著者
村上 志津子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

生殖機能を司る視床下部のコナドトロピン放出ホルモン(LHRHまたはGnRH)産生ニューロンは、脳外の鼻プラコートで発生し、脳内へ移動して中隔-視索前野-視床下部系へと分化する。本研究では、脳内に進入したLHRHニューロンが中隔・視索前野を中心とする領域に移動し、定着するメカニズムを知る手がかりとして、中隔LHRHニューロンと視索前野LHRHニューロンの定着部位の違いは誕生日時の違いから生じる可能性を調べた。プロモデオキシウリジン(BrdU)による誕生日時の標識実験では、早生まれのLHRHニューロンは中隔一視索前野の全領域に分布するのに対し、遅生まれのLHRHニューロンは腹側の視索前野には分布しないことが判明した。領域別によるLHRHニューロン数の定量実験は、後期胚におけるLHRH抗体の免疫染色性低下なと技術的な問題により統計可能なデータが得られず、継続中である。組織学的観察から、脳内に進入したLHRHニューロンは嗅神経の分枝とともに嗅球尾側の腹内側部から背尾側方向へ移動し、この経路の終点てある中隔領域でガイド構造となる神経線維から離れて腹側方向へと向かうことが想定された。E5.5生まれのLHRHニューロンが腹側の視索前野に分布しない理由のひとつとして、中隔から腹側方向への移動が阻害された可能性が考えられる。ラミニン様構造を持つ液性分子ネトリンの発現をin situ hybridizationによって調べた結果、E7.5におけるネトリンmRNAは中隔ではなく前脳腹側の視床下部領域に強く発現していた。嗅上皮や嗅神経にはネトリンmRNAの発現はみられず、ネトリンが脳内におけるLHRHニューロンの移動に関与する可能性が示唆される。特に前脳背側の中隔から視索前野に向かう腹側方向への移動に関与する可能性があり、今後の検討課題と考える。
著者
宮内 泰介 古川 彰 布谷 知夫 菅 豊 牧野 厚史 関 礼子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、ヨシをはじめとするさまざまな半栽培植物(または半家畜の動物)に焦点を当て、かかわる人間の側のしくみ・制度を論じることにより、自然のあり方とそれに対応する人間社会のあり方を統一的に把握するモデルを提示することを目標としている。本研究の最終年度に当たる平成19年度は、(1)宮城県の北上川河口地域でヨシ(葦)(Phragmites australis)原の利用のしくみと変遷についての現地調査を継続し、まとめにかかる一方、(2)研究会を開いて多様な専門分野の研究者が集まり、本研究の総括的な議論を行った。その結果、(1)の北上川河口地域での調査では、ヨシ原が歴史的に大きく変遷しており、それと地域組織や人々の生活構造の変遷が大きくかかわっていることが明らかになった。自然環境-自然利用-社会組織の3者が、相互に関連しながら、変遷している様子が見られ、さらに、そこでは、強固なしくみと柔軟なしくみとが折り重なるように存在していることが分かった。また、(2)の総括では、(i)「半栽培」概念の幅広さが明らかになり、(a)domestication(馴化、栽培種化)、(b)生育環境(ハビタット)の改変、(c)人間の側の認知の改変、の3つの次元で考えることが妥当であり、さらには、さまざまなレベルの「半」(半所有、半管理.)と結びついていることが明らかにされた。(ii)また「半栽培」と「社会的しくみ」の間に連関があることは確かだが、その連関の詳細はモデル化しにくいこと、したがって、各地域の地域環境史を明らかにすることから個別の連関を明らかにしていくことが重要であることがわかった。 (iii)さらに、こうした半栽培の議論は今後の順応的管理の際に重要なポイントになってこと、これと関連して、欧米で議論され始めているadaptive governance概念が本研究にも適応できる概念ではないかということが分かった。本研究は、そうした総括を踏まえ、成果を商業出版する方向で進めている。
著者
櫻井 芳雄 金子 武嗣 青柳 富誌生
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、多様な記憶情報の活用を担う機能的神経回路、すなわちセル・アセンブリの活動を神経科学的に実証することを目的とした。様々な記憶課題を考案し、それらを遂行中のラットからマルチニューロン活動を記録し解析した。その結果、時間弁別課題、報酬確率予測課題、順序弁別課題など多様な記憶課題の遂行中に、海馬、扁桃体、前頭前野などでニューロン活動が変化することがわかり、さらにそれらの部位間で同期的に活動するニューロン集団、つまりマクロなセル・アセンブリの活動を検出することができた。
著者
寺田 勇文
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、近年増加しつつあるブラジル、ペルー、フィリピンなど外国からの移住者に焦点をあて、かれらの日常の宗教生活、宗教実践のありかた、その問題点、ひいては日本社会における多文化共生等を実現していく上での問題点、課題を検討することを目的としている。調査にあたっては、とくにカトリック教会東京大司教区を事例とし、参与観察、関係者に対するインタビューを通じて、宗教実践のありかたを把握するように努めた。その結果、とくにフィリピンの人々が東京大司教区の教会において、フィリピン人共同体を形成し、英語またはフィリピン語のミサに出席するなどして定期的に活動をつづけていることが理解された。ただし、これらのフィリピン人共同体の多くは、たとえ同じ教会のなかにあっても日本語ミサを中心とする日本人の共同体とはほとんど接触を持たずに活動しており、言語や民族的背景をこえたより統合的な教会共同体の実現には至っていない。日本人信徒とフィリピン人信徒とは同じカトリック教会に所属しているとはいえ、それぞれの国におけるカトリック信仰受容の歴史、教会形成の歴史的背景が異なり、社会における教会の位置づけ、社会的空間としての教会の利用のしかたにも違いがみられ、さらに信心業などの点でも大きな差異がみられる。この研究においては、主として外国人移住者(とくにフィリピン人)の立場から、現在の日本におけるカトリック共同体の現状を把握し、上述のような問題点を指摘している。
著者
渋谷 真樹
出版者
奈良教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

2007年8月のスイス調査では、日本語学校(教室)2箇所にて、継承語としての日本語教育を参観した。また、国際児7人、母親6人、教師5人に対して、日本語を中心とした日本文化への意識について、聞き取りをした。2008年2月のスイス調査では、日本語学校(教室)2箇所もて、継承語としての日本語教育を参観した。また、国際児7人、母親・父親4人、教師2人に対して、日本語を中心とした日本文化への意識について、聞き取りをした。また、日糸国際児が主催するコミュニティについて調査した。これらの調査から、1 国際結婚をしてスイスで子育てをしている日本人女性の中には、自分の子どもが日本語を習得することを希望する人々が少なからず存在する。その希望は時代によって異なり、ここ20年で日本語教育熱が増加・一般化している。2 スイスの日糸国際児が日本語学習の機会が得かられるか否かは、居住地域(日本人が多く住む都会の方が得られやすい)や、親が子育てに割ける時間(共働きの場合は得にくい)、家族の日本語学習への姿勢(非日本人の親やその家族が協力的な場合は得られやすい)などに影響される。3 スイスの都市部には、継承語としての日本語教育の場が複数存在し、国際児を中心とした子どもの実態に合わせた教育が行われている。最長のものでは、20年以上の歴史をもつ。4 聞き取り調査を行った国際児は、子ども期に日糸であことをからかわれる等した者もいたが、おおかた自分と日本とのつながりに対して肯定的であった。子ども期に日本語学校・教室で学んだ者は、当時は日本語学習を面倒または負担に感じていたと語る者が多かったが、現時点では、日本語能力獲得できたことを高く評価していた。一方、日本語を習得しなかった国際児は、習得した方がよかった、これから習得したい、と語る者が多く、現に成人して学習する者も複数いた。
著者
関根 亮二
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

申請者は、初期発生で重要な遺伝子発現パターンの非対称化がNodal-Leftyシグナル系のみで可能なのか、そのパターンの形成に重要な要素は何なのかという疑問をもった。本研究は、Nodal-Lefty系を培養細胞内へ再構成し、非対称パターン形成が再現できるかどうかの検証を通じて、その疑問に答えることを目的としている。申請者は、人工Nodal-Lefty系を培養細胞(HEK293細胞)に導入し、小さな高Nodal発現領域の自律的な形成を確認し、さらにNodal伝播の亢進によりより大きな発現領域の形成を実現した。さらに、Lefty2による抑制力の向上によるさらなるパターンの改善の糸口もつかんだ。
著者
大浦 清 東 泰孝 篠原 光子
出版者
大阪歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、白血球機能に対する化学療法薬の影響を評価する第一歩として、感染初期の非特異的な自然免疫機構において重要な機能的役割を演じているマクロファージおよび好中球機能に対するニューキノロン薬の影響について検討を行った。ニューキノロン薬はオフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、フレロキサシン、スパルフロキサシン、およびレボフロキサシンの6種類を使用した。平成10年度は、ニューキノロン薬のマクロファージ機能に対する影響について検討を行った。マクロファージ遊走能および貪食能は、用いたすべてのニューキノロン薬によって有意に減少することが明らかとなった。さらに、スーパーオキサイド産生能を検討した結果、用いたすべてのニューキノロン薬において産生能の有意な増加が認められた。平成11年度は、ニューキノロン薬の好中球機能に対する影響について検討を行った。好中球接着能に対する影響は、ロメフロキサシン、およびスパルフロキサシンでは好中球接着能を有意に増加させたが、他の薬剤では接着能に有意な変化は見られなかった。また、貪食能に対しては、オフロキサシン、ロメフロキサシン、フレロキサシン、およびレボフロキサシンにおいて有意な増加が見られたが、他の薬剤では貪食能に有意な変化は見られなかった。次に、スパーオキサイド産生能を検討した結果、トスフロキサシンでは、産生能の有意な増加を示したが、これ以外の5種類のニューキノロン薬においてはスーパーオキサイド産生能の有意な減少が認められた。さらに、過酸化水素産生能に対しては、トスフロキサシンによる有意な増加とスパルフロキサシンによる有意な減少が観察された。上記成績により今回検討した6種類のニューキノロン薬は、マクロファージおよび好中球機能に対して異なった影響を与えることが明らかとなった。
著者
藤井 慶輔
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の大きな目的「球技の1対1における防御のメカニズムを解明すること」に沿って、当該年度は前年度以前に実験を行った、以下3つの研究成果をまとめた。(1)攻撃者と防御者が実際に、リアルタイムで対峙したバスケットボールの1対1の状況を設定し二者の動作分析を行った。1対1の結果・過程を定義・分類し、防御者が攻撃者を阻止した試行は、「早い動き出し」「速い動作」「攻撃者の停止」という3つに分類できることが明らかになった。このことから、実際の球技の1対1において防御者が攻撃者の動作に与える影響を考慮に入れる必要性が明らかになった。(2)防御者の運動制御過程に着目し、準備状態が防御者の動き出しを早めることを床反力分析によって明らかにした。実験室的課題により動作を制約した準備動作(地面反力を体重よりも軽くする「抜重状態」を引き起こす自発的な垂直連続振動)を用い、大学バスケットボール選手にLED刺激に対するサイドステップ反応課題を行わせた。その結果、LED点灯時刻付近での抜重状態が動き出し時刻を早め、動き出し時刻付近での加重状態がターゲット到達時刻を短縮させたことが明らかになった。(3)実際の1対1の状況において床反力を測定することで、(2)で示された準備状態が防御者の動き出しを早め、攻撃者の防御を可能にするかどうかを検討した。その結果、実際の攻撃者との相互作用が起こる課題においても、防御者の大きくない(体重の1.2倍を超えない)動き出す前の地面反力が、攻撃者に対する防御者の動き出しの時刻を早め、防御が成功する確率を高めることが明らかになった。
著者
大庭 昇 山本 温彦 富田 克利
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

桜島火山灰は,黒灰,すなわち通常の火山灰,3価の鉄酸化物が多いこととクリストバル石・石コウ・無水石コウの存在で特徴づけられる赤灰,および発泡状火山ガラス粒子の多いことで特徴づけられる白灰の主に3グル-プに分けられる。通常の火山灰における発泡状火山ガラス粒子の存在および含水硫酸カルシウム結晶の存在は,火山灰の噴出時,断熱膨張や火山ガスによるある種の化学反応を経験したという意味で重要である。自然環境および社会環境は,火山灰と随伴火山ガスに起因する主な2要因,すなわち火山灰構成物の質と粒度による物理的要因および火山ガスによる化学的要因によって影響をこうむっている。農園芸作物,人体健康および土石流が,火山灰および随伴火山ガスに起因する物理的化学的要因によって影響されるメカニズムについて考察した。農園芸作物は,火山灰微粒子が気孔をふさぎ,呼吸機能を止め,機能不全を起こすという物理的要因と,火山ガスが水と結合し,酸として働くという化学的要因の双方からなる複合要因で,枯死落果する。一方,人間が毎日相当量の火山灰を吸入し続けていくとすれば,そう遠くない将来に,珪肺症または塵肺症あるいはそれらの類似症の呼吸器疾患を示す人が間違いなく出てくるであろう。火山灰はまた,土石流発生に関与している。桜島火山には18の枯れ川があるが,これらの枯れ川は,少量の雨が降っても,火山灰の物理的化学的特性に起因して、大規模な土石流を頻繁に発生させる。
著者
水林 章
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「共和国の思想と文学-他者との出会い」を主題とする研究過程で,フランス啓蒙主義時代の文学の精力的な再読をおこなうと同時に,この主題に関係の深い現代フランス文学作品であるダニエル・ペナックの『学校の悲しみ』の翻訳をおこない,さらには,研究の一部をフランスのガリマール書店より刊行されたUne langue venue d'ailleursにまとめることができた.
著者
井関 裕靖
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は離散距離空間の高次元的な構造を見出すことにより離散距離空間の「形」を捉え、さらにこれを離散群の剛性理論等へ応用することを目標としていた。離散距離空間の「高次元的な構造」を満足な形で捉えることは叶わなかったが、その研究過程で得られた観察や結果から、ある種のランダム群が非正曲率空間に対する強い固定点性質をもつことを示すことができた。また、離散距離空間の非正曲率距離空間への埋め込みに対するスペクトルギャップの幾つかの評価を与えることにも成功した。
著者
最上 善広
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

運動活性と酸素消費の同時測定を応用し、単細胞生物繊毛虫での「基礎代謝」を特定し、単細胞生物での、アロメトリー理論の生物界全般への普遍性の検証を行った。ゾウリムシに対して,コンピューター・トモグラフィーによる細胞重量の推定方法を適用することによって,細胞咽頭による餌の取り込みに依存するアイソメトリー関係と,細胞表面からの酸素の流入に依存するアロメトリー関係のふたつの基礎理論が導入された。測定精度を向上し,より精密な理論予測の検証を行うことで、アロメトリー理論の普遍性が検証される方向性が確立された。
著者
土屋 裕睦
出版者
大阪体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究の目的は、スポーツチームの競技力向上・試合での実力発揮に役立つ心理的サポートのあり方を検討することであった。5年間にわたる縦断的・実証的研究より、以下が明らかになった。①スポーツチームの競技力向上・実力発揮をもたらす心理要因には、集合的効力感と集団凝集性が強く関与している。②スポーツチームに対する心理的サポートでは、個別のカウンセリングのほかに、チームビルディングが有効となる。③そのためのプログラムとして、メンタルトレーニング技法を取り入れた構成的グループ・エンカウンターが開発され、世界大会優勝を目指す日本代表チーム等での実践からその有効性が確かめられた。
著者
三宅 なほみ 大島 純 白水 始 中原 淳
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-04-01

人とロボットが,それぞれの立場で相手の存在を認識し,互いに学び合い,育っていくような人ロボット共生による新たな協創社会の実現に向けて,「A03班:知恵の協創班」では人の持つ潜在的な学習能力を洗い出し,それを活かした新しい学びを実践的に創造する実践学的学習科学を発展させた.斬新な方法論として,遠隔操作によるロボットを「よい聞き手」「共に学び合う仲間」として協調学習場面に参画させ,人と人との相互作用を制御・支援することによって,学習科学の経験則を再現性のある理論研究へと発展させる基盤を形成した.
著者
桐山 孝信
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本では、平和主義に基づく法の研究は、第二次世界大戦後に始められたように見られているが、実際には、第一次世界大戦後に開花し、一九三〇年代半ばまでには世界的にも水準の高い研究がなされた。田中耕太郎の『世界法の理論』が著名であるが、後年、法理学者として有名になる恒藤恭は、社会科学的な方法論により、歴史的・社会的基盤を説き起こしながら、世界法の理論を展開した。これは当時にあっては世界的な水準を持つだけでなく、世界平和への一筋の道をさし示していたことを明らかにした。
著者
伊藤 裕之 須長 正治 レメイン ジェラード バスチアン
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、視知覚の様々な側面における順応と残効を調べた。たとえば、残像の形成、順応による形の知覚的変化、錯視的運動にあらわれる運動残効などである。我々は、残像は網膜上の光受容器の疲労パタンそのものではなく、脳活動を表すことを残像の形の変化から見出した。そして残像が現れたり消えたりするのは、脳内での視覚的要素間の相互抑制によることを発見した。また、運動残効の実験により、オップアートに見られる流れの錯視が、相対運動の検出によって決定されていることを示した。さらに、繰り返される動きに対するサッカードの学習についても調べた。これらの結果は、順応と残効がいかに脳の活動を知るのに有効かを証明している。
著者
掛谷 英紀
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究プロジェクトにおいては、立体視における眼の疲労や違和感の主原因とされる輻輳調節矛盾を解消する方法として、多視点方式とエッジのボリューム方式を組み合わせた立体ディスプレイと、シリンダーレンズを用いた方式の2方式について研究を行うことを計画した。前者については、昨年度、35視点の色情報提示用多視点ディスプレイと8枚のモノクロ液晶からなるエッジ情報提示用ボリュームディスプレイを組み合わせた17インチ相当の実機を製作した。しかし、この方式では、モノクロ液晶パネルの増加に従い画質劣化が見られ、現状のディスプレイ材料を使うと、それ以上の枚数増加は難しいことが分かった。そこで、今年度は、色情報・エッジ情報を分離せず、ボリュームディスプレイそのものを多視点化する方法として、レンズピッチの粗いインテグラルイメジング(粗インテグラルイメジング)の表示パネルを多層化する手法を提案し、それを実装した。この実装には透過性のフルカラー多層パネルが必要であり、その電子的実現は現時点では難しいため、透明フィルムへの印刷による静止画方式の実装となっている。実機製作の結果、極めて高画質の立体像が実現されることが確認された。多層式電子ディスプレイが実現されれば、本研究で提案した光学系は、次世代の立体表示方式の極めて有力なオプションになると期待される。一方、後者のシリンダーレンズを用いた輻輳調節矛盾解消法にっいては、高周波パターンの傾き、コントラスト、両眼視差提示の有無など、種々の条件にてレフラクトメータを用いた実験を行い、生理データの蓄積を行った。ただ、これまでの実験結果には個人差も多くあり、今後さらなる実験・解析を要する状況にある。
著者
張 睿
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

Ge channel is one of the most promising solution for CMOS devices in post-Si age. Mobility enhancement is the most critical issue limiting the application of Ge MOSFETS. Recently, although many progresses have been achieved for high mobility Ge MOSFETs, mobility degradation in high normal field region is still severe which strongly reduces the ON state current in Ge MOSFETs. The mechanism of this phenomenon is not clear yet, in spite of importance. Therefore, in our research the physical origins causing high normal field mobility degradation were systematically investigated. Through the evaluation of Hall mobility in Ge MOSFETs, it is found that large amount of surface states exist inside valence and conduction band of Ge, which results in significant decrease of mobile carrier concentration in the channel and rapid reduction of effective mobility of Ge MOSFETs.Additionally, it is confirmed that the surface states inside conduction band of Ge can be passivated by annealing the Ge nMOSFETs in atomic deuterium ambient. Besides of surface states, it is also confirmed that the surface state roughness scattering dominates the mobility in high normal field for Ge MOSFETs, similar with the situation in Si MOSFETs. With decreasing the post oxidation temperature, the surface roughness at GeOx/Ge interfaces can be sufficiently reduced without losing the superior electrical passivation much. As a result, around 20% and 25% mobility enhancement can be realized for Ge pMOSFETs and nMOSFETs, respectively, in a high normal field region of N_s=10^<13> cm^<-2> by reducing the post oxidation temperature from 300℃ down to room temperature.
著者
大村 吉幸
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

人の手指運動の巧みさの仕組みの解明のために、本研究では、手になじむ触覚センサグローブの開発を行った。独自の小型圧力センサをフレキシブル基板に埋め込む技術を開発し、手になじむ触覚グローブを構成した。また、手指の運動を計測するためのモーションキャプチャ装置を独自に開発し、組み合わせ、日常物体を操作するときの、手指の接触と運動の同時計測を行い、解析を行った。以上の成果により人の手指運動の巧みさを調べる基盤技術の進歩に寄与した。
著者
坂部 裕美子
出版者
公益財団法人統計情報研究開発センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

1981-2000年入門力士の現役期間の全平均は6.12年であるが、その大半は2年目までに辞めている。これを関取経験者に限定してヒストグラムで表すと、平均値(14.64年)付近をピークとした正規分布に近い形になる。地位との関連で見ると、最高位である横綱の経験者の現役期間は最長でも16年だが、幕下以下の番付でこれより長い期間現役を務めるものもいる。この中には、役力士の付け人として、依頼されて現役を務める者も含まれる。