著者
北村 充 濱田 邦裕 山本 元道 岩沢 和男 隅谷 孝洋
出版者
広島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究の遂行により得られた結果を以下にまとめる.・船体構造解析ビデオ講座の構築造船設計技術者育成のための構造解析学のビデオ講座を作成し,インターネット配信した.これは,実際の授業風景をデジタルビデオで撮影し,インターネット配信できるフォーマット(Windows Media Player)に変換し,ホームページに掲載したものである.これにより,造船設計技術者はインターネット上に公開されたビデオ講座を,「いつでも」,「どこでも」受講できるシステムを構築した.調査の結果,時間制約が多い社会人にとって,「いつでも」,「どこでも」,また「何回でも」受講できるビデオ講座は,非常に利便性が高いことが判明した.・オンライン教材の作成方法の確立ディスプレイ上に写したPDFファイルなどをポインターで示しながら,説明する音声を加えることにより,非常に鮮明であり,かつ,理解しやすいオンライン教材を作成した.ポインターにはペン・タブレットを用い,外部マイクロフォアンを接続する.その状況下で,ビデオ出力することにより,オンライン教材を効率よく作成方法を確立した.受講者の目の前で行われている講義と同じ(またはそれ以上の)レベルの理解度を得ることができる.・WebCTによるオンラインクイズによる理解度チェクの効果WebCTと呼ばれるe-learningシステムを用いて,オンラインクイズを実施した.クイズは自動採点機能を有しているため,受講者は答案提出後すぐに各自の点数を知ることができる.クイズにより受講者は授業内容をより深く理解することが可能になる.また,教育者側も受講者の理解度を測定できる.アンケート調査の結果,オンラインクイズは受講者の理解を高めることに対して非常に高い効果を有することが分かった.
著者
竺沙 敏彦
出版者
京都府立洛北高等学校附属中
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

学習指導要領では, 数学的活動や算数的活動(今後, 数学的活動と表記する)が重視され, その中で, 日常生活に数学を利用する活動などが規定されている。この背景として, 一つ目には, 数学は日常生活には役に立たないという意識が強いなど, 現実的な場面と数学との関連性についての生徒の信念の弱さが従前から指摘されていること, 二つ目には, PISA調査の結果が学校教育以外の場でも話題になり, また, 全国学力・学習状況調査や教育課程実施状況調査などにおいても, いわゆるPISA型とよばれる具体的な場面を用いた問題が使われ重要視されていることがある。このような背景と共に, 平成20年1月の中教審答申の中で「算数的活動・数学的活動は知識・技能を身につけるとともに, 思考力・表現力を高めたり, 学ぶことの楽しさや意義を実感したりするために重要な役割を果たす」旨が述べられており, 今後は「数学的活動を活かした指導を一層充実し, また, 言語活動や体験活動を重視した指導」を行うための更なる実践的研究が必要である。しかし, 現在の学校教育の中で, 数学的活動は知識や技能を教えることと比較してまだまだ質量とも充分に行われているとは言い難い現状がある。また, その傾向は小中高と学年があがるにつれ顕著である。その中で数学的活動を更に充実させていくためには, 主に教材開発と評価の研究が必要となる。本研究においては, 現実の問題を解決する, ために用いられる数学的モデリング活動の実践場面においての評価, とりわけ観点別学習状況の4観点の評価を客観的に実施するために必要となる教材の開発, 評価問題や評価手法の整備, 解決過程における評価の段階などの整理を行った。
著者
高橋 和久 大鳥 精司 高相 晶士
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

椎間板性腰痛の基礎研究は1970年に教室の篠原がヒト変性椎間板内へのdeep nerve ingrowth を報告して以来、椎間板内の炎症性サイトカインの上昇や、後根神経節(DRG)における炎症性疼痛ペプチドの増加が報告された。しかし、神経栄養因子であるbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)と椎間板性腰痛に関連に関しての報告は無い.本研究の目的はラット腰椎椎間板傷害モデルにおける痛みに対し,抗BDNF抗体を投与することにより,その疼痛マーカーは抑制が可能であった.
著者
川西 澄 RAZAZ Mahdi RAZAZ Mahdi
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の大きな目標である河川流速場の連続計測を達成するため、江の川の両岸にFATS(河川音響トモグラフィー装置)の音響局を8つ配置して多数の音線に沿った音波の伝播時間を計測した。計測された伝播時間を用いてインバース解析を実施し、流速の水平分布を連続的に求めた。連続計測期間は、4月16日~21日である。計測領域の河床形状は、ADCP(超音波ドップラー流向流速分布計)をゴムボードで移動させて計測した。インバース解析結果の妥当性を判断するため、計測領域内の河床に2台のADCPを設置して流向と流速を連続観測した。河床に設置した2台のADCPの流向と流速の時系列との比較によると,インバース解析結果は妥当なものであり,流量変動にともなう河川の蛇行や河床形状を反映した流速場の連続的な可視化に成功したと考える.この成果は、水工学分野ではトップのインパクトファクターを有するアメリカ地球物理学連合(AGU)発行のジャーナルに投稿中である。
著者
後藤 佑介 谷口 秀夫 義久 智樹 江原 康生 大平 健司
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近年のインターネットの普及にともない,音声や映像といった動画データを IP ネットワーク上で配信する放送型配信の研究が盛んに行われている.放送型配信では,使用できる帯域幅や許容されるコンテンツ間の待ち時間を考慮してコンテンツの配信をスケジューリングすることで,待ち時間をさらに短縮できる.本研究では,分割放送型ストリーミング配信において,データ再生中の待ち時間を短縮するスケジューリング手法を提案する.提案手法では,コンテンツを連続的に変化するデータと変化しないデータに分け,コンテンツ間で発生する待ち時間に上限を設定してコンテンツを効率的にスケジューリングすることで待ち時間を短縮する.
著者
滝沢 宏光 近藤 和也 先山 正二 梶浦 耕一郎
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

術中の胸膜浸潤診断に自家蛍光を用いることで正診率が向上することを示した.蛍光内視鏡所見とHE染色標本の蛍光顕微鏡所見は,胸膜浸潤部位において同様の所見を呈しており,肺癌の胸膜浸潤部における自家蛍光減弱は癌の浸潤性を反映している可能性を組織学的に示すことができた.胸膜の自家蛍光の変化にcollagenⅠ, fibronectinが関与している可能性がある.肺癌切除症例を対象とした後ろ向き検討では,リンパ節転移は胸膜浸潤症例で有意に多く,胸膜浸潤症例にスキップ転移も多いことが示された. 術中に胸膜下に注入したICGの蛍光を観察することで,スキップ転移経路を可視化できる可能性も示すことができた.
著者
服部 順昭 原田 寿郎 安藤 恵介
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

スラブCO2レーザでスギのラミナに直径2 mm以下の貫通孔が出力1 kW、パルス幅0.1秒であけられたこと、孔からの難燃薬剤浸透性能に応じたパターンでレーザインサイジングを行ったスギラミナには薬剤がむら無く注入できたこと、荷重支持部のスギ無処理集成材を難燃薬剤を所定量注入した燃え止まり部となるスギラミナで覆い、表面を無処理のスギラミナで覆った集成材が耐火1時間の加熱試験に合格し、別途国土交通大臣から建築基準法上の認定を受けたこと、同じ構成のスギCLTでも耐火1時間の性能が確認できたこと、その耐火集成材が都内の防火地域に建設の木造3階建て飲食店舗に採用されたことが期間内に得た成果である。
著者
高木 英明 高橋 豊 李 頡 張 勇兵 北島 宗雄 後藤 邦夫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.Eコマースサイトのウェッブページのデザイン評価ウェブページに表示されるリンクを逐次選択しながらターゲット情報が提供されているページにたどり着く過程をMarkov連鎖確率過程としてモデル化した。各リンクが選択される確率は、認知工学の技法を用いて計算された百科事典の見出し語間の類似度データベースの検索から自動的に計算して決めることにした。例として、現実の3つの航空会社のiモード航空券予約サイトをMarkov連鎖でモデル化し、予約完了までに要する平均クリック数と操作時間を計算した。その結果、ユーザの習熟度に応じて、3社のサイトの効率の特徴に違いがあることを示した。2.セルラ移動体通信網におけるハンドオーバ数の評価と最適端末位置管理セルラ移動体通信網において、1つの通話中に横切るセルの数(ハンドオーバ数)を評価するモデルを再生過程という確率過程の理論を応用して構築した。また、セルラ移動体通信網においては、基地局が移動端末の位置を時々刻々に記録しておくことが必要であるが、そのコストを節約するために、端末が一定数のセルを横断するごとにページングにより位置を報告させるものとする。端末が通話中に横断するセルの数を遅延再生確率過程でモデル化し、位置管理のコストを最小にするような更新頻度を決定する方法を研究した。3.波長分割多重方式の光通信網における波長割り当てと経路選択の高速解法大規模な波長分割多重方式の光通信網において、送受信の要求が静的に与えられていると仮定するとき、波長割り当てと経路選択を高速で行なう2つのアルゴリズムを開発した。これらを、茨城県および関東地方のNTT電話局の位置から構成した仮想網に対して適用し、既存のアルゴリズムと比較すると、実行速度が格段に短いことが示された。
著者
新田 祥子
出版者
福山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の逆反応もしくはアミノリシスを用いることで、アミノ酸もしくはアミノ酸エステルを重合してポリペプチドを合成する化学酵素合成が注目されている。これまで報告されているポリペプチドの酵素触媒重合に用いられるプロテアーゼは主にエンド型である。一方エキソ型プロテアーゼはオリゴペプチド分解反応を抑制できると考えられることから、エキソ型プロテアーゼ触媒による重合反応はより高分子量オリゴペプチドが得られると期待できる。そこでエキソ型プロテアーゼであるCarboxypeptidase Yを選択し、Benzoyl alanine methyl ester(BzAlaMe)およびleucine methyl ester hydrochlorideを基質に用いたオリゴマー化を試みた。重合反応における反応条件(反応温度、反応pH、基質濃度、酵素濃度、反応時間)がオリゴマー収率に与える影響について検討を行った。逆相HPLCによる分子量測定の結果より、反応時間の経過とともに転化率ならびに分子量が徐々に増加し、反応時間1時間程度で転化率はほぼ一定の値を取った。その間、主鎖中の分解挙動は見られず、分子量分布も1.0に近い値を示した。さらにオリゴマー収率は反応時におけるBzAlaMe/基質仕込み比やバッファーpH、温度といった条件に大きく依存した。重合反応をを妨げるBzAlaMeの加水分解反応は、バッファーpHや温度を制御することで10%程度まで抑えることができた。
著者
安達 友紀
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は痛みに対する「破局的思考」と呼ばれる要因への催眠による緩和効果を実証的に解明することであった。採用第2年度は, 慢性の痛みの患者を対象とした介入研究を実施し, 痛みに対する破局的思考の催眠による緩和効果を検討した。特別研究員は2013年8月から2014年3月までの期間に米国University of Washington, Department of Rehabilitation Medicineへ渡航し, 慢性の痛みのある脊髄損傷患者および多発性硬化症患者を対象とした無作為比較試験においてデータ収集を行った。本臨床試験は目標参加者数144名を自己催眠プラス認知療法群, 自己催眠群, 認知療法群, コントロール群の4群に無作為割り付けし, 催眠の痛みに対する効果を検証するものである。特別研究員はプロジェクトの主導者であるMark Jensen博士から, 痛みのある状態での自己効力感の程度を測定するPain Self-Efficacy Questionnaireを評価項目に加えることを依頼し許可を得た。催眠は痛みの症状緩和だけでなく, 痛みのコントロール感や治療への満足感といったポジティブな副作用があることが報告されており, 催眠によって個人の自己効力感が向上することが想定される。催眠による治療の影響力が痛みに対する破局的思考と自己効力感どちらでより大きいかを合わせて検討することにより, 催眠の効果の明確化および介入の適正化につながると考えられる。また, 昨年度実施済みの慢性の痛みを有する患者24名を対象とした催眠による痛みに対する破局的思考の緩和効果の実験について論文化中である。平成26年5月を目途に, International Joumal of Clinical and Experimental Hypnosisへ投稿予定である。
著者
諏訪部 仁
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

結晶系太陽電池ウェハーのスライシング加工には,マルチワイヤソーが用いられている.本方法には遊離砥粒方式と固定砥粒方式があり,ダイヤモンド砥粒を固着したワイヤ工具を利用した固定砥粒方式が注目されている.本申請課題では,固定砥粒方式のワイヤソー切断において,ワイヤコスト低減,切断性能の向上や切断代の減少を目指して,ダイヤモンドワイヤ工具の高速作製法の開発並びに固定砥粒方式の加工精度等の加工特性に与える影響因子を実験的に検討し,高能率切断の可能性を示した.
著者
峰松 健夫 真田 弘美 森 武俊 仲上 豪二朗 野口 博史 玉井 奈緒
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

(1)スキンブロッティングの原理:角質細胞間脂質のラメラ構造の電子顕微鏡観察が必要であるが、従来の試料作製法では不可能である。そこで新たな試料作製法を考案し、通常電顕で観察ができることを明らかにした。また、タイトジャンクションについては、Claudin1の組織染色性が変化することからスキンブロッティングによる一時的な開裂が示唆された。(2)褥瘡の超早期発見を実現するためのスキンブロッティングに用いるバイオマーカーの選択を動物実験で行い、虚血・リンパ還流障害・虚血再灌流障害・組織変形を示すバイオマーカーとしてそれぞれPAI1、VEGF-C、IL1α、HSP90αを同定した。
著者
宮崎 裕助
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、当該研究者がこれまで独自に練り上げてきたテレコミュニケーション概念の視点から、その民主主義論の討議倫理的な可能性を解明し、デリダの民主主義概念の系譜学の意義を提示することができた。
著者
森 万純
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

術後4日以内の急性期患者に対する身体抑制の実施に至る看護師の判断要因を明らかにした。その結果、チューブ類に触れるあるいは触れないに関わらず、ベッド上でそわそわと寝たり起きたりを繰り返すなどの動作がみられる場合や、過去に術後せん妄を発症したり、何らかのルート類を自己抜去したことがあることや転倒・転落の既往が身体抑制の実施の判断の鍵となっていた。また、いつもより多重業務を行わなければいけないという医療者側の人的環境も抑制実施の判断要因の一つであることが明らかとなった。看護師が少しでもジレンマを感じることなくケアできるように、身体抑制実施の判断基準の構築および環境面の整備の必要性が示唆された。
著者
太田 秀樹 齋藤 邦夫
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

降雨後の駿河湾地震 (2009年8月) で崩壊した東名高速道路牧の原盛土の盛土材料を実験に供したうえで現場データと比較照合したところ、現場で崩壊せずに残った盛土がおおむね1200kPa程度の定体積せん断強度を持っていたと判断された。崩壊した盛土の強度が120kPa程度であったことが分かっているから、崩壊した盛土は水がしみ込んで泥濘上になり強度が120kPa程度にまで低下していたと推定できる。永年の浸水による盛土の劣化・強度喪失のメカニズムを一連の実験によって推定したところ、崩壊前後の現場状況と定量的に整合し力学的に妥当と思われる結果がえられ、水による盛土の経年劣化機構が明らかになった。
著者
榊原 均 木羽 隆敏 信定 知江 小嶋 美紀子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

高CO2により引き起こされる植物の成長促進において、トランスゼアチン型サイトカイニンの生合成亢進が要因の1つであることを明らかにするとともに、その原因となる遺伝子と制御機構を明らかにした。サイトカイニン作用の調節には、量的なものに加え、側鎖修飾による質的な調節機構があることを明らかにした。窒素栄養に応答したサイトカイニン生合成調節は、外環境(硝酸イオン)と内環境(グルタミン代謝)の複数の因子によって制御されていることを明らかにした。
著者
松村 洋子
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

【クビナガハムシ亜科の系統推定とオス・メス交尾器の詳細な形態観察から,交尾器の伸長現象と連動したオス・メスの複雑な共進化の全貌が解明されつつある】一般に繁殖に関わる形質は,他の形態形質では区別ができない種間でも,顕著な差異を示す例が多く知られる.交尾器特有の多様性を生む原動力は性淘汰・性的対立によると考えられ,行動生態学的な視点からの研究が行われてきた.一方で,その多様な形態をもつ交尾器の進化史はこれまであまり着目されてこなかった.さらにオス・メス交尾器の共進化の研究もサイズという一面しか捉えられてこなかった.形態形質の変化は個体発生の変更によってもたらされ,発生単位の構成要素間で連動した形態変化が起こることが十分に予想される.しかし,これまでにそういった発想で繁殖形質の網羅的な形態観察に基づく共進化史を推定した例はない.本研究では,これまで見落とされてきたサイズ以外の要素も含めたオス・メス交尾器の共進化の実態解明を目的とし,クビナガハムシ亜科に見られる交尾器の伸長現象を取上げた.これまで良く知られているように,オス・メス間の交尾器長の共変化に加え,メス側の構造に,オスの伸長部の有無と連動した以下の変化傾向があることが分かった:(1)交尾時にメス側の受入れ口となる部位に観察されるパッドの有無,(2)メス膣の表面に観察される剛毛のパッチの位置,(3)メスの精子貯蔵器官の複雑さ.さらに,オスの伸長部の長さがある閾値を越える否かで,オスの伸長部を取り巻く膜の表面構造が劇的に変化することが分かった.現在,形態観察に加えて本分類群の分子系統樹の構築を進めている.今後は,これを基に,交尾器の形質状態の祖先・子孫関係を決定し,オス・メス交尾器の共進化史を提示する.
著者
多田 純一
出版者
大阪芸術大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は、日本人としてはじめてピアノリサイタルを行い「ショパン弾き」と呼ばれた澤田柳吉(1886-1936)の音楽活動について調査し、彼の音楽活動の意義を考察した研究である。各機関が所蔵する明治期から昭和初期の音楽雑誌、遺族所蔵の資料、出版譜、手稿譜、音源資料(SPレコード)、ピアノロール、コンクールの審査記録、海外(台北およびサンフランシスコ)における活動記録といった幅広い資料から、彼の音楽活動が洋楽受容の黎明期においてパイオニアとしての役割を果たしていたことが明らかになった。研究成果は論文2件、研究発表3件、レクチャーコンサート3件、著書1件、CD制作1件として発表した。
著者
松野 健治
出版者
東京理科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

Notch情報伝達系は、細胞間の直接的接触を介した情報伝達に機能しており、細胞運命決定、形態形成、恒常性の維持に重要な機能をはたしている。ショウジョウバエdeltex遺伝子は、Notch情報伝達系を正に制御しており、その遺伝子産物は、Notchの細胞内ドメインに結合する。我々は、これまでに、Notch情報伝達系を構成する新規な遺伝子の同定を目的として、deltex突然変異体と遺伝的相互作用を示す新規突然変異体を、遺伝的スクリーンによって検索した。その結果、Notch情報伝達系を構成する新規遺伝子候補の突然変異体として、narutoを同定した。narutoの原因遺伝子をクローン化した結果、narutoは、DEAH-box RNAヘリカーゼをコードしていることを明らかにしている(未発表)。本研究では、Narutoの発生過程における機能を明らかにするために、まず、narutoをホモにもつ突然変異体胚の表現型を解析した。naruto突然変異ホモの胚では、中枢神経系の発生異常が観察された(未発表)。また、UAS/GAL4システムを用いた、Narutoのin vivo強制発現系の作出に成功している。いろいろな組織で、Narutoを過剰発現させた結果、複眼や翅脈細胞に特異的な異常が誘発されることを明らかにできた(未発表)。DEAH-box RNAヘリカーゼによる特異的な細胞分化プロセスの制御は、本研究で始めて見出された。Narutoの生化学的機能を明らかにするために、大腸菌を用いて、組換え型Narutoタンパク質断片を合成し、これを精製した。Narutoタンパク質断片を抗原として、抗Naruto血清を調製した。抗Naruto抗体を用いた免疫染色法を用いて、ショウジョウバエ培養細胞やin vivoのNarutoタンパク質を検出したところ、Narutoが細胞質タンパク質であることを明らかにできた。
著者
高須 清誠
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

同一の反応空間においてひとつの触媒が反応機構の異なる複数の反応を活性化して反応基質を連続的に化学変換することができれば(タンデム触媒系)、複雑な分子構造を単純な原料から一挙に構築することが可能となる。しかし、複数の分子の混合状態において、同一の触媒で選択的に基質を活性化して異なる反応を秩序よく進行させることは極めて困難である。23年度は、マイクロリアクターを用いた空間集積合成への適用を含め、時空間集積および時間集積とあわせて複雑分子の構築法の開発を検討した。また、その反応を利用していくつかの生理活性天然物なちびに低pH応答型の人工DNA切断分子の創製を目指した。検討の結果、以下にまとめた成果を明らかにした。1.マイクロリアクターを用いた室温での触媒的(2+2)環化付加の実現(空間集積)2.タンデム触媒系を利用した連続的異性化-(2+2)環化付加の開発(時間集積)3.低pHに応答してDNAを選択的に切断するシクロブタン化合物の創製(上記の集積反応を活用)4.タンデム触媒系でのイナミドを基質とする反応の開発:不飽和イナミドおよび多置換キノリンの合成(時空間集積)5.不斉共役付加を基点とするワンポット反応でのキラルβアミノ酸誘導体の合成(時間集積)と、統合失調症治療薬ネモナプリドの短行程不斉合成即ち、Tf2NHの多彩な触媒活性を利用した反応集積化を行い(2+2)環化付加を含む連続反応を開発するとともに、生理活性天然物の母核構造の短行程合成に成功した。また、低pH応答型DNA切断分子を設計し、実際に目的の機能を示すことを明らかにした。