著者
坂口 貴弘
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

文書館等のアーカイブズ施設において近現代の公文書や個人・団体の資料を閲覧に供する際は、資料中に個人情報や企業情報、治安・防衛等に関する情報(以下「秘密情報」と総称する)が含まれているかを点検し、場合によっては公開を一定期間制限する必要がある。この作業は複雑かつ多大な労力を要し、特に小規模施設における資料公開を著しく阻害している。本研究では、諸外国のアーカイブズにおける秘密情報保護と公開促進の両立をめぐる歴史的経緯とその背景を検証するとともに、国内外の各種アーカイブズ施設の実地調査に基づき、近現代資料の受け入れから公開に至る方法論の適正化と標準化を図る。これまでの研究から、本テーマは単に文書館における保護・公開制度の現状を分析するだけでは不十分であり、記録管理及びアーカイブズのシステム全体を包括する視点から、通時的かつ領域横断的に考察する必要があることが判明した。そこで本年度は、第二次世界大戦後のアメリカ合衆国における重要記録保護プログラム(vital records program)の普及に大きな役割を果たした全米記録管理評議会(National Records Management Council(NAREMCO))の活動について分析した。米国国立公文書館及び議会図書館等が所蔵する一次資料に基づき、NAREMCOが同プログラムの意義と役割をどのように説いていたかについて、その時代背景を踏まえつつ考察を進めた。その成果は、次年度に口頭発表および論文の形で公表する予定である。
著者
笹田 哲朗 岸 裕幸 東 公一
出版者
地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

(1)TCR遺伝子導入T細胞を用いたネオアンチゲンスクリーニング系の確立各種T細胞表面分子(PD-1, TIM-3, 4-1BB)を発現するT細胞群と発現しないT細胞群とをsingle cell sorting(90 well)し、各々のT細胞クローンの発現するT細胞受容体(TCR)遺伝子配列を同定した。大腸がん(2例)、腎臓がん(3例)組織由来の腫瘍浸潤T細胞を用いて検討したところ、① PD-1, TIM-3, 4-1BBを発現するT細胞群には腫瘍局所で選択的に増加したと思われるT細胞クローンがしばしば高頻度に同定されること、② PD-1, TIM-3, 4-1BBを発現するT細胞群と発現しないT細胞群とを比較したところ、各群間で発現するTCR遺伝子配列が大きく異なること、などが判明した。現在、分離したT細胞クローンから同定したTCR遺伝子を導入したT細胞株を作成中である。今後、多数のTCR遺伝子導入T細胞株のネオアンチゲン反応性(サイトカイン分泌など)を比較・検討することにより、T細胞クローンの分離頻度の高低とネオアンチゲン反応性の有無との相関を検証する予定である。(2)ゼノグラフトモデルの樹立大腸がん5例、腎臓がん10例に由来するがん組織をNSGマウスに移植したところ、現在までに大腸がん2例、腎臓がん1例のゼノグラフトモデルが樹立された。今後、樹立されたゼノグラフトモデルに、同一患者において同定されたTCR遺伝子を導入したT細胞株を移入することにより抗腫瘍効果を検証する予定である。(3)抗PD-1抗体で治療された非小細胞肺がん患者10例(有効例、無効例を各5例)から末梢血、腫瘍組織を採取し保存した。今後、分離したT細胞クローンからTCR遺伝子配列を同定し、ネオアンチゲン反応性を確認する予定である。
著者
宇佐美 しおり 西阪 和子 田中 美恵子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成18年度は九州管内の私立K精神病院にて、海外のアサーティブ・トリートメントモデル(以後ACT)が日本の精神障害者を対象として実施できるのかどうか、についてのパイロットテストを行った。GAF35以下、入退院を繰り返すか長期入院の患者で本調査に同意の得られた統合失調症患者5名(介入群)にACTを実施し、その評価を病状、日常生活機能、社会的機能、ケア満足度で行い、また介入内容を記録に残し、介入内容の検討を行った。介入は海外のスタンダードにそって実施し、介入にあたってはスタッフ訓練を行った。これらの結果を対照群5名の結果と比較した。その結果、ACTチームのフィディリティスケールが若干低いこと、地域資源をチームメンバーにいれることが困難であったが、海外のスタンダードにそって介入が可能であることがわかってきた。そこで、平成19年度は、ACTチームを固定化して、介入群10名、対照群10名で介入前後の比較を行った。ACT介入群の病状、日常生活機能、社会的機能は入院時、退院時、退院3か月後と改善し、対照群と有意な差がみられていた。また介入内容については地域での生活を念頭にいれた介入が中心的となっていたが、患者のニーズを中心とした支援より、再燃予防を目的とした介入であることが明らかとなった。今後、病状を含めた患者のニーズを中心とした介入の必要性が示唆された。
著者
岡部 嘉幸
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では、現代語でも近世後期江戸語でも用いられる複数の文法形式(助動詞など、文法機能を果たす形式、たとえば、ハズダやカモシレナイなど)について、当該形式の近世江戸語での意味・機能的な特徴を、近世後期江戸語と文法体系の似通っている現代語との比較・対照という手法を用いることで明らかにした。また、本研究課題における文法形式の分析の中心は、モダリティ形式であったが、この分析の過程で、先行研究において議論の錯綜している「モダリティ」という文法概念の再検討も行った。さらに、江戸語資料の資料ジャンルの多様性や言語量の確保のため、他の研究課題と連携しつつ、人情本・洒落本のコーパス化も行った。
著者
鎌田 良二
出版者
甲南女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

方言は地方都市を中心としてその周辺地域に広がって行くものである。大阪方言は関西一円に強い勢力をもって広がろうとしている。江戸末期・約140年前に大阪の女ことばとして生まれた指定(断定)助動詞"ヤ"は今や全関西に広まっている。本研究は奈良・平安時代からかつての中央語であった京都・大阪を中心とする京阪語がやがて近畿一円に広がって行ったありさまを史的・社会言語学的立場からその現在における状況を見ようとするものである。そこで本研究では江戸末期の大阪方言の書「浪花聞書」(文政2年・1819年)・「新撰大坂詞大全」(天保12年・1841年)の大阪方言が現在どこに、どのように残っているかを見ることにした。この「どこに」は大阪市内と、近畿周辺域の福井市・敦賀市・三重県津市・岡山市・鳥取市・兵庫県姫路市・洲本市・徳島県徳島市などとその周辺域の各郡各町に臨地調査を行なった。「どのように」は語彙の品詞別・また語形態の変形・意味用法の変化そしてそれを使用する人の年令別・性別・職種別について調査した。さらに約40年前の語彙資料として楳垣実「京言葉」(昭21年)・前田勇「大阪辯の研究」(昭24年)から抜き出したものについても同様の調査を行なった。その結果は「福井・敦賀市・洲本三市方言の動向-大阪弁の広がり-」(甲南女子大学研究紀要第27号・平成3年)・「近畿・中国両方言の表現形式の地理的分布」(「関西方言の社会言語学」<未刊>)に記した。
著者
玉田 敦子
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

17世紀まで、主に聖体論争で用いられ、「神」的な力とエネルギーされていた「エネルギー」という語は、18世紀になると「エネルギー」は「人間」が生み出す文体の力という意味で流行するようになる。この「エネルギー」概念の変化の背景には、18世紀における古代修辞学の復権があった。本研究においては18世紀の修辞学における「エネルギー」と「速度」の概念の重要性について、「研究成果欄」に示す3点を明らかにした。
著者
松田 英子 岡田 斉 福田 一彦 川瀬 洋子
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

睡眠障害は世界中でよくみられる健康問題であるが,特に日本人の成人,若年成人における睡眠の不調は深刻である。労働者は大学生より悪夢症状をより強く訴える。また縦断調査から希死念慮・自殺企図の予防には悪夢症状の改善が重要であることが示唆された。しかし日本人は服薬抵抗感から,悪夢症状があっても,受診する,投薬治療を受けるなどの対処行動をあまりとらないため,睡眠衛生教育や認知行動療法などの非薬物療法の効果が期待されている。本研究は,認知行動療法の介入の効果を,一事例実験デザインによる複数の事例研究と準実験研究を実施し,悪夢障害とPTSDの悪夢症状の低減効果を確認した。
著者
住吉 孝明 中村 有沙 南原 拓弥 村上 将登
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ムスカリン受容体は副交感神経を活性化する神経伝達物質アセチルコリンの受容体である。ムスカリン受容体にはM1-M5の5つのサブタイプがあり、M1受容体の活性化が認知機能を向上させる効果がある。本研究は、作動性と拮抗性を併せ持ち、適度にM1受容体を活性化する部分作動薬を創製し、副作用を低減した新たな精神神経疾患治療薬になりうる化合物を見出すことを目的とする。M1受容体およびM4受容体の両方を作動する化合物の構造を種々変換した結果、ムスカリンM1受容体選択的部分作動性を示す化合物を見出した。これらの化合物はアルツハイマー病等の精神神経疾患の改善薬への応用が期待できる。
著者
伊藤 正敏 熊野 広昭 窪田 和雄
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、がん患者の情動変化を客観的に脳画像として評価する方法を開発し、心理テストを補足する情動検査法を確立することを目標とする。昨年度の研究により全身ポジトロン断層検査(PET)を用いてがん診断を行った72症例の脳画像を用い、帯状回、視床下部、海馬等の大脳辺縁系における広範なブドウ糖代謝の低下を認めた。この変化が脳器質障害によるものなのか、あるいは心因性の障害なのか不明であった。そこで、ドイツのアルバート・ルートヴィヒ大学核医学科との共同研究として、ドイツでのがん患者の脳の解析を行った。年齢・性別をコントロールした正常患者10名との比較をおこない、がん患者と比較した結果、前頭前野、側頭頭頂葉皮質、前・後部帯状回、大脳基底核、などにおいて代謝の低下が確認され、東北大学データを近い結果を得ることができた。また、癌患者21名を、(1)抑鬱度、(2)不安、(3)化学療法の有無、(4)残存癌組織の有無、の四項目に関してサブグループに分け、サブグループ間解析を施行した。その結果、前頭前野、側頭頭頂葉皮質、前部帯状回における代謝低下は、抑鬱度および不安と強い負の相関を示すことがわかった。化学療法の影響が前部帯状回で、腫瘍組織の残存という因子の影響は、小脳および後頭葉において観察されたが、がん患者に観察されるこのような代謝異常は、癌組織による脳に対する生物学的影響というよりも患者の心理的な間題により引き起こされている可能性が高いという結論を得た。一連の研究結果は、スペイン、バルセロナにおけるヨーロッパ核医学会で注目すべき演題として紹介された。
著者
瀧 孝雄
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

薄層クロマトグラフィー(TLC)で分離したリン脂質や糖脂質をプラスチック膜(polyvinylidene difluoride、PVDF)に効率よく転写する方法を確立した。これをTLC blottingと名付け、PVDF膜に転写された脂質を直接質量分析で構造解析する方法を検討した。この結果、次に示す方法を確立した。TLCプレートで分離した脂質をプリムリン試薬で発色させ、色鉛筆でバンドをマークした後、PVDF膜に転写する。マークは脂質と共にPVDF膜に転写される。マーク部分をパンチアウトし、これを質量分析器のターゲットチップにトリエタノールアミンとともに付着させる。分析はCs^+を20kVで照射し、2次イオン質量分析法によって行った。その結果、得られたスペクトルはノイズが低く抑えられ、分子イオンばかりでなくフラグメントイオンがきれいに検出された。検出感度はTLCのバンドとして0.1μgで充分きれいなスペクトルが得られることが明らかとなった。この方法を用いてラット乳癌細胞の転移性を異にする三種類の細胞株について糖脂質組成と構造の比較解析をおこなった。この結果、1x10^7個の細胞から分離した糖脂質で、それぞれの細胞株のすべての糖脂質を構造決定できた。従来の方法では1x10^9-10^<10>個の細胞が必要であり、分離した糖脂質についても主要糖脂質の構造解析ができる程度で、その分析には2年程度の期間が必要であった。本法の導入により糖脂質の構造解析は極めて容易になり、微量で短期間(2週間以内)に行えるようになった。またPVDF膜に転写した糖脂質に対する微生物の結合実験の可能となり、本法を応用したリガンドの構造解析が可能となった。
著者
吉朝 朗
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

地球の下部マントルは、主にペロブスカイト型(Mg,Fe,Al)(Si,Al)O_3固溶体と岩塩型(Mg,Fe)O固溶体により構成されていると考えられている。地磁気測定から下部マントルは高い電気伝導性(10^0〜10^1S/m)をもつことが知られている。局所構造における振動特性の理解は複雑に絡み合った物性を理解するうえで重要である。EXAFS法は局所構造の振動特性の情報を与えてくれる。振動の非調和性は、イオン伝導のような物性と直接関係してる。本研究において、下部マントル構成鉱物の結晶の電気伝導度と導電機構を精密に調査した。下部マントル鉱物等の単結晶や均一組成試料を26GPa2000Kなどの極端条件下で合成を行った。複素インピーダンス法を用いて、高精度で導電率を測定した。マントル遷移層の主要構成鉱物のメージョライトガーネットやペロブスカイト型固溶体、岩塩型固溶体等について、回折法やEXAFS法による精密構造解析、各種分光法や分析法によるキャラクタリゼーションを高精度で行なった。EXAFS法による局所構造解析から高温高圧下での伝導イオンをポテンシャル障壁上に見い出す確率を見積もった。確率は、超イオン伝導状態の鉱物では融点近くの高温域で数パーセントに及ぶ。アナログ物質を含めたペロブスカイト型化合物は、融点近くの高温域でイオン伝導体であり、イオン移動の活性化エネルギーは約2.0eV(intrinsic:内因的)であることが明瞭になった。本研究により下部マントルでの高い電気伝導度はペロブスカイト型鉱物の内因的導電機構では説明できないことが明らかになった。下部マントルでの導電機構の可能性として、ペロブスカイト型固溶体の共晶反応を伴った外因的イオン伝導機構、あるいは、岩塩型固溶体のlarge-polaronによる導電が想定できる。
著者
有田 和徳 時村 洋 宮田 篤郎 栗原 崇 貞村 祐子 鮫島 芳宗
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

脳卒中後疼痛モデルマウスにおける安定した機械的アロディニア反応および情動行動異常の検出法を確立し、機械的アロディニア反応、自発運動量増加はミクログリア活性化阻害薬(ミノサイクリン、p38MAPキナーゼ阻害薬)が有意な抑制効果を示した。また、N型Caチャネルは、脳卒中後急性期の疼痛行動に関与する可能性が示唆された。一方、脳卒中後少なくとも亜急性期までは、顕著な抑うつ様行動変化は観察されず、慢性期におけるより詳細な検討が今後必要である。
著者
高澤 知規 三輪 秀樹 林 邦彦 高鶴 祐介
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

老化促進マウスであるSAMP8とコントロールマウスSAMPR1を用いて術後モデル動物を作成し、抗菌薬のミノサイクリンに術後認知機能障害(POCD)の予防効果があるかを調べた。POCDは麻酔よりも手術による侵襲により引き起こされること、ミノサイクリンにPOCDの予防効果があることを発見した。SAMP8ではミノサイクリンによって術後1日目のTNF-α濃度の上昇が抑制された。ミノサイクリンは血液中のサイトカイン濃度を低下させPOCDの予防効果を発揮することが示唆された。ミノサイクリンが術後の認知機能に与える影響を調べるMINPOC-Jトライアルは、予定数のデータ取得がほぼ終了した。
著者
倉知 正
出版者
群馬大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

成体マウス全脳にX線照射することで急性に血管透過性の亢進が誘導された。血管透過性の亢進とは反対に脳内の血管内皮細胞成長因子VEGFの量は低下した。また、大脳皮質において活性化ミクログリアが顕著に増加し、血管内皮細胞特異的に発現する密着結合タンパク質claudin-5の発現が低下した。遺伝子改変マウス(Flk1-GFP/Flt1-tdsRed BAC Tg)へのX線照射は、脳微小血管におけるGFP陽性の血管内皮細胞の割合を増加させた。二光子顕微鏡を用いたTgマウス大脳のライブ観察により、血管内皮細胞のFlt1およびFlk1の発現度合を反映した明瞭な脳血管像が得られた。
著者
恵川 淳二 井上 聡己 川口 昌彦 瓦口 至孝
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、テトラサイクリン系抗生物質であるミノサイクリンの脳への直接投与が頭部外傷モデルのマウスの運動機能、高次脳機能を改善するかについての研究を行なっている。評価の方法としては、行動実験、組織学的評価、生化学的評価を用いて行う計画としている。現在、動物の倫理的扱いに十分留意してし、実験を行なっている。頭部外傷モデルは、安定した作成が可能となった。現在、inverted gird試験を用いた行動実験を行なっている。Invereted grid 試験の評価方法としては、体重×落下までの時間を計算し、頭部外傷前からの変化率で評価を行なっている。個体による差が非常に大きく、サンプル数が不十分なため、統計学的にはミノサイクリン投与群と生理食塩水投与群で有意な差は見られていないが、ややミノサイクリン投与群で良い結果を示している傾向がある。今後、サンプル数を増やして行く必要がある。組織学的評価についても、手技的には大きな問題を生じず行うことができるようになった。頭部外傷48時間後の外傷部のミクログリアやアストロサイトの活性の評価及びHE染色を用いた欠損体積について検討を行なっているところである。欠損部体積については、ミノサイクリン投与群で小さい傾向にあるが、こちらについてもサンプル数を増やして統計学的検討を行って行く必要がある。生化学的評価は、組織学的評価終了後に検討して行く予定にしている。
著者
浜名 真以
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

「嬉しい」「悲しい」といった感情語は,コミュニケーションや感情の制御,理解を促すものである。感情語の使用や理解を精緻に捉えるために,本研究プロジェクトでは,1)子どもを対象とした研究,2)母子を対象とした研究を実施してきた。本年度は研究の実施を進めるとともに,国内外の学会や学術誌においてこれまで得られた知見の発表を行った。本年度新たに得られた知見として,1)に関しては,幼児期における自己のネガティブ感情と他者のネガティブ感情の推論についての研究を行った。1つ目の研究では,感情を経験する場面として,友達に自分の制作物を壊されるという被害場面を設定し,幼児を対象にその状況の解釈や感情推論に関する質問を行った。その結果,幼児は被害者が他者である場合に比べ被害者が自己である場合の方が,加害者の敵意をより低く,被害者の修復能力をより高く評価するといったように状況を楽観的に解釈し,そこで経験するネガティブ感情の強度をより低く評価することが明らかになった。2つ目の研究では,幼児を対象に経験主体が自己である場合と他者である場合のポジティブ状況とネガティブ状況への遭遇頻度の見積もりついて尋ねた。その結果,幼児は,他者に比べて自己はネガティブ状況に遭遇しにくいと考えていることが明らかとなった。2)に関しては,幼児期の子どもの母親が感情言及を強く方向づけるイラストを見せながら子どもに状況を説明する際の感情語の発話と,その子どもの感情語彙数,感情理解,社会的行動との関連についての縦断調査を行った。1時点目の結果として,ポーティブな感情制御発話をする母親の子どもほど問題行動が少ないこと,多くの種類の感情語を話す母親の子どもほど感情語彙数が多いことが示された。これらの結果から,母親の感情についての語りは子どもの社会情緒的コンピテンスに寄与することが示された。縦断調査は現在も継続中である。
著者
禿 仁志 宮原 俊一 内山 幸子
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

今回の研究は、ブルガリアおよびその周辺地域で大きな文化変容を示すとされる青銅器時代開始期の具体的様相を、上トラキア平野中の1遺跡テル・デャドヴォの発掘資料を通して検討することであった。分析テーマとしては多数の詳細な年代測定を基礎とした文化編年の確立、集落構造の把握、ヒトとモノの動きを土器や石器等の素材研究を通じて復元することであり、3年間の研究でこれらの課題解明に迫る糸口を得ることができた。
著者
山本 隆司 飯島 淳子 北島 周作 交告 尚史 大江 裕幸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

行政法の法典化は、行政活動の透明化に資する。本研究は、これまで精査されてこなかった日本における1962年の行政不服審査法の制定過程を、議事録を通じて調査し分析した。また、近時公表されたEU模範行政手続法草案、2015年に制定されたフランスにおける行政法典、そして日本でこれまでほとんど紹介されてこなかった南アフリカの行政法典を調査し、日本で行政法の法典化を進める際の示唆を得ることができた。
著者
中井 泉 山崎 一雄 望月 明彦 飯田 厚夫 河嶌 拓治
出版者
筑波大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1988

最終年度はこれまで不十分であった状態分析に重点を置いて研究を進め、以下の成果が得られ美術考古学試料の新しい分析法として確立できた。a)古代鉄器の腐食相の状態分析弥生時代のものと推定される腐食した鉄刀について、鉄の2次元状態分析を行った。試料は中心部に反射率の高い金属鉄の地相があり、周辺部は赤褐色のさび相が発達している。またその外縁部には黒色のやや反射率の高い相が帯状に広がっている。それぞれの部分について、鉄の吸収端スペクトルを測定した結果、黒色の酸化相は四三酸化鉄(磁鉄鉱Fe_3O_4)の様な2価と3価の鉄を含むもの、赤褐色の酸化相の部分は酸化第二鉄または針鉄鉱(FeOOH)であることがわかった。さらに選択励起蛍光X線分析により、状態別の2次元イメ-ジを得、鉄器の鉄地相とさび相の分布状態をイメ-ジとしてとらえることができた。このような分析は放射光蛍光X線分析で始めて可能になったものである。b)天目茶碗の油滴の状態分析中国福建省建窯の窯跡からプラマ-教授が1935年に採集した油滴文様のある天目茶碗の破片について研究を行った。本研究は建窯で焼造された曜変天目茶碗の研究の一貫として行ったもので、油滴の実体と成因を明らかにすることを目的とした。油滴の部分は周囲の地の部分に比べて鉄が濃縮しており、鉄のK吸収端スペクトルにより両者の状態を比較した。標準試料との比較により、油滴の部分のスペクトルの吸収端エネルギ-はFe_2O_3に類似し、また地の部分のスペクトルのエネルギ-はFe_3O_4に近く、前者の方が含まれる鉄はより高い酸化的状態にあることがわかった。油滴の成因として焼成時に於ける内部からの気泡の発泡によるという説が有力であるが、今回の結果は内部から酸素などの酸化性のガスが発生し、周囲に比べて鉄が酸化されたと考えると妥当である。