著者
白井 暁彦 鈴木 百合彩
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.452-457, 2015-09-18

エンタテイメントシステムにおける再現可能な実験や客観的な評価手法の確立は,本分野を科学研 究として発展させるために重要な研究である.本発表では特に,複数のエンタテイメントシステムにおけ る「おもしろさ」を物理的・客観的に測定するため,自然な体験環境で行うパブリックテストを成立させ るための同意書および実験運用方法,ガイドラインを提案する.
著者
箕輪 はるか 北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 二宮 和彦 稲井 優希 大槻 勤 木野 康志 小荒井 一真 齊藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 高宮 幸一 竹内 幸生 土井 妙子 上杉 正樹 遠藤 暁 奥村 真吾 小野 貴大 小野崎 晴佳 勝見 尚也 神田 晃充 グエン タットタン 久保 謙哉 金野 俊太郎 鈴木 杏菜 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 髙橋 賢臣 竹中 聡汰 張 子見 中井 泉 中村 駿介 南部 明弘 西山 雄大 西山 純平 福田 大輔 藤井 健悟 藤田 将史 宮澤 直希 村野井 友 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 山守 航平 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

【はじめに】日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした研究グループにより、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質の陸域での大規模な調査が2011年6月に実施された。事故より5年が経過した2016年、その調査結果をふまえ放射性物質の移行過程の解明および現在の汚染状況の把握を目的として本研究プロジェクトを実施した。2016年6月から9月にかけて、のべ9日間176名により、帰還困難区域を中心とする福島第一原子力発電所近傍105箇所において、空間線量率の測定および土壌の採取を行った。プロジェクトの概要については別の講演にて報告するが、本講演では福島県双葉郡大熊町・双葉町の土壌中の放射性セシウム134Csおよび137Csのインベントリ、土壌深部への移行、134Cs/137Cs濃度比、また空間線量率との相関についての評価を報告する。【試料と測定】2016年6・7月に福島県双葉郡大熊町・双葉町の帰還困難区域内で未除染の公共施設36地点から深さ5 cm表層土壌を各地点5試料ずつ採取した。試料は深さ0-2.5 cmと2.5-5 cmの二つに分割し、乾燥処理後U8容器に充填し、Ge半導体検出器を用いてγ線スペクトルを測定し、放射性物質を定量した。【結果と考察】137Csのインベントリを航空機による空間線量率の地図に重ねたプロットを図1に示す。最大濃度はインベントリで137Csが68400kBq/m2、比放射能で1180kBq/kg・dryであった。インベントリは空間線量率との明確な相関がみられた。深部土壌(深さ2.5-5.0 cm)放射能/浅部土壌(深さ0-2.5 cm)放射能の比はおおむね1以下で表層の値の高い試料が多かったが、試料ごとの差が大きかった。また原子力発電所より北北西方向に134Cs/137Cs濃度比が0.87-0.93と明確に低い値を持つ地点が存在した。
著者
馬 成芬
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.573-592, 2017-03-31

文部科学省グローバルCOEプログラム 関西大学文化交渉学教育研究拠点松浦章教授古稀記念号[東アジアの歴史と動態]There were 151 kinds of Chinese calligraphy rubbings, totally 3797 volumes, being imported to Japan in Edo period. But all these rubbings could not be considered to be authentic works, and some of them couldn't be distinguished if they were authentic works or not. In that case, how about the condition of those counterfeited rubbings which were imported to Japan? In this paper, I will focus on these counterfeited rubbings of being imported to Japan, then explored the condition of it and the influence to the area of calligraphy of Japan.
著者
栗原 聡 高屋 英知 髙橋 良暢 芦原 佑太
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

今後のAIは大人・子供の2つの流れに分化しつつ発展すると考えられ,近年は大人のAIへの取組が主であるものの,世間では「AI=子供のAI」の認識が強く,これが「AIの驚異」等の議論を巻き起こしている.子供のAIの実現は黎明期にあり,鍵は自律性とマルチモーダル性にある.本発表では,子供のAIの実現に向けた技術的課題や,AI研究において欧米に遅れている日本の巻き返し戦略について考察する.
著者
Tomoyuki Miura
出版者
日本動物分類学会
雑誌
Species Diversity (ISSN:13421670)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.7-27, 2017-05-25 (Released:2017-05-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2

A new classification is proposed for the Japanese species of the genus Lumbrinerides Orensanz, 1973 (Annelida: Lumbrineridae), based on the observation of as many specimens as possible so as to determine the extent of intra-populational variation of each morphological character. Morphological differences apparent in material from ten local sites were compared statistically among 16 tentative, operational taxonomic units, the morphologically recognizable units then being subjected to a taxonomic consideration with other known species. By their morphology, five species were recognized from Japanese waters, three being new to science. Diagnoses and descriptions of each species are given.
著者
村中 淑子
出版者
桃山学院大学
雑誌
人間文化研究 = Journal of humanities research, St. Andrew's University (ISSN:21889031)
巻号頁・発行日
no.3, pp.55-83, 2015-10

In this article we studied color terms in loanwords in Japanese, and analyzed them using Corpus Data. We focused on ten color terms of English origin, using the full-text retrieval system "Himawari" of the internet library Aozora Bunko (12023 works, accessed October 1, 2014) for language resources, and observed examples from the Meiji period to the early Showa period. The color terms studied were as follows : PINKU (pink), GURIIN (green), BURUU (blue), GUREE (gray), BEEJU (beige), BURAUN (brown), REDDO (red), IEROO (yellow), HOWAITO (white), and BURAKKU (black). Following the study, the terms were classified into two categories. (a) Those having both an indicatory function in the context of multiple choice, and a descriptive function to describe attributes of things. They can be used independently but not in compound form. PINKU (pink), GURIIN (green), BURUU (blue), GUREE (gray), and BEEJU (beige) belong to this group. (b) Those having only the indicatory function and no descriptive function. They are always used in compound form. BURAUN (brown), REDDO (red), IEROO (yellow), HOWAITO (white), and BURAKKU (black) belong to this group. It may be said that words of group (a) are more familiar in Japanese than those of group (b), in particular PINKU and GURIIN as they describe the color of natural objects. In group (b), the reason why REDDO (red), HOWAITO (white), and BURAKKU (black) have low familiarity in Japanese is that Japanese original color terms AKA (red), SHIRO (white), and KURO (black) constitute extremely basic and fundamental vocabulary in Japanese, and it is likely that there was no place for words of foreign origin having similar meaning.
著者
小林 哲 村山 一茂 太田 悠葵 川崎 ナナ 豊島 聰 石井 明子
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.63-76, 2017-03-31 (Released:2017-05-25)
参考文献数
23
被引用文献数
2

日本で承認されている免疫調節作用を有する抗体医薬品 12 品目について,報告数の多い有害事象の基本語 (Preferred Term;PT)を特定するため,2015 年時点で医薬品医療機器総合機構が公開していた医薬品副作用データベースに集積されていた症例を解析した.その結果,報告数の多い PT として,肺炎,間質性肺疾患,ニューモシスチス・イロベチイ肺炎 (Pneumocystis jiroveci pneumonia;ニューモシスチス肺炎),蜂巣炎,敗血症,および帯状疱疹等を特定した.これらの PT について,特に日本で 5 種類の製品が承認されている抗 TNF 薬 (infliximab,adalimumab,golimumab,certolizumab pegol およびetanercept) をはじめとした関節リウマチ治療薬に着目し,医薬品ごとに各 PT の発現頻度と初回発現時期を解析・比較した.ここでは,シグナル検出指標の報告オッズ比 (reporting odds ratio;ROR) を発現頻度の指標として用いた.また,初回発現時期の対照薬としては,抗 TNF 薬とは標的が異なる関節リウマチ治療薬で,症例の報告数も比較的多い抗インターロイキン-6 受容体抗体の tocilizumab を選択した.その結果,肺炎と間質性肺疾患,および敗血症については,ROR と初回発現時期の解析からは特定の関節リウマチ治療薬との関連を示唆する結果は得られなかった.一方,ニューモシスチス肺炎については,特に infliximab で高い ROR が得られた.Infliximab ではニューモシスチス肺炎の初回発現時期も他の医薬品より早い傾向にあり (0.19 yr),tocilizumab (0.32 yr)を対照として Mann-Whitney 検定を行うと,有意水準 1%で有意差が認められた.Infliximab はニューモシスチス肺炎の ROR が高いだけでなく,初回発現時期も特徴的であることから,ニューモシスチス肺炎との間に他よりも強い関連が示唆された.同様なことが,蜂巣炎とtocilizumab,帯状疱疹と certolizumab pegol についても観察され,感染症に関する一部のPT は,特定のバイオ医薬品に強く関連する可能性が示唆された.肺疾患や皮膚疾患を持つ患者等については,抗 TNF 薬を使用する際に,これらの感染症が生じやすい可能性に配慮する必要があると考えられた.
著者
三宅 悠介 松本 亮介 力武 健次 栗林 健太郎
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-37, no.4, pp.1-8, 2017-05-18

BtoC の EC サイトで取り扱う商品の種類の増加に伴い,EC サイト利用者の通常の行動では全ての商品を見て回ることは困難であるため,多くの EC サイトでは効率的に商品を閲覧できるよう関連性のある商品を動線上に表示している.購買履歴等の情報が蓄積されないと関連商品を選定できない問題を解決するため,商品の持つ様々なメタデータを利用する手法や,視覚的な訴求力の強い商品画像を元にした,畳み込みニューラルネットワークを始めとした深層学習による精度の高い関連商品の選定手法が提案されている.しかし,適切な粒度のメタデータの整備に手間を要する問題や,深層学習のための大量の訓練データセットと計算時間が必要となる問題から,これらが導入への大きな障壁となっている.本報告では,画像分類用の学術ベンチマークであり,EC サイト商品画像特性と類似する ImageNet において高い成績を出した Inception-v3 モデルを学習済みネットワークとして採用し,一般物体の特徴を強く表現する識別層に近い手前のプーリング層までから得られる特徴量をもとに近似最近傍探索により類似度を比較することで,特徴抽出器の学習と購買履歴を必要としない類似画像による関連商品検索システムを提案する.EC サイトにこの類似画像による関連商品検索システムを導入し,画像のクリック率を商品カテゴリごとに計測することで類似画像による関連商品の有効性を検証した.
著者
岡田 美弥子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.45-64, 2013-06-11

本稿の目的は,日本のマンガビジネスを牽引し,アニメやキャラクター商品,およびマンガ以外のエンターテイメントに素材を提供してきたコミック事業に焦点を当て,コミックのビジネスシステムがどのように誕生し,どのような機能を有するのかを解明することである。日本におけるコミック事業の歴史および代表的な少年コミック雑誌編集部の事例から明らかになったのは,日本のコミック事業におけるビジネスシステムが2つの仕組みから成り立っていることである。1つめの「マンガ家の発掘・育成の仕組み」は,誌上で実施される作品公募や編集部への作品の持ち込みによって,誰にでもマンガ家になれる機会を与えて潜在的マンガ家の裾野を広げるという機能をもっていた。2つめの「競争による選別・淘汰の仕組み」は,コミック誌上で行われる人気投票すなわち読者の評価にもとづいて,マンガ家を競争させ,質の高い作品を生み出していた。また,これらの仕組みには,コミック雑誌と読者の双方向関係における,読者の評価や読者から生まれるマンガ家志望者の存在が欠かせないことも解明された。
著者
齊藤 文夫
出版者
追手門学院大学
雑誌
追手門学院大学人間学部紀要 (ISSN:13418084)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.15-34, 1997-07-01

性非行 / 事例研究 / 心理査定 / TAT
著者
山西 良典 鍵田 里沙子 西原 陽子 福本 淳一
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.29-35, 2015 (Released:2015-02-10)
参考文献数
19

This paper proposes a method to detect attractive phrases from musical lyrics. The method considers not only acoustic but also lyrical features which attract human attention. Through the interview on impression for lyrics, we have found that “uniqueness of co-occurred terms” and “repetition” significantly influence human attraction. Therefore, we modeled these linguistic expressions as mathematical features. The proposed method detected attractive phrases using support vector machine with the modeled features. The results of the model evaluation experiments showed the 69% accuracy and 86% precision. Moreover, the results were compared and discussed with the key sentences detected by the existing summarization methods. As the result of comparison, it is confirmed that the proposed method detected attractive phrases more accurate than the existing summarization methods.
著者
有本 昂平 渡邉 英徳
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.J88-J93, 2016 (Released:2016-03-25)
参考文献数
8

本研究の目的は,国内企業の取引ネットワークの可視化である.そこで,取引ネットワークにおける階層ごとにアイコンの高度を段階的に変化させ,デジタルアース上にプロットする.さらに,地域内・地域間における取引をそれぞれ別の色で表現する.このビジュアライゼーションから,日本国内における企業間取引のあらましを読み取り,産業集積の度合を観察することができた.したがって,著者らの手法により,取引ネットワークの可視化ができることがわかった.
著者
藤堂 眞治
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.275-282, 2015-04-05

スーパーコンピュータやワークステーションが計算物理における「実験装置」であるとすると,シミュレーションソフトウェア(プログラム)はそれらを使いこなすための「実験技術」であると言える.将来の研究成果につながる「技術」は,個々の研究者あるいは研究グループが,門外不出のものとして日々磨きあげていくべきである.このような立場に立つと,シミュレーションに使うプログラムは,これまでの経験と知識に基づき「速く」て「信頼できる」ものを自分で一から作るのが当然であり,できあいをブラックボックスとして使うのは研究として認められないということになろう.コンピュータの計算速度は年とともに指数関数的に伸びている.シミュレーションの手法もそれ以上の速さで進化している.例えば,量子磁性,高温超伝導など,電子相関の強い量子多体系に対する代表的な手法の一つである量子モンテカルロ法は,状態更新のアルゴリズムにおいて,近年,多くの本質的な改善がなされ,バイアスのない最も精密な数値解析手法となっている.それに伴い,アルゴリズムはますます複雑化している.プログラム開発や並列化,チューニングのためのコストは増加し,研究者の「専門化・固定化」も大きな問題となっている.その一方で,実験家の間でも,日常的なツールとしてのシミュレーションの需要が高まっている.このような状況のもと,計算機実験の技術開発や整備は,もはや個人の素養に頼るだけではなく,コミュニティー全体で取り組み共有していくべき段階にきているのは明らかである.本稿では,計算物性物理,量子統計物理分野におけるそのような取り組みの一つである「ALPS」を紹介する.ALPS(Algorithms and Libraries for Physics Simulations)は,量子スピン系,電子系など強相関量子多体系の有効模型のシミュレーションのためのオープンソースソフトウェアの開発を行う国際共同プロジェクトである.ALPSでは,主に,量子統計物理分野のシミュレーションの共通基盤となるライブラリやデータ解析ツールを開発すると同時に,最新のアルゴリズムに基づく質の高いアプリケーションプログラムの提供を目指している.ALPSには,厳密対角化,古典・量子モンテカルロ法,密度行列くりこみ群,動的平均場近似など,量子多体系の有効模型に対する標準的あるいは先進的なアルゴリズムを用いたアプリケーションが用意されており,興味ある模型の特性や計算したい物理量に応じて,最適なアプリケーションを選ぶことができる.ALPSのようなコミュニティーコードを用いることで,計算物理の専門家でなくとも,様々な模型について手軽にシミュレーションを始めることができる.それだけでなく,新たなプログラムやアルゴリズムを開発する際のリファレンスコードとして,あるいは計算物理教育の題材,シミュレーション結果の共有やアーカイブ化のためのツールとしての活用など,ハイエンドのスーパーコンピュータによる大規模シミュレーションだけでなく,計算物理の裾野を広げていくためにも,このようなコミュニティーコードの整備・知識共有は,今後ますます重要となっていくに違いない.
著者
向山 武彦 平川 直弘 高橋 博 滝塚 貴和 木村 逸郎 小川 徹 小寺 正俊 安俊 弘 若林 利男 原田 秀郎 井上 正 高木 直行
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.159-193, 1995-03-30 (Released:2010-03-08)
参考文献数
140
被引用文献数
2

原子力開発の当初から高レベル廃棄物は重要問題の1つであったが,原子力利用の進展に伴いその重要性はますます大きく厳しいものとなってきている。現在,地層処分が多くの国で既定の処分方法となっているが,より優れた方法を目指して消滅処理の研究が進んでいる。特に最近,この方面の研究が盛んになり,しかも日本がその重要な牽引車の役割を担っている。本「特集」では,このような事情に鑑み,消滅処理技術の解説,関連技術の現状,研究開発の経緯,オメガ計画,国際動向,国内における技術開発の現状,地層処分からみた位置付けについて,一般の読者を対象に解説して頂いた。
著者
鳥 正幸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-21, 2016 (Released:2016-04-20)
参考文献数
14

術後合併症は,術前―術中―術後管理の連動した要因により発生する。標準手術から超高難度進行甲状腺癌にいたるまで,根治性を求めつつ安全・確実性を確立するために下記(A)~(C)を3本柱としたstrategyを構築した。その結果,過去8年間の手術関連死亡=在院死亡0,合併症発生率0.33%を達成した。(A)術中の安全性を担保し術後合併症を予防する手術手技の熟成:リンパ漏,低Ca血症,反回神経損傷は手術テクニックで克服する。内視鏡手術・高度進行症例はオリジナルな低侵襲化手技と術式criteriaを考案した。(B)術前術後管理・特に高難度手術における周術期チーム:因果関係を分析し致命的な後出血・喉頭浮腫を予防するシステムづくり。多科・多職種横断的「周術期チーム」で全人的医療。(C)効率的な診療とレジデント教育:クリニカルパスの効用と医師・看護師教育の徹底。本稿では上記について概説する。