著者
南 優子 鈴木 貴 角川 陽一郎 大内 憲明 立野 紘雄 多田 寛
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

閉経後乳癌62名の血中・乳腺組織中ホルモン濃度と乳がんリスク要因との関連を解析した。ホルモンレセプター陽性の場合、エストラジオール(E2)の組織中濃度は血中濃度の43.7倍、陰性では14.5倍。また、ホルモンレセプター陽性では「授乳歴あり」で組織中E2濃度が高くなる傾向が認められた(p=0.01)。これらよりホルモンレセプター陽性乳癌組織内ではE2が生合成または血中から集積され、その機序に授乳歴が関与している可能性が示唆された。
著者
中野 悦次
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.1305-1309, 1992-11

腎摘除術時すでに転移巣をもつ9例を含む,15例にLAK細胞を週一度,IL-2毎日と併用で治療した。肺転移の10例のうち4例に部分反応(PR)がみられ,腫瘍の縮小がみられる。副作用として頭痛,悪寒,戦慄が全例にみられるが経口解熱剤でコントロールできた。IL-2の副作用として,発熱,浮腫,好酸菌増多があった。PR 4例中1例は脳転移で死亡したが,3例は生存中である。脳転移はNC・PDの例も含めて施行を合わせると脳転移が4例と多いFifteen patients with metastatic renal cell carcinoma (RCC) were treated by administration of autologous lymphokine-activated killer (LAK) cells given together with systemic administration of interleukin-2 (IL-2). Pulmonary metastases alone were found in 10 cases, pulmonary and mediastinal nodal metastases in 3, and pulmonary and bone metastases in 2. LAK cells, generated by incubation in 700 units/ml of IL-2 for 3-4 days, were intravenously administered once a week. In addition, beginning on the day of the first LAK cell infusion, 3.5 x 10(5) units of IL-2 were intravenously infused once or twice a day with occasional supplementation of 3.5 x 10(5) units of IL-2 on each day of LAK cell infusion. The total number of LAK cells and total amount of IL-2 administered per patient in this study ranged from 0.8 x 10(10) to 6.9 x 10(10) cells and from 10.2 x 10(6) to 74.9 x 10(6) units, respectively. As toxic effects caused by the infusion of LAK cells, headache, shaking chills, fever and leukocytosis were found in all cases. Side effects possibly induced by IL-2 infusion were tolerable fever, fluid retention (body weight gain of 2-3 kg) and eosinophilia. Out of 15 patients, a partial response was observed in 4 patients who had pulmonary metastases alone. One of the 4 patients with a partial response was clinically free of disease after undergoing a thoracotomy for resection of residual lesions, but a brain metastasis was detected 10 months after the thoracotomy. The remaining 3 patients are being closely followed up at present.(ABSTRACT TRUNCATED AT 250 WORDS)
著者
早坂 菊子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

専門家診断の実態から予防という観点で、近親者に吃音者がいる、あるいは両親、そのどちらかが吃音者である家庭を早期に抽出し、パンフレット等で、正しい吃音への対応を発吃前に知らせることで、吃音の発現、進展を防止できるのではないかと考えた。そこで1歳半検診において、近親者に吃音者がいるかどうかの調査を行う。さらに、いると答えた家庭には予防の事項が書かれているパンフレットを送付し、正しい知識の啓蒙を行う。また、2ヶ月おきに各家庭から日常場面での言語表出を録音したテープを送ってもらう。調査は茨城県内の保健所13箇所である。方法は、主に調査者が調査用紙を母親に配付するという方法をとったが、遠方の場合は保健所に配付、回収を依頼する。回収数936名中ありと答えたもの32名、3.4%であり、男子17名、女子15名であった。1親等6名、2親等21名、3親等以上8名であった。住所を明記した者が11名であり、彼等にパンフレットを送付し、必要以上に吃音を回避しないように、出現してもあわてないように指導をおこなった。言語症状は、溝上(1997)を参考とした。1999年6月までは症状はあらわれなかったが、2000年2月に2人の子供に症状があらわれたという連絡がはいった。新たにパンフレットをおくり、吃りはじめた子供への対応を教示した。現在、追跡調査中である。
著者
大政 正武 鈴木 和夫 福田 正樹 柴田 久夫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチの3種のイグチ類の菌根性きのこの培養菌糸体からプロトプラストの調製方法を開発した。2. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチのプロトプラストの培養方法を開発した.この際通常プロトプラストの培養に使われる寒天が良くないことを明らかにし、その代わりにゲランガムが良いことを示した。3. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチの培養に対する培地成分、培養温度など各種条件の影響を合成培地を用いて明らかにした。4. ハナイグチを中心にイグチ類の遺伝資源を26株収集した。5. ハナイグチの11系統のミトコンドリアDNAのRFLP分析によりこれらが3つのグループに分けられることを明らかにした。これはミトコンドリアDNAの大きさの違いによる分類とも一致した。6. ヌメリイグチのプロトプラスト再生株に形態変異や酸化酵素活性の変異が表われ、これらの間に関連性があることを明らかにした。7. ヌメリイグチの細胞学的な性質を明らかにした。8. 以上の知見から、プロトプラストや交配を用いることによりヌメリイグチの育種が可能なことが明らかになった。9. アカマツの無菌的に育成した実生に、ヌメリイグチ、ハナイグチの菌根を合成することに成功した。10. イグチ類のキアミアシイグチから、新しいマクロライドフェノール性物質を抽出し構造決定した.又、菌根菌のケロウジからはこれまでにない新しいタイプの抗細菌性物質を抽出し、構造を決定した。
著者
米山 喜晟
出版者
イタリア学会
雑誌
イタリア学会誌 (ISSN:03872947)
巻号頁・発行日
no.38, pp.1-36, 1988-10-30

Cap. Introduttivo Una lettera di Leibnitz per celebrare le nozze di Rinaldo I d'Este In quella lettera L. dimostro la relazione antica tra Casa d'Este E Casa di Brunswick. L'influenza di questa scoperta sul destino di M. Cap. I I1 processo della ricerca co-operativa di L. e M. i L'inizio della corrispondenza tra L. e M. Sulle circostanze dell'inizio della corrispondenza. Sui consigli di L. sulla disputa di Comacchio. ii La proposta di M. della ricerca co-operativa sull'origine di Casa d'Este. M. propose anche un libro co-operativo, ma l'attitudine di L. era indifferente. La decisione di M. di scrivere sul tema da solo. iii Un piccolo e breve conflitto fra loro sulla dissertazione latina sull'origine di Casa d'Este di M. L. proibi a M. di pubblicarla diplomaticamente. I1 contenuto della dissertazione e la genealogia trovata. Cap. II I1 fallimento della ricerca co-operativa di L. e M. i Lo sviluppo tranquillo della ricerca co-operativa. La disputa sulla relazione tragli Obertenghi longobardi e gli Adalberti bavaresi di Toscana. I1 motivo politico di L. per entatizare la relazione e la concessione di M. sul punto. ii Un gran conflitto sul manoscritto di M. mandato in Germania. La lentezza di L. pareva a M. un sabotaggio per plagiare la sua scoperta degli Obertenghi. I diplomatici estensi a Londra complottarono con Newton contra L. le proteste di L. Coutra duca d'Este e contra M. iii Sul risultato della ricerca co-operativa. Un gran successo quasieternale. La simpatia di M. per la nazione longobarda. La cultura medidoevale riscoperta. -fine-
著者
林田 愛
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. フランス語フランス文学 (ISSN:09117199)
巻号頁・発行日
no.49/50, pp.131-153, 2009 (Released:2009-00-00)

Mélanges dédiés à la mémoire du professeur OGATA Akio = 小潟昭夫教授追悼論文集 序I: 精神病治療と外科手術II: パターナリズムの文学的表象 : 戦略としての「情報の操作」III: 疾患ではなく患者をIV. 慈父と医師むすび
著者
林田 愛
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. フランス語フランス文学
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-18, 2006-09 (Released:2006-00-00)

序I:科学知という「禁断の果実」Ⅱ:エコール・ノルマル批判Ⅲ:「静かな無神論」:宗教と科学の融合Ⅳ:『ローマ』と聖フランシス:「生の信仰」結論
著者
荘厳 舜哉 山本 登志哉 亀島 信也 河合 優年 竹内 伸宜 坂元 章 藤永 保 上原 明子
出版者
大阪学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

全部で6つの大きな課題が,4つの研究集団の手によっておこなわれた。最初の3つは研究代表者を中心としたグループの,条件統制観察研究,乳児保育所の自然観察研究,それに河北と上海における感情意識構造の質問紙研究である。それぞれの結果は報告書にまとめられているが,全体を通じて,日本の母親や保育者が受け身姿勢であるのに対して,中国の母親や保育者の,指導をすることに対する強い姿勢が描き出された。坂元のグループは,最近日本でも話題になっている青少年の暴力犯罪に関する調査研究をおこなった。結果は多岐にわたるが,日中両国共,青少年犯罪の原因は家族内コミュニケーション不足といった後天的要因が作り出しているという見解において共通であった。日本ではメディアによる悪影響が問題にされるが,実際にはそれは青少年犯罪の本質ではないということも明らかにされた。山本のグループは,子どもが小遣いをどのように使うかということに視点を当て,日本民族,吉林省延辺に居住する朝鮮族,同じく延辺に居住する漢民族,上海市の漢民族とい4集団の比較研究をおこなった。その結果,民族間というよりも,居住地域において小遣いの使い方に違いが認められた。また,小遣いの使途に関する親子間の認識のずれは,これも当然のことながら,年代が上昇するにつれて拡大する。しかしながら,小遣いで購入する物品の価値判断については文化・地域において違いが認められなかった。河合のグループは,内モンゴル自治区の満州族を対象として,据え付けカメラを固定して日常を撮影するという手法,及び日記の分析を通じて,民族に特異的な養育観の研究をおこなった。幼稚園教育自体においては日中間に大きな違いはないが,集団の中での役割や行動規範の獲得において,中国側に強い強制力が働いていることが明らかになった。
著者
阿江 通良 藤井 範久
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,小学1年生から6年生までの児童284名(男子141名,女子143名)の歩行動作の計測を行い動作データを収集した.得られたデータをもとに小学生の歩行動作の標準的動作パターンを作成した.また青年および高齢者の歩行動作と比較することにより,小学生の歩行動作の特徴を明らかにした.1.小学生の歩行動作の特徴歩行速度,ステップ長,ステップ頻度に関しては,以下の特徴が見られた。(1)学年とともに歩行速度・ステップ長,歩行比が大きくなり,ステップ頻度は小さくなった.また男子の方が女子より歩行比が大きく,ステップ頻度が小さかった.(2)歩行パターンは,学年とともにステップ頻度依存からステップ長依存に変わり,小学生以降さらにステップ長に依存していくと考えられる.また男子の方が女子よりステップ長に依存していた.また、動作に関しては,以下のような特徴が見られた.(1)支持期の股関節は男子の方が女子より伸展しており,これは体幹が起きており,R-on時の大腿の後傾が小さく,L-on時の前傾が大きいためであった.(2)男子より女子の方が膝関節,下腿および足の動作範囲が大きかった.2.小学生の歩行動作に関するデータベースの構築ステップ長,ステップ頻度,歩行速度,歩行比(ステップ長/ステップ頻度),kinematics(身体重心の軌跡,関節および部分角度など),kinetics(回復脚の関節トルクおよび関節トルクパワー)などを算出し,学年,性別に着目してまとめた.そして,身体各部の2次元座標をもとに標準的動作を学年,性別ごとに作成し,stick picturesで表示できるようにした.
著者
宮島 大一郎
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

観賞植物類においては主に花が育種の対象になり生殖が影響を受けている場合が多い.このことよりビンカ,パンジー,プリムラ・ポリアンサについて植物体構造変化による種子生産栽培を試みた.これらの生殖生態の解明を行った結果,いずれの植物種もミツバチが受粉媒介する典型的な植物と異なった生殖における生態を持っており,また受粉媒介昆虫の確保がいずれも難しいことがわかった.これらの植物において開花や種子稔実の負担を調べるためつぼみを摘除,開花のみさせる,あるいは人工授粉により全ての花を受粉させることにより種子生産量,植物体の生育を比較した.その結果,つぼみ摘除はいずれの植物においてもresource生産構造の生育を促進した.受粉後の花弁摘除はプリムラにおいてはresource消費軽減の有効な方法と考えられた.一方パンジーでは受精の成功の有無に関わらずほぼ枯れるまでの長期間に渉って受粉受精の能力があるため花弁摘除は昆虫訪花を排除して逆効果になることがわかった.いずれの植物においても花弁摘除がresource生産構造の遮光の軽減になるかどうかは明らかで無かった.ビンカにおいては開花の負担は小さく,また花によるresource生産構造への遮光の影響も小さかった.ビンカにおいては訪花昆虫の種子生産への寄与が大きく,また能動的自花受粉のメカニズムにより種子稔実における問題は小さく収穫労力の改善が必要と思われた.いずれの植物についても初期につぼみ摘除をする方法を試みた結果,つぼみ摘除終了後大きく肥大したresource生産構造に多くの花が集中して咲くことがわかり,受粉,収穫労力の集中化の点で有効な方法と考えられた.
著者
井澤 一雄
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.2056-2061, 1991-12-01

全身照射の線量をモニターした結果.1) 4MVX線を用いた全身照射では, 空間線量分布を良くするためには, 前後左右対向4門照射が必要である.2) 線量測定に使用するファントムは, 躯幹部の大きさが必要である.3) 基準点での実測線量は, 目的線量に対して5%の誤差範囲で照射できている.4) 半導体検出器を用いた線量の測定は, フィルタを使用する場合, 材質別のデータが必要である.稿を終えるに当たり, 本報告の機会を与えて下さいました山田会長, 野原大会会長, 秦座長を始め役員の皆様に深く感謝致します.また本研究にご協力下さいました放射線治療科の皆様にお礼申し上げます.
著者
福田 瑛子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.229-235, 2000-03

組成繊維が異なる各種の白色布について,屋内乾燥,天日乾燥,ガスおよび電気乾燥機などによる乾燥を繰り返し行い,白色度,黄色度,L^*a^*b^*などの変化を測定し,布の色相に及ぼす乾燥方法および乾燥回数の影響について検討した。得られた結果は次の通りである。1) 羊毛,ポリエステル,ナイロンの白色布は繰り返し乾燥により白色度が低下し,黄色度は増加する。いずれも天日乾燥による変化が大きいが,特に羊毛の変化が大きい。2) 本研究で用いた綿は天日乾燥25∿30回程度まで白色度は向上し,黄色度は低下する。一方,L^*a^*b^*の測定結果を見ると,綿の原布は青味を帯び,天日による繰り返し乾燥により無彩色の方向に変化している。綿布の白色度および黄色度の変化は,蛍光染料の退色,脱落によるものと考えられる。3) 麻は繰り返し乾燥により,僅かではあるが無彩色(白色)の方向に変化する。4) 麻,キュプラ,アセテートは,いずれの乾燥方法でも色相はほとんど変化しない。5) 綿,麻,ポリエステルでは,天日乾燥に比べて屋内乾燥,乾燥機ともに色相変化は少なく同程度であるが,ナイロンでは乾燥機の場合,30回以上で天日乾燥と同様に黄変し,紫外線のほか熱の影響を受けやすい。
著者
下田 祐紀夫 櫻井 文仁 渡邊 博之
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.151-158, 1997-10-15
被引用文献数
2

切削加工では, 工具欠損が発生すると切削不能になるため, 工作機械, ロボット, 無人搬送車等をストップさせ, 復旧作業を行うために作業者がついていなければならず, 切削加工は自動化されているものの無人化されていないのが現状である.加工システムの信頼度を低め, 無人化を阻止している要因の一つが突発的に発生する工具欠損である.本論は, 工具寿命を「摩耗によるもの」と「欠損によるもの」とにわけ, 各々の工具寿命分布を考慮して問題を定式化し, 工具欠損の発生による加工の中断を少なくし, 信頼度の高い加工システムを構築するために工具の選択法と工具交換時期等の設計法を与えている.
著者
須田 久美子 宮村 正光 田上 淳 中村 雅彦
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.89-97, 1994-08

都市における地震被害の低減に関する研究の一環として、北海道南西沖地震がその被災地に及ぼした社会経済的影響を把握するために、復旧プロセスに着目した新聞情報の整理及び地震発生3カ月後の現地調査を実施した。現地調査は、津波及び火災被害の著しかった奥尻町と、液状化被害のあった長万部町を中心に行った。調査の結果を連関図にまとめ、主として地震による間接的な影響(被害)や復旧プロセスの経時的な推移を整理した。また、地震被害の社会的要因を分析し、被害を抑制した要因と拡大した要因に分類し考察した。その結果、地震被害の間接的な影響として、「生活基盤の喪失に伴う産業の衰退及び人口の流失」「長い避難生活や被災による精神的なダメージ」「仮設住宅のスペース不足や設置場所などへの不満」「見舞金分配に絡む各住戸の被災度評価の問題」「復旧速度に与える行政手続きの影響」などが問題になっていることが明らかになった。こうした問題点を踏まえて、今回の調査から得た教訓をまとめると次のとおりである。(a)被災度診断者、特殊技能者などの養成及び派遣システムの確立 被害を受けた家屋の被災度を公平に判断するオーソライズされた被災度診断者の派遣が望まれている。特に、二次災害の防止などの観点から現在一部の自治体で実施されてはいるものの、全国的な規模での展開が早急に必要である。人材の育成については、建築学会などの機関を中心に組織的な体制を整えることも必要と考えられる。また、土砂崩れ現場などでの重機操作技術者や救援物資の仕分け作業の専門家などを被災時に速やかに派遣できるシステムの確立が望まれる。(b)精神コンサルタントの養成 災害の影響が長期化すると、物資面のみでなく、被災住民に対する精神面の援助が重要である。日本では、精神コンサルタントのシステムが確立しておらず、まずは、被災者の心の相談にのれる専門家を数多く養成することが急務である。(c)復旧作業を遅滞させないための法制度の見直し 場所によっては建物の被害申請手続きや査定が終了しないと復旧作業にとりかかれない場合があり、重要度・緊急度に応じた手続きの簡素化と査定方法の見直しが望まれる。(d)伝達する情報を一元化する管理システムの確立 被災地では、地震直後から多くのマスコミ関係者が訪れ、役場の震災担当者はその対応に追われたようである。町村レベルの役場の人数では、生存者の救出・救援に追われる一方で、死傷者の人数や被害状況などに関する正確な情報を把握するのは非常に困難である。伝達する情報を一元化する管理システムが望まれる。情報収集の専門家である報道関係者が横の連携をとりつつ、震災担当者と情報を交換・管理できるシステムができれば、救援活動もよりスムーズに実施できるものと考えられる。
著者
下田 祐紀夫 櫻井 文仁 早部 哲夫
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.263-273, 1999-10-15

切削加工の無人化を阻止している要因の一つが, 加工中に突発的に発生する工具欠損である.工具が欠損すると, 切削不能になるため, 復旧作業を行うために作業者がついていなければならないからである.本研究は, 夜間の切削加工を対象とし, 「加工中に工具が寿命になった場合は, 機械を停止させ, 朝まで停止したままとする」の前提のもとに切削加工を無人化した場合に, どのような問題が発生するかを明らかにした上で, 「切削加工の無人化への移行基準」を提案している.工具欠損の発生頻度が少ない場合は無人化した方が経済的となる分岐点が存在することを示し, 分岐点を求めるための生産量モデルと生産コストモデルを与えている.
著者
中台 慎二 登内 敏夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICM, 情報通信マネジメント (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.288, pp.1-6, 2008-11-06
被引用文献数
2

大規模システムでは装置故障や設定ミス等に伴う障害が日常的に発生するため、障害を迅速に検出・分類し、保守運用者に復旧作業を提示する障害検出システムが必要である。しかしながら、携帯電話網におけるスリーピングセル障害のように、発生した障害を検出できずに復旧作業が遅れる障害がある。ルールベースの障害検出は、どの監視項目に対してどの程度の閾値を設定するかを人が判断する必要があり、十分な精度で障害を検出するには、ルール修正・検証に作業工数が必要となる。本研究では、サポートベクターマシンを用いて過去の障害事例からこの閾値を生成する。特に、従来ある方式とは異なるアプローチで特徴空間を設計し検出精度の向上を図った。さらに、保守運用者の検出感度に対する運用ポリシーに応じて異なる閾値の生成を可能とする。これらは、携帯電話網にて実際に発生した障害データを用いて検証し、4つの障害パターンのいずれについても本来検出すべき障害の7割以上を検出した。
著者
星野 乙松 丹沢 珪子 原納 靖子 浮田 忠之進 金沢 実
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.133-137, 1966-06-30

Gas chromatography was applied for the identification of 5 pharmaceuticals which contain bromisovalerylurea and other drugs. The gas chromatography of the standard compounds in ethanolic solution was performed by using a column containing 1.5% carbowax and 2.5% SE-30 as the stationary phase. The discrimination from each other of these 5 pharmaceuticals was successfully achieved by using above gas chromatographic method. The application of the method for forensic purposes was also reported.