著者
倉西 誠 小西 稔 大山 永昭 松井 美楯 伊藤 一 中村 衛 嘉戸 祥介 吉田 寿
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1830-1838, 1994-11-01
被引用文献数
1

SDF法を使ったフィルム上のID自動認識技術を開発し臨床現場に展開させるためにAPR-SYSTEMの提案を行ったが, この成果を臨床技術として完成させるには次のような課題も残されている.(1)傾斜したり裏返しになっているネームプリント部にある数字を認識する時の対策(2)診療現場で許容される処理時間の検討と, ネームプリント部を検出する時の処理時間の高速化(3)提案したAPR-SYSTEMの開発と実用化(4) PUCK等のように特殊な形となっているネームプリント部への対応紙数の関係から割愛したが, (1)に関しては解決手段をほぼ確立しており, 評価結果を含めて別の機会に紹介したい.今後は(2)と(3)を重点に研究を進める予定でいるが, これらの技術やシステムは放射線診療の発展には不可欠な要素であり, 特許等により排他的, 独占的に一部のメーカーや施設で限られて使われるのではなく, 広く検討され, 多くの人々に普及することを強く期待するものである.最後に, 本研究に対し多大のご協力を賜った東京工業大学像情報工学研究施設・山口雅浩先生, コニカ(株)医用販売事業部・山中康司氏, ご支援を賜った富山医科薬科大学附属病院放射線部長・柿下正雄教授並びに放射線技師各位, さらにRIS(TOSRIM)の開発をお願いした(株)東芝医用機器事業部と東芝メディカル(株)の関係各位に深く感謝申し上げます.なお, 本研究は平成5年度文部省科学研究費補助金奨励研究(B)の補助による成果であり, 報告の要旨は第20回日本放射線技術学会秋季学術大会(山形市, 1992年10月), SPIE's Medical Imaging 1994 (Newport Beach, California U.S.A., 1994年2月)において発表した.
著者
馬 廷英
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.44, no.529, pp.931-938, 1937-10

現生及び化石造礁珊瑚類の骨體に季候成長構造があるのみならず其年成長が海水温度の高低と一定の關係を有することを巳に筆者によつて證明されたところである。本篇は文献の挿圖より北半球各地産出八屬二十種の奧陶紀床板珊瑚の成長率及び季候成長構造發達程度を比較研究し以て當該時代に於ける北半球各地の氣候状態を推想しやうと思ふ。是より得た結論としては北極地方及び北米のHuron湖, Ohio, Michigan, Indiana一帶の産地の海水温度は最も温く, 英國諾威瑞展及び獨〓等の北歐造礁珊瑚化石産地は上記の諸地方より寒い, 加拿太のAnticosti Islandは英國と大差がない, 諾威及び英國は獨〓より温く中央ヒマラヤ地方は稍々諾威に近い。上記の事實より考へれば北極地方及び北米のHuron湖, Ohio, Michigan, Indiana諸産地の一帶は當時造礁珊瑚の内側或は内帶に屬すべく北歐の英國諾威瑞典獨〓及び亞細亞の中央ヒマラヤ地方は珊瑚海の外側又は外縁に相當するものと思はれる。
著者
佐々木 理喜子
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.45-46, 1940-01
著者
Toaha Sahabuddin 石井 康之 沼口 寛次 蔡 慶生 園田 立信
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 = Japanese journal of tropical agriculture (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.98-107, 2001-06-01
被引用文献数
1

暖地型イネ科牧草マカリカリグラスは, 種々の環境ストレス, 特に土壌の乾燥と低温に対する耐性が比較的強く, 栽培品種(雪印系)内に形態的変異が大きい.そこで, 播種して造成した越冬後の翌年春に, 再生した越冬株を株分けし, 1株1系統とし, 合計17系統を選抜した.毎年栄養繁殖により系統保存し, 保水力の弱い砂質土壌の調査地(住吉)で4年度間にわたり, 保水力の強い壌質土壌の調査地(木花)で2年度間にわたり調査した.調査項目は, 1,2,3番草における植物体諸形質として, 地上部乾物重(DMW), 総茎数(TTN), 平均一茎重(MTW)および節間伸長茎数比率(PET)で, 翌年4月の越冬性として越冬率(POP)と再生茎数(RTN)を調査した.これらの系統間変異を1996〜1999年度に検討した.乾燥耐性は, 保水力の異なる2調査地における乾燥年度の生育状況から評価した.DMWの番草間順位はMTWおよびPETのそれとほぼ一致し, 3形質ともに2番草で最大となったのに対し, TTNは刈り取りを進めるにつれ増加した.これらの系統間変異は, DMWで最大となる傾向がみられ, 刈り取りを進めるにつれ概して増加した.顕著な小雨で土壌の乾燥が認められた住吉の1998年度2番草を除いて, 全系統の植物体諸形質は異なる年度間でほぼ正の相関関係が成り立ち, 乾燥ストレスのない場合, これらの系統間差は年度間で安定であることが示唆された.住吉において温暖な冬を経過した1998年春と1999年春では, より寒い冬を経過した1997年春と2000年春に比べ, POPとRTNは増加し, その系統間変異は減少した.植物体諸形質とPOPとの間には, 上記した住吉の1998年度2番草で唯一正の相関関係が認められた.しかし, 保水力の強い木花では, 全系統の植物体諸形質と越冬率との相関は両年度とも認められなかった.このことから, 乾燥土壌下でも高い生長能力を示す乾燥耐性の強さとより寒い年度で高い越冬性を示す低温耐性の強さとの密接な正の関連性が示唆され, 圃場実験により植物体諸形質と乾燥および低温の両耐性に優れたマカリカリグラス系統の選抜が可能であると推察された.
著者
湖東 朗 大沼 洋康 角張 嘉孝 Suhail A.ITANI HAFFAR Imad
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.12-19, 1990-07-20

アラブ首長国連邦(UAE)は極乾燥地に属し, 年平均雨量は100mm以下でしかも年変動がかなり大きい。したがって, UAEの農業は井戸水などによる灌がいに依存しているが, 無計画な農業開発は貴重な水資源の枯渇を招くおそれもあり, 潅がい水の有効利用のためには圃場に於ける水収支の研究が非常に重要である。本研究は(1)灌がい頻度がアルファルファの蒸散速度や葉温の日変化及び季節変化に及ぼす影響, (2)これらの因子がアルファルファの生長に及ぼす影響, 及び(3)気象因子がアルファルファの蒸散速度に及ぼす影響などを検討するために行った。ポロメータを用いてアルファルファの蒸散速度及び葉温の日変化及び季節変化を1988年4月, 8月, 11月及び1989年1月に測定した。毎日灌水する高頻度潅がい(F)区及び2日に1日灌水する対照(N)区の2つの区を設定した。灌水頻度が蒸散速度及び葉温に及ぼす影響は11月や1月の比較的寒い時期よりも, 4月や8月の暑い時期の方が大きかった。F区とN区の差は, N区の灌がいをしない日に大きく, 4月と8月におけるN区の蒸散速度はF区のそれよりも小さかった。葉温はN区よりもF区の方が低く, 両区の最大葉温差は4月及び8月にそれぞれ4℃及び6℃であった。アルファルファの草丈及び乾物収量は, 両区における蒸散速度や葉温の違いを反映してF区のほうがN区よりともに10%ずつ高かった。灌がいしない日におけるN区の推定蒸散量(TRn)はF区のそれ(TRf)よりも少なく, TRnとTRfの比は4月, 8月, 11月及び1月についてそれぞれ77%, 72%, 70%及び92%であった。F区の測定データを用いて蒸散速度と光量子量(QU), 飽差(VPD), 相対湿度(RH), 葉温(LT), ポロメータチェンバー温度(CT)との相関を調べた結果, QUとの相関が最も高いことがわかった。また, 光強度を変えて蒸散速度を測定した別の実験でも両因子間に高い相関関係がみられた。さらに, 重回帰分析により上記因子による蒸散速度の予測モデルを検討した。各月のデータについては, かなり高い相関が認められたが, それぞれの回帰係数については季節により違いがみられた。
著者
遠山 清子
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-16, 1983-09-25

In As I Lay Dying and Kyoko no le (Kyoko's Saloon), both William Faulkner and Mishima Yukio were keenly conscious of the ultimate nothingness of human existence. That is to say, humans cannot be conscious of the existence of their own consciousness; and furthermore consciousness can define itself only when it reacts against the outside world with its characteristic modes of reactions. Deprived of these modes, person's existence is scattered in the flow of time without actualizing himself as a character. Both in As I Lay Dying and in Kyoko no le, the characters are presented almost as caricatures in order to emphasize their particular modes of reaction. In As I Lay Dying, the members of the Bundren family actualize each other as they journey to Jefferson to bury their mother Addie. Anse, her husband, is the man of words who does not lift a finger but manipulates others by words to act on his behalf. Cash is a carpenter who speaks very little but makes concrete things. When he has lost his leg and cannot move, he begins to grope for words to express himself. Dahl sees too much. In every event he observes everything without having his own mode of response. In other words he stays paralyzed with his eyes wide open. Only after he begins to exist completely outside of himself, i.e. driven to madness, can he accept himself and the world. Jewel is the man of action. Heplunges right into activity, but with no direction or calculation. Dewey Dell always chooses to stay in the world of senses refusing to recognize facts, and refusing to stabilize her perceptions by putting them into words. Vardman can be sure of his existence only by sharing experiences with others. In Kyoko's Saloon (Kyoko no le), four young men present themselves. Kyoko functions as a mirror by reflecting each figure in listening to them talk. Shunkichi, a boxer, has a determination to fill his life with only actions. When his boxing career ends after a chance fight with a nogooder, he chooses to belong to a radical rightest group in order to keep acting. Natsuo is a born artist who happily stabilizes a world of motion while he paints. Osamu, an actor, not sure if he really exists, can find confirmation of his existence only in pain and blood, i.e. death. Seiichiro is determined to counterbalance his inner desolation with his outer existence as a future executive of a big corporation. While Faulkner makes the basically Christian concept of 'words incarnated' as an axis of As I Lay Dying, Mishima bases Kyoko no le on the expectation of the total annilation of the world. Mishima, much like Dahl in As I Lay Dying, tried to give himself an identity by totally negating every positive human value and choosing to die a sensational death. Holding to the same recognition of the fundamental nothingness of human existence, Mishima ends as "a knight of the negative" while Faulkner unveils himself a man of the affirmative.
著者
田邊 平學 狩野 春一
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.48, no.590, pp.1087-1101, 1934-10-05

關東大震災以來毎年の如く各地に繰返へさるゝ大小の震災又は風害を親しく調査するに及んで、我々の生活に最も密接且つ重要なる關係を有する木造建築物に關して、耐震(又は耐風)構造上研究を要すべき餘地の未だ少からざる事實が認められた。著者等は此の點に鑑み、特に木構造に關して殘されたる諸問題に對して、順次實驗的に研究を進め、以て木造建築物の耐震(兼ねて耐風)構造上推奨するに足るべき規準に到達せん事を企畫するに至つた。竝に其の第1報として公表するものは、最も手近の問題として、現在住宅を始め一般の木造建築物に對して盛んに使用せられつゝある『釘打による大貫筋違の仕口』に關して試みたる實驗の結果である。實驗の内容は主として次の2種より成る。實驗 其1. 釘數及び釘配置が筋違仕口の強度竝に變形に及ぼす影響 實驗 其2. 筋違仕口に用ふべき釘補強鐵物の適當なる形状竝に寸法の決定 本研究は昭和6年度より繼續中のものであるが、昭和8年度以降は財團法人手島工業教育資金團より研究費の補助を受けてゐる。尚昭和6年度に試みたる實驗其1に就ては工學士野村芳太郎氏に援助を煩はし、昭和8年度に試みたる實驗其2に就ては工學士勝田千利氏及び當時學生たりし神谷六美、石井秀雄の両工學士が卒業論文の一部として實驗竝に結果の取纏めに從事された。追て昭和9年5月29日建築學會講演會に於て『木造筋違の仕口に關する實驗』と題して著者(田邊)の講演せるものは、本文内容の一端である。
著者
権 哲峰 ト蔵 浩和 飯島 献一 小黒 浩明 山口 修平
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.175-181, 2008 (Released:2008-04-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

目的:脳萎縮およびその進行に関する,無症候性脳梗塞(以下SBIと略す)や高血圧の影響について検討した.方法:脳ドックを受診した神経学的に異常のない健常成人109名(平均58.6±5.8歳)を対象とし,MRI-T1強調画像水平断で頭蓋内腔に占める脳実質の割合をBrain atrophy index(以下BAIと略す),脳断面積に占める脳室の割合をVentricular area index(以下VAIと略す)とし,それぞれ基底核と側脳室体部レベルで測定した.そして平均4.9年後に同様の測定を行い,危険因子やSBIの有無により脳萎縮の進行に差があるかを検討した.結果:年齢,性,脂質異常,肥満,喫煙歴,アルコール多飲の頻度はSBI(+)群とSBI(-)群,および高血圧群と非高血圧群で差はなかった.SBI(+)群では,基底核レベル,側脳室体部レベルともにBAIが有意に低下し(基底核レベル:p=0.02,側脳室体部レベルp=0.05),また側脳室体部レベルでのVAIも,SBI群で有意に増加していた(p=0.03).高血圧群では,基底核レベルでの初回測定時BAIは有意に低下していたが(p=0.007),側脳室体部レベルのBAI,両レベルでのVAIは非高血圧群と有意差は認められなかった.SBIや高血圧の有無による,年間のBAI, VAIの変化については有意な差がなかった.結論:無症候性脳梗塞や高血圧は,脳萎縮や脳室拡大と関連することが示唆されたが,その影響は無症候性脳梗塞の方が強いことが示唆された.
著者
山肩 邦男
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, 1972-06-15

無音無振動基礎工法の発展過程を顧みて現在の盛況に至った原因を追求し, 現行の諸工法の概要および問題点について述べ, さらに今後の発展性とその方向について推論している。無音無振動基礎工法の開発は, 米・仏・伊・独の諸国によるところが大きく, わが国には昭和30年頃から導入され始めた。原因としては, この頃からの建設ブーム, 都市の建物の規模の大型化, 重量化, 掘削深度の増大の要求, 周辺地盤の沈下公害の社会問題化などをあげている。現在わが国には, この工法として既製グイ法, ピヤ工法, 連続土留め壁工法など6種があり, とくに連続土留め壁工法は, 現在の大規模地下工事における土留め壁の主流工法としての位置を確保している。この工法の意義として, 従来もっとも遅れていた基礎工事を合理化し, より高度の総合化された工事形態に移行する契機となり, 地下工事の技術的幅を広げてきたことをあげている。今後の方向として, 基礎地業の大型化, 自動化, 無人化, 施工管理方法の開発の道をあげている。
著者
辛 大基
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学社会文化科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.81-94, 2005-09-30

李箱の代表作「終生記」は遺書として書かれた作品として知られている。この作品で問題視したい箇所は、序文に「十三篇の遺書」を書いてきた事実を明記していることであるが、そのため李箱の遺書は「終生記」だけではなく、他にも存在することが推測できる。ただしそれについてははっきりした資料が残っていないのが現実である。もう一つは「終生記」には芥川龍之介の遺書と自分の遺書を比較しながら、そこから離れて独自的な作品を書こうとする決心も表れているため、李箱独自のスタイルとともに芥川からの影響関係をも考えられるのである。したがって本論では、このような李箱の遺書をめぐって、作品の構造や内容を分析することによって「十三篇の遺書」を見つけ出すことを試み、また芥川の遺書と比較を試みるのと同時にそれを通じて改めて李箱の遺書の本意を考えてみたいと思う。