著者
杉本 美華
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-29, 2009
参考文献数
34

日本には約50種のミノガ科が生息しており,幼虫の携帯型の巣筒であるミノは大きさや概形,表面に使われる素材等の特徴で属あるいは種までの同定が可能である.成虫が脱出後の空になったミノの保存性が高いことから,ミノでの同定によって過去の生息範囲を推測することができる.若齢幼虫期のミノは,形態が単純で種の特徴が十分現われていないために正確な同定は期待できず,これまで主に中齢幼虫期から終齢幼虫期のミノが同定に用いられた.しかし,日本産のミノガについて,このような識別形質を含むミノの形態の詳細な記載とその比較はこれまでほとんど行なわれてこなかった.そこで本研究では,ミノの形態から属あるいは種の同定を容易にすることを目的として,日本産ミノガ科23属30種について,成長した幼虫あるいは終齢幼虫のミノの写真を示し,その形態的特徴と蛹化状況を記述するとともに,これまで発表されていなかったミノによる種や属の検索表を2論文に分けて発表する.第2報では,害虫として注目されている種やレッドデータにリストアップされている種を含めた大型種10属11種について記載を行なった.その結果,ミノの本体は円筒形,紡錘形,または円錐形で,表面には種特異的な被覆物がつけられていた.中齢ないし老齢幼虫期のミノは,種や属を同定するための有効な特徴を備えており,これらの特徴に基づいて,30種についてミノの検索表を付けた.
著者
河内 純 Jun KAWACHI 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.49-62, 2004-12-31

フランツ・リストは現代にまで名が残っている作曲家はもとより、すでに忘れ去られた数多の作曲家の作品をピアノ用に編曲している。リストがさまざまなジャンルにわたる膨大な数の作品を編曲した目的は、ヨーロッパ中で活発に行っていた演奏会のプログラム・レパートリーとすることと原曲を広く紹介すること。及び、それらの原曲からさまざまな作曲技法を学び取り、それをオリジナルの作品に反映させることだったと考えられる。本稿ではシューベルト歌曲のピアノ編曲を取り上げ、リストが歌とピアノによる演奏効果をいかに1台のピアノに置き換えたのか考察した。その結果、リストが原曲を詳細に研究してシューベルトの音楽を深く理解していたことが導き出された。Franz Liszt has left numerous solo piano arrangements based on many other composers' non-piano works, not only well known ones but also presently remain unknown ones. Covering wide variety of original instrumentation, Liszt's intension of composing such works can be considered to be to discover various new repertoire for the programs of the concerts that he was actively performing all over European countries at that period of time, to introduce them to the public, and finally to learn different styles of compositional technique that could be utilized in his own works. In this paper, I have particularly investigated Liszt's works for solo piano arrangement of Schubert's songs in order to prove how he effectively turned the songs with piano accompaniment to solo piano pieces. As a result, I have reached the conclusion that Liszt had observed the original scores in detail and understood Schubert's music to the deepest level.
著者
大家 眸美 宮下 芳明
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.15, pp.1-2, 2013-01-25

Twitter 等におけるネガティブな感情表現の不快感を緩和する手法として,筆者らはこれまでポジティブな表現に言い換える手法を提案してきたが,本稿では,その文章の信頼性を下げる言い換えを行うことによって緩和する手法を提案する.信頼性を下げる手法としては,文章に文字化けを混入させたり,誤変換を行ったり,むやみなカタカナ語を使用したり,文末を変更することによって他人が言っていたことにしたり夢オチにすることによって実現している.
出版者
日本図書館協会
雑誌
図書館雑誌 (ISSN:03854000)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.144-145, 1954-04
著者
属 啓成
出版者
音楽之友社
雑誌
教育音楽 (ISSN:03887472)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.104-114, 1956-03
著者
矢野 眞和 濱中 淳子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.85-104, 2006-12-10
被引用文献数
1

Since 1976, the application rate of high school students for university has remained level at around fifty percent, and this seems to have contributed to the excess supply of higher education caused by the demographic decline. However, previous research has not clarified the reason why students do not go on to university despite the ease if access. This paper examines the extent to which economic factors underlie the stabilization of the application rate at 50%, through an analysis of the determinants of entrance rates for senmon gakko (technical schools) and employment rates after high school graduation from 1970 to 2004. The results of the analysis of the obvious demand factors indicate that household income has a strong positive impact, the price of private university tuition has a negative impact, and the unemployment rate has a positive impact on the application rate. Statistically, these results are weak, as they have a low value on the D. W. criteria, so the author uses the chow test approach to this problem solving. The test shows that there are structural changes in the trend of the determinants factor of the application rate during three decades, meaning that it would be better to divide it into three period times, 1970-1975, 1976-1996 and 1997-2004. In the first period, household income increases demand without an influence from price, and in the second period there was a positive effect of income, negative effect of price, and positive effect of the unemployment rate. In the third period, only unemployment had an impact, and there was no effect of income and price. It is possible to understand the leveling off of demand for higher education by considering household budget conditions, the rapid price increases since 1975, and in particular the high unemployment rate since 1997. However, the demand for higher education is actually higher than the application rate, since there are students who find employment or go to technical schools as a substitute for going to university. In order to consider this latent demand for higher education, an analysis of the determinants of the employment rate and entrance rate for technical schools is introduced. This analysis shows that there are individuals who find employment instead of going to university for the reason of the high price, and who go to technical schools for the reason of the high prices and low acceptance rate for entrance examinations. This result indicates that, considering this latent demand, the demand for higher education is larger than that indicated by the application rate. One policy implication of this study is that the application rate will increase in the near future as the economic recovery makes the latent demand obvious. Second, since there is still inequality of educational opportunities, low tuition and student aid should be introduced to equalize enrollment difference based on family income.
著者
小川 幹雄
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.14-15, 1974-11-16
著者
小林 修悟 小寺 浩二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

Ⅰ はじめに河川流域の流域管理や環境保全を行うためには、流域単位での水域環境の把握が必要となる。近年はGISの普及により、河川流域の空間把握が格段に簡便となり、気候や地形等の河川の多様な水質形成因子の表現が可能となった。2000年以降、「水環境の地理学」の研究グループでは「河川流域の水環境データベース」作成が試みられている。当研究室では天塩川(清水ほか2006)、北上川(平山ほか2009)などの一級河川や大規模支流(信濃川支流魚野川、森本ほか2008)にて流域特性把握の研究が成された。本研究は水環境データベースの一環として尻別水系流域の流域特性把握を行うものである。当地域における羊蹄山湧水や公共水質観測による報告はあるが、支流を含めた水系全体の水質分析が成された例はない。主要溶存成分による水質分析とGISを利用した流域特性解析を紹介する。Ⅱ 流域概要 尻別川は支笏湖西方に位置するフレ岳(1,046m)に起源し、西方に流れ羊蹄山(1,893m)北麓を迂回し、蘭越町磯谷で河口へと達する、流域面積1,640km2、幹線流路長126km2の河川である。源流から喜紋別にかけての上流部では1/60以上と急勾配となっており流量は少ない。中流部から下流部にかけ支流合流と羊蹄山を中心とした湧水供給を受け、蘭越からの下流部では1/500‐1/5000程度と緩勾配となり、流量も増加し大河川となり河口へと注ぐ。 当地域は北海道有数の酪農、農業地帯となっており、主な農産品には馬鈴薯やアスパラガス等となっており、下流部は水田地帯が形成されている。観光面では羊蹄山湧水やラフティングといった、水資源による地域振興が成されており、尻別川が当地域に与える影響は大きくなっている。Ⅲ 研究方法国土数値情報等の公共作成データ等をGISソフト用いた流域規模での空間把握による自然地誌作成を行った。また、尻別川水系の水質特性把握を行うために、2012年5、7、9月下旬にて、本流、2次流以上の支流下流、湧水及びそれに準ずる河川最上流部の50点程サンプリングを行い、現地観測(気温、水温、流量、EC、pH、RpH)を行った。サンプルを濾過後、研究室にてTOC、イオンクロマトグラフィーによる主要溶存成分分析を行い、GISソフトによる図化により流域特性の鮮明な把握を行った。Ⅳ 結果と考察流域にはイワヲヌプリ(1,116m)に起源するpH4.0前後の硫黄川・ニセコアンベツ川等の酸性河川や、pH8.0前後の真狩川などを含み、湧水供給の高い河川など多様な河川が存在する。流域の大半が森林となっており5月下旬の河口部のECは95μm/cmと人為的影響が少ないことを示している。しかし、酪農地帯や耕作地流辺の小規模河川においてはpH、ECが高く人為的な影響を受けている。Ⅴ おわりに 本研究により尻別川水系には多様な特性を持つ河川が存在することが判明した。今後も調査を継続し年変動を把握し、水系特性及び各河川の水質形成の解明を行いたい。
著者
白峰 旬
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 = Memoirs of Beppu University (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.59, pp.129-135, 2018-02

慶長5年(1600)8月、毛利家麾下の軍政を中心として城攻めがおこなわれた伊勢国津城合戦の際に、吉川家中で手負い(負傷)、討死(戦死)した者の人名リストである「伊勢国津城合戦手負討死注文」(『吉川家文書之一』<大日本古文書>、728号文書)の内容を検討することにより、慶長5年8月の時点における吉川家の軍事力編成について考察する。
著者
杉谷 修一
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.82-89, 2003-03-29

ルーティンという概念は遊びの創造性を分析するにはふさわしくないように思える。実際遊びにおいて行われる活動はルーティンの規則によって統制されている。しかし,規則とは秩序を構成し,行為を説明可能で観察可能なものにするために用いられる。すなわち,我々はある範囲内で自由に振る舞えるだけでなく,ルーティンを構成することさえ可能なのだ。規則が行為内容をどの程度認めてくれるかによって,参加者はルーティンとそれぞれ違った関係を持つことになる。野球のような組織化された遊びはめったに自由にさせてはくれない。なぜなら,そこでの役割が相互に関係し会っているからだ。だが,規則が具体的な行為を完全に決定してしまう事はできないし,規則は創造的活動にとって本来不可欠な存在である。また緩やかに構成された規則を持つルーティンはそれほど長時間にわたって持続することはない。そしてそこでは事前にルーティンに関する知識を学習することはない。そのため参加者は即興的にルーティンを作り上げなければならなくなる。また,日常におけるルーティン活動の中には遊びに関する様々な要素がみられる。諸要素はしばしば互いにぶつかり合い,そのルーティンは効率を求めているようには見えない。「インスクリプション」は相互作用の秩序を構成するための道具である。我々はこの概念を遊びのルーティン分析に適用することができる。遊びのルーティンにおいて,インスクリプションは明示的な実態ではなく隠されたリソース-例えば身体技法のような-なのである。インスクリプションのこの際だった特質が遊びのルーティンに何らかの影響を与える可能性がある。
著者
今野 晃
出版者
東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻
雑誌
相関社会科学 (ISSN:09159312)
巻号頁・発行日
no.23, pp.19-33, 2013

論文PapersThis essay aims to examine a problem concerning the concept "social", by analyzing The Social Contract of Rousseau. For this, I will refer to Althusser's work "On the social contract", where he develops a substantial analysis of the social contract. The concept of the term "social" is taken today immediately understandable. But it was invented in 18th century, when Rousseau wrote The Social Contract. Indeed, Rousseau is one of the pioneers who, by addressing the social relationship, tackled a new theme and a new concept. However, we can question whether Rousseau was able to treat it adequately. Because "social" was such an "avant-garde" concept. This means that Rousseau was not responsible of his failure, because it derived from the newness of the concept. To investigate this problem, I will focus on the discrepancies of the social contract which Althusser brings to light. With this examination, we will see that these discrepancies reflect the problem of social relationship. With this examination, we can understand why we needed to invent this concept in his era. And it will help us to reconsider the concept "social" in our time.
著者
野元 美佐
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.353-372, 2004-12-31

本研究は、カメルーンの商売民として有名な「バミレケ」が活発に行っている金融システム「トンチン(頼母子講、講、無尽)」を、貨幣に着目して考察し、ひとびとがなぜトンチンを行うのかを明らかにしたものである。バミレケは、露天商から大企業家まで、銀行がたちならぶ都市においてもトンチンを積極的に行っており、トンチンは彼らの経済的成功の要因のひとつとされている。しかしトンチンには、資金創出以外にも大きな役割がある。バミレケは都市で同郷会を組織しているが、そこではトンチン参加が義務付けられている。トンチン参加を強いることは、トンチンに支払うためにカネを稼ぐことを強いることである。つまりカネを稼ぐという「個人的行為」を、トンチンにリンクすることにより「集団的行為」へと変化させている。ではなぜトンチンが集団的行為であり、相互扶助だと考えられるのであろうか。それは、トンチンが贈与交換だからである。みなのカネをまとめて、一人の人に与えるトンチンは、贈与であるからこそ、「助け合い」であり「善きもの」と言われるのである。そして重要なのは、そこに持ち寄られ、「贈与」される貨幣も善となることである。個人的で利己的な貨幣は、集団的資源としての貨幣へと意味を変える。平等化の圧力が強く、資本蓄積が難しいとされるカメルーンにおいて、バミレケはトンチンを介すことでカネを稼ぐことを正当化し、資本蓄積の場を獲得する。これが、人びとがトンチンを好む理由であると考える。またこれまで貨幣は、ひとびとの連帯を破壊するものと考えられる傾向にあったが、バミレケの事例で、トンチンによって貨幣が人と人をつなぐ道具として用いられていることを明らかにできた。
著者
青柳 肇 細田 一秋
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田大学人間科学研究 (ISSN:09160396)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-36, 1993-03-25

本研究は,失敗事態で努力要因に帰属することが無力感を生じさせないという従来の帰属理論に基づいた学習性無力感の概念とは異なる視点から,帰属理論を再検討すること,すなわち,失敗事態で「運」帰属することが無力感を生まない重要な要因であることを検証することを目的とした.大学生を被験者として,「運と努力の帰属傾向」を筆者らが独自に開発した投影法形式で測定し,無力感尺度と課題遂行との関係を検討した.「運と努力の帰属傾向尺度」は,成功を努力に帰属し,運に帰属しない場合と失敗を運に帰属し,努力に帰属しない場合,3点,そうでない場合1点とし,どちらでもない場合2点とした.したがって,高得点であることは無力感につながらないと仮定した.無力感尺度は,筆者らが以前に作成した尺度を用い,課題遂行は学習性無力感研究で以前に使用したことのある半数が解答不能な前処置課題(計算課題)および全開解答可能な後続課題での正答数で測定した.主な結果は,以下の通りである.無力感尺度と運と努力の帰属傾向尺度とは,大多数が無相関であり,一部有意な正相関しているものがあった.これらの結果は,無力感尺度の妥当性にやや問題があるためかもしれないと考えられた.課題遂行と「運と努力の帰属傾向尺度」とは,有意に正相関しているものがいくつかみられた.課題遂行でみる限り,「運と努力の帰属傾向尺度」は全面的ではないが,一定の妥当性が保証され,ほぼ仮説が支持されたといえよう.しかし,「運と努力の帰属傾向尺度」の下位尺度をみると問題がないわけではなかった.すなわち下位尺度の高低群間の差に関しては,尺度3では前処置課題で低群のほうが有意に高得点であることがみられた.これは,尺度3のように成功事態で努力帰属することは,大多数の被験者が賛成しているためであろうと考察された.また,尺度1(成功場面で運帰属)でも高低群間にまったく差がみられず,仮説が支持されなかった.これは,この逸話に反対することを高得点にするというように,否定型で反応することに対する適切性の問題が論じられた.