著者
阿部 務
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.139, no.1, pp.33-38, 2012 (Released:2012-01-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

ペンテト酸カルシウム三ナトリウム(Ca-DTPA)およびペンテト酸亜鉛三ナトリウム(Zn-DTPA)は,キレート試薬として広く利用されているdiethylene-triamine-penta-acetic acid(ジエチレントリアミン五酢酸,別名はペンテト酸)(DTPA)とそれぞれカルシウム(Ca)および亜鉛(Zn)とのキレートである.これらの薬剤は,原子核反応を利用して人工的に作られる超ウラン元素体内除去剤として独国および米国ですでに承認され,緊急時に使用できるよう備蓄されている.本邦では,これらの薬剤は承認されておらず,以前より関連学会等から早期承認の要望が出され,厚生労働省主導の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で,医療上の必要性の基準に該当するという評価を得た.古くからCa-DTPAおよびZn-DTPAに関する多くの文献が公表され,さらに,有効性および安全性を評価するための臨床試験を行うことは倫理的に不可能であったことから,これらの薬剤の公知申請を行った.DTPAはCaおよびZnより高いキレート安定度定数を有する超ウラン元素(プルトニウム,アメリシウムおよびキュリウム)とより安定な水溶性のキレートを形成する.また,DTPAは未変化体として速やかに尿中に排泄される.このような特性から,Ca-DTPAおよびZn-DTPAは血液中および細胞外液中の超ウラン元素とキレートを形成し,尿中排泄を促進し,体内除去作用を示す.米国で発生した放射線事故においてCa-DTPAおよびZn-DTPA製剤が投与された超ウラン元素汚染患者の使用実績を解析した結果,超ウラン元素体内除去作用が確認された.また,有害事象等の報告は限られており,適切な注意喚起の下で必要な検査等を行いながら使用することで安全性は忍容可能と考えられた.放射線事故等で超ウラン元素による内部被ばくが問題となるような万一の事態に備え,これらの薬剤が本邦においても備蓄されることを期待する.
著者
堀田 饒 中村 二郎 岩本 安彦 大野 良之 春日 雅人 吉川 隆一 豊田 隆謙
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.47-61, 2007 (Released:2009-05-20)
参考文献数
10
被引用文献数
24

アンケート調査方式で,全国282施設から18,385名が集計され,1991∼2000年の10年間における日本人糖尿病患者の死因を分析した.18,385名中1,750名が剖検例であった.1) 全症例18,385名中の死因第1位は悪性新生物の34.1%であり,第2位は血管障害(糖尿病性腎症,虚血性心疾患,脳血管障害)の26.8%, 第3位は感染症の14.3%で,糖尿病性昏睡は1.2%であった.悪性新生物の中では肝臓癌が8.6%と最も高率であり,血管障害の中では糖尿病性腎症が6.8%に対して,虚血性心疾患と脳血管障害がそれぞれ10.2%と9.8%とほぼ同率であった.虚血性心疾患のほとんどが心筋梗塞であり,脳血管障害の内訳では脳梗塞が脳出血の2.2倍であった.2) 剖検例において死亡時年齢から糖尿病患者の死因をみると,血管障害全体では年代が上がるにつれて頻度が高くなるが,腎症および脳血管障害の頻度には40歳代以上では年代による大きな差は認められなかった.しかしながら,虚血性心疾患は年代の上昇に伴って増加し,50歳代以上では他の血管障害に比して頻度が高く,70歳代では血管障害全体の約50%を占めていた.悪性新生物は,40歳代以上の各年代で最も高く,60歳代においては46.3%と極めて高頻度であった.また,感染症による死亡には40歳代以上の各年代で大きな差はなかった.3) 血糖コントロールの良否が死亡時年齢に及ぼす影響をみると,血糖コントロール不良群では良好群に比し,男性で2.5歳,女性で1.6歳短命であり,その差は悪性新生物に比し血管合併症とりわけ糖尿病性腎症と感染症で大きかった.4) 血糖コントロール状況および糖尿病罹病期間と血管障害死の関連を検討すると,糖尿病性腎症,虚血性心疾患,脳血管障害ともに血糖コントロールの良否との関連性は認められなかった.罹病期間に関しては,大血管障害は細小血管障害である糖尿病性腎症と比較して糖尿病歴10年未満でも頻度が高かった.5) 治療内容と死因に関する検討では,食事療法単独21.5%, 経口血糖降下薬療法29.5%, 経口血糖降下薬の併用を含むインスリン療法44.2%とインスリン療法が最も多く,とりわけ糖尿病性腎症では1,170名中683名58.4%を占め,虚血性心疾患での1,687名中661名39.2%, 脳血管障害での1,622名中659名40.6%に比べて高頻度であった.6) 糖尿病患者の平均死亡時年齢は,男性68.0歳,女性71.6歳で同時代の日本人一般の平均寿命に比して,それぞれ9.6歳,13.0歳短命であった.前回(1981∼1990年)の調査成績と比べて,男性で1.5歳,女性で3.2歳の延命が認められたが,日本人一般においても男性1.7歳,女性2.7歳の延命が観察されており,糖尿病の管理・治療が進歩したにも拘らず,患者の生命予後の改善に繋がっていないことが明らかとなった.

4 0 0 0 OA 吉田松陰全集

著者
吉田松陰 著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
vol.第6巻, 1936
著者
谷口 明子
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.193-202, 2010

統計的にはいじめ発生件数が減少しているとはいえ、いじめが看過できない教育上の課題であることは変わらない。いじめ深刻化の背景にはいじめの潜在化があると言われるが、その要因のひとつに中学生のいじめ認識のゆがみがあるのではないかと考えられる。そこで、本研究においては、いじめが最も深刻である中学1、2年生を対象として、どのような行為を「いじめ」と認識しているのか、またそうした認識はいじめ経験の有無と関連があるのかどうかを質問紙調査によって検討した。結果として、衝動的暴力や遊び型のいじめ行為に対しては、それが「いじめである」という認識が低く、さらにそうした遊び型いじめに関しては、被害経験のある生徒でさえ「いじめではない」との認識があることが明らかになった。中学校におけるいじめ防止を考える際に、こうしたいじめへの認識のずれに焦点をあてた対応が望まれる。
著者
本村 猛能 森山 潤 山本 利一 角 和博 工藤 雄司
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.29, pp.310-311, 2013-11-09

本研究は諸外国の中学校,高等学校学習過程における生徒の「自己評価による意識調査」の診断を通して,情報教育の体系化とその学習内容を検討することを目的とする。対象国は,日本と中国,韓国,他の調査により比較検討した。このとき,文科相の評価の観点と併せてブルームの「認知・精神運動・情意」領域の評価の観点とペレグリーノの評価理論も取り入れた。その結果,情報教育の体系化についての認知度や「情報の科学的理解」について韓国が最も有意に高く,イメージは技能習得から知識へと推移している。我が国の情報教育のカリキュラムは,生徒の発達段階に応じた基礎的・基本的な知識の習得をはかる教授法と実習(技能)を取り入れたカリキュラムを検討する必要性があることが示唆された
著者
乾 あやの 小松 陽樹 日衛嶋 栄太郎 十河 剛 永井 敏郎 藤澤 知雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.457-459, 2010 (Released:2010-09-02)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Since the national program of immunoprophylaxis against perinatal transmission of hepatitis B virus (HBV) was started in 1986, the HBV carrier rate in children was dramatically decreased. However, the cases of failure of the prevention still exist. In this study, we retrospectively analyzed the reasons of 56 cases of the failure of the prevention after the initiation of national program. Seventeen (31%) were not received the immunoprophylaxis of the national program by mistake. Seven (12%) were received the inappropriate doses of schedule. Our national program is relatively complicated compared to the method adopted by almost all other countries. Because of the universal vaccination program is easy to finish the schedule, we should consider converting our prevention schedule to the universal vaccination program.
著者
吉岡 良昌 Yoshimasa YOSHIOKA
出版者
東洋英和女学院大学大学院
雑誌
東洋英和大学院紀要 = The Journal of the Graduate School of Toyo Eiwa University (ISSN:13497715)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-16, 2014-03-15

At the starting point of the educational reform after the World War Ⅱ in Japan,Shigeru Nanbara, President of the Tokyo University, continued to insist that human Revolution is needed to complete the democratic society in Japan. Although the Constitution and the Basic Act on Education has been established as the system Of Japanese government, it was the most important task that the human being oneself must be reformed toward the new person to maintain the new system. It was an ideal educational goal for Japanese to become to attain to “the full development of the personality” as written at the First article of the Basic Act on Education. Arimasa Mori who was a famous philosopher following after the Nanbara’s vision, has been trying to comlete the task of the human revolution in Japan by the way of his own philosophical way. His conclusion was that Japanese individuality and Japanese democratic society must be reformed and confirmed by the Christian Faith.

4 0 0 0 OA ルレタビーユ

著者
ガストン・ルルウ 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
vol.第1, 1937
著者
鹿島 和枝
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 服装学・造形学研究 = Journal of Bunka Gakuen University (ISSN:21873372)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.13-25, 2013-01
被引用文献数
1

衣服の作品製作において、デザインに合ったシルエットを表現するためには、素材に適した縫製が求められる。その縫製方法を選択する指針を得るため、パニエを使用するAラインのウェディング・ドレスの裾上げ方法について検討した。3 種類の布地ごとに縫製方法の異なる6 種の試料を製作し、官能検査による裾の仕上りを評価した。(1)シノンウールは、裾部分の剛軟度が高い方法は評価が高く、ホースヘアブレードをヘムに入れる方法やダブルオーガンジーのバイアスの別見返しで始末する方法、共布の別見返しで始末する方法は評価が高い。(2)サテンクレープはドレープ性があり、ヘムに張りがないと垂れてまつりのひびきが大きくなることから、ホースヘアブレードをヘムに入れる方法やハイモで裏打ちする方法は評価が高い。(3)シルクタフタはドレープ性がなく、布地が平坦でヘムやまつり目が表面にひびくため、オーガンジーで裏打ちする方法が最も評価が高い。以上の官能検査による評価と裾部分の物性との相関性を分析した結果、厚さと剛軟度の計測から縫製方法を選択すると良いことがわかり、学生へ縫製指導上の指針が得られたので報告する。
著者
白峰 旬
出版者
別府大学大学院文学研究科
雑誌
別府大学大学院紀要 (ISSN:13450530)
巻号頁・発行日
no.14, pp.57-76, 2012-03

従来の通説では、"小山評定"は、慶長5年7月25日、徳川家康が上杉討伐のために東下した諸将を小山(下野国=現栃木県小山市)に招集して、上杉討伐の中止と諸将の西上を決定した軍議として有名であり、これまで関ヶ原の戦いに関する研究史において、動かしようのない"歴史的事実"として通説化して扱われてきた。しかし、本稿では一次史料の詳細な内容検討により、これまで通説で肯定されてきた"小山評定"が歴史的事実ではなく、フィクションであることを論証し、フィクションとしての"小山評定"が江戸時代に捏造された背景についても論及した。
著者
今西 衛 佐藤 慶一 石橋 健一 斎藤 参郎
出版者
名古屋産業大学
雑誌
名古屋産業大学論集 (ISSN:13462237)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.15-21, 2007-03-16

政府地震調査研究推進本部では、首都圏直下地震、東海地震、東南海・南海地震などの発生確率について、いずれも高い数値を与えており、近い将来、我が国の都市部が大地震に見舞われることが危惧されている。災害により多数の住宅喪失世帯が発生した際、災害救助法が適用されると、医療や食品・飲料水の供与などとともに、避難所や応急仮設住宅という居住支援が行われる。阪神・淡路大震災では、約20万の住宅喪失世帯に対して、約5万戸の応急仮設住宅が供給されたように、我が国の応急住宅支援においては、仮設住宅による対応が中心的な役割を果たす。仮設住宅については、多額の建設費、維持管理費、撤去費を要し、従来より、現物支給から現金支給へと切り替えた方が効率的ではないか、という議論があるが、理論的な検討は十分とは言えない。2004年に被災者生活再建支援法が改正され、仮住まいの家賃としても利用可能な支援金給付が認められることとなったが、どの程度利用されるのか、その評価は十分ではない。そのような状況を踏まえ、本研究では、経済学的アプローチによる理論的枠組みを構築し、費用便益分析の価値概念に基づいて災害応急居住支援の制度分析を試みた。分析を通して、仮設住宅や借上住宅の家賃が無料であるならば、住民にとってそれと同等な生活水準をもたらし、かつ、行政の費用負担が少なくなるような家賃補助制度が存在することが示され、我が国の応急居住支援の制度設計への一つの知見を得ることができた。
著者
岸 祐希 金崎 雅博 牧野 好和 松島 紀佐
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.849, pp.16-00454-16-00454, 2017 (Released:2017-05-25)
参考文献数
20

When a wing of airplane is designed, it is necessary to have knowledge regarding planforms considered their optimum airfoils in order to design efficiently, because each wing planform has both of advantage and disadvantage. In this study, the wing design problem for supersonic transport is carried out for different planforms for two different planforms. Multi-objective problem, which is minimization drags for two supersonic cruise conditions (transonic and supersonic flight) is solved to obtain knowledge of the supersonic airfoil from the viewpoint of the multi-point design. Two types of planforms are considered—a cranked arrow wing with a high sweep-back angle and a single tapered wing with a low sweep-back angle. Optimization problems are carried out by efficient global optimization, which is evolutionary algorithm based on the Kriging surrogate model. To acquire design knowledge, a parallel coordinate plot and functional analysis of variance (functional ANOVA) are applied. The design results showed the difference airfoil between two planforms. The optimum airfoil for the single tapered wing has a small or negative camber at the leading edge to minimize the supersonic cruising. On the other hand, the optimum airfoil for the cranked arrow wing has an airfoil with a lower thickness and larger camber at the leading edge.