん断応力波形を求めた。このとき入力波として八戸100gal, エルセントロ100galの2波を用いた。こうして求めた応力波形を入力として調査の対象となる深度の供試体の振動三軸試験を行った。その結果次のようなことがわかった。まず, ここで取り挙げた地盤については破壊は生じなかった。その原因として供試体のヤング率は小さなせん断応力に対して回復する傾向にあることが考えられる。次に残留変形については次のような特徴ある結果が得られた。八戸波によるほうがエルセントロ波によるものより大きく, 八戸の場合前半の主要動の部分で残留変形が始まり時間と共に増加する傾向があった。
著者
織田 顕祐 米田 健志
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、仏教の中国伝来をインド文化圏と中国文化圏との東西交流と見たときに、一体どのようなことが見えてくるのかその実態に迫ることである。従来、仏教の東漸は篤信の外国三蔵によって行われたと簡単に考えられてきたのであるが、そうした面が否定できないにしても、より大きな働きは文化圏同士の交流にあったのではないかと考えるべき点がいくつもある。中国に仏教が伝来したのは、ほぼ紀元1世紀頃であり、2世紀中旬以降になると経典翻訳も次第に数を増してくるが、この時代は中央アジアにおいて大月氏国が隆盛となる時代と重なっている。この時代の中国における仏教受容を伝える中国側の歴史資料は、伝説的な要素が多くて信用することができないと一般的には考えられているが、こうした点を今回改めて検討した結果、いくつかの理由によって記述に信愚性が高いことが明らかになった。こうした点から考えるに、インドと中国を結ぶ大月氏国の存在は想像以上に大きかったはずであり、こうした点の研究がますます重要であることが明らかとなった。また、漢代の牟融撰述の「理惑論」にはある程度詳細な仏伝や、仏経は万巻に及ぶといった言及があり、後漢当時の訳経のみによっては到底知ることのできなかったはずの記述がなされている。こうした事実は牟融が後漢の都であった洛陽を離れて、交趾(現在のハノイ)に至って初めて知ったことであった可能性が高い。こうした点から考えるに、当時交趾には相当量の仏典が齎されていたことが想像され、仏教の東漸が中央アジアの陸路経由ばかりでなく、インドシナを経た海路によっても盛んに行われたことを窺わせる重要な事実であると言うことができる。言うまでもなく、物流という面から見れば、海路によるほうが圧倒的に有利であり、「物」としての経典の将来はこうした面を見逃すことができないと考えられ、こうした視点に立った研究が一層重要である。
著者
上野 恵
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.33-40, 2004-08

平成15年11月3日から同29日まで、研究マネジメント能力、国際対応能力向上を目的とした、文部科学省主催の「国際研究交流担当職員短期研修プログラム」に参加を与えられた。スウェーデンのヴェクショー大学図書館でゲストライブラリアンとして仕事をした経験を元に、スウェーデンの大学図書館の特色、図書館員の役割と実際の業務、図書館サービスの内容と、それらを可能にするスウェーデンの社会背景等について報告する。
著者
原田 和宗
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.836-833, 2004-03-20
被引用文献数
1
著者
山下昭
雑誌
臨床免疫
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1064-1072, 1995
被引用文献数
5
著者
関山 敦生 笠原 恵美子 千田 大 岡村 春樹 内村 健治 井上 正康
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究により、(1)ストレスの種類と量のマーカー、(2) IL18、活性酸素、TNF-αを介する三つのサイトカインカスケード(3)ミトコンドリアが介するサイトカイン誘導メカニズム(FEBS Letter 2011)(4)大うつ病の重症度マーカー(5)ストレス後精神障害予測マーカーをそれぞれ発見した。(4)、(5)に関しては更なる検討を予定。成果は、2011年度後半から東北太平洋沖地震救援活動従事者の健康管理に役立っており、本研究の社会的成果は多大である。
著者
山根 利之
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

マウス胚性幹細胞を培養皿中で分化させ単離した胚発生の最初期に出現する多能性造血前駆細胞は、新生仔あるいは成体マウスへ移植しても生着しない。原因を探索したところ、胚性幹細胞由来造血細胞は移植直後には脾臓や骨髄などの造血組織に到達するもののすぐに骨髄組織から消滅し造血ニッチへ停留できない可能性が示唆された。またマウス胎内における相同細胞は造血開始時期に胚体に比べ卵黄嚢に多く存在することを突き止め、卵黄嚢が最初期の多能性造血前駆細胞の主な供給源であることを明らかにした。
著者
稲葉 宗夫 比舎 弘子 槇 政彦
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

並体結合マウスの作出は定常循環動態下における細胞のリクルート/ホーミングを検討する有効な手段である。GFPマウスよりIBM-BMTした宿主[GFP→C57BL/6]を正常C57BL/6と並体結合し([GFP→C57BL/6]^<IBM-BMT>+C57BL/6と標記)、GFPマウス由来の各血液細胞の分化をGFPマウスよりIV-BMTした宿主[GFP→C57BL/6]を正常C57BL/6と並体結合したマウス([GFP→C57BL/6]^<IV-BMT>+C57BL/6と標記)と比較検討した結果、造血前駆細胞の頻度は[GFP→C57BL/6]^<IBM-BMT>+C57BL/6マウスにおいて優位に高いことが判明し、並体結合により構築された正常生理的条件下においてドナー由来細胞の生着がIBM-BMTにより促進されていることが推定された。
著者
一杉 正仁
出版者
獨協医科大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度に行った動物実験結果および平成18年度に行った妊婦衝突試験用ダミーを用いたスレッド試験結果を総合的に解析した。その結果、妊婦が時速30km/h以下の追突事故に遭遇した際、腰部にかかる外力のみでは、胎児の予後に悪影響をおよぼすというエビデンスは得られなかった。さらに、追突事故に遭遇した前席乗員は、反動で腹部を車室内部に強打することがわかった。したがって、妊婦乗員のシートベルト着用効果を考えるうえでは、この腹部にかかる外力を低減させることが重要であると結論づけた。シートベルト着用で、追突時における腹部とステアリングとの二次衝突をある程度予防し、子宮内圧の変化を低減できることがわかった。しかし、負荷された加速度が大きいか、あるいは乗車位置がハンドルと近い場合に、シートベルトを着用してもある程度の外力が腹部へ作用することが明らかになった。そこで、さらなる積極的予防策として、緊急ベルト引き締め装置を追突事故時に作動させるシステムを考案した。その結果、比較的高速度の追突事故遭遇時には、子宮内圧をさらに低減させ、胎児保護に効果的であることが示唆された。また、低速度(約13km/h)の正面衝突事故をモデルしたスレッド試験を行ったところ、シートベルト着用時には、子宮内圧の上昇を35〜45%に軽減できることがわかった。したがって、シートベルトの着用は、追突および正面衝突時の妊婦子宮内圧上昇を抑制するうえで有効であった。妊婦のシートベルト着用について社会的議論がされているなか、われわれはシートベルト着用が胎児保護に有効である科学的根拠を明らかにした。本研究成果の一部は新聞、テレビ等でも紹介されたが、これら成果を積極的に公表し、一般の方に正しい知識を啓蒙している。
著者
井上 幸孝
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

現地調査を引き続き行うために、8〜9月にかけてメキシコに滞在した。現地では、昨年度に引き続きメキシコ国立公文書館において原史料の調査を継続した。とりわけ、今回は同文書館内Mapoteca所蔵の関連史料を数多く参照し、地図や図版史料を写真という形で持ち帰ることができた。また、必要な文献で未入手だったものについても、メキシコ滞在中に手に入れることができた。さらに同地での2度の発表機会(下記)では、現地研究者との有意義な意見交換をすることができた。それ以外の期間については、昨年度以降に収集してきた史料の分析を進め、その成果を口頭発表いう形で積極的に発表した。口頭発表をしたのは、CANELA学会(5月27日、南山大学)、日本ラテンアメリカ学会(6月3日、アジア経済研究所)、社会人類学高等研究院での講演(9月13日、メキシコ市)、メキシコ国立自治大学歴史学研究所での研究発表(9月14日、メキシコ市)である。その上でさらに考察を深め、研究論文(次頁記載のもの)として公表した。研究論文の主たる内容は、土地権利認定書(論文では「権原証書」と訳した)のこれまでの研究の概要と問題点の指摘、ならびに、メキシコ盆地南東部の数村落のナワトル語文書の個別事例分析である。前者は昨年度までに収集した主にスペイン語の資料をもとに研究動向を整理し、本研究のみならずメキシコやその他の国々の研究者にも有益となる当該研究テーマの問題点と今後の方向性を示そうとした。後者については、これまで総括的にしか扱われてこなかった事例をナワトル語原文に基づいて詳細に分析し、16世紀(スペイン征服)以前の概念が17世紀以降に編纂されたこれら文書群に反映されている点を明らかにした。
著者
田中 三生
出版者
別府史談会
雑誌
別府史談
巻号頁・発行日
no.3, pp.57-60, 1989-12

本人病気のため、安波利一代筆
著者
横矢 直和 竹村 治雄 神原 誠之 山澤 一誠 大隈 隆史 荒木 昭一
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.現実世界と仮想世界の幾何学的位置合わせ拡張現実環境を構築するための最も基本的な課題である現実世界と仮想世界の位置合わせ問題に関して、複数の基本手法を開発した。具体的には、(1)ステレオカメラで取得した現実世界の映像からのマーカと自然特徴点の自動切換え追跡に基づくビジョンベース手法、(2)ジャイロセンサを併用することによる位置合わせのロバスト化手法、(3)赤外線ビーコンやRFIDタグのような環境インフラと歩数計測を用いるセンサベース手法、(4)屋外においてGPSとジャイロセンサを併用する手法等である。2.現実世界への注釈情報の付加現実世界の特定の場所・物に関する注釈情報を提示するためのユーザインタフェースの研究を行い、ユーザの眼前の実物体に対するオブジェクト名の重畳表示とユーザが注視している物体に対する詳細情報の提示からなる2段階情報提示法を開発した。またネットワーク環境において実時間で注釈青報の追加・更新・引用を行うためのネットワーク共有型注釈データベースの設計・実装を行い、複数のユーザが場所に依存した情報の実時間での発信と共有を行うための基本的な枠組みを確立した。3.プロトタイプシステムの開発上記1、2の成果を統合して着用型拡張現実感システムのプロトタイプを複数開発し、実験を通して機能実証を行った。開発したシステムではいずれも、現実世界の映像に注釈を重畳合成したものをユーザに提示するビデオシースルー型拡張現実感方式を採用した。最終的には、屋内外無線ネットワーク環境(IEEE802.11a及びb)での技術デモを行い、着用型拡張現実感システムの可能性を世に示した。
著者
鈴木 晶
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

わが国では舞踊学がいまだ未発達であり、とくにバレエ研究は未熟で、研究者も数少ないという現状を踏まえて、まずバレエ史研究に関する基本文献の収集と整理、改題の作成をしたほか、バレリーナの伝記的研究という視点から20世紀バレエ史を追い、論文にまとめた(これは現在も継続中で、2007年には単行本で出版の予定)。アジアにおける西洋舞踊史に関連しては、まず韓国国立芸術総合学校で聞き取り調査し、韓国では世界でも珍しく大学でのバレエ教育に力を入れていることがわかった。次いで上海市舞踏学校を見学し、聞き取り調査した結果、中国のバレエがロシアの影響下で発達したこと(ワガノワ・メソッドにもとづいている)と、フランスやロシアと同様、全寮制による8〜9年間の一貫教育がおこなわれていることがわかった。日本における西洋舞踊史に関しては大正時代の新聞雑誌資料を収集し、現在これのデータベース化をすすめている。日本に洋舞が紹介されてから100年間に、洋舞と邦舞がどのように相互に影響を与え合ってきたかをみるため、その融合の一例として、高知市のよさこい祭、札幌市のよさこいソーラン祭などの「よさこい型祭」を調査し、これにポストモダン社会をめぐる哲学的な考察を加え、ポルトガルでの国際部用学会で口頭発表し、さらにその内容を手直しして、台北での国際部用学会で口頭発表した。この発表には、かのスーザン・レイ・フォスターに出席してもらうことができた。また、日本においてはダンス・セラピーの領域においても、洋舞系と邦舞系があることに着目し、芙二三枝子のダンス・セラピーと高沢流のリハ舞を取り上げ、その特徴を抽出し、韓国のAPPAN研究大会で口頭発表した。
著者
塩川 浩昭 北川 博之 川島 英之 渡辺 陽介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.767-780, 2010-06-01
被引用文献数
2

近年,実世界から得られるストリームデータに対する問合せ要求が増大し,それらを実現するストリーム処理システムが研究開発されてきた.そして,地理的に離れた情報源の統合や負荷分散を実現させるために,ストリーム処理システムを分散配置させて利用する分散ストリーム処理システムが注目されている.分散ストリーム処理システムでは,複数のストリーム処理システムの入力と出力をつなぎ合わせることにより分散環境を構築するため,分散配置されたノートが一つでも停止してしまうと,システム全体が停止してしまうという問題がある.この問題を解決するため,本論文では,分散環境において高信頼化を実現するSemi-Active Standby方式を提案する.本方式は,既存方式であるActive Standby方式,Upstream Backup方式を統一化した方式であり,高信頼化におけるリカバリ時間とバンド幅使用率の調整を可能にする.本論文では,Semi-Active Standby方式の動作特性の詳細について述べる.また,我々が開発したプロトタイプシステムで行った評価実験について述べる.