著者
小川 功 赤荻 栄一 三井 清文 小形 岳三郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.61-67, 1992-02-20
被引用文献数
4

喀痰集団検診にて発見され,切除した30例のX線写真無所見肺扁平上皮癌32病巣を対象にして,腫瘍の肉眼形態と気管支壁内の深達度を組織学的に検討した.腫瘍を肉眼的に腫瘤を形成する結節浸潤型と,腫瘤を形成せず気管支表層を進展する表層浸潤型および両者の形状を併せ持つ混合型の3型に分類した.7病巣にみられた結節浸潤型は癌の深達度が表層浸潤型より高度で,腫瘍径3mmのものでも筋外層まで進展していた.20病巣にみられた表層浸潤型は表屑進展径が大きい程,深部への深達度が高度であった.特に中枢気管支発生の癌ではその関係は明瞭で,長径20mm以下の癌ではすべて筋外層以内に癌組織は留まっていた.5病巣の混合型は腫瘍径が大きく深達度も高かった.気管支早期扇平上皮癌の内視鏡検査時に肉眼形態より腫瘍深達度を予想することは,ある程度可能であり,適切な治療法選択の一助になると考えられた.
著者
上田 悦範 池田 英男 今堀 義洋
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.446-452, 1998-05-15
被引用文献数
5 1

夏季および冬季に養液栽培(Nutrient Film Technique : NFT)されたホウレンソウの品質および貯蔵性を調べた.1. 温暖地の高温期においてもホウレンソウの高温条件に適応する品種を選ぶことと, 培養液温度を冷却すること等により十分な生長が期待できた.2. 夏・冬季栽培ホウレンソウの収穫時のアスコルビン酸含量, クロロフィル含量とも差異はなかった.3. 貯蔵中(8℃)の外観よりみた鮮度の低下は夏季と冬季に栽培したものの間に差異はなく, 貯蔵12日程度で商品性の限界に達した.貯蔵中のアスコルビン酸含量は冬季で栽培されたものでは鮮度低下や, クロロフィルの損失に伴って徐々に低下するが, 夏季のものの貯蔵中のアスコルビン酸含量は鮮度低下よりも速く, 短期間(5日以内)に低含量になった.
著者
市丸 喜久 牧山 繁生 水田 徳美 土橋 利則 釘本 忠人 岩田誠一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.59, pp.13-15, 1992-12-21
被引用文献数
5

水稲潮風害の実態調査を実施し,以下の事を明らかにした。1.NaCl付着は,海岸から8?地点まで広範囲に認められた。水稲に対する付着の様相は一定しており,穂に付着する割合は,10%であった。2.一穂当たりNaCl付着量は,海岸線付近で2.5?を超え,2.5?地点までは0.5?以上の値であった。3.収量調査の結果,0.3?が潮風害発生限界濃度と推察された。4.今回の水稲の生育ステージ(出穂後4〜15目)の範囲で,一穂当たりNaCl付着量および穂の損傷程度と,減収率の関係を明らかにした。5.4.の手法により,潮風害遭遇後5目以内に被害程度を推定することが可能である。
著者
Morimoto Setsu Ito Atsuko
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大學自然科學報告 (ISSN:00298190)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.29-36, 1979-07

The unknown stress in KFeF_3 crystal which was glued to an acrylic plastic plate and cooled below the Neel temperature T_N was calibrated by applying known pressure. The pressure partly cancelled the stress causing the increase of T_N. It was observed that the pressure of 1.7±0.2kbar decreased T_N by 3.7±1.0K. From this result it was estimated that in the stressed crystal, labeled "S-(111)-fixed", previously examined, the stress of about 2.5kbar perpendicular to the glued plane caused the increase of T_N by 5K. Pressure dependences of hyperfine field H_<hf> and e^2qQ/2 at 77K were also obtained.
著者
秋光 民恵
出版者
広島大学教育学部光葉会
雑誌
国語教育研究 (ISSN:02873354)
巻号頁・発行日
no.31, pp.41-45, 1987-10-20

主題:高校学校における小説の指導 ; 昭和60年8月12日(月) (一三・三〇~一六・〇〇)
著者
河村 義次郎
出版者
広島大学教育学部光葉会
雑誌
国語教育研究 (ISSN:02873354)
巻号頁・発行日
no.31, pp.30-40, 1987-10-20

主題:高校学校における小説の指導 ; 昭和60年8月12日(月) (一三・三〇~一六・〇〇)
著者
児玉 聡
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.183-189, 2007-09-20

デッド・ドナー・ルール(以下DDR)とは、「臓器を得るためにドナーが殺されてはならないことを要求する倫理的・法的規則」のことであり、1988年に法学者のJohn Robertsonが、それまで不文律であった規則を定式化したものとされている。この規則によれば、心臓や肺など、vital organ(生死に関わる臓器)を生体から摘出することは、たとえドナー本人の自発的な同意があっても許されない。本論文では主に英米圏の文献の調査に基づき、DDR見直しをめぐる議論の論点を、DDR例外許容論、DDR堅持論(死の定義の変更あり)、DDR堅持論(死の定義の変更なし)の三つの立場に分けて整理した。また、この議論が、脳死臓器移植をめぐる日本の議論にどのような示唆を与えることができるのかについて考察し、DDR例外許容論と違法性阻却論の類似性を指摘し、この立場を改めて議論すべき必要性を示唆した。
著者
勝目 康裕 吉塚 光明 今山 裕康 宮崎 道雄 藤本 淳
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.441-448, 1983-12-01
被引用文献数
4

今回われわれは鈍的打撃後のサル水晶体の後嚢下水晶体線維に生じた限局性混濁が, ヒトの打撲白内障水晶体にみられる混濁のパターンに一致することを臨床的に確認し, 電子顕微鏡により混濁部の観察を行った. 観察の結果, 混濁部に一致する後嚢下水晶体線維の細胞間隙が開大し, いわゆる, "hydropic cell"へと変性していく水晶体線維が認められる一方, 細胞内に糸粒体を始めとする細胞小器官を増加させた水晶体線維もみられた. 以上の結果から, 打撃による鈍的外傷の結果, 水晶体後嚢下の水晶体線維に水分の貯溜が惹起され, 初期の間は水晶体線維が防御的に水分の細胞外移動を行うものの, いずれは "hydropic cell"へと変性していくものと考えられ, 各種自白障同様, 打撲白内障においても,"hydropic cell"の出現が発症に重要な役割を果たすことを確認した.(1983年8月12日 受付)
著者
波多野 紀彦 松尾 徳朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.462, pp.19-24, 2008-01-19

小・中学校における理科学習において,学習対象物を手にする事はあるが,その性質や関連する現象を直接的に観察する機会は少ない.また,実物に触れる僅かな機会があっても,それがその性質を知るための方法とは限らない.本論文では,定性推論を用いた定性モデルと簡単なシミュレータを作成し,岩石ごとの排水率を設定する事で排水率に基づいた定性値を出力させる.作成するシミュレータは,主に大雨がその土地に影響を与える度合いを対象にシミュレーションを行う.このシミュレータは,岩石ごとに半減期を利用した排水率を設定し,それに基づいて定性値を導き出すため,岩石の性質に関して,理科学習に利用できる.また,定性推論を用いて定量値を単純化させるため,作成するシミュレータは学習者にとって比較的簡単に扱う事ができ,通常の学習と併用する事で学習効率を上げる事ができる.
著者
田中 崇之 菅本 裕介 宮崎 郁美 伊藤 裕太 浜口 昌巳 野田 泰一 小林 達明
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = / the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.193-198, 2004-08-31
被引用文献数
1 1

東京湾の人工渚におけるアサリの個体群動態と生残規定要因について2002年から2003年にかけ調査した。春に産卵された浮遊幼生は秋には生殖が可能になり,翌年の春には産卵を行っていると見られた。葛西海浜公園では2002年, 2003年ともに着底後のアサリの個体数減少が見られ,大雨時の河川水の流入に伴う塩分濃度の低下が主な生残規定要因として考えられた。また,幕張の浜では浮遊幼生は供給されているにもかかわらず,稚貝が見られなかったことから,波浪の影響, 青潮の影響が考えられた。これに対し,金沢海の公園,小櫃川河口干潟はアサリの個体数は安定していた。これらのことから,東京湾におけるアサリの生息条件は多様であり,生息地を再生するためには,その場に応じた対処が必要と考えられた。
著者
大床 太郎 笹尾 俊明 柘植 隆宏 OHDOKO Taro SASAO Toshiaki TSUGE Takahiro
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
アルテスリベラレス (ISSN:03854183)
巻号頁・発行日
no.82, pp.79-91, 2008-06

近年,適切な管理対策が講じられなかった結果として,長大な河川において,局所的な環境被害が発生している。本研究で対象とする,東北地方最大の河川である北上川では,その下流域において「濁流問題」と呼ばれる環境被害が生じている(塚本(2004))。1979年の北上大堰の設置以降,流域で大雨が降った際に,大量のゴミや流木,砂の混じった「濁水」が,上・中流域から下流域に流入し,河口域に広がるヨシ原や地域の特産品であるシジミなどの自然生態系に少なからぬ影響を与えている。 北上川で行うべき対策としては,1)ヨシを定期的に刈り入れ,あるいは火入れすることによって適切に管理し,2)河口域の塩分濃度の調整によってシジミを保護し,3)流木などのゴミを引き上げることが挙げられる。 塚本(2004)によれば,北上川河口域周辺地域の住民にアンケートを行った結果,7割以上の住民が,自然生態系や景観の保全に関心を抱いていることが確認されている。河川管理法が1997年に改正され,行政が住民の意図を適切に汲み取って河川を管理すべきであるという体制になっている現在では,北上川においても,住民の意図を反映した河川管理を行うべきである。そのためには,行政が住民の意図を把握する必要があり,社会科学的な研究が希求されてきた。 以上のような課題を踏まえて,笹尾(2003)と笹尾(2004)では,仮想評価法(ContingentValuation Method:CVM)と選択型実験を用いて,北上川河口域の自然環境とレクリエーション設置の対策に関する住民の選好分析を行っている。笹尾(2003)では,ヨシ原の保全やシジミの漁獲量については,河口域の住民よりも上流域の住民の方が高く評価し,流木などゴミの量やレクリエーション整備については,上流域の住民よりも河口域の住民の方が高く評価していることを明らかにしている。加えて,対策に関する住民の評価として,対策案への支払意志額(Willingness to Pay:WTP)を算出している。一方で,選択型実験において,河口域住民のヨシ原保全とシジミ漁獲量に関する評価について統計的に有意な結果が示されなかったこと,費用負担のあり方に関して選好構造の分析をすべきことなどの課題が残された。また,笹尾(2004)では,居住地域・職業・所得などの個人属性によって,対策への選好が分かれたことを確認している。それによって,多様な選好の存在可能性が示され,選好の多様性をより明確かつ適切に表現できる定式化をすべきことが課題として残された。 本研究では,それを拡張し,明示的に選好の多様性を表現できる混合ロジットモデル(Mixed Logit Model:ML)によって分析を試みる。本研究の基となっているデータは笹尾(2003)と笹尾(2004)のアンケート調査で得られたデータであり,そのうちの選択型実験のデータのみを用いる。得られたデータセットは,1)対策費用は上流と下流の双方が負担するという設定で上流の住民を対象に実施した調査(以下,上流),2) 対策費用は上流と下流の双方が負担するという設定で下流の住民を対象に実施した調査(以下,下流A)1) ,3) 対策費用は下流のみが負担するという設定で下流の住民を対象に実施した調査(以下,下流B)2) の3つに分かれている。それらを適切に組み合わせて分析することで,1)上流域と下流域とで,河口域環境対策はそれぞれどのように評価されるのか,2)費用負担に関する設定の違いによって,河口域環境対策に対する評価はどのように異なるのか,という課題を明らかにすることができる。 河川環境に関して,本研究と同様の環境評価手法を用いた近年の研究として,国内では田口ほか(2000)・山根ほか(2003)が挙げられる。しかし,それらにおいては,住民の多様性を考慮した選好構造分析や,費用負担制度に関する詳細な検討は行われていない。また,国外の近年の研究としては,Hanley et al.(2005,2006a, 2006b)・Colombo et al. (2007)が挙げられる。そこでは,河川環境の整備に対する選好構造分析において,本研究と同様にMLが用いられている。選好の多様性を考慮できるMLでの研究が,現在の研究の潮流となっていると言えよう。