著者
津崎 克彦
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.63, pp.89-103, 2016

"本稿では2000年代以降、日本で広がった「ブラック企業」問題に焦点をあて、「ブラック企業とは何か」という問題について、既存の調査から概念整理を行った。 特に本稿ではブラック企業で行われているマネジメントに注目し、ブラック企業の背後にあるマネジメント原理を仕事のマニュアル性と人間関係の競争性に特徴づけられる「統制・独裁型」マネジメントと名付け、そうしたマネジメントが、標準化された消費市場のニーズや労働市場における供給過剰状態、そして「仕事=手段」と呼びうる仕事観に依拠しつつ、賃金が低くなった場合に特に「ブラック企業」と評価されるのではないかという点を仮説的に指摘した。加えて、本稿では、そうしたマネジメントに依拠しない「自由・民主型」モデルというものを提示しつつ、マネジメントの型と賃金との関連から、①体育会系組織、②狭義のブラック企業、③狭義のホワイト企業、④自己実現系組織という4 つの理念型を提示した。 歴史的に見れば、今日における「統制・独裁型」マネジメントの出現は、科学的管理法のサービス産業への応用とも解釈でき、また、ブラック企業問題の広がりは、国際化や情報化といった要因に加え、「仕事=手段」から「仕事=目的」という労働者意識の変化と仮説的に対応付けられるかもしれない。今後は課題として、一方では本稿で検討した「ブラック企業」モデルとその存立条件を実証的に検証していく必要性に加え、国際比較や従来の日本的経営論の再解釈等を通した歴史的検討をしていきたい。"
著者
塚本 明
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.819-851, 1996-11

個人情報保護のため削除部分あり近世日本の朝鮮観については、主に朝鮮から江戸幕府に派遣された朝鮮通信使を通して論じられてきたが、その総体を把握するためには当時の社会における朝鮮に関する知識の多様な要素を検討する必要がある。本稿はそのひとつとして、これまで十分な分析がなされてこなかった神功皇后伝説の影響について考えるものである。 神功皇盾伝説は蒙古襲来を期に、朝鮮を畜生視する内容を伴うようになる。だが秀吉の朝鮮侵略後には、神国観の転換に規定され思想家レベルでは中世的観念を脱し、近世中期以降には『古事記』、『日本書紀』に基づいて朝鮮蔑視論が展開される。しかし民衆の祭礼、信仰などの世界においては、中世的な伝説・異境観により、朝鮮を犬、あるいは鬼と表現する蔑視観が存在した。これらは統治者、思想家の影響によるものではない、近世民衆独自の朝鮮観であり、そして近代初期の征韓論を支え、また明治国家が神功皇后を国民統合のシンボルとなしえた、社会的な背景でもあった。
著者
中村 綱雄
出版者
拓殖大学
雑誌
経営経理研究 (ISSN:02878836)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.121-154, 2000-03-30

日本に開国を要求したのが旧世界の外交に批判的であった米国であったということも幸いし, 日本は幕末から明治にかけての内政改革を成功させることができた。日米両国はやがて通商面で深い関係を築く。条約改正交渉も米国は他国に比べ好意的であった。日清戦争後, 政治面では両国間には若干の波風が立つが, 第一次大戦後はワシントン体制の協調的関係に戻る。この間, 経済面では両国は通商・資本関係において緊密度を深める。満州事変以後は米国の対日貿易政策は厳しいものとなるが, 経済制裁に踏み切るのは1940年以後となる。そして日本は戦後再び米国による「開国」要求を受けることになる。
著者
川人 麻紀夫 久保 智彦 大郷 貴之 図司 英明
出版者
Japan Concrete Institute
雑誌
コンクリート工学 = Concrete journal (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.905-910, 2013-11-01

東北本線浦和駅周辺高架化工事では,湘南新宿ライン等の浦和駅停車を目的とした改良工事や乗降場新設がプロジェクトの一環として進められてきた。東北貨物線の改良工事においては,駅部アプローチ区間における既設高架橋の改築や補強工事,さらに乗降場新設においては,営業線供用下で既設高架橋を仮受し,既設高架橋の柱や梁を撤去・改築する工事など,これらの計画,設計ならびに施工は難易度の高いものであった。本稿では,湘南新宿ライン等浦和駅使用開始に向けて行われた既設高架橋の改築,補強ならびに仮受工事について報告する。
著者
山本 晶
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.7-18, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
31
被引用文献数
2

オンライン・プラットフォームの成長に伴い,リユース行動の選択肢が広まっている。本研究では一時的所有行動という概念を提示し,その定義を明らかにした上でなぜいま本概念に着目するべきなのかを論じる。また,先行研究の詳細なレビューからリキッド消費,アクセス・ベース消費,共同消費,シェアリング・エコノミーといった近年登場した概念および従来の所有行動や共有行動と本概念との相違点を明らかにし,今後の研究機会を示す。本研究の貢献は近年注目される所有から利用への進化に着目し,一時的所有という新しい所有の在り方に焦点を当てることによって,既存のリキッド消費および所有行動の議論を補完するものである。
著者
Sanae IECHIKA Toshinori ISHIKUMA
出版者
日本学校心理学会
雑誌
学校心理学研究 (ISSN:13465732)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.139-157, 2021-03-31 (Released:2021-11-19)
参考文献数
41

本研究の目的は,特別な援助ニーズがある子どもたちのためのコーディネーション委員会の機能が,教師による生徒への心理教育的援助サービスにどのような影響を与えるかを明らかにすることであった。そこで中学校教師432名を対象に質問紙による調査を実施した。調査の内容は,「問1:コーディネーション員会の機能」,「問2:学校の問題に対する当事者としての意識」,問3:心理教育的援助サービスに対する教師の意識」,「問4:教師の心理教育的援助サービス」であった。その結果,コーディネーション委員会の4つの機能(①個別のチーム援助の促進機能,②コンサルテーション及び相互コンサルテーション機能,③マネジメントの促進機能,④学校・学年レベルの連絡・調整機能)のうち,①個別のチーム援助の促進機能を除く3つの機能が,教師の「学校の問題に対する当事者としての意識」と「心理教育的援助サービスに対する教師の意識」に正の影響を与えていることが明らかになった。また,コーディネーション員会の機能は,「学校の問題に対する当事者としての意識」と「心理教育的援助サービスに対する教師の意識」を通して教師の心理教育的援助サービスに正の影響を与え,コーディネーション委員会の機能の中で,①個別のチーム援助の促進機能と④学校・学年レベルの連絡・調整機能は直接的に教師の心理教育的援助サービスに正の影響を与えることが明らかになった。本研究では,コーディネーション員会(生徒指導委員会,教育相談部会,校内委員会など)を取り上げた。これらの委員会では,教師とスクールカウンセラーが,主に特別な援助ニーズのある生徒の問題に関する状況について話し合い,その生徒をどのように援助していくかを話し合う。つまり,コーディネーション委員会は,二次的援助サービス・三次的援助サービスが必要な生徒への援助サービスを向上させることを主としたコンサルテーション・相互コンサルテーション及び連絡・調整の場である。しかし本研究の結果が示すように,コーディネーション委員会の機能は,いじめ,不登校,発達障害などの二次的援助サービス・三次的援助サービスを向上させるだけでなく,開発的ニーズをもつすべての生徒に対する一次的援助サービスを向上させる可能性がある。コーディネーション委員会が定期的に開催されることで,授業の改善や生徒へのサポートなど,教師の心理教育的援助サービスを維持し,促進することで,チーム学校の心理教育的援助サービスが改善される可能性がある。特に日本では,教師が心理教育的援助サービスの主な提供者となっているため,心理教育サービスの提供者としての教師の成長は重要である。また,コーディネーション委員会への参加は,教師と専門スタッフ(スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど)が,学校全体の心理教育的援助サービスをチームとして行うことを推進すると考えられる。今後は,公認心理師・臨床心理士・学校心理士などの資格を持つスクールカウンセラーが,コーディネーション委員会に定期的に参加するよう求めることが必要である。
著者
白山 竜次 郡山 啓作
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.357-363, 2014
被引用文献数
6

夏秋ギク5品種および秋ギク5品種を用いて,それぞれの品種の限界日長と効果の高い暗期中断時間帯の関係について調査した.夏秋ギク'フローラル優香','岩の白扇','サザングレープ','サザンチェルシー'および'サザンペガサス'の8月開花における限界日長(暗期長)は,15(9)~16(8)時間で,暗期開始(Dusk)から花芽分化抑制効果の高い時間(NBmax)までの時間(Dusk-NBmax)は,電照時間1時間を加えると6.5~8.5時間であった.一方,秋ギク'神馬','山陽黄金','雪姫','白粋'および'秀芳の力'の12月開花における限界日長(暗期長)は,5品種ともに13(11)時間で,秋ギク5品種のDusk-NBmaxは,電照時間40分を加えると概ね9~10.5時間であった.秋ギクに比較して限界暗期長の短い夏秋ギクはDusk-NBmaxも秋ギクに比較して短かった.これらの結果は,各品種のDusk-NBmaxはそれぞれの限界暗期の長さと連動しており,限界暗期長付近の暗期中断が最も花芽分化に影響を及ぼしていることを示し,個々の品種の限界日長が確認できれば,効果の高い電照時間帯を推定できる可能性を示唆する.

2 0 0 0 OA 海軍逸話集

著者
有終会 編
出版者
有終会
巻号頁・発行日
vol.第1輯, 1930
著者
藤塚 吉浩
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.34-42, 2015

<p>本稿では,2000 年代のブルックリンにおけるジェントリフィケーションの変化とその影響について検討した.ウィリアムズバーグにおける創造的活動を確認し,アーティストに利用される歴史的建造物や,倉庫を改装した音楽ホールがつくられるとともに,地区の工業景観をモチーフにしたブランド商品が開発された.イースト川沿いの工場や倉庫跡地の再利用のために,2005 年にゾーニングの変更が行われたが,一部の地域に効果は限られ,全域には及んでいなかった.アフォーダブルな住宅の供給により,許容される容積率は追加されたが,住宅の価格差が大きく,住民間の格差が顕在化した.規模の大きな開発は地域の住民構成を大きく変えることとなり,マイノリティの住民を立ち退きさせる結果となった.</p>
著者
金 善美
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.30, pp.43-58, 2013
被引用文献数
2

This paper aims to examine the role of Art in revitalizing city's run-down area. For this purpose, this paper draws upon empirical work in Mukoujima, known as former industrial zone and typical 'Shitamachi' area of east Tokyo.<br> Art movement in Mukoujima started at late 1990s. At the first time, it was experimental solution for abandoned houses and shops, mainly to reduce the risk of arson. However, the movement has continued for 10 years, bringing more and more young artists and trendy places for them. Up to now, Mukoujima gradually came to be known as "Hidden Art town in Tokyo's traditional area".<br> By analyzing the interaction of various actors, this paper reveals two points.<br> Firstly, Experiencing decline and redevelopment at the same time, 'revitalization of local' means vary from each actor. Therefore, art movement as revitalization strategy has always been placed in tension and conflict between actors. Secondly, positioning art movement within the context of urban change, you can see an opposite role of art in present stage: Consumption of space which reminiscent of gentrification, on the other hand, one form of diversifying local culture due to local change.
著者
横山 昂史
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, 2019

【はじめに】<br> 今回、救急活動中に妨害・暴行行為を受け、対応に苦慮した症例を経験したので紹介する。<br>【症例】<br> 60歳代男性、体調不良を訴え救急要請したもの。<br> 救急隊到着時、酩酊状態で救急隊の観察等に応じない状態。<br> 一緒にいる妻及び救急隊に暴言を吐き、また足で蹴るなどの暴行行為を受けたため、救急隊のみでの活動は困難と判断し、警察官を要請。<br> 現場到着した警察官のパトカーを足で蹴り、パトカーを損傷させ現行犯逮捕された。<br>【経過】<br> 今回の症例について当消防本部で会議を開催し、反省事項、今後の対応方法について検討した。<br> また、所管警察署に救急活動中に妨害・暴行行為を受けた場合の対応方法についても意見を求めた。<br>【考察】<br> 会議結果及び警察署からの回答を受け、救急隊としての対応方法、活動の方針について考察した。
著者
阿部 千寿子
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.1381-1396, 2010-11

判例研究(Case study)東京高判平成20年5月15日。信号無視の道路交通法違反罪の現行犯人として警察官に現行犯逮捕されたXが、本件現行犯逮捕は違法なものであったとして国家賠償請求をした事例。主に現行犯逮捕における逮捕の必要性が問題となった。
著者
根津 由喜夫
出版者
北陸史学会
雑誌
北陸史学 (ISSN:03868885)
巻号頁・発行日
no.48, pp.21-36, 1999-12
著者
谷埜 予士次
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.59-62, 2003 (Released:2005-04-12)
参考文献数
5

This article describes the factors in posture and motion from the standpoint of dynamics and kinematics. Factors in stability include the following: base of support, gravity, link segment, mass and friction. And also, angular momentum introduces us to an understanding of the stability of motion during a jump. Understanding stability is important in analyzing posture and motion in the field of physical therapy.
著者
藤田 正
出版者
早稲田大学法学会
雑誌
早稲田法学 (ISSN:03890546)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.409-447, 1982-07-31