著者
福嶋 政期 梶本 裕之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [音楽情報科学]
巻号頁・発行日
vol.2008, no.50, pp.A7-A8, 2008-05-21

2008年4月5日から10日の6日間、ACMSIGCHIが主催する国際会議CHI2008(Conference on Human Factor in Computing Systems)が開催された。CHIはHuman-Computer Interactionに関する最高峰の国際会議である。今年は、ルネサンス発祥の地として名高いイタリアのフィレンツェで開催された。フィレンツェは、町の至る所に美術館、教会、石像等があり、また、屋根は赤褐色で統一されており、町全体が一つの美術館のようであった。会場は、「バッソ要塞」(図1)と呼ばれる五角形の大建築物であった。今年の参加登者数は約2300人であった。会議内容の統計は以下通りである。全採択数は582件(全投稿数1969,採択率29.56%)、論文発表は157件(投稿件数714件,採択率22%)、ショートトーク61件(投稿件数341件、採択率18%)であった。なお、全投稿件数はこれまでで最多であった。6日間のうち初めの2日間はプリカンファレンス(Workshops, Doctoral Consortium等)であり、残り4日間がテクニカルプログラムであった。会議初日にはIrene McAra-McWilliam氏によるOpening Plenary、また、最終日には、Bill Boxton氏によるClosing Plenaryが行われた。会議は、毎日朝にその日のセッションの発表者が30秒で自分の発表の広告を行うCHI Madnessというイベントが行われた。その後はPapers/Notes, Case studies、Panel等に加え、デモ展示、企業展示、ポスター発表なども平行して行われた。筆者にとって初めての国際学会であったこともあり、休み時間の間は常にプログラムと睨みあっていた。また、3日目の夜はMicrosoft, Google等のHospitality Events(図2)が行われた。イベント会場内は多くの人で溢れかえっていた。個人的な話で恐縮であるが著者はMicrosoftのイベントでの抽選でZune(80GB)を頂いてしまった。今年は、ベストペーパー7件、ベストノート3件が選ばれた(プログラムの24ページに記載されている。http://www.chi2008.org/program.html) 。
著者
日野 稔彦
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.178-186, 1960-11-25

福岡市周辺のモザイク病ササゲからはササゲモザイクウィルスとキウリモザイクウィルスとが分離されるが, 主病原ウィルスはササゲモザイクウィルスである。ササゲモザイクウィルスはレンゲ, アズキ, タチナタマメ, ライマメ, ジュウロクササゲ, ハタササゲにモザイク病を起し, またエビスグサに黒色の壊死斑点, ソラマメに赤褐色斑点を作り, インゲンは品種によって黄色斑点を生ずる。クサネム, ナタマメ, パープルベッチは無病徴寄主である。ダイズ, エンドウ, ルーピン, クローバなどその他のマメ科植物26種,ダチュラ, タバコ, 百日草などは感染しない。このウィルスは汁液, モモアカアブラムシ, マメアブラムシで伝染する。モモアカアブラムシの獲得最短時間および接種最短時間はおのおの10〜15秒である。種子では極めて伝染し難く, 系統VQ-Oではツルナシ十八ササゲで0.26% の伝染率を示した。 系統 112 および系統 117 は種子伝染したモザイク病ササゲから分離した系統であるが, 系統 VQ-0 に比し種子伝染が容易であるとは認められない。このウィルスは 55〜60℃10分加熱, 1,000〜2,500 倍稀釈, 20℃. 12〜24時間処理で不活性化する。
著者
吉水 守 野村 哲一 粟倉 輝彦 木村 喬久
出版者
北海道さけ・ますふ化場
雑誌
北海道さけ・ますふ化場研究報告 (ISSN:04410769)
巻号頁・発行日
no.42, pp.p1-20, 1988-03
被引用文献数
2

From September 1976 to November 1986, we collected 5,068 ovarian fluid specimens from 5 species of 10,028 females and 21 seminal specimens from 2 species of 155 males of mature salmonid fish, including to masu (Oncorhynchus masu), chum (O. keta), pink (O. gorbuscha), kokanee salmon (O. nerka) and rainbow trout (Salmo gairdneri) from 26 catching stations located in Hokkaido and 5 places in Honshu (the main island of Japan), 6 hatcheries in Hokkaido and 7 in Honshu and 10 fish farms and 1 lake in Hokkaido. Also, 161 mixed kidney and spleen specimens were taken from 805 of these fish. Furthermore, 139 tumor tissues observed among 4,288 fish were employed for virus inspection. Blood smears prepared from 660 fish were employed in microscopical examination for evidence of VEN, and thin sections of blood of these were observed by electron microscopy. Four viruses have been isolated during the course of this investigation. IHNV was found in ovarian fluid of chum salmon from Abashiri River in 1976. During the period from 1976 through 1986, IHNV has been recovered 9 times from fish at 7 collection sites. OMV was first discovered in 1978 from masu salmon at Otobe Salmon Hatchery. At all sites permitting collection of 60 specimens with the exception of 3 hatchery, OMV has subsequently been isolated from ovary fluid or from epithelial tumor tissue around the mouth of mature masu salmon. It has not been found in the other species of fish. Incidence of OMV has decreased since we suggested iodophore treatment at the eyed egg stage. CSV was isolated from the kidney of healthy chum salmon at Tokushibetsu Hatchery in 1978 but during the period from 1979 through 1986, CSV has not been found from mature fish. IPNV was isolated from tumor tissue of masu salmon at Aomori Prefectural Fisheries Experimental Station in 1981, at this time IHNV and OMV were isolated from the same tumor tissue.1. IHNVは頻度こそ低いものの広い範囲で時折分離された。本ウィルス検出時には早期に有効な対策を講じる必要のあることが示唆された。2. OMVは1978年の発見以来調査が進むにつれサクラマスあるいはヤマベを中心に広範囲での分布が明らかとなり,サクラマスの増養殖を計るに際し無視し得ないウィルスであることが明らかとなった。3. CSVは従来オルファンウィルスとされてきたが,1986年にサクラマスの全滅被害が発生し,本ウィルスに対しても今後十分注意を払う必要があると考える。4. 道東のシロサケ,カラフトマス中心にVENウィルス感染が明らかとなり,冷後本ウィルスの分布およびサケ科魚類に及ぼす影響についても検討する必要があると考える。
著者
大城 渡
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.131-139, 2002-07-19
著者
佐藤 智子 荻野 亮吾 中村 由香
出版者
東京大学大学院教育学研究科生涯学習基盤経営コース内『生涯学習基盤経営研究』編集委員会
雑誌
生涯学習基盤経営研究 (ISSN:1342193X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.71-86, 2009

論文/Thesis本研究の目的は次の2 点である。1つは,これまでの近代社会教育政策に関する先行研究を整理すること,もう1 つは,明治後期から昭和初期の社会教育政策の成立過程とその要因を,政治的アクターの相互関係の中で通史的に描きなおすことである。先行研究では,社会教育政策の成立や社会教育行政機構の整備・拡充を所与の結果として理解する傾向が強かったため,社会教育政策について,誰が,なぜ大正から昭和初期に成立させたのかという過程や要因を十分に明らかにしてこなかった。よって本研究では,それを時々の内閣やその文部大臣をアクターに位置付け,社会教育政策の成立過程を再構成し,成立の要因を明らかにすることを試みた。The purpose of this paper is as follows. One section is designated to organize the preceding studies on modern social education policies in a comprehensive manner. The other section is to rewrite the dynamics from among some political actors and the factors of how modern social education policies came into existence. In previous studies, the tendency was to regard the formation of modern social education policies and the administrative amplification as given results. Therefore, adequate clarification was not made of the factor that modern social education was realized in the Taisho and the early Showa eras. In this paper, we regard the Ministries and Ministers of Education of the time as some of the key actors, and have tried to describe the factors and reorganize the framework for studies on social education policies.
著者
東畑 隆介
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.339-360, 1980-03

本稿は、ハノーファー国王エルンスト・アヴグストによる憲法廃止を契機として生じたハノーファー王国の憲法紛争の一環として、ゲッティンゲン大学の七教授が王の憲法廃止に抗議し、罷免された「ゲッティンゲン七教授事件」を考察しようとするものである。この事件に関しては、既に千代田寛教授が大部の論文を発表していられる。千代田教授は主として大学史の観点からこの事件を考察しておられるが、事件の憲法史的側面をも詳細に記述しておられる。従って、この事件に関して、私が付け加えることの出来る余地は殆んどないように思われる。しかし、この事件は、ドイツにおいても有名な割りに本格的な研究書に乏しいため、事実的な経過に関して必ずしもよく知られていないように思われるので、本稿では、事件の事実的な経過を出来るだけ詳細に記述することに留意した。
著者
河合 潜二
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集 (ISSN:02888610)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.23-27, 1963-03

1)1961年7〜11月と1962年8〜10月に,キンバエ,ニクバエ,およびイエバエの,3令幼虫を水の中へ入れて,その様子を観察した。2)イエバエ幼虫を水に入れると,殆んど悉くが沈み,どんな条件のときも,水に浮く能力はもち得ないし,水に対するその他の適応性も示さなかった。3)キンバエ幼虫とニクバエ幼虫では,虫体に水がふれると,数秒から数分の間に,嘴から空気を消化管内に入れて気胞を生じ,そのために虫体の浮く現象がみられた。水にふれるときの条件によって,気胞発生に遅速はあるが,イエバエ幼虫で気胞が認められないのに比べ顕著なちがいである。4)キンバエ幼虫とニクバエ幼虫が水面に浮かぶと,後部気門で空気呼吸をしてかなり長時間生き,その間,水面の物体にはい上った。イエバエ幼虫ではこのことが確認されなかった。5)水に沈んだ幼虫は,5〜20分間水底をはい廻り,水申の物体をはい上るが,垂直な面を上ることはなく,次第に動かなくなって,30時間内には死ぬ。6)便池を主な生活圏としている,特にニクバエ幼虫の,水に対する適応を阻害するような方向に,便池の構造を改めるべきである。
著者
眞鍋 昇 木下 亜紀子 山口 美鈴 古屋 良宏 永野 伸郎 山田-内尾 こずえ 明石 直嗣 宮本-蔵満 恵子 宮本 元
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.125-133, 2001-02-25
被引用文献数
1

アドリアマイシン(ADR : 5mg/kg, i.v.)誘発性腎疾患ラットの腎における細胞外マトリックス(ECM)成分を免疫組織化学的に測定し, 併せて生化学および病理組織学検査も行った.ADR投与ラットは高アルブミン尿症, 低アルブミン血症, 高コレステロール血症を発症し, その病態は経時的に重篤化した.腎皮質のIおよびIV型コラーゲン, フィブロネクチンならびにラミニン含量は, ADR投与10日後には対照の329, 317, 263および295%に増加し, 28日後には1, 211, 930, 1, 057および1, 012%にまで顕著に増加した.これらECMの変化は血清クレアチニンおよび血中尿素体窒素の変動と高い相関を示した.腎皮質の組織切片を用いた免疫組織化学的定量法は腎疾患の精密な診断や予後予測に貢献することが期待される.
著者
川口 雅昭
出版者
人間環境大学
雑誌
人間と環境 : 人間環境学研究所研究報告 : journal of Institute for Human and Environmental Studies (ISSN:13434780)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.41-56, 2001-01-31

罪状申渡しの際の吉田松陰の態度については、神色自若としていたとする「定説」に対して、騒動しく「実に無念の顔色」を見せたとする記述が残っている。さて、松陰は十六歳の頃より、誠を尽くして「義」(=「忠義」)を実践し、その結果享受する「甘死(かんし)」を理想とする生死観を持っていた。一方、一見「義」に見えて、内実「義」の実践を伴わない「苦死(くし)」は忌むべきものと考えていた。その意味で、安政元年(一八五四)の下田事件失敗後、徒死(とし)と放擲(ほうてき)の不安に苦悩していることは、彼がまだ「義」を実践していないという意識を持っていた証左となる。これより、同六年、幕府の東送命令を聞いた際、「それは出来(か)した」と喜び、「幕府ノ議論ヲ一変シ魯仲連ノ功ヲ立」てんと述べた真意が理解できる。取り調べは松陰にとって、待望の「義」の実践の場だったのであろう。しかし、待っていたものは意見を聞くだけで、理解しようとしない取り調べと死の宣告であった。とすれば、私には「定説」ではなく、「実に無念の顔色」を見せたという記述こそ、その実相を伝えているとしか思えないのである。松陰が遺書を殊更に「留魂録(りゅうこんろく)」とした所以(ゆえん)はここにある。