著者
岩隈 美穂
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

13人の研究協力者にインタビューを行った。日本の先進国としての生活スタイル、インターネットを通じての母国とのつながりの保持、日本にはさまざまな外国人たちが多様な目的で来日、長期・短期に渡って滞在し、受け入れ社会についての知識などが、研究参加者の適応に大きな影響を与えていることが明らかになった。さらに研究参加者たちの適応には、身体的、社会的、態度的レベルがあることも本研究で示された。
著者
小内 透 野崎 剛毅 濱田 国佑 佐々木 千夏 小野寺 理佳 小内 純子 品川 ひろみ 新藤 慶 新藤 こずえ
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

かつてアイヌの人々への差別は激しかった。とくに学校での差別が多く、差別を嫌い上級の学校へ進学せず条件の悪い職に就く傾向が強かった。その結果、個人所得が低くなり、結婚して子どもが生まれると、世帯所得の低さが子どもの進学にマイナスの影響を与えていた。そのため、アイヌの人々は経済支援や教育支援に対して強い要望をもっている。しかし、一般の住民は差別を解消したり、アイヌ文化を振興したりすることに対しては積極的に支持するものの、アイヌの人々だけを対象にした経済支援や教育支援については否定的であった。今後のアイヌ政策はアイヌの人々と一般の住民の間にある意識のずれを考慮に入れる必要があることがわかった。
著者
浅野 豊美 WU Karl WU Karl
出版者
中京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

In March and June of 2014, respectively we presented each paper at the annual conference of Association for Asian Studies in Philadelphia and the North American Taiwan Studies Association conference in the university of Wisconsin-Madison.Particularly in the later one we joined in the same panel on the basis of the findings of our research projects.Through participating in academic occasions like these Dr. Wu had a chance to share his work with other specialists and discuss with them on the findings. Also for me, a continued interchange and international network of research activities with those scholars in Canada and the United States has been established through D. Wu's cordination and Taiwan Studies' network in English. Further academic cooperation on migration issues is highly expected.
著者
日原 公大 田代 甚一郎 山口 喜雄 梶原 良成 松島 子さくら 株田 昌彦
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

対話型美術鑑賞授業を充実させるために、大田原市街かど美術館展覧会を用い学生に鑑賞ツール研究を課題とした。画家、彫刻家についての研究(中学生に対し作品内容の伝達方法の研究、および表現内容の研究等)をした。その結果、自からの学びの重要性を学生自身が体感し自己の学びにフィードバックさせ、学力向上が確認できた。
著者
後藤 勝正
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

老化に伴う筋力と骨塩量の低下を防止するための安全かつ効率的なストレス負荷で筋力増大をもたらす新しいトレーニング方法の開発に関して、筋力トレーニングを骨格筋に対するストレスと捉え、骨格筋に対する新しいストレスとして温熱刺激に着目した。そこで本研究では、温熱刺激による(1)骨格筋細胞の増量と増殖とその作用機序、(2)温熱刺激による筋トレーニング効果の促進、ならびに(3)温熱刺激による筋萎縮からの回復促進、について、新しいストレス負荷による骨格筋の肥大の可能性を探ることを目的とした。実験モデルとして培養骨格筋細胞ならびにWistar系雄性ラット(生後12週齢)を用い、実験的萎縮筋モデル(後肢懸垂モデル、前十字靭帯損傷モデル)を採用した。培養骨格筋細胞の実験ではL6(ラット)およびC2C12(マウス)を用いた。培養骨格筋細胞に対して温熱刺激(41℃、60分)、機械的伸展刺激ならびに両者を組み合わせて加えることで、骨格筋細胞の増殖や肥大に対する温熱刺激の効果が両細胞で確認された。したがって、温熱刺激による骨格筋細胞の増量は種に依存する現象ではないと考えられた。ラットを用いた実験では、温熱刺激のみにより骨格筋肥大が促進するか検討し、41℃の温熱環境に60分間暴露することで筋肥大が引き起こされた。また、後肢懸垂モデルを用いひらめ筋を萎縮させた後、後肢懸垂を解除し通常飼育をする前に温熱刺激を加えることで、萎縮からの回復過程が促進した。さらに、前十字靭帯損傷モデルでは、萎縮した筋ではストレスタンパク質の発現増加が認められ、温熱刺激による筋萎縮抑制の可能性が示唆された。以上より、温熱刺激が筋タンパク増量効果をもたらすことが明らかになった。また、温熱刺激による骨格筋の肥大は。(1)ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)/Artシグナル伝達系を活性化させることでもたらされることが明らかになった。
著者
古山 隆
出版者
東北公益文科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

軽質ASRに含まれるプラスチックは主にウレタン、ポリプロピレン、ABS樹脂などの軽質プラスチックである。本研究では、これらのプラスチックに対して有機溶媒を用いた油化実験を行った。実験装置にはポータブルリアクター(容器サイズ:120ml)を用いた。実験は有機溶剤(エンジンオイル)49.75 gとプラスチック試料0.25gを混合し、撹拌羽根の回転数を600rpmに設定してバッチ式で行った。その結果、ウレタンとポリプロピレンはエンジンオイルの中で250℃で10分間加熱すると全て溶解することが分かった。なお、ABS樹脂は300℃で10分間加熱してもほとんど溶解しなかった。
著者
洲崎 雄
出版者
岡山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

多くの生物の繁殖行動は、時計遺伝子によって生じた概日リズムによる時間制御を受けている。交尾を行うタイミングが慨日リズムに支配されていることが、いくつかの研究で示されているが、交尾に付随して起こるその他の繁殖行動と概日リズムの関係を調べた研究例はない。そこで、本研究では、繁殖行動の慨日変化が報告されているホソヘリカメムシRiptortus pedestrisを用いて、慨日リズムがオス間闘争に与える影響を調査する。24年度では、概日リズムの周期が短い個体と長い個体を選抜した系統を作出し、概日リズムに対する選抜が繁殖行動にどのような影響を与えるかを調べる予定であったが、選抜を行う際に、幼虫の死亡率が高かったため、系統の確立および実験を行うことができなかった。そこで、24年度から25年度にかけて、概日リズム選抜をかけていない個体を用いて、闘争行動の日周変化を調べた。その結果、本種のオス間闘争は明期後半に最もよく観察された。したがって、本種のオスの攻撃行動は、概日リズムの影響を受けていることが示唆された。本研究の結果は、国際誌『Entomological Science』に受理された。また、本種の性選択について、闘争行動以外にほとんど知見がないため、本種の配偶者選択についても実験を実施した。メスの配偶者選択で支持される形質と、配偶者選択によってメスがどのような利益やコストを受けているかを調査した。半きょうだい解析の結果、オスの魅力度は求愛率、武器形質サイズと正の遺伝相関を持っていた。また、オスの魅力度と求愛率、武器形質サイズは有意な遺伝分散を持っていた。したがって、魅力度の高いオスとの交尾は、メスにとって、繁殖成功度の高い息子を得るという間接的利益があることが判明した。本研究の結果は、国際誌『PLo SONE』に掲載された。さらに、本種の求愛率と体サイズ、武器サイズの関係を調べたところ、求愛率は体サイズ、武器サイズと負の相関を示していた。これは、闘争能力の低いオスはより求愛行動に投資するという代替繁殖性術を採っている可能性を示唆している。この結果は、国際誌『Entomological Science』に投稿され、改訂後受理という回答を得ている。
著者
岩瀬 信夫 岩瀬 貴子 山田 浩雅 中戸川 早苗 糟谷 久美子 三上 勇気
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

セルフケア行為について慢性統合失調症患者に面接を行った。精神症状が落ち着いても日常的な会話の意味をとらえる困難さや、認知機能の低下、現実感覚の歪み、辛さ、不安がみられ、いざ退院準備をしようとすると、さまざまな提案に困難さを覚える。入院を継続している今は、病気の説明を受けることで疾患を受容し、自分なりに気分転換し、できることをし、代替を考えることにより、病気との付き合いを行っていた。
著者
吉野 博 持田 灯 松本 真一 長谷川 兼一
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究は,平成15年度〜平成16年度までの継続研究である。研究目的は,建材や紙類など,これまで個々の部材レベルでしか検討されてこなかった住宅居室内に存在する様々な吸放湿物体の特性を室全体の総合的な吸放湿特性として把握する方法を開発するものである。最終年度である本年度の研究実績は,以下の通りである。1.単室模型を用いた実験昨年度に引き続き,居室の2分の1スケールの実験箱を使用し,居室における吸放湿特性の現場測定の方法に関する検討を行った。本年度は,室内容物として,コピー用紙,T-シャツ,羽毛布団,以上を組み合わせた場合について加湿実験を行い,室内容物が存在する場合における室の吸放湿特性について検討した。2.数値指標の提案と同定方法の検討1.の単室模型を用いた実験結果より,理論的に室内湿度の変動と湿度励振から室の吸放湿性能を評価するための数値指標とその同定方法について検討した。今回は,居室の吸放湿特性を表す数値指標として,1)積算加湿量と加湿開始時の湿度変化から算出する湿度変化速度,2)吸放湿の無い場合の室内湿度をバランス式から算出し,実際の室内湿度と比較してその差を評価する面積評価法,3)室内湿度のバランス式における吸放湿に関わる2つの係数KS,CWを実験結果から同定する係数同定法の3つについて提案し,それぞれの比較検討を行った。3.実大実験家屋を対象とした現場測定単室模型を用いた実験により得られた成果を基に,実際の居室における現場測定を想定し,屋外に設置された実大スケールの実験家屋の一室を用いた実験を行った。検討した室内容物等は,単室模型とほぼ同様であるが,特に本実験では,屋外条件の影響などについて検討し,(2)で提案した評価指標を同定した他,更に精度良く同定できる手法として,3つの係数KS,AW,BAを提案し,その精度について検討した。
著者
宮上 多加子 河内 康文 田中 眞希 辰巳 裕子 野村 脩 臼杵 百合子 佐々木 則枝 山崎 和子
出版者
高知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,福祉・医療分野における準専門職の経験学習プロセスを明らかにするとともに,準専門職の「仕事の信念」の構造および経験との関係を明らかにすることを目的とした.資格として,介護福祉士・准看護師・保育士を取り上げ,社会人学生および現場の職員に対する個別面接調査により得られたデータを質的記述的に分析した.準専門職の経験学習は,コルブ(Kolb,K)が示しているサイクルをらせん状に辿るプロセスとして確認できた.「仕事の信念」は,「自身の力量向上への志向」と「ケア対象者への志向」に類型化され,2つの志向性は3資格ともに学生時代から保持していた.
著者
寺山 由美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、ダンス学習における表現について再検討してきた。体育授業におけるダンス教育においては、「意図して動くことがすなわち表現である」ということを学習内容として捉える必要があるだろう。ただ無意識のうちになんとなく動くのではなく、「私の気づき」「私のイメージ」を意図的に身体運動に反映させて動くことができる教育を促すべきであろう。
著者
中島 秀太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、量子縮退が実現されている原子種の中で最も軽いアルカリ原子であるリチウム(Li)と、最も重い原子であるイッテルビウム(Yb)を、個別にあるいは同時に多様な光トラップに導入し、より広範な強相関系の「量子シミュレーション」を実現することである。本年度はまず、前年度に構築した1次元光超格子系の2波長光格子の相対位相と振幅を動的に制御することで、"電荷ポンプ"と呼ばれる(量子化された)原子の移動現象(ポンピング)を研究した。実験には相互作用が無視できる2成分フェルミオン171Yb原子を用い、ポンピングによる光格子中での原子の移動をCCDカメラ上の吸収像から直接観測した。この"量子化"は、量子ホール効果と同様に「チャーン数」と呼ばれるトポロジカル不変量と直接関係しており、移動量の測定からこのポンピングにおけるチャーン数を評価した。またポンピングの有無が、超格子パラメーターの時間変化の軌跡が特異点を囲むか否かという"トポロジー"の違いで決定されるというRice-Mele模型にもとづく予言を確認するため、実際にトポロジカルに異なる2通りのポンピングサイクルを構築し、この両者のポンプ量に明確な違いがあることを実験で明らかにした。また後半では、ETH Zurichの量子光学研究室に滞在し、冷却Li原子集団をこの系のフェルミ波長の精度で操作・観測出来る高分解能光学系の技術を習得するとともに、この実験系を利用した冷却Li原子を用いたメゾスコピック系の量子シミュレーションの研究を行なった。特に、デジタルミラーデバイス(DMD)を利用した冷却原子系に対する走査型ゲート顕微法を開発し、光トラップによる"量子ポイントコンタクト"ポテンシャル構造の実空間観測、およびトラップ中の冷却原子の量子コヒーレンスの直接観測に成功した。このDMD技術は今後の冷却原子系への応用が期待できるものである。
著者
奥田 泰子 棚﨑 由紀子 成 順月 讃内 真理 今坂 鈴江 加藤 重子 安藤 純子 河野 保子
出版者
四国大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

地域在住健常男性高齢者20名を対象に、安全とされる入浴条件(40℃の湯に5分間の浸漬)で、入浴による生理作用への影響を明らかにした。すでに獲得していた地域在住健常女性高齢者11名のデータを加え、入浴前のバイタルサインを用いて入浴中の循環変動を予測する重回帰式を高い説明率で得ることができた。各重回帰式を用いて入浴中の変動値を予測し、入浴可否を判断することが可能となった。また、地域在住健常高齢者約200名を対象とした入浴の現状調査から入浴事故との関連を明らかにした。
著者
木村 文信
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究は, 柔軟物に触れた際に感じる触感である硬軟感を, 装置使用者に対して再現提示するシステムを構築することを主題とした. このようなシステムを実現するにあたり, 次に示す2点を研究対象とし, 従来研究で想定および対応できていない点に対応させることを目的とした. (1)硬軟感を提示する触感提示装置の開発. (2)硬軟感情報を取得する触覚センサの開発.(1)に関しては, 再現される柔軟物体が弾性物質で構成される均一柔軟物体(単調な硬軟感)に限定されていたという点が従来研究の課題であった. 本研究ではこの課題を克服すべく, より多様な硬軟感の再現に取り組んだ. 柔軟物体例として, 「厚みが有限な柔軟物体」「しこりを含む柔軟物体」を想定し, それぞれの提示手法を実現することで硬軟感提示の多様化を検討した. 前年度で開発した, 張力制御された柔軟シートで指先を包み込む機構によって上記柔軟物の提示を行った. 厚みが有限な柔軟物に指先を押し込んだ際に得られる触感を「底着き感」と命名し, その提示法を提案した. 底に着いたと感じられる点からシートの張力制御によって指先の圧分布を変え, 底着き感を再現した. 提案手法によって表現される柔軟物の厚みが可変であることを確認できた. しこりを含む柔軟物に関しては, 前年度から検討してきた提示手法をさらに発展させ, 対象物をなぞっている際に感じられる触感が生成できることを確認した.(2)に関しては, 前年度で開発した光弾性触覚センサの計測値に対する情報処理手法の検討を行った. 情報処理によって対象物の特徴を抽出する手法を提案した. また, 提示装置と統合して遠隔提示を実現するため, 抽出された情報を提示装置駆動に必要な情報へ変換する手法を考案し, 遠隔提示システムの試作を行った. 以上によって, 硬軟感提示の応用先の一つである遠隔触診システム等の開発に必要になると考えられる知見を得ることができた.
著者
椋平 淳
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、文化・芸術活動の‘公共性’が問い直されている時代情勢を受け、公共文化施設による一般市民に対する演劇的活動の提供事例(いわゆる「アウトリーチ」)を調査し、そうした事業がどのように社会の生涯活動推進に結びつくのかという点を考察するものである。活発な事業を展開している全国の公共文化施設を調査することによって、現代社会におけるアウトリーチ活動が踏まえるべき要点が抽出され、将来的に有効なプログラム・運営方法の骨格が提案できる段階に到達している。
著者
榎本 百利子
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、ハスを使った工芸品作りの現状を調査し、関連するハスの利用法、加工法を整理して体系化するとともに、児童など工作、加工の経験の少ない者でも利用できるような形で情報の公開を進めることを目指した。児童や未経験の市民でも参加できるような体験学習への応用を念頭に置き、工芸品の中でも比較的制作の容易なものを選び、その作業手順を整理して提示することとした。従来、ハスを材料とした工芸品といえば、ハスの生きた植物体の利用が主で、枯れた植物体はほとんど利用されていなかった。実際にハブの栽培を行っている現場では、生のハスの葉や花を採取することは時に生育への影響もあり得るためになかなか行えないが、逆に枯死体は秋から冬に多量に発生して処分に困るくらいである。このハスの枯死体に着目し、工芸品への加工に役立てることを考えた。まず花蓮の既存の利用法について、インターネットや文献等により調査を行った。その中で実施が容易と判断されたものについて、現地に赴き作成過程を検分し、さらに自ら実際に作成することによって、実施可能性を評価した。ハスの既存の工芸品としては、ハスの葉柄の繊維を利用した織物、花托を利用した人形やランプ作り、ハスの葉や花托を利用した染色加工、花托や茎を利用した衝立や置物などがあった。ほかに食品や入浴剤、香料などへの利用もあったが、それらは工芸品としての範疇を超えると考えられたため、ここでは取り上げなかった。これらのハスの利用が盛んな土地として、花ハスの栽培で有名な南越前市〓旧、南条町)に着目した。同町では工業的に、蓮の葉を練りこんだうどん、蓮の葉茶、入浴剤が作られており、町内の温泉施設でハスを利用した他の加工品とともに販売されている。ここを訪問して、織物および染色の工程や施設、その他作業に必要な事項について視察させていただいた。織物は、7月下旬から9月にかけて蓮の葉柄を収穫し、加熱薬品処理、乾燥、繊維をよる等様々な過程を経て得られた糸を材料として作られていた。染色には、花托と葉が用いられていた。葉については、夏に収穫した葉を冷凍保存し、染色に用いると説明を受けた。視察の結果、糸を取り出すことは未経験者にとっては容易ではないと考えられたため、本研究の目的にかなう工芸品として、布の染色に注目した。夏の間にハスの紅色の花弁を集めて乾燥保存しておくとともに、秋から冬にかけて花托と、枯葉を葉柄をつけたまま採取した。また、夏に葉を採取してハスの葉茶を作っておいた。これらから色素を抽出した。花弁は食用酢でもんでから、他のものは特に何の前処理もせずに煎じ、染色液を得た。媒染液には焼きミョウバン液を使用した。染色の対象となる布としては、一般的によく染まるといわれている絹(オーガンジー)のほか、ウール、綿(ガーゼ、シーチング)、麻、さらに対照としてポリエステルのオーガンジーを準備した。綿と麻に関しては、豆乳で漬け込む前処理を実施したものも準備した。染色を行った結果、絹、ウールがよく染まり、続いて前処理をした綿、麻、未処理の綿、麻の順に成績がよかった。ポリエステルは染まらなかった。染色液としては、花托が一番濃く染まったが、染色への使用が難しいとこれまでいわれてきた花弁も、酢を使用することで染色材料として利用できることが確認された。児童・生徒を含む一般の市民のかたがたを対象として、ハスを利用した工芸品づくりの体験学習を行う場合、染色はそれほど複雑な作業を必要とせず、また特別な機器もいらないため、比較的実施が容易である。ただし、個々の工程に比較的長い時間を要することと、熱湯の取り扱いを伴うことから、児童を対象として行う場合には実施の上でこれらの問題点を解消するための工夫が必要であると考えられた。ハスに関心をお持ちの、比較的年配のかたがたを対象とした体験学習には適した題材であろうと思われる。
著者
水戸 博之 西村 秀人 重松 由美 寺澤 宏美 野内 遊 渡辺 有美
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本プロジェクトは、ラテンアメリカを中心にスペイン語諸国とポルトガルが公用語であるブラジルの言語教育と相互理解の諸相を、狭義の学校教育のみならず音楽や食文化さらに政治社会等、様々な視点から考察を試みたものである。5年間の計画において、ラテンアメリカ(アルゼンチン・ブラジル等)を中心に計6件の海外調査と各専門分野の講師を招聘した5件の講演会を開催した。それら研究の概要は、冊子あるいはNAGOYA Repositoryに第3年度に中間報告書、第4年度に4年間の講演録、そして最終年度に最後の2年間の活動が掲載されている。
著者
平井 芽阿里
出版者
國學院大學
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、本土在住の沖縄県出身者の家族とコミュニティに付加された「沖縄人」、「沖縄」という表象を、コミュニティに所属する個々人の日常的実践の分析を通して改めて多元主義的(Pluralism)視点から再検討することである。同時に、本土在住の沖縄県出身者と故郷との宗教的連帯の実態を解明し、最終的に移住者の家族とコミュニティに関する理論構築を目指すものである。平成26年度は、過去2年に行った本土在住の沖縄県出身者の家族とコミュニティに関する基礎的なデータの整理と分析に加え、追加調査として、沖縄での2回の実地調査および愛知県在住の沖縄県出身者個々人へのインタビュー調査を行い、同時に成果取りまとめと理論構築のための文献資料調査も行った。調査については、4月から翌年3月にかけて、毎月開催される愛知県在住の沖縄県出身者が加入する愛知沖縄県人会連合会の「愛知の沖縄調査会」に参加し、愛知県の沖縄系コミュニティに所属する個々人の移住経歴や移住動機についての調査を行った。この調査の成果は、研究成果に基礎的なデータとして反映できただけでなく、愛知県在住の沖縄県出身者の記録として、「愛知の沖縄調査会」へも還元する予定でいる。また4月から12月にかけて、愛知県名古屋市在住の沖縄県出身者個々人へのインタビュー調査を広く行い、貴重なデータ収集が可能となった。11月には、沖縄県宮古島で移住者と故郷との宗教的連帯に関する補足調査を行い、大きな成果を得ることができた。
著者
森田 敏 野並 浩 和田 博史
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,日本型とインド型の多収品種の収量構成要素,乾物生産,光合成を比較解析するとともに,新たに考案した動的なメタボローム解析手法(炭素安定同位体解析とオービトラップ質量分析法とを組み合わせたブドウ糖のアイソトピック比の解析)により,茎の澱粉動態の品種間差を解析した.その結果,インド型品種の北陸193号が出穂後に茎から穂へ炭水化物が速やかに転流するのに対して,日本型品種モミロマンでは,出穂後も茎内の澱粉集積が継続しており,出穂後も茎がシンクとして機能していることが強く示唆された.以上のことから日本型多収品種では,茎での炭水化物の子実への分配遅れが収量制限要因になっている可能性が考えられた.
著者
坂井 聡 宮崎 英一 武藏 博文 小方 朋子
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

障害のある子どもに対して、ICTを導入するためのアイデアを提案した。また、学校において導入することができるアプリケーションを企業と共同で完成させ、障害のある子どもの学習やコミュニケーション支援に活用できるようにした。作成したアプリ等はインターネット等からダウンロードして使うことができるようにしている。