著者
岩井 千春 岩根 久 岩田 聖子
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

日英比較による苦情対応のについての量的研究―アンケート調査と談話完成テスト(Discourse Completion Test)を日米で実施し、分析を開始する1. アンケート調査の質問内容の設定: 苦情対応の事例と対応方法、そして、苦情対応に関する意識を日本と(英語母語国の)アメリカで調査するため、質問内容を作成した。質問の形式は選択と記述の両方を採用し、調査実施前には接客業務の経験がある、日本人とアメリカ人の協力者にパイロット調査を行い、質問紙の完成度を高めた。2. 談話完成テストの質問内容の設定:アンケート調査と同時に、日本とアメリカで実施する談話完成テストの内容を作成した。談話完成テストは特定の状況(本研究では苦情対応)での具体的な発話内容を調査するものである。本研究では、談話完成テストの中で使用する苦情の状況を設定するために、頻繁に発生するタイプの苦情を研究し、更に、談話完成テストの協力者が答えやすい苦情の状況と質問を設定した。回答協力者に回答方法をわかりやすく示すために、最初に例題と答えの例を提示した。また、前項のアンケート調査と同様にパイロット調査を行い、質問内容の完成度を高めた。3. 日本とアメリカでアンケート調査と談話完成テストの実施:アンケート調査と談話完成テストともに、調査方法はインターネットを利用し、両調査ともに日米で調査対象者を接客業で苦情対応を経験した者に限定し、その上で各国で300を超える有効回答数を得ることができた。4. 分析(分析は30年度も実施): 前項までの調査データを分析している。アンケート調査の記述式回答や談話完成テストの回答はカテゴリー化して、日本人とアメリカ人の語用論的パターンを分析している。
著者
萱島 知子
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、ローズマリー成分のカルノシン酸が精神的ストレスによるガン進行に与える影響を明らかにすることである。その結果、卵巣腫瘍細胞においてストレスホルモンにより増大した細胞増殖や血管新生促進因子の発現を、カルノシン酸が抑制することが明らかになった。カルノシン酸が、精神的ストレスによるガン進行の重要なターゲットとされている血管新生の抑制を介して、ガン進行を抑えることが示唆された。
著者
青木 歳幸 大島 明秀 ミヒェル ヴォルフガング 相川 忠臣 今城 正広 海原 亮 小川 亜弥子 金子 信二 田村 省三 保利 亞夏里 山内 勇輝 吉田 洋一 鷲﨑 有紀
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

3年間の種痘伝来科研において、1849年8月11日(嘉永2年6月23日)に到来した牛痘接種が九州各地へ伝播した様子が明らかになった。たとえば、佐賀藩では全額藩費による組織的な種痘を実施した。大村藩では、牛痘種子継料を全村から徴収し種痘を維持していた。中津藩では長崎から痘苗を得た民間医辛島正庵らが文久元年(1861)医学館を創設した。福岡藩領では、武谷祐之が、嘉永2年の末から種痘を始めた。小倉藩では、安政5年(1858)に再帰牛痘法を試みていた。九州諸藩における種痘普及により、洋式医学校の設立など地域医療の近代化をめぐる在村蘭方医の人的ネットワークが主要な役割を果たしていた実態が判明した。
著者
高妻 洋成 降幡 順子 脇谷 草一郎 福永 香 佐野 千絵 吉田 直人 犬塚 将英 小川 雄一 大谷 知行 林 伸一郎 水野 麻弥
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

ミリ波およびテラヘルツ(THz)波を用いた文化財の非破壊非接触診断技術の開発研究をおこなった。THz波については種々の材料のTHz分光スペクトルを取得し、材料分析のための基礎データを作成した。彩色文化財に対してTHz波イメージングおよびミリ波イメージングを応用するための基礎実験をおこなうとともに、木製彩色文化財および漆喰壁画に対してイメージングを実施した。ミリ波およびTHz波は文化財の表層にある程度侵入して、その内部構造を可視化することが可能である。さらにTHzイメージングでは、パルス波を用いることで、時間領域分光法により断面構造や任意の深さにおける平面的なイメージングも可能である。障壁画などの彩色層下にあってある程度の厚みをもつ下地漆喰などの状態や表具や額装などの絵画の構造について、従来、得ることのできなかった情報を非破壊で知ることが可能となった。
著者
安川 正貴
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

がんに対する抗体療法の抗腫瘍効果は抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性に依存している。ADCCは細胞表面に発現しているCD16を介してNK細胞が担っており、T細胞にはCD16発現が陰性であるのでADCC活性がない。本研究では、CD16-CD3zキメラ遺伝子を作製し、活性化CD8陽性T細胞に導入した。このCD16-CD3z-T細胞は抗体存在下で高いADCC活性を示すことがin vitroで明らかとなった。さらに、CD16-CD3z-T細胞と抗体併用療法は、ヒト腫瘍を移植した免疫不全マウスを用いたin vivo実験系でも高い抗腫瘍効果が示された。
著者
佐々木 史郎 吉本 忍 日高 真吾 齋藤 玲子 右代 啓視 宮地 鼓 ベレズニツキー セルゲイ マイコヴァ ナジェージュダ ソコロフ アンドレイ ペルヴァーク ヴィクトリア シャグラノヴァ オリガ プタシェンスキー アンドレイ
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では日本とロシアの博物館に収蔵されているシベリア、極東ロシアの先住諸民族と日本の先住民族アイヌの織機と布製品を調査し、北方寒冷地域における織布技術の分布と布の機能を明らかにしようとした。その成果として、以下の2つの結論を得ることができた。第1には、北方寒冷地域における独自の織布技術と布の分布が、当初の予想に比べてはるかに北に広がり、種類も豊富だったことである。第2には、アイヌの事例が他の北方諸民族と比べると特異で、近代化の波に洗われたのにもかかわらず、独自の織布技術と布を現代まで継承してきた点である。それはそれらが民族アイデンティティと結びついていたからではないかと考えられる。
著者
田部井 賢一
出版者
日本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の骨子は、音楽の情動的な意味の処理に関わる脳内メカニズムの解明を目的に、脳機能イメージング研究を実施することであった。採用期間中に、1)基本情動を表現する音楽に関する予備的調査研究、2)音楽の持つ情動表現の認知に関わる脳部位についての研究、3)音楽の持つ情動表現の評定と、音楽によって喚起された聴き手の内的な情動反応の評定にかかわる脳内機構に関する研究を、当初の予定通り実施した。その結果、音楽の持つ情動表現の評定と、音楽によって喚起された聴き手の内的な情動反応の評定では前頭前野、聴覚野、後部頭頂皮質、帯状回、楔前部に共通した活動が見られた。一方、情動表現では下前頭回により強い活動が見られ、情動反応では楔前部により強い活動が見られたことから、それぞれの領域が各課題にとってより重要である可能性を示唆した。また、音楽の持つ情動表現の評定には、音楽の専門的な学習の有無にかかわらず、左下前頭回がより重要な役割を持つと考えられた。
著者
矢原 徹一
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

有性生殖は生物界に広くみられる性質だが、その進化的意義はよくわかっていない。さまざまな理論が検討された結果,今日では病原体と対抗進化するうえでの利点が最も有力視されている。本研究はこの仮説を検証することを主要な目的として行なわれた。ヒヨドリバナには有性型と無性型があり,有性型は2倍体,無性型は倍数体である。両者の適応度を比較する場合,倍数性のレベルのちがいについても考慮する必要がある。本研究ではヒヨドリバナ有性型・無性型の適応度成分を野外集団および実験集団を用いて比較した。実験集団を用いた研究から,無性型は巾広い光・栄養条件の下で有性型よりも大きな純生産速度を持つことが示された。この事実は倍数性のレベルの高さが無性型の適応度を高めていることを示唆する。野外集団では無性型は有性型に比べ約8倍の種子を生産していることが明らかになった。この大きな差は純生産速度のちがい、および無性型の開花成熟サイズが有性型よりも大きいというちがいに由来すると考えられる。これらの結果は,有性型・無性型の進化には倍数性であることの利点・欠点が大きな役割を果していることを示唆する。一方、有性型はジェミニウィルスに対する感染率が平均4%であったのに対し、無性型は平均27%の個体が感染・発病していた。感染・発病した個体では種子稔性が有意に低下しており、病原体が無性型の適応度を下げる要因として作用していることが確認された。本研究は無性型が有性型に比べ病原体の攻撃をうけやすいことを野外集団で示した植物でははじめての研究例である。
著者
石田 貴文 古澤 拓郎 大橋 順 清水 華
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

インドネシアで新たな公衆衛生的課題となっているストレスやうつ病を進化医学的に分析し、リスク要因としての遺伝的多型と、社会の個人主義化の影響を明らかにする研究である。セロトニン・トランスポーター遺伝子やオピオイド受容体遺伝子等の多型がうつ病やストレスと関係することが知られているが、最近の研究によればこのリスク型はアジアの集団主義的社会に多く、そのような個人が個人主義社会に移住することや、人間関係の急変により疾病を発症する可能性が指摘されている。個人主義化が進むインドネシアにおいて、国立中核病院等を拠点としたケース・コントロール研究と、地域社会での横断的研究を用いた研究デザインにより、この因果関係を検証する画期的研究であると同時に、その成果から健康社会の在り方を提案する社会実装型研究である。現在、マカッサルのハサヌディン大学と共同研究を推進しているが、他の研究協力校を開発するため、スマトラのメダンを訪問した。また、トラジャ族を調査対象集団としているが、マカッサルの南西に住むカジャン族の集落の現状を視察した。セロトニントランスポーターをコードするSCL6A4遺伝子のプロモーター領域内に位置する挿入欠失多型(5-HTTLPR)は、うつ病との関連が、μオピオイド受容体をコードするOPRM1 遺伝子エクソン1に位置するアミノ酸置換(rs1799971) は統合失調症との関連が報告されている。インドネシア人患者サンプル46名について、SCL6A4遺伝子の5-HTTLPR 多型をPCRと電気泳動 により、OPRM1 遺伝子のrs1799971をTaqMan法により遺伝子型を決定した。一方、ストレス指標としてテロメア長をPCRで定量した。
著者
塩川 博義 梅田 英春 皆川 厚一 豊谷 純 イ・マデ・カルタワン 杉山 昌子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

バリ島で一般的に使われているガムラン・ゴング・クビャールを中心に、日本とバリ島で、約90セットのガムランの測定し音響解析を行ってきた。その結果、それらの音高はバリ島における地域や時代によって異なることがわかってきた。特に、教育機関に関わりのある11セットのガムラン・ゴング・クビャールを測定した結果、それらの音名1(ding)の音高は、C#かDであり、特にASTIより新しいそれらは、いずれもC#であることを明らかにした。また、ガムラン・ゴング・クビャールよりも古いガムラン・プレゴンガン 7セットの音高を分析した結果、音名1における音高は、いずれもC# からD# の間であることを明らかにした。
著者
川井 浩史
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

褐藻アミジグサ目内における強酸蓄積種の分布を明らかにするとともに,イオンクロマトグラフィーを用いた細胞内無機イオンのうち陽イオン(ナトリウム,アンモニウム,カリウム,マグネシウム,カルシウム),陰イオン(塩素,硝酸,亜硝酸,臭素,硫酸)を対象に濃度の解析を試みた,その結旺,アミジグサ目の種は,硫酸イオン濃度と細胞内pHの値から大きく以下の3つのタイプに分類された:1)硫酸イオン非蓄積型(細胞抽出液は強酸性を示さず,海水と同程度の硫酸イオン濃度を蓄積する種);2)強酸性硫酸イオン蓄積型(細胞抽出液は強酸性を示し,高濃度の硫酸イオンを蓄積する種);3)非強酸性硫酸イオン蓄積型(細胞抽出液は強酸性を示さず,高濃度の硫酸イオンおよびマグネシウムイオンを蓄積する種).このことは硫酸イオンが高濃度含まれていても,それに見合う水素イオン以外の陽イオンが含まれていれば細胞内が強酸化しないことを示している.また,強酸性硫酸イオン蓄積型のヘラヤハズには,細胞内pHおよび硫酸の蓄積裏に季節的な変動性は観察されなかったが,非強酸性硫酸イオン蓄積型のアミジグサには,硫酸マグネシウム蓄積裏に季節的な変動性が観察された.結論として,アミジグサ目の多くの種が本来,硫酸イオンを高濃度蓄積する能力を持っているが,一部の種のみが硫酸イオンと同時に水素イオンを高濃度蓄積することで強酸性を示すものと考えられる.また,葉緑体に含まれるrbcL遺伝子の分子系統学的解析においても,強酸性種または硫酸蓄積種が単一のグレードをなすことはなく,同様の硫酸イオン蓄積が目内で一度だけ進化したとされるウルシグサ目の場合とは対照的な結果が得られた.
著者
山本 由美
出版者
和光大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

学校統廃合の実態について日米比較研究を行った。日本については、46都道府県別の戦後改革期以降の年度別廃校数の推移について調査を行った。学校統廃合には、①第1のピーク、昭和の大合併期、②第2のピーク、1970-73年の過疎地対策振興法のもとでの小学校統廃合、③第3のピーク、2000年前後の新自由主義教育改革期の統廃合と区分されてきたが、自治体によって状況が異なることが明らかになった。また、アメリカのデトロイト市とシカゴ市の大規模統廃合について、デトロイト市では小・中の統合、すなわち小中一貫校を用いた統廃合によって2003年から2013年の間に公立学校数が3分の1になったことが明らかになった。
著者
河野 一郎 赤間 高雄
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

運動が健康の増進・維持に効果があるという考えが広く受け入れられるようになり、健康スポーツがますます盛んとなっている。本研究では健康の維持・増進に有効とされている有酸素運動が免疫機能とくに細胞性免疫機能に与える影響を検討した。有酸素運動の習慣をもつ成人では細胞性免疫機能とくにナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性が運動習慣のないものと比較すると男女とも高いことが明らかとなった。また、経時的にNK細胞活性の変動をみると、日々の運動量が増すに従い活性が高値を示していくことも明らかとなった。つぎに、このような有酸素運動がNK細胞活性へ与える影響の機序を探る目的でNK細胞にレセプターを持つカテコラミンなどのホルモンとの関係を検討した。急性の有酸素運動負荷により、各種ホルモンがNK細胞活性の変動の平行して変動することが明らかとなった。また、マウスを用いた実験系ではカテコラミンの共存下ではその濃度によりNK細胞の活性が影響を受けることも示唆された。かかる成績から有酸素運動が免疫に与える影響の機序には複数の因子が関与していると考えられた。また、情報伝達物質であるサイトカインの関与についても検討したが、運動により変動するという結果を得たのみで機序への関与については今後の課題となった。今後運動と免疫に関する研究をさらに進めるためには情報伝達物質の関与を含め様々な視点からのアプローチが必要と考えられた。
著者
山田 英二
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

英語の語の強勢配置を説明するために提案された位置関数理論(Yamada (2010))では「副次」強勢配置の説明のために16個の位置関数を措定してる。その後、「主」強勢を説明するためには3個の「位置関数」が必要であることが明らかにされた。本研究ではその妥当性を確かめた。その結果、3個の位置関数で十分に説明できることが明らかとなった。さらに、「位置関数理論」の妥当性を、「電子データ」を用いて検証した。まず基礎データとなる電子データを確定した。次に、それを基に位置関数の一つであるACS(Alveolar Consonant Sequence)の検証を行ったところ、その観察的妥当性が明らかとなった。
著者
角田 世治
出版者
地方独立行政法人青森県産業技術センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

可視光に応答するオキシ水酸化鉄(FeOOH)に着目し、その高活性化を目指し、結晶多形、粒子形状と光触媒活性の関連性を調べた。まず、FeOOHの4種の多形のうち、α-FeOOHが光照射下で最も高い有機物分解活性を有することが判明した。次に、α-FeOOHの粒子形態と活性の関連から、{021}面が高い光触媒活性を有し、この面が多く露出した形態の粒子は活性が高いことを明らかにした。そして、この表面特性に立脚した粒子形態制御により、高活性なα-FeOOH光触媒を得ることに成功した。本研究により、表面特性を考慮した材料設計が、高活性光触媒材料の開発の上で重要な柱になることが示された。
著者
近藤 滋 武田 洋幸 上野 直人 松野 健治 松本 健郎 芳賀 永 井上 康博 秋山 正和 大澤 志津江
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-11-06

主な活動は以下の4点である。1:7月10,11日にアメリカ合衆国カリフォルニア大学アーバイン校と合同で、3D形態形成に関するシンポジウムを開催し、同時に、今後の技術協力体制の拡大に関して話し合いを行った。アメリカ側の主催者であるKen Cho博士は分子発生学の世界的な権威であり、今後も、交流を続けることを確認した。2018年の本研究班の班会議にKen cho博士を招き特別講演をお願いすることが決まっている。また、上野研究室との共同研究も現在進行中である。2:河西通博士をHarvard Medical School のSean Megason研究室へ派遣し、ゼブラフィッシュ胚における組織の3次元構造の発生機構の研究を共同研究で行っている。これは前年度からの継続である。昨年度より、細胞レベルでの挙動を定量的に解析しており、特に、In toto imagingなどの観測技術を武田研究室に移植している。河西通博士の派遣は、2018年度で終了する予定。3:近藤班の3名が、前年に引き続き、コスタリカでツノゼミサンプルの採取を行った。今年度は、プロジェクトの目的がはっきりしており、特にヨツコブツノゼミの幼虫、ヨコツノツノゼミの幼虫、の2種に絞り、採集を行った。結果として、それぞれ70匹、200匹のサンプル採集に成功し、エタノール固定ののち、コスタリカ大学ポールハンソン教授の仲介で、日本に送付していただいている。今後の近藤班の研究は、このサンプルの解析が中心となる。4:近藤研究室の学生、松田佳祐を3D形態の計算で世界的に有名なプルシェミック研究室に約2か月滞在させ、原基の折り畳みソフトの高速化技術を学び、昨年作った展開ソフトを改良した。
著者
近藤 滋 芳賀 永 秋山 正和 松本 健郎 上野 直人 松野 健治 武田 洋幸 井上 康博 大澤 志津江
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

28年度の総括班では、既に、班としてのシステムの構築がほぼ終わっているために、既存の共有装置の維持管理が主なものになる。2機の3Dプリンターは、全班員の研究に有効に使用されている。28年度に、総括班費で購入した機器は、顕微鏡用の共焦点レーザーユニット(北海道大学:999万円)と、ズーム顕微鏡(基礎生物学研究所:299万円、原子間力顕微鏡の一部として購入)である。いずれも、他の資金で購入したパーツと組み合わせることで、購入金額の節約をしている。両装置とも、3D形態の計測に必須であり、共同利用が進んでいる。班会議は北大で、5月23,24日に行った。理論系と実験系の交流を目的とする夏、冬の合宿は、9月4,5,6日と、3月28、29日に、淡路島、琵琶湖で行った。いずれも、学生の旅費の補助を総括班費から支出している。これまで、合宿は主に比較的少人数で行ってきたが、2016年度は、公募班員からの希望が多かったために、冬の合宿では会場を変えた。非常に活発な議論が行われたが、参加者が多くなりすぎたため、プロジェクトごとの議論の時間が逆に短くなり、やや、食いたりない面もあった。この点の解消が、今後の課題として残された。北海道大学の秋山は、定期的に、数学と3Dソフトの講習会を行っており、そのための実費(交通費、宿泊費)の支援を行った。その他、HPの更新に約30万円を支出している。
著者
近藤 滋 後藤 寛貴
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

研究はカブトムシとツノゼミの2つを対象にして、原基折り畳みと成虫の3D形態との関係の解明を目指している。カブトムシ:28年度の主な進展は、角原基の折り畳み構造が、蛹角の完全な3Dを内包していることを証明できたことである。実験は3通りの方法で行った。まず、終齢幼虫の頭の殻を取り除き、腹に圧力を与えることで、原基が膨らみ、蛹角の形状になることを証明した。次に、その変形に細胞シートの伸展が関与していないことを証明するため、原基を切り出し、ホルマリンで固定したのちシリコンチューブに固定し、空気を送り込んで膨らますことで、正確な蛹角ができることを示した。最後に、連続切片から取得した原基の折り畳み形状を、計算機の中で膨らませることでも、同じ変形が起きた。この結果から、蛹角の完全な3D構造は、角原基の折り畳みにコードされていることが完全に証明された。(論文審査中)ツノゼミ:コスタリカに研究員を派遣し、最も注目しているヨツコブツノゼミの採集に成功している。また、羽化直前の幼虫も少数ながら確保しX線CTにより、折り畳み形状のデータを取得できた。まだ、解析は十分ではないが、多種多様の形状を見せるツノゼミのツノが、基本的には似た折り畳み様式を持っていることが示唆され、今後の研究の指針が得られた。技術的な進展:カブトムシ、ツノゼミともに、原基の3D形状のデータ取得方法の試行錯誤に多くの時間を費やしたが、その成果は十分にあり、今後の研究の加速が期待できる。