著者
永井 均
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.27-47, 1981-01

第1節. 問題設定第2節. ふたつの立場第3節. 第一の思考実験第4節. 第二の思考実験第5節. 私の心とひとの心第6節. 第三の思考実験(実質排去)I think that the problem of other minds arises already in the formation of my-self: the contrast between my mind and other minds is reduced to the contrast between my mind as it self and my mind as a person's mind. I have tried to explain this view in this paper which is divided into six sections. In §1 the problem is posed in a general way. In §2 phenomenological points of view and linguistic points of view are compared. The latter look upon the problem as a matter of grammar while the former look upon it as a matter of fact. In §3 the supposition that others have no minds as a matter , of fact is discussed. In this section I conclude that it is actually and grammatically possible though it is contradictory to our form of life. In §4 the supposition that I myself have no mind is examined. And here I come to the conclusion that it is absolutely impssible even if it is grammatically possible. In §5 the difference between the concept of human mind and that of my mind is made clear through the contrast between mind as faculty of differentiation and mind as private substance. In §6 the supposition of the reduction of my private substance is considered. In conclusion I have to say once again what I mentioned at the outset of this summary.
著者
岡本 絵莉
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

本研究の目的は、日本の研究型大学における研究コミュニティの多様性に着目したモデル化とそれぞれのモデルに即した支援策の提示である。具体的な成果として、多様なコミュニティに関するケース教材の作成を目指して研究を実施した。本研究の社会的背景としては、大学における研究支援(Research Administration)の重要性が高まっていることがある。日本の研究型大学は、最先端の研究活動だけでなく、それにもとづく教育、社会貢献など、時には相反するように見える多様なミッションを担っている。これらの実質的な担い手は、多様な研究コミュニティである。本研究では、この研究コミュニティという単位に着目し、その多様性を踏まえた支援策として、ケース教材の作成を目指した。本研究の方法としては、主に教育学の分野で発展してきたコミュニティ理論にもとづき、大学の研究コミュニティに対するインタビュー調査を企画・実施した。主な調査対象となった工学系分野の大学研究室に関しては、過去に研究代表者が実施した質問紙調査のデータを再分析し、活用した。具体的なインタビュー調査は、再抽出した研究室に依頼し、それぞれの構成員(教員・学生)に対して、それぞれ30分~1時間実施した。実施したインタビュー調査を通じて、研究コミュニティを規定する要因(分野、資金、強調されるミッション、構成員の特性、存続期間等)が明らかになった。また、経営学の分野で実務者の教育目的で作成・活用されてきたケース教材の完成に向けて、必要な質的データを取得することができた。
著者
馬場 真哉 松石 隆
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.2-9, 2015 (Released:2015-02-02)
参考文献数
23
被引用文献数
4

本研究では,ランダムフォレストを用いたサンマ来遊量予測モデルを作成し,その予測精度をモンテカルロリサンプリングにより評価した。応答変数はサンマ来遊資源量指数を 3 カテゴリに分けたものである。説明変数は 1972-2011 年の海洋環境など 22 項目 186 種類を使用した。変数選択の結果,4 種の変数のみが説明変数として選ばれ,説明変数の圧縮が可能となった。予測の的中率はおよそ 62% となり,現状の予測精度をやや上回った。
著者
平石 典子
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
no.18, pp.33-50, 2001

明治後期の日本において,「女学生」は「女子学生」という字義上の意味以上のものを人々に訴えかける存在であった。本論では,高等女学校の成立過程,女学生を主人公にした文学作品の分析などを通して,「女学生神話」がどのようにして成立していったのかを追っている。明治初期の女学生は,ネガティブにとらえられることが多かったが,明治三十年代に入ると,良妻賢母主義に女子教育の照準が定まったことも手伝って,高等女学校は乱立の時代を迎える。その結果,彼女たちは都市における西洋風の美の代名詞のように扱われることとなる。しかし,その一方で,「西洋風」の「恋愛」への憧れと無用心な下宿環境は,彼女たちが「性的に奔放」だというレッテルを貼る。この仮説は,新聞小説やスキャンダル記事によって強化され,「西洋的な美しさを持ち,積極的で性的にも奔放」な存在としての「女学生神話」が確立するのである。
著者
白鳥 成彦 田島 悠史 田尻 慎太郎
出版者
嘉悦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は日々変化し蓄積していく学生データと大学における教学データを確率的に関連付けたモデルを構築し、大学生の退学を防止する為に行う教育サービスの意思決定を支援することである。平成29年度は平成28年度に作成した学生モデルの再構築と教学サービスとの統合、さらに学会等における成果の発表を行った。(1)学生モデルの再構築では平成28年度に行った一次成果の報告におけるフィードバックを経て学生モデルの再構築を行った。具体的には中退に関連する変数を2群:入学時の変数と入学後の変数に分け、その統合によって学生の状態を推測していくモデルにした。結果としてマクロ的な変数のみで動的な動きを表現できなかった前年度のモデルに対して、学期ごとの動きを表現することができるようになり、より中退までの具体的な動きを扱うことができるようになった。次に(2)学生モデルを用いて教学サービスとの統合を行った。具体的には作成した学生モデルを教職員に公開し、その学生ごとに適した形の教学サービスはどのようなものかを考えるワークショップを5回行った。学生モデルから出される中退・卒業までのパターンごとに適切な教学サービスにどのようなものがあるのかを導出した。学生パターンごとに教員が行うサービス、職員が行うサービス、カウンセラーが行うサービスに分け、それぞれのタイプごとにいつ、どのサービスを行うことが適切なのかを導出した。最後に(3)以上の学生モデル、教学サービスの統合部分を学会発表論文としてまとめ、発表を行った。
著者
野口 悟
出版者
高知大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

国公私立525大学を対象に外部資金獲得に対しての研究支援事務サポートの実態調査をアンケート形式で実施し、252大学から回答を得た(回収率48%)。本調査では、修士以上の学位を持つ職員の研究支援部門への配置状況、URA(ユニバーシティ・リサーチ星アドミニストレーター)の配置、事務部門の一元化、特徴的な取組事例等についても研究支援事務サポートの新たな展開に繋げることを目的として行うた。当初、私が最も期待していた修士以上の学位を有する職員の積極的な採用や異動を行って事務サポートを強化している大学は、ほとんどなく(私学1大学/252大学)、現状では通常の事務職員の人事異動の一環で異動が行われており、専門的なスキルや知識の継承に支障をきたしていた。この現状を打破する施策として、平成23年度以降URA職(教職中間職の専門職)が注目されており、URA職の設置状況についても調査した。URA類似職も含めた設置割合は12%(30大学/250大学)であったが、設置していない220大学に対してURA職の必要性について尋ねると約半数の98大学が必要と答えた。今後、我が国での研究支援の在り方がURAの活躍によって変化してくることが推察される。また、各大学の特徴的な取り組みとしては、「ブラッシュアップ制度」「インセンティブ制度」が最も多く、その他には「若手への研究費の配分」「独自の研究業績DB開発」、経費のかからない対策としては「職員による各研究室訪問による情報収集」や「ワンストップサービスの実現」といった取組があった。なお、この調査結果は報告書としてまとめており、希望があれば配布することとし、全国の大学における外部資金獲得サポート業務の新たな展開の一助になると考えている。(jm-snoguchi@kochi-u.ac.jpへ連絡していただければ配布します)(調査協力大学へは別途配布)
著者
LOPEZ Maria Claudia MUNRO Alistair TARAZONA-GOMEZ Marcela
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.15-10, 2015-07

A recurring and puzzling pattern with experiments on intra-household behaviour is the common failure of couples to attain the cooperative solution. Using married couples from a low income area of Bogota, Colombia we conduct an experiment that raises the salience of the family vis-à-vis outsiders. In this experiment husbands and wives play a repeated voluntary contribution game. At the same time each participant plays an identical game with one stranger in the same session. When investments to the common pools are made from separate and non-fungible budgets, most subjects contribute more to the household pool than the stranger pool, but rarely contribute everything to the household even after repetition and opportunities for learning. Efficiency is not obtained. However, when subjects make contributions to the two games from a single budget many individuals converge rapidly on a strategy of investing everything in the household pool and contributing little to the pool with a stranger. Overall the amount invested in some pool rises. Our results are in line with games played with individuals in which in-group cooperation is higher when membership of the group is more salient. They suggest that strengthening family identity may raise intrahousehold cooperation, but at the expense of cooperation of interhousehold cooperation.
著者
淺井 良亮
出版者
佛教大学
雑誌
鷹陵史学 (ISSN:0386331X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.161-172, 2010-09-25
著者
西村 明
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.369-391, 2012-09-30

本稿では、永井隆の読み直しの作業を行う。高橋眞司による浦上燔祭説批判と自説を踏まえながら、彼の原爆死のとらえ方の重要な契機として従軍体験と職業被曝に注目する。七二回の戦闘を経験し、死者とのあいだに決定的な差異がなくなる生死の境界線から復員した永井は、そうした偶有性を「天主の摂理」としてカトリシズムの枠内でとらえた。しかし他方で、「犬死に」となることを避けるために、ある目的の達成に向けられた死に方に価値を見いだすような戦時状況に基づいた理解も見られる。さらに、放射線医学への従事から白血病を発症し余命宣告を受けるが、科学的な「殉教」の文脈で自らの死を受け止めている。それが、原爆死者の犠牲を是認することにも道を開いている。最後に、浦上燔祭説として批判されたものの内実には、死者の霊魂をしずめることを通して、生死の境界を峻別し、生き残った者たちを再建・復興へと導く意志が認められることを論じている。
著者
鬼田 崇作
出版者
広島大学外国語教育研究センター
雑誌
広島外国語教育研究 (ISSN:13470892)
巻号頁・発行日
no.18, pp.39-54, 2015

This paper reports the results of 'Communication IIA' writing courses taught by the present author. The courses tried to foster students' competence of paragraph writing in English by using peer feedback activities. In the first few weeks, students learned some basic rules concerning English paragraph writing, such as punctuation, topic sentences, supporting sentences, and concluding sentences. Then they learned how writing styles vary depending on topics. They learned one style each week and were assigned oneparagraph writing activity every week. In the next class, they engaged in the peer feedback activities in pairs. They were asked to rate the appropriateness of the target sentences and supporting sentences on a five-point scale. They were also asked to check the appropriateness of English usage, and were asked to make comments. The peer feedback activities lasted for eight weeks. The results of the courses were analyzed in terms of pre- and post- student writings administered at the second and 15th weeks, and students' responses to questionnaires. The results showed that most students' writing products improved, and their perceptions of the course were mostly positive.
著者
田口 和夫
出版者
文教大学大学院言語文化研究科付属言語文化研究所
雑誌
言語と文化 (ISSN:09147977)
巻号頁・発行日
no.14, pp.150-137, 2001

元興寺 (飛鳥寺) の鬼は『日本霊異記』の道場法師の説話に登場して以来、有名な存在である。一方、元興寺の夜叉も『日本感霊録』・『今昔物語集』などに記録され、これも有名である。この二つは後に混同され、鬼に統一されて伝説化してゆく。その説話の延長上に「元興寺 (がごぜ) に噛ませよ」という諺や武悪面を使う狂言の演出が現れる。またその鬼と加賀前田家狂言〈鬼不切〉の創作の関係について述べる。The oni of Gango Temple (or Asuka Temple) was first recorded in a Buddhist priest's moral tale in the Nihon ryoiki, thereafter becoming famous in the history of Japanese literature. The yasha of Gango Temple, recorded in both the Nihon kanreiroku and Kojaku monogatari also became famous. Later the tales of the two were combined to form the legend of The Oni of Gango Temple. Usage of the proverb Gagoze ni kamaseyo his means If you don't stop crying, the boogie-men will get you appears in the performances of the kyogen plays Shimizu and Nukegara. (Note: 'Gagoze' is an alternative pronunciation of Gango Temple.) Furthermore, Oni kirazu, a kyogen play of the Kaga Maeda family created from the oni tale, is explored.
著者
田崎 晴明
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.797-804, 2008-10-05

マクロな系の平衡状態に関する普遍的な体系である熱力学と統計力学を非平衡定常系にまで拡張するという(まったく未解決の)課題について,問題意識と現状を解説する.特に,過剰熱の概念,「ゆらぎの定理」,確率分布の表現,そして,拡張クラウジウス関係式といった,非平衡定常系の物理学の鍵になりうる結果について,基本的なアイディアと意義を述べる.この解説では,非平衡物理の「業界用語」を持ちださず,古典力学と平衡統計力学の初歩的な知識だけを使って,ミクロな時間反転対称性がいかにマクロな非平衡物理と関わりうるかを描き出したい.
著者
宮田 彬 池田 八果穂 長谷川 英男 藤崎 晶子 揚 海星
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.27-44, 2002-01-10
参考文献数
6

日本鱗翅学会自然保護委員会の提唱を受け入れ,1998年から2000年の3年間,大分市富士見ヶ丘18-16の宮田宅の庭で継続したチョウ観察の記録を再検討した.3年間に合計50種のチョウが記録されたので,それらのチョウの記録時の状況と個体数の多さの程度を,(1)年間の延べ出現日数と(2)半月毎の個体数の多さを表す3段階評価法の二通りの方法で示した(第1表).その結果,今回著者らが採用した方法は,ルート・センサス法と同様チョウのモニターリングの有効な一方法として推奨出来るという結論に達した.この方法では一定の観察場所として個人の庭とその庭から観察可能な数メートルほどの外側を含む地域を決めた.しかし一定の観察時間は設けず,たまたま在宅し,庭へ出たりあるいは庭を見たときに見かけたチョウの記録を随時取ることにした.もちろんチョウを見た時間,その時の天候,個体数,チョウは何をしていたか等を参考のため記録しておく.通常,サラリーマンの場合,観察時間は朝夕の短い時間と週末の休日,祭日だけに限定される.その休日も様々の事情で必ずしも在宅出来るとは限らない.忙しい時は帰宅時間も遅いし,休日も一日中家を空けることが多い.しかしそのような状態でも年間を通して記録を継続した.3年間の記録を調べて見ると,確かに休日にチョウを見かける機会が圧倒的に多く,もし休日がまったくないとすれば記録される種類数は著しく減少することが予想される.とは言えどんなに忙しい身でも休日の朝は少し遅く外出する場合が多く,午後も少し早く帰宅することが多い.そこで休日の場合,どの時間帯にもっともチョウが多いか検討してみた.夏の観察では,7-12時の午前中にその日記録されたチョウの70-100%が飛来した.しかも8時から10時までの2時間に多くの種類が現れるピークがあった.そして午後の暑い時間帯はチョウの個体数が著しく減少する中休みがあり,夕方,4時から4時半に再び多くのチョウが飛来する時間があることが分かった.このようなことを少し考慮して,休日の外出を朝10時少し前まで遅らせる事が出来るならば,夏のチョウはだいたい漏らさず記録可能であることが分かった.また午後5時までに帰宅して観察を再開すればさらにいくつかの種が追加されるかも知れない.以上のようなことを少し意識して休日の観察可能な時間を設定するならば,昼間別の場所で働いている多忙な人でも庭のチョウの観察運動に参加し重要な役割を果たすことができる.むしろ断片的な記録を全国的に集積することによって見えてくることがあるに違いないと確信した.チョウのモニターリングに多くの人が参加することを期待したい.