著者
近内 亜紀子 浅地 哲夫 小田野 直光
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSS, 安全性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.319, pp.1-4, 2008-11-19

現在,空港の保安検査としては,X線を用いた手荷物検査及び金属探知を用いた旅客検査が行われている.しかしながら,X線検査は手荷物内物質の形状及びX線透過率から爆薬の有無を判断するため自動判定が困難であり,金属探知においては非金属の隠匿武器等を検出できないという課題がある.海上技術安全研究所においては,現行の検査手法の課題を解決する技術として,核四重極共鳴(NQR)を用いた爆薬検知技術及び,ミリ波を用いた非金属隠匿武器等の検知技術の研究開発を行った.各技術を用いた検査装置試作機を製作し羽田空港保安検査場において実証試験を行った結果,その有用性が示された.
著者
山下 倫実 坂田 桐子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.57-71, 2008-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
49
被引用文献数
6 2

本研究は, 大学生におけるソーシャル・サポートと恋愛関係崩壊からの立ち直りとの関連について検討した。まず, 性役割の観点より, 恋愛関係崩壊前の情緒的サポート源が恋愛パートナーに限定される者は女性より男性に多いという予測1について検討した。恋愛関係にある大学生146名を対象に友人 (同性/異性), 恋人, 家族 (同性/異性) から提供されたサポート (情緒的/道具的) について尋ねた。その結果, 予測1は概ね支持された。次に, 現在, 恋愛関係にない大学生132名を対象に恋愛関係崩壊時の情緒的サポート源が多い者ほど, 立ち直り評価が高いという予測2について検討した。各関係からのサポート (予測1の検討と同様), 恋愛関係崩壊時のショック度, 恋愛関係崩壊からの立ち直り過程の経験及び立ち直り評価などの項目について回答を求めた。サポート形態は, 情緒的サポート源が多様である多様型, 情緒的サポート源が同性友人に限定される同性友人型, サポート低型に分類された。予測2は概ね支持され, 恋愛関係崩壊前の情緒的サポート源を恋愛パートナーに限定することが, 立ち直り評価の低さにつながる可能性が論じられた。
著者
田澤 実
出版者
法政大学キャリアデザイン学部
雑誌
法政大学キャリアデザイン学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Lifelong Learning and Career Studies (ISSN:13493043)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.79-104, 2020-03

A person’s hometown was defined in the narrow sense as the prefecture where his or her high school is located, whereas it was defined in the broad sense as the prefecture that a person recognizes the hometown. The number of high school students entering colleges in their hometowns defined in the narrow and the broad senses was calculated using the Report on Basic Research on School, published by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science, and Technology. The results indicated that in all the prefectures, a person’s home prefecture in the broad sense was included in the top 12 prefectures where a students’ college was located. However, there were prefectures that were not included in the top 12 prefectures, although they were in the same area. The percentage of students entering college in the hometown (in the broad sense) was high in prefectures of the Kansai area, including Shiga, Hyogo, Kyoto, and Osaka, among others, and in prefectures of the Kanto area, such as Ibaraki, Tochigi, Saitama, and Chiba, among others. Colleges in Tokyo and Kyoto attracted not only students from the two prefectures but also students from other prefectures in the same area.
著者
高村 明
出版者
独立行政法人 国立高等専門学校機構豊田工業高等専門学校
雑誌
豊田工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:02862603)
巻号頁・発行日
vol.50, 2018

ピタゴラスの定理a^2+b^2=c^2を満たす自然数解はピタゴラス数と呼ばれており,すべての自然数解が求められている.しかしながら,ピタゴラスの定理の指数2を指数nにすべて拡張したディオファントス方程式a^n+b^n = c^nにはnが3以上の整数で自然数解が存在しない.これはフェルマーの最終定理と呼ばれる未解決問題であったが,約360年ぶりにワイルズによって証明された.フェルマーの最終定理はピタゴラスの定理の指数を拡張したものであるが,指数の拡張の方法は一義的ではない.このノートでは,ピタゴラスの定理の指数をすべてではなく部分的に拡張したディオファントス方程式a^2+b^2=c^nやa^2+b^n=c^2にも自然数解が無限に存在することを示す.さらに,ピタゴラス数のパラメータ表示を拡張する形で,きれいにパラメーター表示できることも示す.
著者
原 翔子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.245-248, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
11

文化継承の場としての博物館は今や観光施設としても機能し始め,その役割は展示や教育にとどまらない.しかし博物館という閉鎖的かつ遮断されて環境下においては,モノからコトが切り離されやすいという問題を抱えている.また,展覧会の記憶は館外へ持ち出されてから時間が経ってしまうと日常生活のなかで想起させるのが難しい場合がある.展示内容には満足していても,混雑などにより満足いく鑑賞経験が得られないこともある.そこで本研究では,これらの問題解決の糸口となるような,文化継承の場における情報技術の更なる応用可能性や用途の多様性について検討したい.これまでは文化情報を伝える手段として情報技術を捉えてきたが,体験の記憶を再構築させるための情報技術の在り方こそが,文化継承に寄与することは確実だ.中でも特に,これまで展覧会図録が担ってきた役割に対する情報技術の貢献可能性を提唱する.
著者
時実 象一
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.237-240, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
7

デジタルアーカイブにおいても、国立国会図書館デジタルコレクション、国文学研究資料館の「新日本古典籍総合データベース」など、デジタル化書籍・書物に永続的識別子であるDOIが付与されるようになってきた。しかしデジタルアーカイブのコンテンツ、たとえば博物館資料などへの付与はあまり進んでいない。デジタルアーカイブ・コンテンツにDOIを付与すれば、それらコンテンツの活用事例の調査や収集が容易になると考えられるので、推進することを提案する。
著者
城所 岩生
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.229-232, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
2

欧米でデジタルアーカイブ化が着実に進んでいる。2004年、グーグルは出版社や図書館から書籍を提供してもらった書籍をデジタル化して検索可能にする電子図書館構想を発表。米国の一民間企業主導の電子化に対して懸念を抱いたフランスのよびかけで、欧州は2005年に各国の文化遺産をオンラインで提供する欧州デジタル図書館計画、ヨーロッピアーナを立ち上げた。法制面でも孤児著作物を利用しやすくするため、2008年に孤児著作物指令、2019年にはデジタル単一市場における著作権指令を制定。後者では拡大集中許諾制度を採用、集中許諾制度は権利集中管理団体が著作権者に代わって著作権を管理する制度で団体の構成員のみが対象だが、これを構成員以外にも拡大する制度。米国でも導入の動きはあったが、グーグルの電子図書館構想に対する訴訟でフェアユースが認められたため不要とする意見が多く見送られた。欧米に比べると牛歩の観が否めない日本の対応策を提言する。
著者
大野 理恵 細矢 剛 真鍋 真
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.211-213, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
6

国立科学博物館では2019年4月現在、470万点以上の自然史系および理工系の標本資料を管理・保管している。館内の膨大な数かつ多種多様な分野にまたがる標本資料を一元的に管理し、またその情報を一般市民に公開するため、当館では標本資料統合データベース(以下統合DB)を管理・運用している。統合DBに登録されている自然史系標本のデータは、S-Net(サイエンス・ミュージアムネット)やGBIF(地球規模生物多様性情報機構)、ジャパンサーチに提供され、公開されている。本発表では、統合DBの概要と利用状況について紹介するとともに、統合DBが有する様々な課題について報告する。
著者
高橋 良平 中川 紗央里 徳原 直子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.203-206, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
5

「ジャパンサーチ」は、我が国が保有する多様なコンテンツのメタデータを検索できる国の分野横断型統合ポータルである。本発表は、2020年夏までの正式版公開に向けて、機能改善及び連携拡大を進めているジャパンサーチについて、現時点の到達点をまとめ、今後の課題を考察するものである。すなわち、構築に至る背景と構築の目的を説明したのち、ユーザや連携機関のためのさまざまな機能、権利表示の仕組み及び連携拡大のための取組を紹介し、最後にジャパンサーチが発展していくために解決すべき課題について報告する。
著者
安永 知加子 柊 和佑 石橋 豊之
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.173-176, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
5

我々は、組織による地域情報の収集・蓄積・利活用を「地域の記憶」アーカイブの中核であると位置付け、収集手法、形式および保存方法、効果的な利活用手法を検討している。本稿では、組織の活動として作成されたCATVや組織内放送用動画像を地域情報資源と捉え、将来的に組織が「利活用」することを第一に考えた収集・蓄積・提供手法を提案する。具体的には、中部大学において約10年にわたって動画を作成し、地元CATVに番組を提供し続けているサークルである放送研究会の素材映像、番組映像および、構成台本、議事録等を収集対象とし、放送研究会および中部大学内で利活用しやすいアクセスポイントの設定および、メタデータスキーマと蓄積手法を検討した。アーカイブする対象としては、放送された映像のカット(映像の切り替わり)を中心に収集・蓄積を行う。素材を含めたアーカイブは既存の動画アーカイブと異なる点である。また、システムのガイドライン作成し、人的要因による入力情報不足を防ぐ。
著者
柳瀬 昇
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.74-87, 2009

2003年7月に行われた5例目の電子投票による選挙では,電子投票機の異常により 投票が中断するなどの大規模なトラブルが発生し,選挙人から行政不服申立てや選挙無効訴訟が提起されるに至った。名古屋高等裁判所は,2005年3月,投票機の異常によって選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあったとして選挙を無効と判示し,最高裁判所も,その判断を支持した。 本稿では,この岐阜県可児市電子投票事件について,事件の概要,選挙人からの行政不服申立てとそれに対する市・県選管による判断および裁判所の判断を概観したうえで,電子投票を用いた選挙の手続の瑕疵をただす方途について検討しつつ,各機関による法的判断について評釈を行った。
著者
若井 勲夫
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.464-416, 2014-03

江戸時代後期に院雑色を務めた座田維貞は現在、忘れられてゐるが、幕末のころ、実務に長けた官人でありながら、儒学と国学を兼ねた学者にして、尊皇思想の実践家として重要な働きをした。その立場上、表立って指導していくことはなかったが、時の関白や大臣、また公卿の間を取り持ち、時には利用し、事を処理していく実務面に能力を発揮した。今まで維貞についてまとまった伝記類はなく、不明な点も多かった。そこで、本稿は数少い史料に基づき、二十五年に亘る活動期の中から重要な働きを取り上げ、事績とともにその思想と精神を明らかにしようとした。明治維新に至る前段階の裏方の魁として、維貞を評価することに歴史的な意義が認められる。主な論点、要点は次の通りである。 (1)自著の『国基』(天保八年刊、安政二年再刊)は儒教を必ずしも排斥せず、水土論によってわが国体の独自性、主体性を説いた。この書は当代だけでなく、明治から昭和前期まで思想的な影響を与へた。(2)弘化三年に公家の子弟の学問のため学習所(後の学習院)が設置されると同時に雑掌に就き、庶務を担当した。後には講読の手伝ひも兼ねて、教学にも携はった。(3)菅原道真作と伝へられてきた『菅家遺誡』に付け加へられた二章の普及に力を入れた。その上、この要言を刻んだ石碑を北野天満宮と大坂天満宮に建て、和魂漢才碑として広く知られるやうになった。また、この摺本を販売し、和魂漢才が思想として定まる端緒になった。(4)右の(1)の普及と(2)(3)の活動は維貞の独力でなされたものではなく、関白、大臣、法橋、北野寺の僧など周辺の人々が組織的に動いたことにもよる。この協同があったからこそ、当時の思想を導くことができた。(5)和気清麻呂の功績を讃へ、その顕彰に志し、嘉永二年に「和気公追褒の建議」を奏上し、その翌々年、孝明天皇は、神護寺内の清麻呂の霊社に正一位護王大明神の神階神号を授けられた。さらに、清麻呂を評価する「和魂漢才實事篤行」碑を建立した。(6)同じころ、伝清麻呂真筆とされる「我獨慙天地」が世に出て、摺本として広がっていった。これについて、この書は真筆ではなく、維貞が造語して自ら筆を取ったのではないかと推定される。(7)五十代後半の安政年間、維貞の名が知られるにつれ、その人物を評価する正反対の見方が出てきて、身辺が緊迫してきた。維貞は真面目な吏職であるが、立場上、動きにも制限があり、世を動かすには上層部に取り入る必要もあった。そのことから誤解されることもあったであらう。(8)維貞の書いた文書類だけでなく、和歌、漢詩も収集できたものはすべて掲げ、解説した。