著者
浦部 美佐子
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.491-496, 2007 (Released:2008-12-31)
参考文献数
24
被引用文献数
6 10

ニュージーランド原産の小型巻貝コモチカワツボは,2007年11月現在,北海道・本州・九州の1道1府13県から記録されている。本種が在来生物に与える影響は明らかになっていないが,その増殖力のため,今後も注意深いモニタリングが必要であろう。本種は主として養殖魚類・貝類・水草等の移動に随伴して分散すると推定されるが,ゲンジボタルの餌として意図的に放流される可能性もある。また,人に付着するなどの偶発的分散もすでに起こっていると推定され,長靴等の器具を本種の侵入域で使用した後には乾燥・凍結・熱湯や薬剤による処理を行い,器具からコモチカワツボを完全に除去することが推奨される。
著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.89-95, 2011

ユーラシア大陸の乳加工技術と乳製品を、これから約1年にわたって毎月のシリーズで紹介していきたい。 ユーラシア大陸といっても広大である。それぞれの地域で様々な乳加工技術が発達し,珍しい乳製品がつくり出されてきた。バターは発酵乳からつくられることが多く,発酵乳は清涼飲料,チーズなどにも加工され,牧畜民の乳加工において発酵乳の出番は多い。チーズ加工の凝固剤にはレンネットだけでなく,酸乳や有機酸を用い,牧畜民の加工するチーズは熟成させることはない。乳から酒をつくっていたりもする。多くはお世辞にも旨いといえるシロモノではないが,幾つかはキラリとひかる美味しさと利用の仕方とがある。このような牧畜民の乳製品と乳利用とはいったい,どのようなものであろうか。想像するだけでもワクワクしてきて,現地を訪ねてみたくなる。このシリーズでは,西アジア,北アジア,中央アジア,南アジア,チベット高原,ヨーロッパを事例として,乳加工技術と乳製品とを具体的に紹介していきたい。なるべく現地の写真を多く掲載しながら解説していく。シリーズ最初の今回は,乳利用が人類にもたらした生業革命―牧畜の誕生,そして,現在のユーラシア大陸における乳加工の特徴について外観しておきたい。
著者
吉野 裕介
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.299-320, 2022-03-10

本稿の目的は、フリードリッヒ・ハイエクのカール・マルクスに対する評価の変遷を抽出し、その意義を闡明することである。ハイエクの長い執筆活動のほとんどは、自由主義(資本主義)の擁護と、社会主義の批判に費やされた。にもかかわらず、膨大な書き物のうち、マルクスあるいはマルクス主義に関する言及は、ほとんど断片的と言えるくらい限られている。この理由を探ることで、ハイエクの社会主義批判の意図がより明確になるのではないか。こうした問題意識に基づいて、本稿は、第1節で初期ハイエクの経済理論的考察、第2節で中期ハイエクの方法論的考察、第3節で後期ハイエクの社会哲学的考察の3つに活動時期を区切り、それぞれの時期におけるマルクスへの言及を抽出したうえでその意義を考察した。かくして、ハイエクによるマルクス批判は確かに徹底的とは言えないものだが、それはかれがマルクス思想の背後にある科学主義や合理主義を批判したことが一因だと結論付けた。
著者
大出 恭代 並木 美奈 川名 孝幸 喜納 勝成 中澤 武司 川島 徹 三宅 一徳 佐々木 信一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.25-31, 2022-01-25 (Released:2022-01-25)
参考文献数
13

病院診療において,有症状者COVID-19疑い患者の診断検査と無症状病原体保有者のスクリーニング検査は区別して考えなくてはならない。今回我々は有症状でCOVID-19疑い患者の診断検査と無症状病原体保有者のスクリーニング検査を実施した2群について,抗原定量検査の有効性と問題点について検討した。対象は2020年11月から2021年5月の期間で,RT-PCR検査とSARS-CoV-2抗原定量検査を同日提出された有症状COVID-19疑い患者群277検体,無症状者スクリーニング検査群1,781検体の合計2,058検体について後ろ向き解析を行った。その結果,有症状COVID-19疑い患者群では抗原定量値 ≥ 0.36 pg/mLを陽性とした場合は感度95.9%,特異度80.4%,無症状者スクリーニング検査群では抗原定量値 ≥ 0.83 pg/mLを陽性とした場合は感度100%,特異度99.5%であった。今回の解析で,抗原定量検査は無症状者のスクリーニング検査としては非常に高い有効性が認められたが,一方で同検査を有症状患者の診断目的で用いる場合は,感度・特異度が若干低下するため,その特性をしっかりと理解し,臨床症状,画像診断,PCR検査や抗体検査を組み合わせた総合的な判断が必要である。
著者
早川 清雄 高岡 晃教 亀山 武志
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は、毎日、多くの食事を摂取している。食事には、ビタミン・ミネラル・タンパク質をはじめとした必須な栄養素が豊富に含まれており、それらが身体や健康の維持に重要であることが明らかにされている。しかしながら、食品に含まれる核酸による機能性は、ほとんど明らかにされていない。そこで、食品に含まれる核酸に注目し自然免疫応答に対する効果について検討を行った。免疫応答をつかさどるマクロファージ細胞に対して数種類の食品から抽出した核酸と口腔内に存在するペプチドを混合し処理を行うと、細胞質のセンサー分子を介して自然免疫応答が活性化されることがわかってきた。食品由来の核酸は、健康の一端を担っている可能性がある。
著者
野上 元
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.22, pp.1-9, 2009

Until recently a distinction between history and historical sociology made little sense, but now, with the contemporary tendency to prefer the present reality of the past constructed from collective memories or narratives of one's experience over factual accounts verified by historical inspection, there seems to be a more notable distinction between the "sociology of history" and historical sociology.<br>To grasp the situation with respect to sociological methods as whole, this article introduces some presentations from workshops and symposiums organized by The Kanto Sociological Society during the last two years. We argue the interaction between historical materials and the sociological imagination and the reflexivity of historiography and "lived history".

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出版者
国立国会図書館
雑誌
外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説 (ISSN:13492071)
巻号頁・発行日
vol.(月刊版. 293-2), 2022-11
著者
米澤 義彦 細川 威典 香西 武
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.148-155, 2019 (Released:2019-12-16)
参考文献数
36
被引用文献数
1

小学校第6学年理科における「水の通り道」の観察実験に使用する「色水」について,小学校や中学校の教科書に例示されている切り花着色剤,食用赤色102号および赤インキの濃度と処理時間について,根のついたホウセンカを材料として再検討を行った.その結果,切り花着色剤と食用赤色102号の「色水」では,いずれも15~30分程度で「色水」が葉に到達することがわかった.また,赤インキの10倍希釈液では約1時間で,50倍希釈液では約2時間で葉まで「色水」が到達した.これらのことから,「水の通り道」の観察実験では,「色水」の種類と濃度を選択することによって,それぞれの学校の時間割に応じて授業が展開できることが示された.
出版者
国際文化情報社
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, 1958-07
著者
本多 裕司 岡野 麻里 齋藤 泰宏
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.170-175, 2022-08-20 (Released:2022-09-20)
参考文献数
13

本研究では,焼きいもの肉質が粉質系に近い「五郎島金時」と粘質系の「べにはるか」の生イモと蒸したサツマイモに含まれる遊離糖組成,澱粉の物理化学的な性質,及びβ-アミラーゼ活性を分析した.両試料共に生イモに含まれる遊離糖含量はスクロースが最も多かったが,蒸しイモに含まれる遊離糖含量はマルトースが最も多かった.収穫直後の「べにはるか」澱粉の糊化開始温度 (To) は「五郎島金時」澱粉よりも5 °C以上低い値を示した.一方,定温貯蔵後の試料については,両試料共にToは63 °C付近であった.収穫直後も定温貯蔵後も「べにはるか」澱粉の各RVAパラメーターは「五郎島金時」澱粉よりも低くなる傾向がみられた.両試料のβ-アミラーゼ比活性は60 °Cが最高値であったが,40~70 °Cにおける収穫直後の両試料のβ-アミラーゼ比活性に有意差はみられなかった.一方,定温貯蔵後の試料の場合,50 °Cと60 °Cの「べにはるか」のβ-アミラーゼ比活性は「五郎島金時」の3倍以上であった.以上の分析値を用いて主成分分析した結果,「べにはるか」の食味の発現にβ-アミラーゼ活性が,「五郎島金時」の食味の発現には,澱粉の物理化学的な性質が大きく寄与している可能性が示唆された.