著者
山田 明徳
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究計画の主要な仮説は「熱帯林床のリター(枯葉、枯枝)をめぐって、微生物とシロアリとの間に競争関係がある」のではないか、というものである。前年度までに、微生物によるリターの分解量(リターの炭素無機化量=呼吸量による二酸化炭素の放出量)が雨期になると増加することを示してきた。「熱帯林床のリター(枯葉、枯枝)をめぐって、微生物とシロアリとの間に資源獲得競争関係がある」とすれば、微生物によるリター分解量が比較的少ない乾期にシロアリによるリター分解量が多くなることが予想される。そこで、タイ国・サケラートのシロアリによるリター分解を代表するキノコシロアリの菌園の現存量(土壌中に分布するキノコシロアリの菌園の現存量)を雨期と乾期とで比較し、乾期に比べると雨期では統計的有意に少なくなることを明らかにした。したがって、熱帯林の降水量の変化は微生物とシロアリによる分解量のそれぞれに逆の影響を及ぼし、微生物とシロアリが結果として相補的に熱帯林床におけるリターの迅速な消失(分解)に関係していることが示された。熱帯林におけるリター分解におけるシロアリの重要性は上述のように定量的には明らかになってきたが、空間的にどのようにシロアリがリター分解に関わっているか、ということは明らかになっていない。しかしながら、リターの分解過程を詳細に明らかにし、熱帯林の炭素循環や二酸化炭素収支などを考える上では、空間的に不均質に分布するシロアリによるリター分解パターンを解明することは必要不可欠である。そこで、メッシュサイズが異なる2種類のケージを用いてそれを比較することで、シロアリによるリター分解の強度と頻度を調査した。その結果、シロアリによるリター分解は微生物によるリター分解と比べると局所的・集中的に起こることが明らかになり、シロアリはリターの分解過程を空間的に不均質にするような効果があること明らかになった。
著者
九郎丸 正道 金井 克晃 大迫 誠一郎 前田 誠司 恒川 直樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

プラスティック製品の可塑剤として広く使用され、精巣毒性が知られているフタル酸エステル類に属するDi(n-butyl) phthalate(DBP)及びDi-iso-butyl phthalate(DiBP)について、その作用機序を種々の実験系を用いて検討した。その結果、DBPはエストロゲン様作用を示し、DBP投与により誘起される精細胞アポトーシスは精巣におけるエストロゲン受容体の活性化によりもたらされると考えられた。一方、DiBPによるアポトーシスはエストロゲンのそれと異なる作用経路によることが示唆された。
著者
本郷 健 近藤 邦雄 齊藤 実 須藤 崇夫 堀口 真史 佐野 和夫
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

分散処理的な見方・考え方はさまざまな事象を、情報を軸として捉えるときに大切となる新しい考え方である.分散処理的な考え方を育成することを意図したカリキュラムを開発した.高等学校の共通教科情報の必修科目また選択科目で活用できる複数のカリキュラムを開発し実践して、その効果を確認した.また、指導する教師の研修カリキュラムを開発し、教育センターで実施して、その有効性を確認した.開発した資料等は書籍やWeb上で公開して、普及を図っている.
著者
丸岡 正幸 安藤 研 野積 邦義 安田 耕作 伊藤 晴夫 島崎 淳 松〓 理 村上 信乃
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.432-437, 1982-04
被引用文献数
1

千葉大学医学部泌尿器科と旭中央病院泌尿器科において治療を受けた前立腺癌284例の予後調査を行ない,内分泌療法を中心に集計した。各stage別の5年実測生存率は,stage A77%,B73%,C47%,D31%であった。初回治療として内分泌療法施行例は205例(stage A6例,B9例,C43例,D147例)であった。stage C・D施行例の5年生存率は各々50%,39%であり,stageDを,(1)ホルモン剤と去勢(103例),(2)ホルモン剤単独(24例),(3)去勢単独(20例),(4)内分泌療法未施行(21例)に分け,5年生存率を比較すると,各々,52%,29%,19%,8%と(1)群が最も良好な成績であった。さらに,ホルモン剤投与率の比較では, stageDの高投与率群(81例)と低投与率群(46例)の5年生存率は各々,41%,37%であった。予後に影響する因子として,(1)血清酸性フォスファターゼ,(2)組織型,(3)初回治療としてのTURを考えた。(1)は治療により1度でも正常化すること。(2)は高分化型になるほど予後は良く,(3)はstage Cは前立腺癌を悪化させるが,stage B,Dは予後に影響しないと現時点では考えた。死因は,stage D内分泌療法施行例で,前立腺癌死が第1位(75%),心血管障害死は全例4年稲井に起き,頻度も11パーセントにとどまり,内分泌療法施行時の障害にはならないと考えた。
著者
加我 君孝 室伏 利久
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

聴性脳幹反応(ABR)の難聴乳幼児の早期発見のための臨床応用が広く普及するようになった結果、わが国では0才のうちに難聴児が発見されるようになった。同時に0才のうちに補聴器のフィッティングを行い、超早期教育が行われるようになった。我々はこの難聴乳幼児の早期発見、早期教育に過去20年取り組んできた。その成果は著しく、2才前後での言語獲得がなされ就学後は普通学校に入学し、高等教育を受けるに至る場合も少なくなくなってきた。これらの症例を対象とする乳幼児の喃語や言語に関する研究は極めて少ない。早期発見された難聴乳幼児の始語に至る0〜1才の間の発達と音声の変化の関係について、他覚的に明らかにすべく音響分析を行った。対象:0〜1才の正常乳児3例とABR他の検査で高度難聴の証明された5例方法:ビデオカメラで、喃語を行動の記録とともに録音し、それをサウンドスペクトルグラフで解析した。結果:1)代表的な高度難聴乳幼児の発達と喃語および音声の変化を図1にまとめて記述解説し、サウンドスペクトルグラフによる解析の例を生後11ヶ月の“あー"を図2、生後19ヶ月の“あうーん"を図3に示した。2)対象例も難聴乳児もサウンドスペクトルグラフによる解析では、ほぼ同様のパターンを示した。異なる部分も一部に認めた。

1 0 0 0 OA 俳人名簿

著者
籾山仁三郎 編
出版者
俳書堂
巻号頁・発行日
1910
著者
田中 龍彦 林 裕也 小宮 佳和 奈部川 英則 林 英男
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.327-332, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
13
被引用文献数
5 8

酸性溶液中,ヨウ素酸カリウムとヨウ化カリウムとの反応で生成したヨウ素に一定過剰量のチオ硫酸ナトリウムを加え,未反応のチオ硫酸イオンを電量ヨウ素滴定する方法により,ヨウ素酸カリウムの絶対純度を測定した.本研究では逆滴定の手法を採用しているので,濃度が精確に分かったチオ硫酸ナトリウム溶液を必要とすることから,まずチオ硫酸ナトリウム溶液の調製方法と安定性について検討した.使用直前に煮沸して冷却した高純度水に市販特級のチオ硫酸ナトリウム5水和物を溶解することにより,酸素,二酸化炭素及び硫黄バクテリアに起因するチオ硫酸イオンの分解は起こらなかった.また,テフロン細口試薬瓶に保存した約0.5 mol kg−1チオ硫酸ナトリウム溶液は調製直後でも非常に安定であり,安定剤の添加なしに約1か月間濃度変化はほとんど認められなかった.保存容器の材質としてはプラスチックが適していた.この溶液をヨウ素酸カリウム標準物質純度の電量測定に使用した結果,満足できる精確さが得られた.
著者
茂木 立志
出版者
共立出版
雑誌
蛋白質核酸酵素 (ISSN:00399450)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1460-1467, 2005-09
被引用文献数
1
著者
西村 明
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、戦後から現在まで日本人によって行われているアジア・太平洋戦争の旧戦地における遺骨収集・慰霊巡拝という行為に焦点を当て、インタビューや資料収集を通して、その概要を明らかにした。具体的には、戦死者の亡くなった瞬間と彼が置かれた戦没地からの時間的・空間的隔たりが、霊をはじめとする死者へのイメージや想いを喚起し、遺骨収集・慰霊巡拝という実践を促していることを明らかにした。
著者
若林 邦彦
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ペンスリット爆薬の衝撃起爆機構を明らかにするために、レーザー誘起衝撃波によって衝撃圧縮されたペンスリット単結晶の時間分解ラマン分光実験を実施した。その結果、衝撃圧縮誘起の振動数シフトは振動モードに依存することが示された。ペンスリットのニトロ基が関わる振動が衝撃起爆に影響する可能性があることが分かった。
著者
多部田 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

海洋生態系における炭素や窒素の循環をシミュレーションするための生態系モデルを構築した。低次生態系の窒素循環を扱うときに広く用いられているKKYSモデルをベースとし、植物プランクトンの分解実験に基づいて構築されたPDP(Phytoplankton Decomposition Process)モデルを参考にして拡張した。構築した生態系モデルを海域の流れや成層を再現する物理モデルと結合し、人工湧昇流を対象とした実海域の計算を行って観測値との比較により再現性を確認した。その際、長期間の炭素収支の推定には、準難分解性有機物の分解に支配される物質循環が重要であることが示唆された。そこで、3次元モデル(短期モデル)では易分解性有機物の分解に支配される物質循環がほぼ定常になるまでの時間スケールの計算を行い、その結果を用いて鉛直1次元モデルで長期の炭素収支を計算することによって、対象海域における長期間の炭素収支を推定するスキームを構築した。海底マウンドによる人工湧昇流に関して炭素隔離量評価モデルを用いたシミュレーションを実施し、炭素/窒素比の鉛直プロファイルが準難分解性有機物の生成・分解の影響によって徐々に変化し,それに伴って大気一海洋間の炭素収支が変動することを示した。また、オホーツク海沿岸や沖ノ鳥島周辺海域など日本近海のいくつかの海域において、海域の特徴を考慮した生態系モデルを構築し、物質循環のシミュレーションを実施した。さらに、海域肥沃化技術を導入したときの社会経済的な影響を評価するために、水産物を考慮した食料経済モデルを開発した。それを用いた日本の将来の動物性タンパク源食料(肉類・水産物)の需給予測、および海域肥沃化による水産物増産がこれらの需給に与える影響の予測を行ない、日本の食糧自給率に及ぼす水産物の重要性を示した。
著者
川中 淳子
出版者
島根県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

今年度は、本研究の最終年度であった。今年度も3名の研究協力者とともに研究をすすめてきた。研究協力者荒川ゆかり(しまね臨床心理研究所)(役割分担:地域文化、地域理解、神話、スクールカウンセリング)木谷健二(平成22年度 島根県中央児童相談所、平成23年度島根県立こころの医療センター)(大元神楽、神懸り、地域と個人の無意識、心理検査を通しての理解)西田京子(島根県スクールカウンセラー)(精神的風土、スクールカウンセリングを通してみた石見神楽)それぞれが研究旅行で調査を実施したり、より良いインタビュー面接を実施するために研修を受けたり、学会参加により多くの知見を得たりしてきた。研究協力者の荒川は、平成22年11月の中国四国心理学会第66回大会で「スクールカウンセリングと地域臨床-文化を生かす見立てについて-」の発表を行った。研究代表者の川中は、神楽の心理療法的意味と音楽持つ意味との関連を追求し、その成果を、平成23年度7月に島根県立大学短期大学部松江キャンパスの公開講座で報告する予定である。研究協力者の木谷は神懸りと心理療法の関連を論文として執筆している。平成23年度中に発表予定である。研究協力者の西田は平成23年度2011年3月31日心理臨床学会第30回秋季大会で「石見神楽の心理療法的可能性-非日常世界を抱える日常性-」として発表する予定である。3年間の取り組みを通して、地域の個性、地域性と文化や芸能の関連を明確にしてきた。広く地域を支援する上で重要な視点を得ることができたと言えるだろう。
著者
服部 泰直 木村 真琴 山内 貴光 立木 秀樹 横井 勝弥 松橋 英市 CHATYRKO Vitalij
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では主に計算理論へのトポロジーの応用と距離空間における次元の解析とその応用に関する研究を行った。前者においては、距離空間の計算モデルである形式的球体のドメインのMartin位相に関する研究から示唆された実数直線上のSorgenfrey型位相τ(A)の解析を行い、τ(A)がSorgenfrey位相自身と同相となる必要条件等を得た。また、図形のデジタル化におけるモデル空間であるKhalimski空間の部分空間に対するn次元性の表現を求めた。後者においては、帰納的次元のHurewicz形式と超限分離次元の振る舞い、及び種々定義されてきた小帰納的次元の統一的定義の提唱とそれらの相関関係を調べた。
著者
溝部 俊樹 田中 秀央
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

緑色蛍光蛋白(Green fluorescent protein : GFP)付加α2Aアドレナリン受容体をノックイン発現した遺伝子改変マウスの機能解析を行い、これらのマウスにおいてGFP 付加α2Aアドレナリン受容体が脳内、特に青斑核に発現し、その機能や分布は、野生型と同様であった。