著者
鄭 京淑 具 正膜 ベロフ アンドレイ 山崎 朗 櫛谷 圭司 中井 徳太郎
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.90-97, 2002-03-31

2001年の大会として11月24〜25日に上記のシンポジウムを開催した.24日の午後には「北陸の地場産業と港湾整備」と題して,石川県箔商工業協同組合,河北潟干拓地,金沢港,銭屋五兵衛記念館を見学し,25日は金沢市の石川県女性センターでシンポジウムを行った.はじめに金沢大学日本海域研究所の石田 啓委員長からの挨拶があり,中藤康俊大会実行委員長より趣旨説明が行われ,引き続き6名のパネル報告の後,各報告に対する4名のコメントと討論が行われた.なお,巡検の参加者は45名,シンポジウムの参加者は130名であった.シンポジウムの座長は中藤康俊(岡山大学)と柳井雅也(富山大学)が務めた.以下に各報告の要旨,討論と巡検の記録を掲げる.
著者
金子 満 中嶋 正之
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1288-1295, 1995-10-20
被引用文献数
7 1

コンピュータによる, セルアニメタッチの映像表現を行うための新しい手法について述べる.セルアニメは, 映画の基本的な表現方法のひとつとして幅広く使われており, その人気は高い.セルアニメ制作は, 手作業により1枚1枚絵を描き, 色を塗り, カメラで撮影する.そのため1970年代には, まずアメリカにおいて制作産業そのものが空洞化し, 80年代には日本でも同じ現象が始まった.これに対応するために, 色塗りと撮影の部分をコンピュータ化した, ディジタルインクアンドペイントシステムが実用化された.しかし, コンピュータが代替できる工程が少ないため, 日本ではあまり利用されていない.本論文では, セルアニメ制作の基幹部分である原画および動画制作のコンピュータ化に, 3次元コンピュータグラフィックス技術を利用するアルゴリズムについて提案する.これまで, 2次元CG技術のみの利用にとどまっていたセルアニメタッチ映像制作を大きく変革させるものであるが, 本論文では, 3次元CG技術を2次元アニメ制作に利用する際に必要なアルゴリズムを考察し, 次世代アニメ制作システムの構築の第1段階としたい.
著者
松澤 芳昭 大岩 元
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.2767-2780, 2007-08-15
被引用文献数
13

人間と調和する情報システムを構築できる創造的な技術者が求められている.我々は,そのような人材を育成する環境として,産学が協同してソフトウエア開発PBL(Project-Based Learning)を遂行する,「コラボレイティブ・マネジメント型情報教育」を提案している.この教育環境は,1) 学生プロジェクトのPM(Project Manager)を若手企業人が務め,企業人もプロジェクトマネジメントの学習をする,2) 実際の顧客・エンドユーザを設定し,実用に耐える製品の開発を目標とする,3) 多様なプロジェクトを並行して進め,成果を共有する,4) 学生が反復して履修できる,5) 成果を産学の第三者が評価する,という特徴を持つ.我々はこの教育環境を大学学部生を対象として構築し,2005 年度秋学期に1 回目を試行し,その成果と課題をふまえて2006 年度春学期に2 回目を試行した.筆者らはアクションリサーチャとしてプロジェクトに介入し,その過程で環境の改善を試みた.その結果,a) 企業人PM のマネジメントが学生プロジェクトの足場組みとして機能すること,b) 顧客満足度を最終評価とすることが重要であること,c) 反復履修が可能なことによって学生は失敗経験とその克服ができ,螺旋的に学習が進んでいくことが分かった.We need creative software engineers who can develop information systems that harmonize with system users and other relevant persons. To develop such engineers, we proposed a PBL (Project-Based Learning) course named "Software Development through Collaborative Management", where university students and young engineers in industry collaboratively learn construction of information systems. This course has following characteristics: (1) an undergraduate students' project is managed by an IT company's engineer who also acquires project management skills through this experience, (2) this project tries to develop a tiny information system for real customers and users, (3) different projects run at the same time in the course, (4) students can take the course repeatedly, (5) projects are evaluated by leaders of IT industry and academia. We have tried the course twice in our university. As a result of an action research, we have found the following three things: (a) a project manager from an IT company scaffolds a students' project, (b) the final evaluation of the project is best done by monitoring customer-satisfaction, (c) students can learn engineering processes spirally, because they can take an opportunity to overcome failures made in the previous project of repeated study.
著者
半田 毅 山路 康貴 中島 守 井藤 良温 竹内 嗣昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.98, no.643, pp.53-58, 1999-03-06
被引用文献数
4

自動車教育を専門とする本学へ入学してくる学生のうち,「自動車が好きでたまらない」,「自動車をいじっていることが楽しい」という学生の占める割合は, 以前に比べ減少している. このため, 入学後いかに自動車を好きになってもらうか, 興味・関心を持たせ得るかが本学の大きな教育目標の一つになっている. そこで, 観聴覚教材の活用率を高めているが, 市販教材では期待した教育効果が得られていない. 本研究では, エンジン学習に関する意識調査を実施し, その結果より理解を妨げる要因となっている項目に対して, イメージを作り出しやすく, また興味・関心を喚起できる三次元グラフィックス教材の開発を行った.
著者
鈴木 敬二
出版者
京都大学附属図書館
雑誌
静脩 (ISSN:05824478)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.17-20, 2000-03
著者
灘岡 勲 安江 正明 大竹 康之 武田 恭一 松本 一浩 柿野 克自 多田 由実
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.15-22, 2006 (Released:2006-03-09)
参考文献数
24

我々は大豆イソフラボンとブラックコホシュエキスを含む健康食品の更年期女性の SMI に対する臨床有用性について,二重盲験試験により検討した.24 名の閉経前後の女性対象者を 2 つのグループに分け,試験食品もしくはプラセボを毎日 4 カプセルずつ,8 週間経口摂取させた.1 日あたりの摂取量は,大豆イソフラボン 50.0 mg,ブラックコホシュエキス 80.0 mg であった.試験食品摂取群ではプラセボ摂取群と比較して,「肩こり,腰痛」の更年期障害スコアが有意に改善 (p<0.05) され,さらに「イライラ」のスコアにおいては統計学的に有意ではないが改善の傾向が確認された.試験食品摂取前の更年期障害重症度による層別解析の結果,試験食品の効果は症状の軽い被験者においてより顕著であった.これらの結果より,大豆イソフラボンとブラックコホシュエキスを含む健康食品は更年期の不定愁訴を緩和し,生活の質の向上に有用であることが示された.
著者
枇々木 規雄
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.740-745, 2005-11-01

研究発表会において「金融/ファイナンス/金融工学」セッションは1990年に初めて登場した.本稿ではこの15年間を振り返り, 発表件数や内容を分野, 方法論別に分類し, 時系列推移の特徴も調べた.全体的にはポートフォリオ理論の研究および数理計画法の利用が多いが, 最近はオプション理論の研究が増加するなど, 傾向は変化している.また, 発表回数分布から常連が少ないことも分かった.これらの点は参加していて感じていたことだが, 実際のデータからも明らかになった.後半では, ORにおける金融研究の役割と位置付けについて説明し, 研究発表会に参加する目的や金融工学の研究に必要なことも述べた.
著者
戸田 須恵子
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.57-64, 2004-11-30

母子相互作用における認知の発達(言語・遊び)を生後5ヶ月から2歳まで縦断的研究をするため、第1子を持つ母親へ研究協力を求め、27組の母子が参加した(男児16名,女児11名)。本研究は、5ヶ月児への母親の反応、乳児の注意、親の役割に関する自己意識に焦点を当てそれらの関係を検討した。乳児が5ヶ月に達した時、家庭訪問を行い1時間の日常生活場面と母子遊び、一人遊びを30分観察した。日常生活場面では乳児行動と母親の反応について頻度数を分析し、母子遊びでは乳児の注意を1秒単位でマイクロ分析を行った。さらに、質問紙によって親となる事や子育て観に関する情報を得た。結果は、乳児は観察中ネガティブな声を出すことが多く、母親の反応については、社会的反応や養育的反応が多く見られた。乳児の注意については、おもちやを見たり、母親の手元を見る時間が多かったが、周りを見る時間が最も多かった。男児はおもちゃを見ている時間が女児より長く、女児は母親との共同注意が男児より長かった。又、母親の反応との関係を見たところ、全体的には有意な関係は認められなかったが、男女差が見られた。男児においては、母親がネガティブな声に反応する事と乳児のおもちゃへの注意と正の相関が認められ、母親の声への模倣と母子遊びで母親に注意を向けることと正の相関が認められた。女児においては、ネガティブでない声への反応と母子遊びで母を見る事と負の相関が認められた。母親の役割に関する自己意識の結果は、親になる事において男女差が認められ、女児を持つ母親ほど親になった事に満足していた。又、男児において子育てについての自信・満足感と母親の養育的反応との間に負の相関が認められた。即ち、子育てに自信のない男児の母親ほど乳児行動に対して養育的行動で応えていることが明らかとなった。これらの結果はさらに、詳細な検討が必要である。
著者
伊藤 憲二
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

日本の初期における産業用ロボットに関して次のことが明らかになった。1.日本におけるロボット、機械、そして科学技術の文化的位置づけに関して(1)産業用ロボットが導入された時期の目本は、文化的にロボットを受け入れやすい状況にあったことを確認した。その原因は、第一に、日本の文化・社会における科学技術の位置づけであり、第二に、日本の社会・文化におけるロボットというものに対する見方である。これは相互に関連しており、ロボットが未来の科学技術を象徴すると同時に、戦後日本の科学技術に対するきわめてポジティブな観点が、ロボットに対する見方をポジティブなものにしていた。それは鉄腕アトムなどの大衆文化におけるやはりロボットおよび科学技術に対するポジティブな表象を生み出し、そしてそのような文化表象が科学技術およびロボットに対するポジティブなイメージを流通・定着させていた。(2)文化的要因だけでなく、そのほかに社会的・組織論的要因が働いていた。このこと自体はすでに指摘されていたことであるが、本研究でむしろ着目するのはこのような要因がしばしば隠蔽されていることである。2.産業用ロボットにおけるユーザーの問題に関して(1)産業用ロボットのユーザーがロボットの製作にかかわり、やがてはマニュファクチャラーになるという課程を明らかにした。(2)これに関連して、科学技術論におけるユーザーの問題に対して、ユーザーの捉え方に新しい視点を提示した。ユーザーは必ずしも大衆・消費者ばかりではない、という事である。それを実例をもって示した点は、ユーザーの概念的位置づけと、それに基づく技術のユーザー論において、一つの成果であると考えられる。
著者
加堂 哲治 小谷 義一 船田 泰弘 植田 史朗 大林 加代子 高田 佳木
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.295-300, 2003-08-20

目的.肺がん患者の病名告知に対する意識の,最近の5年間の変化を知ることを目的とした.方法.1996年と2001年の初診時病名告知アンケート調査の比較検討を行った.1996年および2001年に兵庫県立成人病センター呼吸器科に初診受診し,肺がんの確定診断のついた患者のうちアンケートに回答した1996年176名(回答率71.3%),2001年246名(回答率89.5%)を対象とした.結果.全体的には,病状や治療法の説明を詳細に受けたい患者は,1996年は46.0%が2001年には69.5%へ増加し,本当の病名を知りたい患者は65.9%から91.1%へ有意に増加した.またこれまで告知率が低いとされていた高齢患者や進行期の患者においても,同様の増加を認めた.結論.我々のアンケート調査から,この5年間で病名告知など真実を知りたいと希望する肺がん患者が確実に増加してきたことが明らかとなった.(肺癌.2003;43:295-300)
著者
胡 学斌 小畑 秀文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.596, pp.37-44, 2002-01-18

コンボリューション変換を受けた音声の混合信号を独立成分分析で分離する方法のほとんどは、分離フィルタのパラメーターを周波数領域で算出する。しかし、信号の周波数成分の間でほとんどの周波数において部分的な相関性を持つことが多い。その相関性がある程度大きくなると、すべてのBSSのパフォーマンスが低下することが予想でき、その悪影響を無視することができない。本論文では、池田および村田[1]によって提案されたTDD方法をベースとした再帰的な新手法を提案する。本手法を用いた実験結果から、部分的な相関性を持つ信号であっても、原信号の復元が高精度でできることが示された。SN比も改善度は周波数ごとに異なるものの、全体的には向上することが確認された。
著者
田中 元志 高木 相
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学
巻号頁・発行日
vol.93, no.495, pp.49-55, 1994-03-08

ノイズパラメータが制御できる場合ノイズ発生器(CNG)を用い、テレビ画像に及ぼす電磁ノイズ(非ガウス性ノイズ)の影響について主観評価実験を行った。その結果、ノイズの微細構造の影響は小さく、電力による影響が大きいことが明かとなった。静止画上と動画上での評価を比較すると、電力が小さいところで若干の違いが見られるが、全体的にはほぼ同様な結果が得らた。また、HDTV画像に対して、その周辺から発っせられる電磁ノイズの影響について実験を行ったが、ノイズの混入は殆ど見られなかった。
著者
松葉口 玲子 天野 晴子 斎藤 悦子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.207-212, 2004-03-15

2002年に開催されたヨハネスブルグ・サミットで再確認されたように,先進国における「持続可能な消費」の必要性が高まっている.そのなかで本報の目的は,すでにその重要性が指摘されつつある生活時間やジェンダー視点との関連を,「世帯」に着目して分析することである.使用したデータは,2000年に実施した生活時同調査であり,協力者の特徴等についてはすでに報告済みである.主たる結果は次の通りであった.(1)全体的には,1995年調査と同様,妻の方が夫よりも「持続可能な消費」を実践しており,しかもそこには妻の就業形態別の違いすなわち世帯内でのジェンダーのあり方が反映されていた.(2)ライフスタイルの変更の必要性に対する認識と実際の行動との乖離傾向は,特に「妻無職の夫」にみられ,「持続可能な消費活動」自体が性別役割分業化される危険性が明らかになった.(3)同時に,「妻の影響」の大きさが明らかとなり,世帯内における「持続可能な消費」のジェンダー差とともに,その解消の可能性も垣間見られた.(4)「社会的活動/消費者活動」は増加傾向にあった.(5)自家用車の使用法については,先行研究と同様,今後の環境政策に生かされるべきジェンダー差が明らかとなった.
著者
磯村 源蔵 肥田 岳彦 清水 信夫
出版者
日本組織細胞化学会
雑誌
日本組織細胞化学会総会プログラムおよび抄録集
巻号頁・発行日
no.18, 1977-10-20

ラット脊髄のアミン線維の走行および停止を調べるために、2%グリオキシール酸で還流固定した脊髄を凍結乾燥後、ホルマリンガスをかけ(前田、木村法)、15μの交互三連続切片となし、それぞれを蛍光法、渡銀法、およびニッスル法で観察した。アミン線維は脊髄の前角、後角中に分布する他に、白質中を頭尾方向に散在して走行するが、側角には集束した走行を示す。すなわちこの分節的に集束した線維は側角細胞の周囲をかこみ、密な網目構造を形成する。この網目構造を形成する線維の一部は前後にわかれた小線維束となり内側に向い中心管外側の前後で再び各々が小線維束網を形成する。後方のものは反対側へ向い、反対側の側角をとりまく網目構造に混入する。このような左右を連絡する小線維束は、脊髄神経の根系の派出部に対応して存在するようであり、また、側角周囲の分節状網目構造は頚膨大下端から腰膨大上端に限局していて、全体的には梯状を呈していると考えてもよい。これらのアミン線維の起始部、走行および停止の仕方を調べるため、脊髄、延髄および橋の種々の高さをハラスのナイフを用いて切断した。
著者
具 本瑛 中條 武志
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.105-118, 2001-10-15

本研究では, 複数の製品に対する消費者の品質要求を狩野らによって提案された魅力的品質・当たり前品質の視点から調査・分析し, 製品の種類の違い, 消費者属性の違いによって, 魅力的品質・当たり前品質となる品質項目がどのように変化するのかをモデル化することを試みた.結果として, 全体的には品質項目の内容・区分によって魅力的品質項目・当たり前品質項目・一元的品質項目・無関心品質項目のいずれになるかが決まること, 同じ品質項目でも, 製品の種類によって魅力的・当たり前に感じる人, 無関心な人の割合が変化すること, 消費者の属性によって魅力的・当たり前に感じる人の割合が若干変化することなどがわかった.
著者
園田 菜摘
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.177-188, 1999-12-31

3歳児が示す他者の欲求, 感情, 信念理解の個人差について, その特徴と母子相互作用との関連を検討した。51組の母子の相互作用を家庭で観察し, ごっこ遊び場面と本読み場面における内的状態への言及頻度をカウントした。その後, 子どもに欲求, 感情, 信念理解を調べる課題を行った。その結果, 3歳児の他者理解の特徴として, 全体的には感情理解の成績が高く, 信念理解の成績が低いが, どの課題においてもそれぞれ大きな個人差が存在していることが示された。このような他者理解の個人差と関連する柏互作用要因について, 欲求理解では母親の本読み場面での思考状態への言及とごっこ遊び場面での応答的な内的状態への言及との問で, 信念理解については母親の両場面での思考状態への言及, ごっこ遊び場面での応答的な言及, 本読み場面での繰り返し的な言及との問で, それぞれ関連があることが示された。さらに, 子どもの月齢や性別, きょうだい数といった柏互作用以外の要因と他者理解との問にはほとんど関連が見られなかった。このことから, 3歳児の他者理解を促す要因として, 家庭での相互作用, 特に場面に応じた内的状態への言及の重要性が示唆された。
著者
古賀 秀昭 牧野 正三 城戸 健一
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.795-801, 1990-10-01
被引用文献数
8

聴覚に関する生理学的及び心理学的知見から、ローカルピークが母音認識の手掛かりとして重要であると考えて、著者らは単語中の母音の認識をローカルピークを用いて行っている。しかし、これまで認識実験と聴取実験との比較検討は行われていない。今回、単語中の母音について聴取実験を行うと共に、同じ音声資料を用いてローカルピークと通常行われているLPCケプストラム係数による認識実験も行い、それらを比較検討した。認識実験は聴取実験で10人中の8人以上が正答したもので標準パタンを作成したもので行った。特徴量と識別規則を含めた検討の結果、部分的には差が見られないものもあるが、全体的にはローカルピークによる認識結果の方が聴取実験結果に近いという結果になった。