著者
石川 浩 物集 照夫 永瀬 成範 河島 整 杉本 喜正 池田 直樹 秋本 良一 牛頭 信一郎 挾間 壽文 鍬塚 治彦 秋田 一路 GUAN Lim Cheng 小笠原 剛
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

InGaAs/AlAsSb 系の超薄膜量子井戸のサブバンド間遷移を用いた超高速光ゲートスイッチの低エネルギー動作化を目指して、デバイス設計に必要な基礎物性パラメータの評価、高品質結晶の作成技術の研究開発を行い、160Gb/s領域で、2pJの低エネルギーで動作する全光変調位相変調効果を用いたサブバンド間遷移素子の基盤技術を確立した。また、周期構造を集積化することで位相変調効率を上げる構造を提案設計して、その製作技術を確立した。
著者
楯岡 求美
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

19世紀末から第二次大戦までの時期のヨーロッパ文化はモダイズムとよばれ、20世紀パラダイムの確立期として近年文化研究での再評価が進んでいる。ロシア・アヴァンギャルドもそのような社会変革の機運を背景に「新しい社会の創造」と「新しい芸術表現の構築」を一体化させる運動であったことはすでに多くの研究によって明らかにされている。しかし、あまりにもその革新性・前衛性ばかりが強調されてきた。また、アヴァンギャルド運動を担った当時の芸術家のおかれた状況を美化しすぎたり、芸術家の発言を検証することなく、そのまま肯定してきてしまった面がある。近年、このような短所に注意を払い、ロシア帝政およびソ連時代の政治社会システムを包括的に分析し、その社会状況の中にアヴァンギャルド(もしくはロシア文化の変容といてもよい)を位置づけようとする動きが定着しつつある。それでもなおかつ、ロシア/ソ連を特異領域として強調してしまうエリアスタディーの領域にとどまっているのは演劇・文学研究の今後の課題を逆に明確にしていると思う。ソ連の政治・社会システムがロシア独特の歴史的要素を持っているとはいえ、あくまで19世紀に顕在化したヨーロッパ近代社会のグローヴァル化が、周縁であるがゆえに先鋭化したものであることは考慮されるべきである。本研究の過程でロシア・アヴァンギャルドを他のドイツ、イタリア、フランスなどの芸術活動とは別個に語ってきた従来の方法は、やはりロシアに対するヨーロッパ的なエキゾチズム=オリエンタリズムの視点だったことが明らかになってきた。1917年のロシア革命を、絶対的な断絶点とする考え方は見なくなってきたものの、あくまで国境によって区切られた空間を芸術表現の文化圏と一体化させる考え方が主流である。しかし、本研究の関心の中心的存在であるメイエルホリドも、ドイツ語を自由に解し当時の先端の演劇情報や戯曲をフランス・ドイツから取得し、ダイレクトに実践していたことは、レパートリーにメーテルリンクやクロムランク、ハウプトマンらが名を連ね、演劇論はニーチェ等に依拠していることからもわかる。また、人的交流としては、1910年にすでにディアギレフがロシア・バレエの斬新さでパリに衝撃を与え、シャガールはパリへと絵の修行に出かける。そのパリにはピカソなどがスペインから来ていたことを考えれば、ヨーロッパ大陸はひとつの大きな芸術領域であったことがわかる。アヴァンギャルド運動を考察する際、この時期が現在の演劇概念の基礎となる近代劇が確立した重要な時期であることも考慮すべきである。ヨーロッパ社会が近代化されるに連れ、思想も表現も大きな変化を遂げた。演劇でも、劇作家ではイプセン(ノルウェー)やチェーホフ(ロシア)等が、演出家ではスタニスラフスキー(ロシア)が日常生活を演劇のテーマとして取り上げ、市民社会への移行期にあって新しい観客を獲得した。このような規範の確立が、同時に近代への反発として新しい芸術手法の探求という欲求を生み、実験的なアヴァンギャルド演劇が展開される。これらも、従来はアンチ・リアリズムという固定的なカテゴリーの中にとどめられていたが、今後はリアリズムもまた「新しい社会の表現」であることに留意し、逆にアヴァンギャルドもまた近代批判でありながら、結局は進歩主義的、科学主義的パラダイムという近代の枠組みの中にとどまらざるを得なかったことを両方の手法の展開を統合するような総合的な分析によって明らかにすべきだと思う。
著者
片岡 佐知子
出版者
奈良教育大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)のBelle実験グループは、社会に向けた情報発信活動の一環として、高校生を対象としたサイエンスキャンプに取り組んでいる。キャンプではBelleの資源を公開・活用して、「研究者と同一の環境」を主軸とした体験型学習プログラムを実施している。本研究では、ネットワークを通じて教育現場や科学館などっくば市遠方の地域において、これらの学習プログラムを実施し、より多くの中学生・高校生が科学コミュニケーションに参加できる基盤を築き上げることを目的としている。学習者にとって興味の持てる研究環境を具体的に把握する基礎研究として、高エネルギー加速器研究機構において平成21年9月20日~23日の日程でサイエンスキャンプを開催し、参加高校生23名に対してアンケート調査を実施した。さらに、これまでに得られた成果を基に、中学生を対象とした学習プログラムを開発し、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、奈良女子大学附属中等教育学校、熊本県南小国町立南小国中学校の3地点をインターネット回線で結んだ遠隔授業、及び実習授業を平成22年1月~2月にかけて全3回にわたり実施した。遠隔授業は大阪大学と共同で遂行し、大阪大学が開発した「超鏡(ハイパーミラー)」システムを利用した。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力を得て、超高速インターネット衛星「きずな」の衛星回線を利用した。
著者
西村 拓一 古川 清 向井 理朗 岡 隆一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解
巻号頁・発行日
vol.97, no.40, pp.183-190, 1997-05-15

すでに提案されているRIFCDPは,2つの時系列データ間の任意の類似区間を検出できるため,時系列パターン検索に有用である.しかし,RIFCDPは、計算量とメモリ量が大きいという問題点がある.そこで,過去に溯るに従って指数関数的に重みを減少させてマッチングをとることにより,計算量とメモリ量を軽減し,ほぼ類似の機能をもつ重み減衰型RIFCDPを提案する.また,ジェスチャー動画像を用いて本手法の有効性を示す。
著者
清水 周次 田中 雅夫 中島 直樹 岡村 耕二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

従来の遠隔医療システムにおける「画質の劣化」と「高価な機器の必要性」という問題点を解決した新しいシステムを開発し、研究教育用インターネットを活用して、アジアを中心とした医療施設へ高解像度の動画像を用いた遠隔医療教育の活動を展開した。各施設の技術的・医療的背景を調査後、外科手術や内視鏡を初め多くの分野においてライブデモンストレーションや遠隔会議を行った。またハイビジョンなどさらに新しい技術への取り組みも行っている。

1 0 0 0 OA 奇妙の秘伝

出版者
新楽堂
巻号頁・発行日
vol.上, 1894
著者
片浦 弘道 岡田 晋 真庭 豊 真庭 豊
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

SWCNT内部に、塩化鉄や色素分子、レチナール-C60複合体、βカロテン分子、水分子等を挿入し、その構造や電子状態の変化を調べた。色素分子の場合、フォトルミネッセンスの測定から、内部の色素が吸収した光のエネルギーがSWCNTに移動し、そのエネルギーでSWCNTが発光するという興味深い現象を見いだした。また、レチナール分子のシスートランス変位の電子顕微鏡による直接観察、内包された水分子によるナノバルブの効果等、これまで実現できなかった観測、新たな物理現象の発見に成功した。
著者
宮本 修 古瀬 清行 福岡 正博 楠 洋子 川合 旭英 塩田 憲三 嶋崎 昌義
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, 1973-06-25

症例は58才,女性で,昭和45年11月喀血と胸痛で発病.胸部X線写真では右下肺野は蜂窩状を呈し,S^10の部位に鏡面像を認める.断層写真ではS^9・S^10の部位に種々の大きさの嚢胞状陰影があり,明確な腫瘤陰影はなく,嚢胞の上壁に接して帯状の均等陰影がみられる.気管支造影像はB^6の尖形閉塞,B^9B^10の念珠状拡張を示すが,嚢胞との交通はなく,気管支鏡検査で大細胞癌と診断された.抗癌化学療法も効果なく,昭和46年8月13日死亡した.剖検所見は右S^8発生の肺癌で,それに接し多数の壁の薄い嚢胞が認められる.組織学的には,腺癌が主体を占め嚢胞壁は一部正常気管支上皮の部位もあるが,大部分は癌細胞で被われ,その下に平滑筋の層を認める.腫瘤に接する部位では,この筋層を破り癌の増殖による連絡が成立している.反対側にも発育異常と思われる気管支拡張症があり,この肺癌は気管支拡張性の嚢胞から発生したものと考えられる.
著者
照井 哲 原野 悟 武田 文 三宅 健夫 横山 英世
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

研究目的 現在わが国では、急激な高齢化社会を迎え疾病構造からみても生活習慣に係わる病気が死因の大部分を占めている。厚生省の打ち出した生活習慣病の予防対策の一環として、簡易医療機器による自己検診を普及させることで、健康に対する意識を向上させ、さらに行動変容に結びつくよう本研究を行った。研究対象 企業や保健所の健康教室受診対象者に対し血圧計、血糖計、歩数計、体温計など簡易医療機器を貸与し自己測定を行わせ結果を解析した。また老人保健法並びに学校保健法の健康診断の結果を費用便益法で解析して、自己健康診断との比較を行った。結果及び考察 平成7年度に行った自己検診(血圧・検尿・体温・歩数)や平成8年度に行った自己血糖測定の結果を集計し、性別・年齢階級別に解析を行った。この結果健康に意識を持つ集団においては頻回に自己測定を行っており、特に不安の多い60歳以上の対象者が関心が強い。さらに質問票の集計から成人病健康診断結果並びにその後の事後措置結果を踏まえて、自己健康診断による健康に関する意識の変容が行動変容に結び付きいていることが示された。さらに糖尿病患者における自己血糖測定においては、血糖の改善のみならず脂質や肝機能、尿酸などの最終的に生体情報値の改善に結び付いていることが示され、個々人の生活全般に自己検診が良い結果を呈したことが明らかになった。また、学校保健法及び老人保健法の健康診断の費用と自己健康診断の費用との比較検討を行い、自己健康診断の費用便益が示された。結語 わが国の疾病構造において中心をなす成人病は、日々の生活習慣に由来するところが大きい。自分の健康は自分で作るという習慣の形成がこれら疾病の一次予防上最も重要であり、この自己検診による行動変容は成人病対策上極めて有用と考えられ今後の普及が望まれる。
著者
内島 幸江 平野 年秋 南 廣子 胡 国文
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編 (ISSN:09153098)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.125-135, 1994-03-05

近年,照葉樹林文化論を中心として日本文化の基層を追求する研究が展開されている.最近の比較民族学的研究により,中国西南部(貴州省・雲南省)からヒマラヤ南麓にいたる照葉樹林帯における民族文化の特色と,わが国の伝統的な文化の間には極めて強い共通性と類似性が見られることが明らかにされてきた.すなわち,モチ,茶,大豆発酵食品をはじめとする食文化や,歌垣,各種の民話や稲作を中心とした農耕文化などの日本と共通した特色がみられることが知られるようになった.また,栽培稲の起源地として,このアジア大陸の亜熱帯圏に属する丘陵山岳地帯である「アッサム・雲南」を中心に考えられており,この地域から揚子江流域へと伝播し揚子江に沿って東へ展開した稲作が,江南一帯から東シナ海を渡って日本の北九州に達しだとするのが,日本へのコメ渡来説の中で最も確実性が高いルートの一つと考えられている.この稲の起源地の周辺の雲南・貴州一帯に走る大高原は起伏の激しい山地であり,そこにさまざまな民族が錯綜して居住している.中国ではそれぞれの民族が相互に交渉しつつ中国の歴史を形成してきたのであり,各民族の習俗・習慣も相互に影響を受けながら,種々の要素が複合した文化を育んできたものと考えられる.貴州省では現在少数民族として公認された集団のなかで苗族が最も多く,第2位は布依族が占めている.中国の苗族総人口の約半数が貴州省で生活(368.6万人)し,また全国の布依族のほとんどが貴州省に居住(247.8万人)しており,両民族とも古い歴史を持ち,多くは漢族の南下に伴い,漢族の勢力に圧迫されてこの地に移住してきた民族であり,照葉樹林文化を継承してきた人々である.一般に少数民族のあいだには,東アジアの古層文化が残存していると考えられているが,貴州省についてのこれまでの民族文化に関する報告は東部,中部を主体としており,西南部地域の苗族,布体族の人々の食生活の実態については,いまだ多くの知見は見られない.この貴州省西南部は交通の不便な辺境の地であるが,数年後に完成予定の鉄道敷設や空港建設,大型ダムの建設計画があり,今後これらの急激な開発の影響を受けて自然環境や社会環境が変化し民族の特色が消失する危惧が持たれるところである.なお,中国の経済政策等の変化も注目されるところであり,それに伴って食生活も多元的に変容するものと思われる.そこで現在の食形態を調査し,この地域の苗族および布依族の食文化の特色を明らかにし,今後の食生活の方向を探ることを目的として本研究を行った.本報ではこの地域の苗族,布依族の現在の食生活状況を把握するため現地調査を行い,食文化の諸側面のうち食品の利用状況について比較検討した.
著者
西谷 望 小川 忠彦 菊池 崇 塩川 和夫 大塚 雄一 小川 忠彦 菊池 崇 塩川 和夫 大塚 雄一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、2006年11月に稼働を開始した北海道-陸別HFレーダーを主に活用し、北海道北方からオホーツク海、極東シベリア領域にわたる電場擾乱等の電離圏プラズマ関連現象と伝搬性電離圏擾乱等の超高層大気関連現象の間の相互作用の解明に焦点を置いて研究を進め、サブオーロラ帯電場擾乱の発生条件や伝搬性電離圏擾乱による電離圏プラズマ構造運動のメカニズム、および巨大地震後に超高層大気変動により引き起こされる電離圏プラズマ変動の特性等を明らかにした。
著者
室永 芳久 両角 光男
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.584, pp.67-73, 2004
被引用文献数
4 4

The purpose of this paper is to discuss factors promoting/preventing the going-out activities of the elderly in relation to spatial structure of the physical environment in their neighborhood. We took six residential districts in Kumamoto city as the case,' in suburb, two active districts in terms of the going-out activities of the elderly, the other two represent relatively inactive districts, in downtown area, two districts represent the residential districts having 'good' environment in terms of well-developed transportation networks and commercial services. In these districts, we analyzed 918 sets of answers of the elderly people to the questionnaire, and investigated the physical environment using fieldwork survey data. We analyzed the differences of the going-out patterns of the elderly in each characteristics, spatial structure of the territory of daily life, their evaluation of the neighborhood. Findings can be summarized as follows. For the eldelry, safe and comfortable walking environment is fundamental conditions. However, it is more important for them to have several places that they freely access through safety pedestrian network within the walking distance. Combination of these places and pedestrian network creates the space which is attractive for the elderly and promote their going out. Although the road with much traffic is the barrier of movement for the elderly, they reach the distinction exceeding it if it is near in distance. But for the old-old people, .the influence of the restrictions by such a barrier and distance becomes stronger.
著者
佐藤 嘉洋 矢垣 真也 吉田 親子 能代 英之 佐藤 雅重 青木 正樹 杉山 芳弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SDM, シリコン材料・デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.654, pp.23-28, 2006-03-07

高集積MRAM用のトンネル磁気抵抗素子(MTJ)として、低い反転磁界と高いディスターブ耐性を同時に満たすアステロイド特性と、最小セルサイズ8F^2を実現する砂時計型MTJを提案する。Landau-Lifshitz-Gilbert (LLG)シミュレーションによると、この砂時計型MTJは反転磁界が低減するように磁化反転時のスピン分布状態が動く特徴であり、従来のMTJ形状の磁化反転過程とは異なる。今回我々は260×420nm^2サイズの砂時計型MTJと200×400nm^2サイズの楕円MTJを試作した。LLGシミュレーションの結果と同様に、理想的なアステロイド曲線と楕円MTJよりも50%低い反転磁界を実現した。
著者
諸麥 俊司 二宮 誠 石松 隆和
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

麻痺した5指の自由な運動が可能となるパワーグローブの開発を行った。本グローブは腱に相当する駆動糸を内蔵した皮製の手袋と駆動糸を操る駆動装置とから成る。利用者の意図に基づいて駆動装置が駆動糸に張力を与えることで、利用者の指は操り人形のように自由に動く仕組みとなっている。試作したグローブを用いてテニスボールの投球・捕球動作、缶飲料の把持、シャンケンなどの動作の実現が確認できた。
著者
阿部 正博 酒匂 裕 佐川 浩彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.2023-2030, 1993-09-25
被引用文献数
17

手話は音声に基づく自然言語とは異なる独自の表現形式をもつボディランゲージである.本論文では,手話通訳者の機能代行を目指す手話通訳システムにおいて,手話が認識された後の手話単語列を自然な文章に変換する言語処理方式について提案する.本手法は,意味主導型の格フレーム照合により手話単語列の意味構造を解析し,ルールベースの手法を用いて,省略されている格助詞や助動詞等を補充し,日本語として自然な表現に変換することを特徴とする.本方式をインプリメントし,手話入門テキストの123の手話例文を用いて実験を行った結果,76%の文に対して期待された正しい変換結果が得られた.また,データグロブ入力による実際の手話認識データを用いて変換実験を行った結果,手話の認識結果にはあいまいさが多く,非文を含めて多くの単語列候補が得られること,従って,正しい単語列候補の変換精度向上と並んで,誤った候補をリジェクトする機能が非常に重要であることがわかった.そのためには,今後,単語間の意味的関係だけでなく,表情や空間表現などの末使用情報の利用や,文脈処理が必要となる.
著者
加藤 宏之 橋本 律夫 樋渡 正夫
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

脳卒中後の運動機能回復の機序を解明するために、fMRIと拡散テンソル・トラクトグラフィーによる錐体路の描出の同時計測を行った。脳卒中後の脳機能の再構築は動的であり、片麻痺の回復は運動ネットワークの損傷の程度に応じて、可逆性障害からの回復と、ネットワークの代償、動員、再構築を駆使して最良の運動機能の回復を得るための機構が存在する。この変化は脳卒中発症後の1、2か月以内に見られ、機能回復の臨界期の存在を示唆する。