著者
豊國 賢治 山本 貴和子 吉田 明生 宮地 裕美子 樺島 重憲 福家 辰樹 野村 伊知郎 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1383-1390, 2021 (Released:2021-12-14)
参考文献数
18

【背景・目的】アトピー性皮膚炎(AD)は低蛋白血症を伴う重症AD;severe protein-loss in atopic dermatitis(SPLAD)がしばしば問題となる.本研究では,SPLADの急性期治療と予後を明らかにする.【方法】国立成育医療研究センターアレルギーセンターで入院加療を行ったSPLAD患者61人を対象に,入院中と治療開始3年後までの経過について診療録情報を用いて後方視的に検討した.【結果】全例が入院中に外用剤治療にて寛解導入を行い低蛋白血症や電解質異常が改善した.全身性ステロイド薬・免疫抑制剤,生物学的製剤を含む全身療法を行った児は認めなかった.寛解維持のためにステロイド外用薬(TCS)の間欠塗布によるプロアクティブ療法を行い,3年後に95%がTCS使用頻度を週2日以下へ減量して寛解を維持した.入院時に1歳未満の乳児で,3年後に卵,牛乳,小麦いずれか1つ以上の食物を除去していた児は29%であった.【結語】アトピー性皮膚炎の最重症型であるSPLAD患者は急性期に外用剤治療を行うことで寛解導入可能であり,多くの患者が長期間ADの寛解維持が可能である.
著者
齊藤 千紗 正井 克俊 杉本 麻樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1681-1690, 2021-10-15

笑いは日常生活で頻繁に観察される表情の1つであり,非言語コミュニケーションに不可欠な役割を果たす.笑いには可笑しさや喜びといった快感情から生じる自然な笑いと快感情をともなわない作り笑いがある.この2つの笑いをコンピュータが適切に推測することができれば,ユーザへの理解が深まり,また,インタラクティブシステムに応用可能である.本稿では,日常の使用に適した形状である眼鏡型の装置に搭載した反射型光センサアレイを用いて,2種類の笑いの識別可能性を検証する.実験では,12人の参加者が動画を視聴して生じた自然な笑いとコンピュータ上の指示による作り笑いの2種類の笑いのデータを収集した.センサから得られた反射強度の分布である幾何学的特徴と時間軸の時間的特徴に対してサポートベクタマシンを適用した結果,ユーザ依存の学習の場合,12人の実験参加者で平均精度が94.6%であった.これはデータを収集した際の表情変化の動画から人間が判定した場合(90.2%)よりも高い精度であった.さらに,畳み込みニューラルネットワークを用いた個人間の学習においても82.9%であった.
著者
神崎 仁 泰地 秀信 岡本 康秀 原田 竜彦
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.74-80, 2019-02-28 (Released:2019-03-14)
参考文献数
14

要旨: 目的; 耳鳴を主訴とする 4kHz, 8kHz のみの感音難聴症例の中 THI>18 以上の耳鳴に対する Sound generator 付き補聴器 (HA 群) とスマートフォンアプリ (SM 群) の音の効果を比較し評価した。方法; 23例の耳鳴を主訴とする高音域感音難聴症例を HA 群 9例と SM 群 14例の2群に分けた。耳鳴の効果は THI, 自覚的耳鳴評価 (大きさ, わずらわしさ, 生活への影響, 苦痛度) と自覚的改善度で評価した。結果; 治療後両群ともに, それぞれ THI スコア, 自覚的耳鳴評価スコア, 自覚的改善度は有意に改善した。しかし, 治療前後の上記項目のスコアの差については両群間には差がなかった。HA 群では治療前 4kHz の聴力レベルは SM 群より高度で, 耳鳴持続期間も長かった。結論; 聴覚系への長期の音響療法は SG 付き補聴器であれ, スマートフォンアプリであれ耳鳴を改善させると思われる。高音域 (4, 8kHz) の耳鳴患者には両者を比較して選択させることが推奨される。選択にあたっては 4kHzの聴力レベル, 耳鳴の持続期間, 補聴器のコスト, 音響療法を仕事中に必要とするか, 帰宅後にのみ必要とするかを考慮する。
著者
Hiroko Takumi Kazuko Kato Takayo Ohto-N. Hiroki Nakanishi Hiroshi Kamasaka Takashi Kuriki
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.1707-1717, 2021 (Released:2021-12-03)
参考文献数
25
被引用文献数
8

Oils and lipids are common food components and efficient sources of energy. Both the quantity and the quality of oils and lipids are important with regard to health and disease. Fatty acid ester of hydroxy fatty acid (FAHFA) is a novel lipid class that was discovered as an endogenous lipid; FAHFAs have shown anti-diabetic effects in a mammalian system. We analyzed the overall FAHFA composition in nut oils and other common oils: almond (raw, roasted), walnut, peanut, olive, palm, soybean, and rapeseed oils. We developed a method of liquid chromatography coupled with electrospray ionization triple quadrupole mass spectrometry (LC-ESI/MS/MS) for a comprehensive target analysis of FAHFAs. The analysis revealed wide variation in the FAHFA profiles (15 compounds and 62 peaks). For 7-11 compounds of FAHFA, a total level of 8-29 pmol/mg oil was detected in nuts oils; for 11 compounds, 4.9 pmol/mg oil was detected in olive oil, and for 4-9 compounds, < 2 pmol/mg oil was detected in palm, soy, and rapeseed oils. The major FAHFAs were FAHFA 36:3, FAHFA 36:2, and FAHFA 36:4 in nut oil, FAHFA 36:2, FAHFA 34:1, and FAHFA 36:1 in olive oil, and FAHFA 32:1, FAHFA 34:0, FAHFA 36:0, and FAHFA 36:1 in all of the common oils. The composition of FAHFAs in nut oils is mainly unsaturated fatty acids, whereas those in olive oil are unsaturated fatty acids and saturated fatty acids. The composition of FAHFAs in common oils was mainly saturated fats. This is the first report to demonstrate the quality and quantity of the FAHFAs in the nut oils. Nuts have been described to be a great source of many nutrients and to be beneficial for our health. Our present findings comprise additional evidence that the intake of nuts in daily diets may prevent metabolic and inflammatory-based diseases.
著者
梶丸 岳
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

従来民俗学の流れに属する民謡研究は伝統的な場で歌われるうたのみを「民謡」と捉えてきたため、現在「民謡」として実践されている芸能の研究はほとんど進んでいない。そこで本発表では現在の「民謡」が実践される社会を捉える試みの一環として、秋田県における一曲民謡大会の運営と大会参加者に焦点を当て、大会が地域経済や民謡の規範化と民謡人の組織化、民謡の場の変遷といった要因が絡み合いつつ成立していることを示す。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ア-キテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.655, pp.114-117, 1999-12-13

愛知万博の会場計画づくりが急がれている。2000年6月の博覧会国際事務局(BIE)総会で登録するために,年明けにも骨格を固める必要があるからだ。ただ,企画調整会議内部からさえ,跡地利用計画とテーマの「自然の叡知」との矛盾が指摘されている。11月に来日したBIE議長からも厳しい注文がついた。揺れる会場計画に,黒川紀章氏も私案を発表。
著者
浜野 晋一郎 奈良 隆寛 野崎 秀次 福島 清美 今井 祐之 熊谷 公明 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.58-64, 1991-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

N-isopropyl-p-I-123-iodoamphetamineによるsingle photon emission computed tomography (SPECT) を用いて25例の片麻痺の小児におけるcrossed cerebellar diaschisis (CCD) の出現について検討した.対象の25例のうち, 7例は脳性麻痺で, 18例は発症年齢10カ月から14歳の後天性脳障害である.その結果5例20%にCCDが認められた.CCDの認められた5例は7歳以後の発症で, それ以前の発症の後天性脳障害と脳性麻痺では認められなかった.Ipsilateral cerebellar diaschisisは3歳以下の発症の片麻痺の3例と脳性麻痺の2例に認められた.以上の結果から, diaschisisは3-7歳の間を境に出現の様式が異なり, 7歳以後には成人と同様のcrossed cerebellar diaschisisが認められると考えられた.
著者
山東 功
出版者
大阪府立大学日本言語文化学会
雑誌
百舌鳥国文
巻号頁・発行日
no.30, pp.237-256, 2021-03-25
著者
松本 真悟
出版者
ペドロジスト編集部
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.88-92, 2014-12

島根県は中国山地の北側に位置し,東西の距離は約230kmで,日本海に面する海岸線の長さは1,027kmにおよぶ。中国山地から日本海へと急傾斜する土地は狭長で,全般に平地が少なく,林野面積は526,000haであり,総土地面積の78.4%を占めている。島根県の耕地面積は38,000haで,このうち水田が30,500haを占めており,水田率は80.3%と非常に高い。地力保全基本調査(1959~1977)によれば,水田は7土壌群,22土壌統群,68土壌統に,また樹園地を含む畑地は8土壌群,21土壌統群,58土壌統に区分されている。本稿では,このような土壌特性を示す島根県において,土壌の改良と農業生産の向上について著者らが関わったいくつかの島根県特有の事例について紹介したい。
著者
多田隈 建二郎 多田隈 理一郎 木下 宏晃 永谷 圭司 吉田 和哉 Iagnemma Karl
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp."2P1-C14(1)"-"2P1-C14(4)", 2008-06-06

In this paper, a novel crawler mechanism for sideways motion is presented. The crawler mechanism is of circular cross-section and has active rolling axes at the center of the circles. Conventional Crawler mechanisms can support massive loads, but cannot produce sideways motion. Additionally, previous crawler edges sink undesirably on soft ground, particularly when the vehicle body is subject to a sideways tilt. The proposed design solves these drawbacks by adopting a circular cross-section crawler. A prototype has been developed to illustrate the concept. Motion experiments confirm the novel properties of this mechanism: sideways motion and robustness against edge-sink. Motion experiments, with a test vehicle are also presented.
著者
西村 祐二郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.100, no.9, 1994-09-15
著者
ANDO Masataka
出版者
The Seismological Society of Japan, The Volcanological Society of Japan , The Geodetic Society of Japan
雑誌
Journal of Physics of the Earth (ISSN:00223743)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.263-277, 1974
被引用文献数
62

Kanto earthquake of 1923 was associated with various sorts of seismic and tectonic effects such as surface displacements, seismic damages, tsunamis and volcanism. The writer previously proposed a fault-origin model of the earthquake from a geodetic viewpoint. The present paper is to develop the geodetic model on the idea that the various sorts of the associated effects in 1923 can be interpreted with a simple fault-origin model, equally well. The geodetic model is slightly revised to fit the effects. Thus it is found out that the fault model can be much simplified except for the area immediately adjacent to the fault. The fault is tectonically interpreted as one of the transform faults along the northeastern boundary of the Philippine-Sea plate with the Asian plate.
著者
古田 榮作
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学人文科学部論集 (ISSN:13462105)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.35-71, 2003

「方廣佛華嚴經」の「入法界品」は善財童子の求道の旅を描き、さまざまな善智識と出会うことによって彼の信仰の深まり、即ち修行者としての成熟を位置づけるものである。佛道を窮めようと発心した善財童子は、文殊師利菩薩と出会い、その素質と性向の良さから、この童子は普賢行を修めるべき人物とされ、善知識を訪ねて普賢行を達成するよう勧められる。最初に文殊師利菩薩から功徳雲比丘に教えを受けるよう勧告されて彼を訪ねる。功徳雲比丘から善財は「普門光明観察正念諸佛三昧」についての教えを受け、「憶念諸佛」を学び、功徳雲比丘は修行を達成するためには、海雲比丘を訪ねるよう勧められ、海雲比丘を訪ね、海雲比丘に「普眼經」を学び、思念することで事物のありのままの状態を捉えることを学び、更なる修行のために善住比丘を訪ねるよう勧められる。そこで善財は善住比丘を訪ね、「無礙法門」を教えられ、一層の修行のために良醫彌伽への法門を勧告される。良醫彌伽を訪ねた善財は彼から「菩薩所言不虚法門」を教えられ、更に信仰を深めるために解脱長者を訪ねるよう勧められ、彼を訪ね、「如來如來無礙法門」を教えられることになる。善財の修行は十地の第一段階の「信」にあるが、善智識の教えの中で「認識」の深まりがあり、信仰がより深化されていくことが明確になっていく。