著者
桂島 宣弘
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

東アジア史学思想研究会を合計7回開催した。開催日と報告者は以下の通り。①2017年6月9日「近代朝鮮儒学史の形成」ロ官汎(韓国・ソウル大学校)②2017年6月17日「戦後日本の普遍主義を問う-権赫泰『平和なき「平和主義」』を読む」廣瀬陽一(大阪府立大学)、原佑介(立命館大学)、権赫泰(韓国・聖公会大学)③2017年7月1日「日本史学史を問う-岐路に立つ歴史学の行方」戸邉秀明(東京経済大学)、田中聡(立命館大学)④2017年10月7日「近世日中思想交渉に関する最近の研究」徐興慶(台湾・中国文化大学)「近世~近代日中韓における儒学思想交流」許怡齢(台湾・中国文化大学)⑤2017年10月20日「わが日本史研究修行」張憲生(中国・広東外語外貿大学)⑥2017年11月3日「近代における勧善書への眼差し」肖ゴン(中国・キ南大学)⑦2018年1月27・28日「近代歴史学と実証主義の陥穽」桂島宣弘(立命館大学)「傅斯年史学の興衰」呉炳守(韓国・東北亜歴史財団)「植民主義歴史学を超えて:植民主義歴史学のイデオロギーと近代歴史学」尹海東(韓国・漢陽大学校)「近代日本の朝鮮研究:統計的アプローチ」張信(韓国・教員大学校)「国史と東洋史の狭間:京城帝大と「東洋文化研究」」鄭駿永(韓国・ソウル大学校)「植民地における帝国日本の歴史編纂事業:朝鮮と台湾の事例を中心に」鄭尚雨(韓国・翰林大学)「戦後における末松保和の朝鮮史研究:連続と断絶」辛珠柏(韓国・延世大学校)「朝鮮史から韓国史へ-東アジアにおける「文化史学」の受容について」沈煕燦(立命館大学)「北朝鮮の朝鮮古代史研究と金ト奉」李廷斌(韓国・忠北大学)。本年度の科研費の多くは、これら日中韓台の研究者の招聘に用いられた。また、研究代表者は、これまでの研究のひとまずのまとめとして1月27日の研究会で基調講演を行った。
著者
加藤 久典
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

個別化疾病予防のため、食品の効能に対する個人差をゲノムレベルで解明することが重要であるが、日本人集団を対象とする研究は乏しかった。本研究は食品因子と一塩基多型(SNPs)の関連の解明を目的とし、大規模日本人SNPsデータベースと食品摂取に関するアンケート調査を用いてゲノムワイド関連解析を実施した。着目した4つの食習慣に有意に関連するSNPsを同定し、インターネットによるゲノムコホート研究が有用であることを示した。特に、遺伝型によって魚の摂取頻度が変化することを初めて明らかにした。さらに、ヨーロッパ系集団と異なるSNPが日本人集団では食習慣に影響することを示した。
著者
大和 裕幸 渡辺 岩夫 小山 健夫
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1994

「SES型高速艇(側壁型エアクッション艇)の運動制御システムの研究」は平成6、7年度の二カ年に渡り行われた。このタイプの高速船では、ある海象条件以上では、波浪に対する船体運動応答とそれにより生ずる推進性能の低下が起こり、高速が出し得ないという定時性の重要視される高速交通機関では致命的な問題がある。本研究では、シミュレーションを通して、この船舶の波浪中の推進性能、運動応答を把握し、その特性を理解することから始めた。SES型高速艇の運動は、いわゆる非線形影響の無視できない力学系で、制御系としての取り扱いも難しく、船体に取り付けられたルーバーとフインを用いてバンバン制御やファジ-制御で俊敏な応答が必要であることがわかった。また、波高に対する船体推進性能の特性をシミュレーションに抵抗成分を取り入れることで大雑把に把握したが、このことは制御系設計により船体計画の段階から取り入れる手法を示し、今後の船舶設計のあり方として非常に示唆に富むものと考えられる。非線形影響の大きい系に対して、理論的に制御システムに取り込むことは困難であるため、スライディングモード制御手法を用いて非線形に応じた制御入力を設定出来るシステムの有効性について検討した。スライディングモード制御は基本的に非線形性の比較的弱いところに有効でかなり強い非線形影響をもつSES型高速船の運動には工夫が必要であることがわかったため、それを改良した修正スライディングモード制御手法を提案、本システムでシミュレーションを用いて検討した。これらSES型高速艇の制御手法を運動応答の解析と、非線形制御手法の検討から本研究を取りまとめた。本研究は、今後のSES型高速艇実用化への最も重要な課題を一つとなるもので、研究的にもまた実際の設計上も重要なものであると自負している。
著者
荻野 富士夫
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本課題で明らかにすることは、十五年戦争以前の植民地統治における各「治安体制」の構築を前史に、「東亜新秩序」から「大東亜新秩序」への膨張のなかで、憲兵・警察・司法を基軸とする「治安体制」の形成・運用過程を追跡することである。「東亜新秩序」から「大東亜新秩序」=「大東亜共栄圏」への創出を下支えし、日本の植民地統治・帝国統治の保守・防護・膨脹を強権的に担ったのが、「東亜治安体制」、そして「大東亜治安体制」であるという仮説の検証を目的とする。その際、国内および植民地の「治安体制」では特高警察・思想検察・思想憲兵などが相互に協調・競合しつつ、最終的に戦争遂行体制の構築に突き進み、それぞれが官僚群としての優秀性を示して全体として「治安体制」をつくりあげた。一方、「大東亜治安体制」の場合、軍を背景とする憲兵が主導権を握ったと考えられる。この課題遂行にあたり、まず日本国内・植民地および占領地における憲兵の治安機能について検証し、3月刊行の『日本憲兵史』としてまとめた。とりわけ「満洲国」および中国・東南アジアの占領地域における野戦憲兵としての特質に注目したが、台湾・朝鮮における憲兵統治の実態については先行研究に依拠することになったため、今後、本課題に即して検討を加えなければならない。また、6月刊の『よみがえる戦時体制』(集英社新書)において、戦前治安体制全般の総括をおこなった。一九二〇年代に浮上した総力戦構想が満洲事変を契機に本格的な実行段階に入り、日中全面戦争への突とともに加速し、一九三八年の国家総動員法の成立、四〇年の大政翼賛会の成立、四一年の国民学校令の制定と治安維持法の「改正」などを指標に、対米英戦争を前に「戦時体制」の確立をみたといえる。これらのほかに、第1年度は軍政関係の基本的な文献史料の収集に努めた。
著者
山田 洋士
出版者
石川工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度の計画では、発展的な学習を促す教材仕様の明確化と実現を目的としていた。また、昨年度までの研究実施においては、使用する無線信号用インタフェースの時間同期精度が十分でないことが、大きな制約事項となっていた。そこで、発展的な学習を促す教材の例として、ソフトウェア無線実験環境を活用して、無線伝送路のインパルス応答測定を可能とすることを目指した。実用面での検討が進むmultiple-input and multiple-output(MIMO)通信方式においては、無線伝送路特性を定量的に把握することが必要である。しかし、高専や大学などの高等教育機関で現実的に準備が可能な設備を用いて無線伝送路特性の実測を行うことは、容易ではない。パソコン(PC)とソフトウェア無線(software-defined radio:SDR)装置を組み合わせた種類のソフトウェア無線実験環境(PC-SDR)により無線伝送路のインパルス応答特性を実現できれば、基礎的事項の習得に有効であるとともに、PC-SDRの利用範囲を拡大する事例となる。PC-SDRでは、PC上でのソフトウェアによる信号処理及びPCとSDR装置間でのデータ伝送に伴う処理遅延がそれぞれ存在し、遅延時間が変動することも多い。処理遅延の影響を考慮せずに測定を行った場合には、測定結果には信頼性がない。この問題はPC-SDRを計測に使用する際の妨げとなっている。報告者は、M系列を用いて送信用ベースバンド信号と復調信号の相互相関値のピークに基づき送受信信号間で時間的な同期を確立する手法の利用を検討した。音響系のインパルス応答測定で実績のあるTSP(time stretched pulse)信号を用いて920MHz帯で測定対象のインパルス応答算出を行い、その結果の検証を行った。その結果、正当な結果が得られたことを確認した。
著者
末次 大輔 東野 陽子 山田 功夫 深尾 良夫 坪井 誠司 大林 政行 竹内 希 田中 聡 深尾 良夫 坪井 誠司 大林 政行 竹内 希 石原 靖 田中 聡 吉光 淳子
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

本特定領域研究により得られた海底・陸上地震観測データと既存観測データにより、西太平洋マントル遷移層に滞留するスラブの鮮明なP波、S波速度イメージや相転移面の深さ分布を推定した。その結果、スラブが滞留する前に断裂していること;沈み込むスラブ内部にはプレート生成時の異方性が保存されているが、滞留スラブではそれが見られないこと;滞留スラブの主要部分の温度は周囲より500度低く、水はほとんど含まれていないこと、などが明らかになった。
著者
高梨 美穂
出版者
多摩美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、直示動詞である「行く」「来る」の母語習得のメカニズムを明らかにし、使用依拠モデル(Tomasello2003)による 、言語と一般認知能力との関係解明に貢献することである。「行く」「来る」は、直示動詞であり、基本動詞でもあることから、意味の範囲も広く、6歳でも完全には習得されない(正高1999)といわれており、習得過程、習得が完成する時期については明らかになっていない。従って、本研究では「行く」「来る」はどのような過程を経て習得し、その完成はいつ頃なのかを明らかにするべく調査を行っている。研究方法は、コーパスによる研究と、ビデオ実験による研究の2つである。平成29 年度は、主として、コーパスによる分析を行った。コーパス分析に関しては、国立国語研究所『言語教育研究部資料 幼児のことば資料』およびCHILDESを用い、インプットとアウトプット双方の質的分析を行った。平成29年度現在では、4歳までのデータのコーディングと質的分析がほぼ終了している。主として本動詞に加えて、補助動詞としての「行く」「来る」の分析を行った。本動詞では、「行く」のほうが「来る」よりも初出も早く使用頻度も高かったが、補助動詞としての「行く」と「来る」ではそれとは違う結果であった。補助動詞「行く」「来る」はほぼ同時に現れはじめ、頻度は補助動詞「来る」の方が多かった。これには補助動詞「来る」のほうが「行く」よりも語彙としての種類が多く、また補助動詞「行く」「来る」の習得は、互いに関わり合っているためだと考えられる。現在、その成果を発表すべく、学会発表の準備に取り組んでいる。習得には遊びを通しての学習が見られるため、子どもが触れる機会の多い媒体である絵本、童話にあらわれる「行く」「来る」の分析も併せて行った。こちらはもう少し分析、考察を進めた後、学会にて発表する予定である。
著者
高橋 秀典
出版者
東邦大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の実験材料は、特定外来生物に指定されている水生植物のナガエツルノゲイトウである。ナガエツルノゲイトウの茎は中空であるため、回収駆除の過程で容易に断片化して流失する。問題なのは、ナガエツルノゲイトウは茎断片からの個体再生力が非常に高いことである。この強い繁殖力によりナガエツルノゲイトウは河川や水田等で繁茂し、日本のみならず世界で生態系および農水産業に悪影響を与えている。本研究ではナガエツルノゲイトウを用いて、これまでに主に茎断片からの個体再生における光の役割に関して研究を行ってきた。平成29年度は、茎断片からの個体再生がそもそもどのような仕組みにより引き起こされているのかという疑問を解決するため、植物において形態形成や発生、環境応答、遺伝子発現など様々な現象に関わる重要な因子である植物ホルモンが、茎断片からの個体再生において果たす役割を調べた。様々な形態のナガエツルノゲイトウの茎断片を用意し、まず、植物ホルモンを添加しない状態で培養し、芽や根の発生の様子を観察した。その結果、ナガエツルノゲイトウの茎断片からの芽の発生には、断片にはなっていない一般の植物個体でみられるような芽の発生と似た仕組みが存在している可能性が高いことがわかった。そこで次に植物ホルモンを添加した状態で、同様に様々な形態のナガエツルノゲイトウの茎断片を培養し、芽や根の発生の様子を観察した。その結果は、ナガエツルノゲイトウの茎断片からの芽の発生には一般的な植物個体と同様の機構が関与している可能性が高いという、前述の考えを支持するものであった。
著者
内尾 英一
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

結膜炎をヒトに生じる型に対して,ガンシクロビルの有効性を検討した。A549細胞の培養系とアデノウイルス3, 4, 8, 19aおよび37型を用いた。さまざまな濃度に希釈したガンシクロビルをアデノウイルスに24時間作用させた。7日間培養後に定量PCR法でアデノウイルスDNAを測定した。細胞毒性はCC50,抗ウイルス作用はEC50によって評価した。ガンシクロビルのCC50は平均で212 microg/mlであり,EC50は2.64~5.10 microg/mlであった。有意な抑制作用はすべての型にみられた。今後ガンシクロビルがアデノウイルス眼感染症の治療薬として使用する可能性が示された。
著者
佐藤 慎二 佐々木 則子 野木 真一
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

皮膚筋炎(Dermatomyositis: DM)に見出された抗CADM-140/MDA5抗体(抗MDA-5抗体)は,治療抵抗性で予後不良の急速進行性間質性肺炎(rapidly progressive interstitial lung disease: RP-ILD)と密接に関連することがあきらかになっている.本研究での同病態における各種サイトカインレベルの検討でIL-6がより重要な役割を果たしている可能性が示唆された.また,臨床的には抗MDA5抗体価がRP-ILDを併発したDMの短期的な予後予測や長期的な再発予測に有用である可能性が示唆された.
著者
横地 高志 杉山 剛志 加藤 豊
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

エンドトキシンとD-ガラクトサミンをマウスに投与すると、実験的エンドトキシンショックが誘導される。この実験的エンドトキシンショックの病態におけるアポトーシスの関与が検討された。エンドトキシンショック誘導マウスの各臓器からDNAを抽出し、アガロースゲル電気泳動で展開したところ、肝臓に明らかなDNA断片化が認められた。また、ニックエンド法で染色したところ、肝細胞が陽性に染まり、肝細胞がアポトーシスを起こしていることが明らかとなった。また、腎臓も陽性に染色される部分があった。エンドトキシンショック誘発マウスの血清とD-ガラクトサミンとの移入により、アポトーシスが誘導され、アポトーシス誘導に血清中の因子の関与が推定された。抗TNF抗体の投与によって肝アポトーシスが抑制されたことから、エンドトキシンによって遊離された血清中のTNFがアポトーシル誘導因子であることが推察された。TNFとD-ガラクトサミン投与によって、肝アポトーシスが同様に誘導されたことからもTNFの関与は明らかになった。その他のサイトカインによる作用は認められなかった。このエンドトキシンショックに伴った肝アポトーシスにFas抗原の関与を調べるために、Fes抗原陰性のMRL lpr/lprマウスを用いて検討したところ、同様に肝アポトーシスが起こったことから、Fas分子の関与はないと考えられた。以上の結果から、エンドトキシンショックの病態にアポトーシスが関与し、特にTNFが主要な作用分子であることが明らかになった。エンドトキシンショックにおいて、臨床的に肝壊死と呼ばれていた現象が実際は肝アポトーシスであることも示唆された。
著者
佐藤 真 森 泰丈 岡 雄一郎 猪口 徳一
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

実験を進めるに従い、予想外であったが「マイクログリアの活性化状態には3つ以上のフェーズが存在する」ことを支持する結果を得た。アルギニンメチル化酵素がこの活性状態の遷移に本質的な役割をになうことを、CRISPR/Casのシステムをマイクログリア由来の細胞株に適用することで検証した。同時にPTSDの病態の脳内回路を解明するため、島皮質から前帯状回に投射しPTSDの病態に重要であるとヒトでの所見より想定されるが、高等哺乳類の脳にのみ存在するため実験的アプローチが困難とされていたvon Economo細胞の類似細胞が発現マーカーの検討により、げっ歯類島皮質にわずかであるが存在することを観察した。
著者
佐藤 潤
出版者
福島工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

・研究目的および手法アルギン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液が混合されて、多価イオン架橋が起こり、アルギン酸カルシウムゲルが形成する、いわゆる"人工イクラ"といわれる実験は広く行われている。この実験では、多くの場合球状のゲルが形成するが、反応が瞬時に起こるため、ゲルの形成過程の解析が容易ではない。そこで、本研究では、アルギン酸ゲルの形成過程の観察およびゲル化時間の推定を試みた。・研究手法二液が接触し、アルギン酸ゲルが形成するまでの過程をハイスピードカメラによる動画撮影により観察を行い、得られた結果よりゲル化時間の推定を行った。・研究成果これまでの実験結果より、アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液に上部から滴下した場合、滴下時の液滴の形状を保持したままゲルが形成するのではなく、接触による衝突によって一度変形した後に、ゲルの形成過程において改めて球状になることが明らかとなり、10ミリ秒程度でゲル化が完了すると推定した。しかし、ゲルがどの時点で形成するかが不明瞭であったため、ほかの手法について検討を行ったところ、塩化カルシウム水溶液中にアルギン酸ナトリウム水溶液をシリンジにて側面から吐出する方法を用いたところ、吐出直後は, 直線的な挙動を見せるが, ある点を過ぎると流れが乱れ, 非直線的な挙動となる. この流れの挙動が変わる点で, アルギン酸ゲルが形成されると考えられ、この結果より、ゲル化時間を推定したところ、4ミリ秒程度でゲルが形成するという結果が得られた。なお、流れの挙動の変化とゲルの形成との関係性について、検討が必要な部分が残っており、今後の課題である。
著者
神尾 宜昌 清水 一史 今井 健一 田村 宗明
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalisが産生する酵素によりインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)を開裂し、ウイルス感染を促進するか検討した。その結果、P. gingivalisによりHAは開裂し、ウイルスが宿主細胞に感染できるようになることが明らかとなった。P. gingivalisは、トリプシン様酵素であるジンジパインを産生することから、ジンジパイン阻害薬ならびにジンジパイン欠損株を用いて検討を加えた。その結果、アルギニンを切断するジンジパイン(Rgp)がHAを開裂し、ウイルスの感染性獲得に関与することが明らかとなった。
著者
吉澤 文寿 太田 修 浅野 豊美 長澤 裕子 李 東俊 金 鉉洙 薦田 真由美 金 慶南 金 恩貞 李 洋秀 山本 興生 ミン ジフン 成田 千尋 李 承宰 李 洸昊 金 崇培
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

この研究では、日韓国交正常化問題資料の整理及び刊行作業を行った。そして、日本、韓国、米国などの公文書館、資料館で収集した資料を用いて、韓国からの研究者の協力を得て、研究会、パネルディスカッション、シンポジウムを開催した。その結果、日韓国交正常化交渉で議論された請求権および歴史認識問題に関する論点について、国交正常化以後の時期を含めた展開を視野に入れつつ、日米韓三国それぞれの立場から、相応の責任が生じているという一定の見通しを提示することができた。
著者
堀 哲郎 有村 章 ECKHART Simo 武 幸子 高木 厚司 片渕 俊彦 粟生 修司 SIMON Eckhart RIEDEL Walte SIMON Eckhar
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本年度は2年計画の2年目に当たり、以下のような成果を得た。1.侵害環境適応反応発現を媒介する神経活性物質の作用機序の解明in vivoマイクロダイアリシス法により測定した無麻酔ラット前頭前野のノルアドレナリン(NA)放出は、拘束ストレスによって亢進し、この反応は、corticotropin-releasing factor(CRF)の脳室内前投与によって著明に減弱した。また、CRFの脳室内投与で、前頭前野のNA放出は増加した。従って、拘束ストレスによって脳内のCRF系が活性化され、その結果前頭前野でのNA放出が増加すると考えられた。2.侵害環境適応反応発現における脳サイトカインの作用機序の解明(1) 脳スライス標本におけるIL-1βの迷走神経背側運動核(DMV)ニューロンに対する作用:IL-1βはDMVニューロン幕に直接作用し、プロスタグランディン(PG)系物質を介して抑制性に作用することを示した。IL-1βによる胃酸分泌抑制機序の一つと考えられる。(2) ラット侵害受容行動に対するIL-6の作用:ラットの脳室内にIL-6を注入すると、用量依存性にホットプレートテストによる痛覚過敏が観察された。この反応は、α-MSHの前投与で阻害され、また、脳内PG系物質の産生を介していることが明らかになった。(3) IFNαによる免疫抑制反応の脳内作用部位の同定:IFNαを視床下部の各部位に微量注入し、脾臓ナチュラルキラー(NK)細胞活性を測定したところ、内側視索前野(MPO)注入時のみでNK活性の低下が観察された。3.侵害環境適応反応発現におけるサイトカインの媒介物質機構としてのアラキドン酸代謝系の関与の解明PGE2をラットMPOに微量注入すると、脾臓NK細胞活性が有意に抑制された。ラット脾臓交感神経の活動は、PGE2のEP1受容体アゴニストの脳室内投与でPGE2と同様亢進し、EP2アゴニストでは変化しなかった。さらに、PGE2による反応が、EP1アンタゴニストでブロックされたことから、PGE2による脾臓交感神経活動の亢進は、脳内EP1レセプターを介していると考えられた。4.肝門脈血液中のエンドトキシン(LPS)濃度の測定(1) 実験を始める前に、今回使用した高感度LPS測定法の回収率を確認した。既知の標準LPS溶液を正常血漿中に加え、検体を氷冷していた場合、その回収率は90%以上であったが、37度で10分間インキュベーションしてやると血漿中の添加した標準LPS量は、約1/3に低下してしまうことがわかった。血漿中には補体などのLPSを非活化する種々の因子の存在が報告されており、検体の温度管理がたいへん重要であることが明らかとなった。(2) 肝門脈血液の安静時LPS濃度は、一般静脈血のそれと比較して約30%高値を示した。拘束ストレス負荷により肝門脈中のLPSレベルは拘束負荷30分後に基礎値の約3倍まで上昇したが、1時間の拘束を加えているのに関わらず、拘束開始1時間後には下がり始め、2時間後(拘束終了1時間後)にはほぼ基礎値に戻った。5.肝クッパー(K)細胞のIL-6産生に及ぼすノルアドレナリン(NA)の作用(1) K細胞の一次培養系を用いて、NAが、IL-6の産生に及ぼす効果を観察した。その結果、NAの濃度(10nM-100μM)に依存して、IL-6の産生量が増加した。しかし、その効果は最大でも基礎分泌量の約30%増加に過ぎなかった(NA,10μM)。(2) K細胞のLPS刺激によるIL-6の産生能は、用量依存的(1ng/ml-1μg/ml)に著明に増加した(約10倍)。さらに、NAの同時投与はこのLPSの効果を約30%増強した。(3) 上記の結果より、拘束ストレス時の末梢IL-6増加反応では、腸管由来のLPSが肝でのIL-6産生の直接因子となり、交感神経の終末より遊離されるNAが増強因子となっている可能性が示唆された。
著者
大西 俊一
出版者
京都大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1985

受容体を仲介するエンドサイトーシスにおいて、エンドソーム内での酸性条件下でのプロセシングが重要である。我々はインフルエンザウイルスの細胞内侵入において、エンドソームの酸性条件下での膜融合が、そのゲノムを細胞質に移すのに必須であることを明らかにしてきた。本研究では、エンベロープをもたないウイルスとしてアデノウイルスを取り上げ、細胞内侵入の機構をエンベロープをもつウイルスのそれと比較研究した。1.アデノウイルスによって引き起こされる高分子のエンドソームから細胞質への放出の増加FITCで蛍光標識したデキストランをアデノウイルスと共存させると、KB培養細胞に取り込まれたデキストランは、ウイルスなしの時に較べて2〜3倍に増加し、蛍光顕微鏡で調べるとデキストランは細胞質中に放出されていた。ウイルス感染後20分経ってからではこのような効果は著るしく減少していた。また酸性小胞のpHを上げるアンモニア等の弱塩基化合物を加えるとウイルスの効果は抑制された。2.ウイルス核酸の標的細胞内の輸送【^(32)P】で標識したアデノウイルスを用い、KB細胞の核分画への輸送を測定した。アンモニア等の弱塩基は、この輸送を部分的に阻害しウイルスに特異的なたん白質の合成も阻害した。以上のことから、エンベロープを持たないアデノウイルスでも酸性化したエンドソーム内でプロセシングがおこり、細胞質内への侵入がおこること、またその時に、一緒に取り込まれたデキストラン等の高分子も細胞質中へ放出されることが示された。またこのプロセシングがインフルエンザウイルスの時に比して弱い酸性条件下でもおこるので、アンモニア等の弱塩基の効果が弱いのであろう。
著者
入鹿山 容子 桜井 武
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

敗血症は、細菌による感染を発端として、細菌が産生するエンドトキシンなどの毒素が全身に広がり、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全、ショックなどを引き起こす全身疾患である。重症度に幅があり敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックの順で重篤化し、まだ有効な治療法が確立していない。申請者らは敗血症性ショックモデルマウスに神経ペプチドであるオレキシンを末梢投与すると、オレキシンが全身性炎症状態で障害を受けた血液脳関門を通過し、中枢に作用してバイタルサイン(体温と心拍数)を回復することを見出した。神経活動の指標であるFosを用いた免疫組織学的手法による探索の結果、このオレキシンによる体温の回復作用には延髄縫線核セロトニン神経が活性化されることが重要であることがわかった(Ogawa, Irukayama-Tomobe, eLife, 2016)。さらに延髄縫線核にアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを用いて抑制性(hM4Di)DREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs) を発現させた場合に、オレキシンの体温上昇作用が消失することを確認した。また、オレキシンの生存率の改善効果に伴いカテコールアミンとコルチコステロンが増加し、炎症性サイトカインが減少することを見出した。このことからオレキシンの生存率改善には抗炎症作用も関連しているのではないかと考えられた。敗血症性ショックモデルマウスにオレキシンを持続投与した後、再度Fosを用いた免疫組織学的手法を用いて標的部位の探索を行った。オレキシン持続投与4時間後ではTMN (histaminergic tuberomammillary hypothalamic nucleus)、VTA(ventral tegmental area)が有意に活性化され、22時間後ではNTS(nucleus of solitary tract)が活性化されるということがわかった。
著者
黒崎 知博 疋田 正喜
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

申請者らが樹立してきたPLC-γ2欠損マウス(Hashimoto et al.J.Immunol., 165, 1738-1742, 2000)は、著しいTI-II応答性の低下を示しており、このシグナル分子がB細胞の成熟、または、成熟後抗体産生細胞への分化障害が生じていることを強く示唆している。本年度は、著しいTI-II応答性の減弱にも関わらず、PLC-γ2欠損マウスがほぼ正常なT-D応答性を示すことに着目し、この奥に潜むメカニズムの解明に努めた。すなわち、この一見正常に見える免疫応答性が、B細胞の活性化低下にも関わらず、他の免疫担当細胞(T細胞、樹状細胞)がその機能低下を代償しており、結果的に正常に見えるのではないかという仮説を構築し、この仮説の検証を試みた。まず、この仮説の検証の第一歩として、B細胞がIgMからIgGIにクラススイッチしてはじめて、PLC-γ2が欠損するようなマウスを作成した。このマウスでは恒常状態における血清IgGIの含量がコントロールマウスに比して非常に低下していた。このことは、IgMからIgGIにクラススイッチした後、PLC-γ2がIgGI positive B細胞に必須であるか。生存には必須ではないが、IgGIを分泌する細胞への分化に必須であることを示している。当然ながら、このマウスでは、T-D応答性の低下が予測され、現在この可能性を検討中である。また、B細胞以外の免疫細胞の関与も検討する必要があり、ノックアウトマウスを放射線で処理し、このマウスに正常マウス及びノックアウトマウスから得た骨髄細胞を注入して、その効果を調べている。
著者
板倉 昭二
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

経験は、知覚システムの発達に大きな影響を与える。発達初期には、知覚情報の弁別は、広くチューニングされているが、経験とともに選択的に狭小化されることがわかっている。これを知覚狭小化(perceptual narrowing)といい、初期知覚発達の重要な特徴である。この現象は、顔の知覚や言語の知覚の発達においてよく知られている。本研究課題では、1)このような知覚狭小化が領域に関わらず、共通なものであるか(領域一般性:domain general)、または、領域に固有なものであるか(領域固有:domain specific)を実験的に検証すること、また、2)知覚狭小化の可塑性を、幼児、児童、成人を対象に検討することを主要な目的とする。本年度は、これまで取りためていた、乳児における知覚狭小化のデータを再分析し、まとめた。異なる領域における狭小化が、相互に関係するのか否かを、被験者間デザイン(N=72)を用いて、自人種の顔と他人種の顔の弁別、および、母語と非母語の弁別が可能かどうかを調べた。対象となったのは、3カ月児、6カ月児、9ヵ月児、そして12カ月児であったその結果、3カ月児は、自人種顔と他人種顔の弁別および母語と非母語の弁別ができたが、6,9,12カ月児ではその限りではなかった。2つの領域の関係は、12カ月齢までに変化するらしいことが示された。分析は、弁別スコアと2つの変数(顔と言語)の相関を再分析したもにおである。本結果をまとめ、国際学術誌のJournal of Experimental Child Psychologyの投稿し、近々に採択されると思われる。また、乳児、成人、サルのフィールドワーカーを対象として、チアック狭小化の観点から、サルの顔認知テストを開始した。