著者
山地 一禎 片岡 俊幸 行木 孝夫 曽根原 登
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.240-248, 2008 (Released:2008-11-15)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

数学や物理学などの分野では,プレプリントの公開により研究成果の先取権が確保される.現在では,印刷物の出版と共に,電子ファイルをインターネット上で公開する方式が主流となっている.今後,電子ファイルのみの公開となった場合,プレプリントの存在と非改ざん性が担保される内容証明が重要になる.本研究では,ボーンディジタル時代におけるこうした問題に対して,電子署名とタイムスタンプから構成される長期署名を適用し,プレプリントをよりセキュアに流通できる学術コンテンツの内容証明システムを開発した.また,長期署名付きコンテンツを入手したユーザが手軽に内容検証をできるように,長期署名検証サーバの構築を行った.
著者
平澤 康孝 河野 千代子 山田 嘉仁 前村 啓太 竹島 英之 槇田 広佑 山口 陽子 一色 琢磨 鈴木 未佳 山口 哲生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.1457-1459, 2015-07-10 (Released:2016-07-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

症例1は,78歳男性.インフルエンザワクチン接種3日後に発熱,胸部CTにて両下葉背側に多発浸潤影を認め,同ワクチンによる薬剤性肺障害が疑われた.集学的治療を行うも,第32病日に死亡.症例2は,68歳男性.特発性肺線維症にて無治療経過観察中であったが,同ワクチン接種3日後に発熱,胸部CTにてすりガラス影の出現を認め,接種契機の間質性肺炎急性増悪が疑われた.治療を行うも,最終的にニューモシスチス肺炎にて死亡.インフルエンザワクチン接種による肺障害の可能性に注意を要すると考えられた.
著者
東京都オリンピック・パラリンピック準備局
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.165, pp.18-29, 2016 (Released:2018-12-26)

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催,さらに外国人旅行者の急増を背景に,外国人の日本滞在中の言葉やコミュニケーションでの障害をなくし,「言葉のバリア」がなくなることを目指して,官民一体の「2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会」が設立された。同協議会では,「交通分科会」「道路分科会」「観光・サービス分科会」の3つの分科会を設け,外国人旅行者の受け入れ環境整備について調査・検討を行い,さまざまな取組を行ってきている。ここでの取組が,東京オリンピック・パラリンピック開催後も生かされて,レガシーとして残り,「言葉のバリアフリー」が実現されることを願っている。
著者
櫻井 義秀
出版者
宗教と社会学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.97-109, 2006-06

「カルト」を問題化する社会とは―第1回ICSA(国際カルト研究学会)マドリッド大会報告―
著者
小泉 政利 玉岡 賀津雄
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.125, pp.173-190, 2004-03-25 (Released:2007-10-23)
参考文献数
35

本論文では,述語の項構造と文の統語構造との対応関係の研究の一環として行った日本語二重目的語構文の語順に関する実験結果を報告した.日本語の二重目的語文の基本語順に関して下記の3種類の仮説が提案されており,論争になっている,仮説1:「がにを」が基本語順である.仮説2:「がにを」も「がをに」も共に基本語順である.仮説3:動詞によって「がにを」が基本語順のもの(見せるタイプ)と「がをに」が基本語順のもの(渡すタイプ)とがある.これらの仮説の妥当性を検証するために,文正誤判断課題を用いて,文の読み時間(反応時間)を測定する実験を行った.その結果,見せるタイプの動詞を使った文も渡すタイプの動詞を使った文も共に,「がにを」語順の文のほうが「がをに」語順の文よりも反応時間が有意に短かった.この結果は,二重目的語文は動詞のタイプに関わらず「がにを」が基本語順であることを示唆しており,仮説1が支持された.
著者
脇坂 昭弘
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.24-29, 2011 (Released:2011-04-12)
参考文献数
11

When mist particles are generated from ethanol-water mixtures by ultrasonic atomization at a low temperature, ethanol is concentrated in the atomized mist particles. This paper explains the mechanisms of ethanol thickning in atomized droplets based on the cluster-level structures analysed by the mass spectrometry. When ultrasonic atomization of equimolar ethanol-water mixture is carried out at a lower temperature, e.g. 10°C, small clusters composed of only ethanol molecules can transfer from the liquid phase to the gas phase, while the large clusters consisting of both ethanol and water molecules cannot move across the interface. This leads to the thickning of ethanol in the atomized mist particles. The cluster-level structures of ethanol-water mixture, which varies with the ethanol concentration and the liquid temperature, directly determines the characteristics of ultrasonic atomization of ethanol aqueous solution.
著者
佐野 文哉
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.94-109, 2023-09-30 (Released:2023-10-31)
参考文献数
33

本稿の目的は,フィジー手話をめぐる歴史と現代的な変化を「統治性」の観点から分析し,諸権力の作用のなかで,いかに/いかなる言語や主体が形成されているのかを明らかにすることである.「統治」とは,人びとの「ふるまいを導く」なにかであり,それは特定の知識や主体,対象を形成する力として作用する.この統治性の観点からフィジーの手話やろう者コミュニティの形成史を概観すると,そこにはさまざまな人や団体,言説が関与しており,そのなかで,手話やろう者のあり方が動態的に変化してきたことがわかる.また近年では,海外渡航経験をもつ若いろう者が中心となって,フィジー手話の公用語化に向けた取り組みを行なっており,その結果,主に公的な領域で,フィジー手話の単一言語化や国家イデオロギーとの接合などといった変化が起きている.本稿では,そうした状況が,いかなる統治的な諸権力の作用のもとで生じているのかを民族誌的なデータにもとづいて詳細に検討する.
著者
能勢 晶 朝日 輝 小路 博志
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.363-376, 2019 (Released:2023-10-27)
参考文献数
36
被引用文献数
2

①市販の連続蒸留式焼酎の1H NMRスペクトルを25℃と5℃で測定した結果,水分子とエタノール分子のピークが,25%(V/V)エタノール溶液と同様に両温度において別々に存在する焼酎と,25℃では二つのピークが一体化し5℃でのみ分離している焼酎,さらに両方の温度において二つのピークが一体化している焼酎が存在しており,この両方の温度においてピークが一体化している焼酎は水-エタノールの水素結合が全体として他の焼酎よりも強くなっていることも分かった。②①において25℃と5℃の両温度で水分子とエタノール分子のピークが一体化し,水-エタノール分子間相互作用が最も促進されている焼酎は,他の焼酎に比べ炭酸水素イオン含量が高く,ナトリウム,カルシウム,マグネシウムなども多く含まれていた。③炭酸水素イオンには,5℃において水-エタノールのプロトン交換を促進し,同時に水素結合構造を発達させる力があることがわかった。このことは1H NMRスペクトルの半値幅の変化からも確認することができた。この効果は他のNa塩,Ca塩,Mg塩には認められなかった。炭酸水素イオンの存在が,焼酎において水-エタノール相互作用を促進し,水素結合構造を強くしている主な要因であると考えることが出来た。④官能評価の結果,炭酸水素ナトリウムが15%(V/V)のエタノール水溶液に存在することで「甘味」を強く感じ,「アルコール刺激」が低減することが示唆された。⑤割水用水に含まれていると考えられる炭酸水素イオンは,連続式蒸留焼酎の水-エタノール相互作用の強さに影響を与え,アルコール刺激の低減という効果を持っていることが示唆された。
著者
田原 晃
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.205-211, 2011-06-20 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

鉄鋼材料を健全に使用するためには,使用される環境の腐食性評価が重要である。腐食性評価には対象材料の実暴露試験による腐食速度の測定と使用環境の環境因子から推定する二つの方法がある。実暴露による評価は高精度ではあるが長期間を有し,一方,環境因子からの推定では比較的短期間で評価が可能であるが精度が劣るという特徴を有している。実暴露試験では,近年,遮へい暴露試験が重視されており,飛来塩分の多い環境では直接暴露試験の数倍の腐食速度が観察される場合もある。今後,正確な大気環境の腐食性評価を行うためには,新たな暴露試験も必要であるが,従来の腐食データのデータベース化も重要なカギを握っており,NIMSでもこれらの課題に取り組んでいるところである。
著者
椎 崇 井口 巴樹 黒田 明平 鈴木 真理香 島﨑 珠美 三巻 祥浩
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.24-30, 2023-05-30 (Released:2023-05-31)
参考文献数
10

Objective: Sennosides A and B, which are dianthrone glycosides contained in Rhubarb and Senna Leaf, exhibit laxative effect. Although a number of over-the-counter (OTC) drugs used as laxatives contain Rhubarb or Rhubarb and Senna Leaf, the total amounts of sennosides A and B are not mentioned in the package insert. To determine the total amounts of sennosides A and B in OTC drugs containing Rhubarb or Rhubarb and Senna Leaf, quantitative analyses of sennosides A and B were performed for 24 OTC drugs.Methods: Sennosides A and B were extracted from 24 OTC drugs and quantitatively analyzed by high-performance liquid chromatography. Statistical analyses were carried out by a one-way analysis of variance followed by Dunnett's test or Tukey's test.Results: The OTC drugs contained sennosides A and B in the range of 1.5-10 mg in the minimum daily dosage and in the range of 2.7-17 mg in the maximum daily dosage. In 11 of the OTC drugs (Products Nos. 1-5, 11, 12, and 15-18), the maximum daily dosage contained almost equal or higher amounts of sennosides A and B compared to that in a tablet of the prescription medicine Pursennid® 12 mg. Furthermore, the amounts of sennosides A and B in the maximum daily dosage were significantly higher in products Nos. 1 and 11 and lower in products Nos. 8-10, 14, and 20-24 compared to those of a tablet of Pursennid® 12 mg.Conclusion: Although some OTC drugs have the same Rhubarb content, the total amounts of sennosides A and B can vary. Thus,there is no correlation between the Rhubarb content and total amounts of sennosides A and B. This is because of the inconsistent quality of Rhubarb and/or the differences in the manufacturing methods of the OTC drugs containing Rhubarb. Because the total amounts of sennosides A and B cannot be estimated based on the Rhubarb content, a constipated patient should start taking an OTC drug containing Rhubarb at the minimum daily dosage. It is also recommended that the total amounts of sennosides A and B are mentioned in the package insert of OTC drugs containing Rhubarb or Rhubarb and Senna Leaf.
著者
伊藤 剛
出版者
明治大学社会科学研究所
雑誌
明治大学社会科学研究所紀要 (ISSN:03895971)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.33-48, 2023-10-20 (Released:2023-10-24)

本稿は、日米中関係とアジア冷戦を構造的にとらえる試みを行う。東アジアの冷戦はヨーロッパのそれとは異なる特徴を有していたし、その始まりと終わりの時期も明確でない。安全保障を提供しているアメリカによるコミットメントの大小によっても、アジアの同盟国は対応の仕方が異なる。 安全保障政策の二本柱は、軍事費増大等の「自分で自分を強くする」こと、そして「信頼できる同盟国を探す」の二つである。アジアにおけるアメリカの同盟国は、一方で自国の軍事費を即座に増大することもできず、他方でアメリカとの関係も、同盟国同士の関係も全て順調というわけではない状況であった。このようなアジアの冷戦構造が日本をはじめとする各国にどのような影響を及ぼしていたかを検証する。 それぞれの章で論じることは、以下の通り。第一章で日中をバランスさせるアメリカの外交政策、第二章でアジア冷戦の特徴、第三章で韓国、日本、台湾、フィリピンといった「島国」に安全保障を提供したアメリカの利益、第四章で同盟に伴って生じる「恐怖」の種類は一様でないこと、第五章で同盟間に生じる信頼と、軍事的目的より広範な意義を持つ政治的意義、である。総じて、「歴史とはドラマ」とは異なり、一定の構造的制約・影響を受けながら展開しているという視点を持ち込みたい。
著者
石川 耕 横手 幸太郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.10, pp.2691-2698, 2013-10-10 (Released:2014-10-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2

肥満は持続した過栄養摂取により脂肪組織が肥大した状態である.肥大した脂肪組織機能の異常はインスリン抵抗性を惹起し,代償機構が破綻した時にメタボリックシンドロームのような代謝異常が顕在化する.脂肪細胞機能異常とインスリン抵抗性を引き起こす機序としては1.末梢での脂肪酸の影響,2.脂肪組織における小胞体ストレス,3.酸化ストレス,4.アディポカインとマクロファージ,5.脂肪組織における低酸素,6.脂肪組織の線維化であると考えられている.過栄養により血中脂肪酸が上昇し脂肪細胞以外にも脂肪蓄積を促進し,小胞体ストレス,酸化ストレスが出現し,インスリンシグナルが低下する.肥大化し,線維化した脂肪組織には低酸素状態を引き起こしマクロファージが浸潤し炎症性サイトカインが発現する.これらの要素が相互に影響することによって,インスリン抵抗性が促進される.
著者
木澤 新吾 灰塚 正次 田所 浩
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.70, no.699, pp.3339-3346, 2004-11-25 (Released:2011-03-04)
参考文献数
16

The friction loss and noise of gears has been studied for along time, but it has not yet been made clear. Moreover, JIS gear accuracy class is not necessarily linked with the performance operation of gears, and hence it is important to find the relations between the tooth form accuracy and performance of gears. In the present study, we carried out the experiments to obtain the influence of tooth profile error on the friction loss and noise of spur gears. Nine kinds of tooth profile error with grinding with the similar error amount were used and also we prepared a barrel polished gear which had tip relief by grind. Test results showed that tooth profile error shapes affect the friction loss and noise very much even if the amount of error is the same. Further, it was found that the friction loss and noise have a certain correlation with each other and a barrel polishing showed the lowest friction loss and noise.