著者
青木 秀男 大倉 祐二 山口 恵子 結城 翼 渡辺 拓也
出版者
特定非営利活動法人社会理論・動態研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

山谷・釜ヶ崎の日雇労働者・雑業就業者・福祉受給者・路上生活者の労働・居住・生活が、ネオリベ経済による労働市場の変容、ジェントリフィケーションによる空間構造の変容の中でどのように変容しているか、またそれらの変容がコロナ禍の中でどのように加速しているかについて見る。さらにそれらが山谷と釜ヶ崎でどのように異なるかについて比較を行う。これらにより、日本の都市底辺層の階層構造と変容の動向を探り、そのうえで都市底辺層研究の理論的更新めざす。この研究は、研究代表者・分担者が別のプロジェクトで行っているグローバル都市の底辺層の国際比較研究に連続するものである。
著者
富永 篤 西川 完途 中田 友明 島田 知彦
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

アカハライモリ5遺伝集団の分類学的関係の解明のため、集団遺伝学的解析に加えて、飼育下での配偶行動の観察と比較、性フェロモンの地理的変異の把握を行った。また、各系統の潜在的な生息適地を推定した。その結果、北日本と中部日本系統、中部日本と西日本系統は交雑帯を形成しつつも独自性を維持していること、北日本系統の東北集団と関東集団間には遺伝的にも形態的にも緩やかなクライン状の変異がみられることを確認した。系統間の分布境界では境界を挟んで配偶行動と性フェロモンの組成に明瞭な地理的変異がみられることを確認した。生息適地解析では、現在の交雑の実態と各系統の潜在的生息適地に関連がありそうであることを確認した。
著者
渡邉 誠 土谷 昌広 萩原 嘉廣 水野 康
出版者
東北福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

睡眠は心身の健康を維持する上で非常に重要な基盤であり,睡眠障害は精神および身体疾患を総じて増悪させる傾向にある.口腔環境においても同様であり,睡眠障害患者においては歯周疾患の高い罹患率が報告されている.しかしながら,これらの因果関係については不明な点が多い.我々は,大規模な被災者健康調査の結果から,歯周疾患と不眠症の罹患とが強く相関することを示した.それらの因果関係については不明であるが,本研究で介護施設において実施された,専門的口腔ケアの介入が口腔衛生状態の改善・維持が睡眠の質的改善に直結することを示唆したことから,睡眠障害患者への歯科的介入の有効性が示されたと考えられる.
著者
藤本 一男
出版者
作新学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

データの幾何学的配置を分析の基礎におく「幾何学的データ解析」という分析フレームワークを用いて、社会調査におけるカテゴリカルデ ータ分析の方法を構築する。その際、以下の問いにGDAを用いることで答えることを示す。・「取得したデータの構造を破壊しない分析は可能か」カテゴリカル・データを分析するためには、数量化が必要 となるが、どうすれば、データ構造を破壊せずに可能か。・「観察データに対して変数の連関性を評価することは可能か」実験が 可能な場合は、実験計画法として因果分析が可能である。だが、社会調査データでは、この前提は成立しない。この観察データに対して「効果」の評価を行なうことはいかに可能か。
著者
前田 智司 千葉 健史 浦丸 直人
出版者
日本薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

母乳中のセロトニン(5-HT)およびノルアドレナリン(NA)の母乳産生および乳児に対する役割の解明を行った。母乳中の5-HTの経時的変動についての検討では、初乳、出産後1ヵ月、3ヵ月では母乳中の5-HTの含有量にほぼ同程度であった。母乳産生を担う乳腺上皮細胞は、NAを自ら合成し、母乳中へ分泌していることを明らかにした。さらに、授乳期にストレスを受けたマウスでは、母乳のNAが上昇し、β-カゼインを減少させることが分かった。これらの結果から母乳中に含まれている生理活性物質は母乳産生および乳児の成長に関与している可能性が示唆された。
著者
北澤 茂良 桐山 伸也 松本 祐二
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

人工内耳装用者(CIR)のための音楽聴取支援装置として個人ごとの移調と速度調整の特性を学習獲得できる「懐名歌」を開発し、CIRの内観報告を多数得た。これを生かして人工内耳の音響シミュレーションを開発し、人工内耳音階の効果を確認し、音楽聴取できる人工内耳の可能性を検討した。 CIRが楽しめる音楽を提供するために、知名度、年代、主旋律の音程、リズム、などを考慮して15曲を選択し、音楽訓練を受けた女声・男声・口笛が演奏した。曲楽は、刺激電極数が最大化されるように移調を行った。
著者
鉾井 修一 原田 和典 小椋 大輔
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

森林による二酸化炭素の固定と木炭の製造・貯蔵というCO2固定化プロセス、水およびエネルギー循環、排出量取引などの国際的な取決め・経済・社会システムをトータルに考えたシステムの提案と、提案するシステムの可能性を探ることを目的とする。そのために、本研究では以下の事項についての検討を行う。1.木炭化により固定し得る二酸化炭素(炭素)量の評価と炭化プロセスにおけるエネルギー収支の把握 2.木材供給システム、木炭製造プロセスおよび木炭貯蔵システムの検討と木炭貯蔵可能量の予測 3.木炭の吸放湿性を利用した室内湿度制御と健康との関係についての検討 4.木材および炭化後の木材の耐火性能についての評価 5.二酸化炭素固定化を認定・評価する国際的なシステムの提言今年度は以下の研究を行った。1.森林における物質収支、エネルギー収支についての基礎資料を収集し、二酸化炭素固定量の評価、木炭の製造に利用可能な木材量を把握する。2.代表的な木炭製造プロセスのエネルギー関係、木炭の収率、材種との関係などを整理し、その特徴を評価する。これにより、木炭化により固定し得る二酸化炭素(炭素)量を評価する。3.木炭貯蔵が可能な場所をリストアップし、その貯蔵可能量を見積もるとともに、木炭生産地と貯蔵地との間の最適な輸送システムについて検討する。4.木材および炭化後の木材の耐火性能についての評価を行う。5.壁の吸放湿性を利用した建物内湿度の調整と空調による湿度調整との関連について調査・整理する。
著者
郷原 佳以
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

モーリス・ブランショ、ロラン・バルト、ジャック・デリダは、いずれも20世紀フランスにおいて「エクリチュール」を概念化し、根源的な営みとして捉えた批評家であり思想家である。彼らのエクリチュール概念は、それが主体の理性的な統御を免れるものだという点においては共通している。しかし、構造主義が依拠した発話理論の言語学との関係という観点から見ると、彼らのエクリチュール概念はそれぞれに異なっている。本研究は、関連テクストの精査により、エクリチュール概念と発話理論の関係性という見地から彼らの思想の共通性や差異を明らかにし、それを通して、ブランショやデリダと構造主義との距離をも明らかにする。
著者
細川 雅史 安井 由美子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

フコキサンチンは、ケモカインによる脂肪細胞と免疫細胞の相互作用を制御し、肥満脂肪組織での慢性炎症を抑制した。更に、脂肪組織由来の炎症性因子の産生抑制とともに、骨格筋組織における糖代謝を改善した。一方、ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチンが、潰瘍性大腸炎や大腸発癌のモデル系において予防効果を発揮した。その予防機構として、組織細胞に対する直接的な抗炎症作用に加え、マクロファージによる大腸細胞の炎症誘導に対する抑制効果を見出した。以上のように、海洋性カロテノイドは細胞・組織への直接的な作用に加え、それらの相互作用を制御し、効果的に慢性炎症や炎症性疾患の予防に貢献するものと推察する。
著者
細川 雅史 安井 由美子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アスタキサンチンが、潰瘍性大腸炎や大腸発癌に対して予防効果を示すことを見出した。その作用機構として、アスタキサンチンが大腸組織においてNF-κBの活性化抑制を介して炎症性サイトカインの遺伝子発現を制御することが推察された。一方、褐藻に含まれるフコキサンチンは、内臓脂肪の増加抑制と血糖値改善効果を示す。フコキサンチンは脂肪組織における炎症性アディポサイトカインの遺伝子発現を抑制するとともに、炎症に関わるマクロファージの浸潤を抑制し脂肪細胞とマクロファージの相互作用を調節することを見出した。
著者
山口 真美
出版者
中央大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

質感知覚の初期過程を解明する研究を行い、光沢感や金色カテゴリの獲得が乳児期にあること、乳児における影を知覚する能力を解明した。また、光沢感の形成メカニズムを明らかにする研究や、乳児におけるカテゴリカル色知覚の脳内処理、質感にかかわるクロスモダリティの研究について現在も研究を推進している。さらに、複数の企業への玩具作製の技術指導および共同研究も行っている。2014年夏には、東京都現代美術館で開催された「ワンダフルワールド展」での作品協力なども行い、多方面への知識の普及に貢献できたと考える。
著者
片岡 直行
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

真核生物の核にコードされる遺伝子の多くは、イントロンと呼ばれる介在配列によって分断化されている。このことにより、核内で合成されたmRNA前駆体が、細胞質において蛋白質合成の鋳型として機能するためには、イントロンを取り除きエクソン同士を連結するRNAスプライシングが必須である。スプライシングにより切り出されたイントロンは核内にとどまり、スプライシング因子が除去された後、分解されると考えられている。ヒトではイントロンはmRNA前駆体の実に95%を占めている。またイントロン上にはsnoRNAやmicroRNAなどの遺伝子発現調節に関わるnon coding RNAがコードされていることからも、イントロンの代謝は高等真核生物において重要だと思われるが、ほとんど解析されていない。本研究では、核内でのイントロンの代謝とそれに伴うスプライシング因子のリサイクル機構を解明することを目的としている。そこでこれまでに同定されている二つの因子、hDBR1とhPRP43に注目した。hDBR1と複合体を形成している因子を同定するため、培養細胞でFlagタグを付けたhDBR1とその不活性化変異体を発現させ、Flagタグに対する抗体を用いて免疫沈降を行った。その結果、新規のタンパク質因子を同定した。またin vitroでの結合実験より、この因子はhDBR1と特異的に結合することを確認した。またheterokaryon実験により、hDBR1が核と細胞質を往復する活性があることがわかり、細胞質での機能が示唆された。またRNAヘリケース様タンパク質であるhPRP43のヘリケースモチーフに変異を導入し、変異体をin vitroスプライシング反応に用いたところ、切り出されたラリアット型イントロンが安定化し、変異体タンパク質とともに沈降するのがみられた。
著者
田守 正樹 山田 章
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ナマコの体壁真皮はキャッチ結合組織と呼ばれる刺激に反応して硬さが変わる結合組織である。細胞外基質に直接作用して真皮を軟化させる物質は、これまで知られていなかった。我々は強い機械的刺激をあたえると著しく軟化するシカクナマコの真皮から軟化タンパク質を精製し、ソフニン(softenin)と名付けた。ソフニンの分子量は約20 kDaであった。ソフニンは生きた細胞を含んだナマコの真皮だけでなく、細胞を破壊した真皮も軟化させたので、ソフニンは真皮の細胞外基質に直接作用して真皮を軟らかくすると考えられる。
著者
山崎 晴雄 田村 糸子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

黒滝不整合は房総半島で鮮新・更新統上総層群の基底に認められる不整合である。その成因に関しては,構造運動説や海底地すべり説など様々な見解が検討されてきたが明確な答えは得られていない。本研究では不整合を覆う上総層群中の広域テフラの対比・編年を通じて、各地の不整合形成時期を明らかにした。その結果、房総の上総層群基底の堆積時期は3.2Ma ~ 1.9Maに及び、三浦半島には不整合が存在しないことが分かった。これから、黒滝不整合は,2.3~1.9Ma頃に局地的な海底地すべりが、順次発生した結果と考える。
著者
人見 健文 陳 和夫 池田 昭夫 松本 理器 澤本 伸克 井内 盛遠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

【背景】良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん(BAFME)は、全身のてんかんと大脳皮質由来のふるえが主症状の疾患である。てんかんやふるえにおける睡眠・覚醒時の大脳皮質の興奮性変化は十分に分かっていない。【目的】BAFMEにおける睡眠覚醒の変化にともなう大脳皮質の興奮性変化を明らかにする。【方法】BAFME患者の脳波記録を解析し、てんかん性放電の睡眠・覚醒時の変化を検討した。【結果】時間当たりのてんかん性放電は軽睡眠・徐波睡眠・REM睡眠時では覚醒時に比べ減少した。【結論】BAFMEは、皮質興奮性の覚醒睡眠時の変容に関してBAFMEは進行性ミオクローヌスてんかんの一部と類似の挙動を示した。
著者
本田 由貴
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

イミキモド誘発性尋常性乾癬様皮膚炎モデルマウスを用いてリノール酸およびαリノレン酸よりそれぞれ代謝産生されるHYA、KetoA、αHYA、αKetoAの効果を検討した。これらの4種類の不飽和脂肪酸代謝産物のうち、αKetoAについてのみ、容量依存性の耳介厚抑制効果を認めた。αKetoA投与群において、病態の中心と考えられているIL-17A産生細胞の浸潤や好中球の浸潤についてフローサイトメトリーを用いて確認したところ、それらの細胞浸潤については抑制効果を示さなかった。次に皮膚組織切片についてヘマトキシリンエオジン染色を行い、組織学的に解析したことろ、αKetoA投与群では表皮の肥厚が軽度に抑制されていることが示唆された。そこで、まずRT-PCRにて尋常性乾癬の病態、表皮肥厚に関与していると考えられているサイトカインおよびケモカインのmRNA産生を調べた。その結果IL-23p19,IL-17A,IL-1β,CCL20,S100A8,Keratine17についてはαKatoA投与群でもコントロール群と同様に発現上昇を認めた。しかし、表皮肥厚に関与していると考えられているIL-22に関しては、αKetoA投与群で軽度ではあるが、優位な発現減少を認めた。次にタンパクレベルでの発現の違いを調べるために、フローサイトメトリーを用いて、IL-22産生細胞数を測定した。その結果、IL-22産生細胞数についてはコントロール群とαKetoA投与群で優位な差を認めなかった。RT-PCRの結果からはαKetoAがIL-22産生をmRNAレベルで抑制している可能性が示唆されたが、フローサイトメトリーの結果からはその抑制効果は明らかでなく、別のメカニズムが関与している可能性が考えられた。
著者
原田 亜紀子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2018

<研究目的>本研究は若者の主体形成を促す地域連携カリキュラムとしての主権者教育の構築に当たり、市民の政策決定過程への参加が先進的なデンマークの地方自治体のユースカウンシル(Youth Council : 以下YC)の活動に着目した。前年度の研究において、3つの事例の比較により、デンマーク第二の都市オーフス市のYCは学校と地域が連携するカリキュラムモデルとして最も可能性が示唆された。しかしその実態は不明であったため、本研究ではオーフス市内のYCの下位組織、上位組織、さらに教師とYCの連携構造や、そこで実現されるメンバーの政治的主体形成の過程を明らかにすることを目的とした。<研究の方法>オーフス市は、4地域に区分される。区分された地区での各YCの下位組織の職員とメンバー、下位組織から代表として選出されたオーフス市全体のYCのメンバー、そして職員へのインタビューと、会議の参与観察を行った。データは、デンマークの政治学者Bangの「新しい政治的アイデンティティ」の概念と、北欧閣僚理事会が提示した「‘参加’の過程」を参照して分析された。<本研究の成果>本研究で明らかになったのは以下の3点である。(1)地方議会、行政、学校、若者団体の連携による、メンバーの勧誘や選挙への参加、YCの意見形成や議論の場、政策提言の実現の仕組みの組織化。(2)代表制の確保のため移民地区に独立した議席を設け、またYCの下位組織を設置することで、エリート主義的な参加ではなく、自由でアドホックな参加を受容。(3)参加に必要な情報を得るルートや大人の支援が多層的に存在。こうした活動は学校教育・社会教育の枠を超えた「民主主義の学校」とも言え、学校は、メンバーのリクルートや選挙、会議への参加のための学校欠席の承認、といった形でYCと協働していた。オーフス市の事例からは、地方自治への参加と中等教育段階の学校をつなぐことにより、生徒が「実践し」「影響力を行使する」主権者教育の構築が示唆される。
著者
上田 和紀
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本年度は,熱可塑性樹脂を用いた積層型3D印刷のための要素技術の有効性確認を主目標に,以下の研究開発を実施した.(1) 大規模構造物の構築技術.土木および建築分野のトラス構造を参照しつつ,長尺のチャネル材を代替するビーム材の設計と試作を行った.寸法精度や強度等の要請からPETG系の素材を用いて,連結・分解が可能で必要な強度をもつビームを,アルミチャネル材の半分以下の重量で作成できる見通しを得た.また設計のパラメタ化を部分的に実現した.構築においては日本伝統建築の継手手法が非常に有効であることを確認した.今後さらに最適化の余地があるが,立体トラスを含む多様な構造への展開の足がかりを得ることができた.(2) 大型プロッタ用ヘッドの設計と構築.前年度設定した,大型ホワイトボードの垂直面で動作するプロッタの構築という課題に対し,ペンとイレーザを搭載可能なプロッタヘッドの試作を行った.プロッタヘッドは複雑な形状と多くの可動部品からなり,交換可能かつ印刷容易な部品から構成するという方針に基づいた結果,約50点の3D印刷部品からなる構成となった.本作業を通じて,(項目(1)で制作した)レールに搭載したヘッド全体のスムーズな移動,構成要素の並進動作や弾性保持,摩擦の最小化などの課題の洗い出しを行った.体系的設計論は今後の課題となったが,ソフトウェアにおけるアジャイル開発に近い開発方法論の有効性を確認した.これらを通じ,実際的な機能部品および多数の部材の組合せが必要な大規模構造物を支えるモジュール化技術およびソフトウェア技術の洗い出しを進めることができた.これとは別に,学部学生実験の自宅展開に利用する機械部品多数(二百数十点)の設計制作を,成果展開の一環として行った.
著者
野入 直美 飯島 真里子 佐藤 量 蘭 信三 西崎 純代 菅野 敦志 中村 春菜 八尾 祥平
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、(1)引揚者が戦後の沖縄社会でどのように包摂され、いかなる階層に位置したか、(2)引揚者はどのような社会的役割を果たしたか、(3)「専門職引揚者」の社会移動は、他県でも見出せるパターンが沖縄で集約的に表れているのではないかということを、沖縄の台湾・満洲「引揚げエリート」を事例に解明し、(4)戦後沖縄社会を<引揚げ>という新しい視点からとらえなおす。「引揚げエリート」とは、日本帝国圏の在住期から戦後にかけて、水平・上昇の社会移動を遂げ、沖縄の戦後再建を担った人びとを指す。その中心は、外地において教員、公官吏などの専門職に就き、その経験を資源として戦後を生きた「専門職引揚者」であった。
著者
野入 直美 蘭 信三 飯島 真里子 松田 ヒロ子 森 亜紀子 坪田 美貴 (中西 美貴)
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フィリピン、台湾、旧南洋群島、満州からの沖縄引揚者の研究は、3年間の研究成果を『移民研究』第9号(2013年刊行予定)の特集として発表すべく、現在、原稿の最終とりまとめ作業を行っている。 フィリピン引揚者については、沖縄社会における引揚者の戦没者に対する慰霊に関する調査として、沖縄県立平和記念公園内ダバオ之塔で行われる慰霊祭の参与観察と参加者へのインタビューを行った。それにより、慰霊祭が始まった1960年末と現在の慰霊の形、目的、内容、参加者の変遷を明らかにした。また、成果報告を発表するにあたり、戦没者慰霊に関する先行研究(国内外)の動向を調査し、本テーマの位置づけを再検討した。 台湾引揚者については、沖縄県内で刊行された『那覇女性史』や『近代沖縄女性史』などの女性史移住先の台湾の記載は非常に少なく、ほとんど視野に入っていないことを踏まえ、それを補うために市町村誌史の蒐集、整理とともに、台湾経験者およびその家族へのインタビュー調査を行った。 旧南洋群島引揚者については、「旧南洋群島から沖縄へ引揚げた人々の移民経験・戦争体験および戦後経験とはいかなるものだったのか」を、帝国圏他地域からの引揚者の経験と比較検討しつつ明らかにすることを目的とし、これまでに沖縄本島と宮古諸島伊良部島で行った旧南洋群島引揚者149名への聞き取り調査で得られた音声データを文字資料化し、県史・市町村史に掲載された旧南洋群島引揚者の証言と比較・検討した。さらに、この作業によって明らかにされた旧南洋群島引揚者の経験と、他帝国圏から沖縄へ引揚げた人々の経験がどのように共通し、異なるのかを検討した。