著者
高橋 純子
出版者
筑波大学留学生センター
雑誌
筑波大学留学生センタ-日本語教育論集 (ISSN:13481363)
巻号頁・発行日
no.17, pp.115-125, 2002

これは、筑波大学留学生センター補講「会話4」(日本語中級後半レベル)クラスにおいて実施したビデオドラマ制作活動についての報告である。発話には2つの種類がある。それは、1)公の場でのスピーチなど、あらかじめ準備された発話、2)討論や友人との日常会話など状況によって刻々と変化していく状況依存型の発話である。日本人学生との共同作業によるドラマ制作活動は、身振りや態度など非言語コミュニケーションとともに、この2つの発話能力を高めることができるであろうと考えた。さらに、このレベルの学習者の発音やイントネーションなど音声面での矯正を行うのはなかなか難しいものであるが、よい作品を創るという目的のためには、学習者は発音やイントネーションに気を配って、何度も台詞を練習するはずだ。実際、撮影中ある場面を扱い、効果的に学習者の間違いを指摘し、説明し、指導することができた。本稿では、ドラマ制作過程の観察と学習者と活動に協力してくれた日本人学生の意見・感想から何が学べるのかをさぐっていく。そして、ビデオドラマ制作活動の意図とその実際の成果、留意点、改善点について述べる。ビデオの使い方として、1)テレビドラマなどからのモデル会話場面を見せる。2)日本語の進歩の様子を知るため、または、習慣化されてしまっている間違いに気づくため、学習者の演じているところを撮影し見せる、という2つを併用することが効果的であろう。相手や場によって話し方を変える待遇表現を学ぶ場を提供するという点でドラマ制作は有効だと言える。
著者
滝嶋 康弘 米山 暁夫 宮地 悟史 柳原 広昌 中島 康之 和田 正裕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.496, pp.37-42, 2001-12-06
被引用文献数
1

携帯電話に対するビデオ配信用コンテンツ制作システムの設計法を提案する.モバイルマルチメディアが注目される中, そのコンテンツ制作は従来のインターネット配信向け制作環境などとは異なる要求条件を有する。受信端末環境、伝送ネットワーク環境、制作環境における低レート伝送、素材時間短縮、補助情報・テロップ挿入、一素材多利用等の条件を考慮し、低レートAV符号化、高機能AV編集、軽量テロップフォーマット、高速フォーマット変換等の特徴を持つ制作システムを提案する。本設計に基づくソフトウエアシステムの開発に関しても報告する。
著者
秋月 達人 新田 直子 馬場口 登
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.100, pp.31-36, 2006-06-09

近年,インターネット,テレビといった通信媒体の性能向上に伴い,大量の映像コンテンツの入手が可能となった.また,計算機上での映像編集ツールも多々開発されており,素材映像の編集による映像制作は身近なものとなりつつある.しかし実際に魅力的な編集映像を制作するには,いまだ高度な編集技術や知識,時間,費用を要する.そこで我々は,専門家により編集された事例映像から編集技術を学習することにより,一般ユーザの映像編集を支援するシステムを提案している.ここで編集技術の一つとして,映像全体に調和感を持たせるために,映像を構成する動画と音を同期させることが知られている,そこで本稿では,映像をショットの並びとみなした際の,ショットの切り替え時における音の低レベル特徴に基づいた変化を,動画と音の時系列変化の同期パターンとして学習する.
著者
秋月 達人 新田 直子 馬場口 登
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.98, pp.31-36, 2006-06-09
被引用文献数
1

近年,インターネット,テレビといった通信媒体の性能向上に伴い,大量の映像コンテンツの入手が可能となった.また,計算機上での映像編集ツールも多々開発されており,素材映像の編集による映像制作は身近なものとなりつつある.しかし実際に魅力的な編集映像を制作するには,いまだ高度な編集技術や知識,時間,費用を要する.そこで我々は,専門家により編集された事例映像から編集技術を学習することにより,一般ユーザの映像編集を支援するシステムを提案している.ここで編集技術の一つとして,映像全体に調和感を持たせるために,映像を構成する動画と音を同期させることが知られている.そこで本稿では,映像をショットの並びとみなした際の,ショットの切り替え時における音の低レベル特徴に基づいた変化を,動画と音の時系列変化の同期パターンとして学習する.
著者
大西 仁 田中 健二 永岡 慶三 松川 正樹 高津 直己 佐々木 正實 鈴木 龍太郎 川村 洋介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.96, no.578, pp.33-39, 1997-03-15
参考文献数
4
被引用文献数
1

光ファイバーケーブル等の通信基盤が各家庭まで整備され、各家庭と講師が映像、音声、データを双方向で自由にやりとりできる時代を想定し、その時代における在宅学習のモデルとして、双方向教育番組の制作実験を行った。制作は、放送教育開発センターに講師、通信総合研究所、新世代通信網実験協議会、大阪産業大学に学生を配し、ATMネットワークにより接続し、映像、音声、計算機データの交換を可能にすることにより実現された。番組は、「住空間における断面図」をテーマとし、講師と学生が映像、音声による質疑応答、共有CADソフトを用いての演習等のインタラクションが盛り込まれた。
著者
中野 仁人 野口 企由
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.14, no.14, pp.18-21, 2009-03-30

本制作は、本学のグラフィックデザインとインテリアデザインの両ゼミナールを融合してユニークなプロジェクトを行ない、学生への教育効果を上げると共にその成果物を公開して一般に評価を問うことを目的として行った。京都の古い寺院に見られる伝統的な内外空間の構成に新たな解釈を加え、日本の伝統素材である和紙を用いながら、これまでにない空間感覚を来場者に体感してもらうことを目指した。
著者
上西 知子
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.28, pp.39-50, 2007-03-31

本稿は,美術制作過程がどのように自己理解につながるかをリクールの「ミメーシスの循環論」,メルロ=ポンティの「スタイル論」,ワロンの「発達」理論に学びながら検討する。美術制作過程は「『内的他者』との対話」と捉えることができ,その中で身体行為が作品を作り,作品の「スタイル」から意味を引き出し自己理解につながる過程と考えられる。この構造は制作過程について語る制作者自身の「語り」の中に「3人の私」という形で表れることに注目し,身体的行為から始まる美術制作は,制作過程そのものが精神的自己理解を獲得可能とする,より広範な教育過程につながることを明らかにする。
著者
沢口 真生
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会年次大会講演予稿集 (ISSN:13431846)
巻号頁・発行日
no.1999, pp.361-364, 1999-08-23

マルチチャンネル サラウンドの音声制作は、これまでの映画音響というメディアにとどまらず、音楽、放送といったメディアにまで拡大しつつある。この大きな要因は、ディジタルオーディオ技術と音声符号化技術の進展にある。ここでは、放送というメディアでマルチチャンネル サラウンド音声制作を行う場合のスタジオ音響やミキシングのポイントについて述べ、また今後こうした音声サービスが進展するための課題についても主にソフト制作の立場からのべる。
著者
工藤 庸子 笠間 直穂子 南 玲子 郷原 佳以
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.51-63, 2005

平成17年度に開設された面接授業「初歩のフランス語」は、まったくフランス語に触れたことのない学習者が5回の授業を通して発音の原則を覚え、簡単な挨拶を交わすことができるようになることを目標としている。また同時に、異文化を内包する市民社会という点において日本にはるかに先んじているフランスおよび広域フランス語圏について馴染んでもらうことで、「社会、文化、歴史に開かれたモティヴェーション教育」を行うことを目指している。実際の授業では、一方向的な放送授業との差異化を図り、教師と学生のふれあいを大切にし、学生の反応に応じて、また時事問題などを取り入れながら、臨機応変に授業を運営する方針をとっている。こうしたヴィジョンに則って、担当講師たちがオリジナルの共通教材を制作した。「共通教材」とは、すべての教室で共有する最小限のコンテンツであり、各講師はそれをもとに自由に授業を展開することができる。今回制作したのは、カラーの図版やイラストを豊富に用いた6ページのコピー教材と、教材の例文のネイティヴ講師による発音を録音した音声教材である。教材制作は授業計画に沿って行われた。授業計画において、初回と第2回は発音やアルファベットを丁寧に解説し、第3回から第5回までは「パリ」、「フランス諸地方」、「フランス語圏」をテーマにして会話練習等を行うこととした。そこで、それぞれの地域について分担して資料を集め、カラー教材に収めた。教材の具体的な活用については、平成17年度1学期の担当講師による授業報告を参照していただきたい。初回と最終回の授業では、フランス語および授業についてのアンケートを実施した。アンケート結果の分析によって、生きた知識を取り入れながらコミュニケーションの手段としてのフランス語の基本を学ぶ「初歩のフランス語」の試みが好スタートを切ったことが窺える。
著者
石田 陽介
出版者
金沢美術工芸大学
雑誌
金沢美術工芸大学紀要 (ISSN:09146164)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.4-5, 2008

塑造の制作は、まず粘土を用いて原型を作り、そこから石膏などで雌型を取り、その雌型に石膏や合成樹脂などでキャステイングして作品に仕上げるのが通例である。私自身も長年合成樹脂による成型(FRP)で多くの作品を手掛けてきた。この方法は軽くて丈夫で、慣れれば簡便な技法ではあるが、イミテーション的な感覚がつきまとい、制作(過程)と作品(結果)との間に少なからぬ違和感が生じる。そこで、近年はテラコッタ技法を用いて過程と結果が少しでも近付くように努力している。テラコッタの技法においても、雌型を取りそこに粘土を張り込んで像を作る方法(型押し)と、原型自体を分割し中をくり抜いていく方法がある。前者は粘土の厚みが一定になり、焼成の成功率も高く、万一焼成に失敗しても再度像を作り直すことができるが、制作時の粘土のタッチなどは甘くなる。後者は作り直しがきかないのでリスクはあるが、制作時の痕跡を直接感じ取ることができる。また焼成方法についても、電気窯やガス窯などで温度を管理しながら焼けば成功率は高くなるが、きれいに焼き上がり過ぎるため面白みという点では少なく感じる。一方「野焼き」では温度の管理が難しく、作品を損ねるリスクを伴うが、粘土の滋味のようなものが生まれる。今回紹介する作品は雌型を用いてはいるが、素材感をできる限り活かすために、原型自体をくり抜いてから再度型に押しつけるという方法をとり、焼成は「野焼き」によって行った。この野焼きは「縄文土器づくり教室」での体験をベースに自分なりにアレンジしたもので、特別な道具を用いず、できるだけシンプルなかたちで行うよう心掛けた。
著者
伊藤 喜栄 田口 芳明 矢田 俊文
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.451-458, 2000-12-31

1999年4月24日午後, 関西大学100周年記念会館にて, 経済地理学会関西支部特別例会が開催された.以下には, 小杉 毅氏による問題提起, 伊藤, 田口, 矢田の3氏の報告要旨, 石原照敏, 辻 悟一, 森川 滋, 川島哲郎の4氏からのコメントを中心に討論の概要を掲げる.なお, コーディネーターは, 小森星児氏(神戸山手大学長)が, 司会は加藤恵正(神戸商科大学)が務めた.
著者
伊東 維年 肥塚 浩 柳井 雅也
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.71-75, 2001-12-31

かつてない厳しい環境に置かれ, 再生の道を探っている日本の半導体企業, そしてその中で従前とは違った展開をみせる生産拠点について, その実態認識と理論的整理を意図して「半導体企業の経営・立地戦略の転換と半導体生産拠点の変容」というテーマで, ラウンドテーブルを企画した.以下には肥塚, 柳井, 伊東の3名の報告要旨, 討論の概要を掲げる.オーガナイザーは伊東が務めた.
著者
加藤 恵正 豊田 尚吾 山本 麗子 野間 敏克
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.76-84, 2001-12-31

経済地理学会大会(2001年5月26日)に「台頭するコミュニティ経済と地域通貨の可能性」と題するラウンドテーブルを企画, 開催した.以下では, ラウンドテーブルの主旨, 豊田, 山本, 野間の報告要旨, 討論の概要を紹介する.なお, オーガナイザーは加藤が務めた.
著者
島崎 里子 リーダーシップ111キャリアサポート委員会
出版者
昭和女子大学
雑誌
昭和女子大学女性文化研究所紀要 (ISSN:09160957)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.131-136, 2007-03-31

個人が主体的にキャリアを選択・設計する方向へと社会構造が移行するに従い、現代女性のキャリア形成のあり方にもさまざまな多様性が見られるようになった。このような社会状況を充分踏まえた上で、女性がビジョンをもってキャリアを積み、社会的に活躍をしていくためには何が必要なのだろうか。 第17回目を迎えた今年度の女性学公開講座では、多様化する女性のキャリア選択・設計のための方策を、「女性」と「キャリア」をキーワードとしながら、学外講師による基調講演「キャリア・ビジョンをまず描こう!!」(第1部)と、それに続くテーマ別グループ討論(第2部)を通して模索した。テーマ別グループ討論には、昭和女子大学の学部学生・院生85名と、学外者34名の計119名が6つのグループに分かれて参加し、活発な意見交換を行った。参加者は事前のアンケート調査で、本人の希望に沿って5つのテーマに分けられた。また、各界で活躍中の「リーダーシップ111」の会員でもあるキャリア女性15名が各グループのリーダーとして参画した。 なお、司会は本学女性文化研究所の尾崎保子所員が務め、基調講演に先立って、坂東眞理子副学長・所長の挨拶、基調講演者並びに「リーダーシップ111」のメンバーの紹介が行われた。
著者
中田 和秀 梅谷 俊治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.504-505, 2009-08-01

第23回企業事例交流会は,平成21年春期研究発表会初日の3月17日に筑波大学春日キャンパスで開催された.今回の企業事例交流会では3件の発表があり,座長は日本アイ・ビー・エム(株)の米沢隆氏が務められた.この企業事例交流会は,OR学会において大学の理論コミュニティと企業の実務家コミュニティが融合する貴重な場であるが,発表の後の熱心な質疑応答を拝見し,その主旨が十分に果たされていると感じた.また,筆者も今回の企業事例交流会に参加したことで,今後の研究や大学でのOR教育を実践していくにあたり,非常によい経験となったというのが率直な感想である.以下では,3件の発表についてまとめる.
著者
久保木 富房 久保 千春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, 2005-04-01

第45回日本心身医学会総会の最終日に永田頌史会長の発案で,「心身医学が進むべき方向」と題してシンポジウムが開催された.シンポジストとしては東京大学心療内科の熊野宏昭氏,九州大学心療内科の久保千春氏,関西医科大学心療内科の中井吉英氏,琉球大学精神衛生学教室の石津宏氏,そして指定発言に鹿児島大学心身医療科の成尾鉄朗氏が指名され,座長は筆者と久保千春氏が務めた.まず,熊野氏より「東京大学心療内科から」と題して,その研究方法論と臨床活動について述べられた.研究方法論としては,Ecological Momentary Assessment(EMA),大脳機能検査,神経内分泌学の3つを中心に据えた具体的な説明と現在までに得られているエビデンスが紹介され,今後の心身医学の研究方向が示された.また,臨床活動においては,心身症,摂食障害,パニック障害,軽症うつ病などが中心であること,精神科とは自ずから守備範囲が重なってくるが,心療内科はあくまでも身体や行動の側から眺めていくという特徴と,コミュニケーションの観点からは,「話せばわかる」という立場を堅持することが述べられた.次に,久保氏より,「九州大学心療内科から」というテーマで,臨床活動においては東京大学心療内科とほぼ同様のデータが,研究面ではストレス研究の新しい動物モデルなどが提示され,多くの研究グループの具体的な研究成果が発表された.臨床面,そして研究面においてevidence based medicineを追求しているスタンスが強調された.東京大学と九州大学がほぼ同様の方向へ研究を展開していることが確認されたことは,今回のシンポジウムにおける大きな産物の一つとして挙げることができよう.3番目は,中井氏より,「全人的医療学の臨床,教育,研究を通して」と題する発表があった.30年以上前より心身医学の中心に据えられてきたbio-psycho-socio-ecologicalモデルに基づく,関西医科大学における臨床,教育,研究の実際と今後の展望が述べられたが,心身医学がもつnarrative based medicineとしてのよさが遺憾なく発揮された発表であるという印象を強くもった.4番目に石津氏より「精神医学的視点と課題」と題して,精神医学と心身医学の近似点や相違点に関して具体的な例を挙げて説明が示された.また,研究面ではゲノムレベルに及ぶ近年のbiological psychiatryは,心身医学に多大なresourseを提供し,心身相関の脳内機序やPsychoneuroendocrinoimmunomodulationメカニズム,器官選択性や個体のストレス耐性の解明などに新しい展開が期待できると述べた.一方,心身医学のbio-psycho-socio-ethics-ecologicalな考え方は,精神医学に人間学的な新展開を加えることが期待されると結んだ.最後に,成尾氏は指定発言として,「大学での教育,臨床,研究で果たすべき役割」と題して述べた.成尾氏は,「現時点で考えられる問題と方針としては,まずは学部教育と卒後教育段階での心身医学的知識や診療,研究スタンスへの啓蒙を充実させることと,リエゾン的役割をより積極的に発揮するとともに,臨床各科における心身医学的問題症例への能動的関与の機会を増やすことが重要と考える」と結ばれた.発表後,フロアの先生方を交えた討論も活発に展開し,今後の心身医学の進むべき方向に関して有意義なシンポジウムとなった.
著者
八塚 正四 土岐 彰 鈴木 淳一 真田 裕 千葉 正博 五味 明
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.154-158, 2005

【目的】肥厚性幽門狭窄症(以下, 本症)に対するRamstedt手術は比較的若い外科医が執刀することの多い手術であるが, その術者の実態に関する報告はほとんどない.そこで, 小児外科卒後研修の観点から術者の至適開始時期について検討した.【対象・方法】過去15年間に当科で経験した本症手術91例の術者と第一助手の卒後年数や内訳, 手術時間, 術後合併症などについて調査した.当科の標準術式はRandolph法に準ずる右上腹部開腹到達法で, 術後の経口開始時期は全例翌朝としている.【結果】94件中33件(35%)は卒後5年以上の小児外科専従医, 61件(65%)が卒後5年未満の小児外科専攻医によって行われ, このうち卒後2年目が23件(38%)を占め, もっとも多かった.新生児症例においても25件中15件(60%)を卒後5年未満の小児外科専攻医が執刀し, 卒後3∿4年目が9件(60%)を占めた.第一助手は68件(72%)を日本小児外科学会認定指導医, 26件(28%)を同認定医が務めた.手術の平均時間は卒後年数とともに60分から38分に短縮していたが, 本症特有の合併症はみられなかった.【結論】本学会認定指導医またはそれに準ずる経験者による介助の下であれば, 卒後5年未満の小児外科専攻医も安全に手術を行うことができる.
著者
カーバー リンダ 宮地 ひとみ(訳)
出版者
同志社大学
雑誌
同志社アメリカ研究 (ISSN:04200918)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.39-46, 1999-03-20

記念シンポジウム「ジェンダー・国家・市民権」, Fortieth Anniversary Symposium : Gender, Nation, Citizenship11月24日、アメリカ研究所の公開講座「ジェンダー・国家・市民権」が開催された。パネリストは、リンダー・カーバーアイオワ大学教養学部および歴史学科教授と、上野千鶴子東京大学文学部教授であった。カーバー教授は前全米アメリカ史学会会長で、アメリカ市民としての女性のあり方を歴史的に検証する研究を中心に女性と国家の関係について問題提起し国際的に活躍するアメリカ史研究家である。著書にWomen of the Repubilc: Intellect and Ideology in Revolutionary America, Toward an Inteleectural History of Womenなどがある。また、上野教授は社会学者で、日本を代表するジェンダー論の理論家として国際的に活躍しておられる。近著に『近代家族の成立と終焉』、『発情装置』、『ナショナリズムとジェンダー』などがある。なお、コメンテーターは女性史の分野で活躍する西川祐子京都文教大学教授、『近代的家族と国民化について』の著作で近年脚光を浴びる牟田和恵甲南女子大学助教授、モデレーターはアメリカ研究所の池田啓子が務めた。訳:宮地ひとみ
著者
高山 甚太郎 香村 小録
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会学術論文誌 : Nippon Seramikkusu Kyokai gakujutsu ronbunshi (ISSN:18821022)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1254, pp.S5-S6, 2000-02-01

日本における鉄鋼業の発展は, 1901年の官営八幡製鉄所の創業に始まり, 20世紀は鉄の生産とともに経過してきた.この鉄鋼業を支えたのが耐火物であり, 耐火物技術の発展の世紀でもあった.我が国の誇れる耐火物技術の術徴は, 使用環境に合わせた耐火物評価をユーザーである鉄鋼メーカーとともに徹底的に議論して材料を設計したこと, 品質の安定性を極めたことが挙げられる.このような耐火物の発達に大きな貢献をしたのが, 本論文である.論文では, 国内外から39種類の煉瓦を収集し, 物理的性質, 化学分析, 耐火度, 耐スラグ性を調査し, 調査方法と結果を整然とまとめている.特筆すべきことは, スラグと耐火物の反応について評価試験方法を欧米に先駆けて発表した点であり, 当時の耐火物単体での評価から脱皮した優れた着想である.また, 論文中に「熾熱」という言葉が如実に表現しているように, 温度計測技術が発達していない当時では, 耐火物の評価がいかに難しいものであったことが理解できよう.この論文は, 現代の耐火物技術に大きな影響を及ぼし, 鉄鋼業の発展の礎を築いたことはいうまでもない.大日本窯業協会の前身として明治24年10月に窯工会が結成され, 同25年6月に改組, 協会雑誌としては, 同年9月に第1号が発行された.この揺籃期の大日本窯業協会では, 初代品川弥二郎子爵, 二代榎本武揚子爵, 三代金子堅太郎伯爵を会頭に擁し, 現在の会長にあたる乗務員は, 中沢岩太氏が務められました.本論文の著者である高山甚太郎博士は, 協会創立以来評議員として活躍され, 明治31年に常務委員に就任し, 逝去される大正3年10月まで, 3期17年努めた本協会の重鎮として, 協会の発展に尽力されました.高山甚太郎博士は安政4年(1857)に生まれ, 加賀大聖寺藩士族の出身で, 明治11年に東京大学理学部を卒業し, 準教授を経て同12年に農商務省地質課(明治15年に独立して地質調査所)に入所され, 化学分析を担当されました.研究対象が, 陶器, 粘土から耐火煉瓦に移っていき, 研究成果として数多くの論文を発表されております.一方, 共著者の香村小録氏は, 当時地質調査所で高山甚太郎博士の後輩として共に研究され, 後年, 釜石鉱山田中製鉄所の技師長として活躍され, その後の耐火物技術発達に多大な貢献をされました.
著者
藤原 宏志 藤田 佳久 梶田 真 戸島 信一 鈴木 康夫 城倉 恒雄 根岸 裕孝
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.244-249, 2003-06-30

2002年の地域大会として10月5日〜7日にかけて上記シンポジウムを開催した.10月5日の午後に宮崎市シーガイアワールドコンベンションセンターにて講演とパネルディスカッションを開催し,6〜7日に現地視察を宮崎県南郷村・諸塚村・椎葉村・五ヶ瀬町・熊本県蘇陽町等にて実施した.はじめに,藤原宏志氏(宮崎大学長)による特別講演「焼畑文化とむらづくり」,続いて藤田佳久氏(愛知大学)による基調講演「山村政策の展開と山村の再生を巡って」が行われた.これを踏まえて4名のパネル報告と藤田氏も加わった5名による討論を行った.座長は岡橋秀典氏(広島大学),宮町良広氏(大分大学)が務めた.討論の後,矢田俊文会長による全体総括が行われた.なお,現地視察の参加者は24名,パネルディスカッションヘの参加者は70名であった.