著者
亀井 聡
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.3_8-3_18, 2005 (Released:2005-09-30)

インターネットにおいて,P2P (Peer-to-Peer) 技術の発展がめざましい.P2P技術は様々なメリットを持つ反面,インターネットのトラフィックの主流をこれまで占めていたウェブ等と異なる特性を持つため,ネットワークインフラに様々な影響を及ぼし始めている.本稿ではこのような現状を紹介するとともに,P2P技術とインフラの融合に向けての課題について述べる.
著者
野上 玲子
出版者
日本体育・スポーツ哲学会
雑誌
体育・スポーツ哲学研究 (ISSN:09155104)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.109-120, 2017 (Released:2018-05-02)
参考文献数
55
被引用文献数
1 1

Although the Olympic Games have been holding as the sports festival with a view to promoting a peaceful society, they have ever been boycotted for political reasons and being used of as a means to an act of terrorism. The Olympic Games have opportunities to activate a sense of nationalism hidden in the background of their principle in the age of globalization. The difference between the principle to embody peace and the reality far removed from it is an issue which cannot be ignored. In this paper, we payed attention to cosmopolitanism, which is located comparatively in nationalism, and investigated the peace initiative in the Olympic Games while relating it to the issue of cosmopolitanism based on the idea of universal peace by Kant. The first half of this paper considered the theory of cosmopolitanism and peace by Kant and the second half did the peace initiative of cosmopolitanism in Olympics. The following three points were suggested according to this procedure.1.Any participant in the Olympic Games should take part in them as a cosmopolitan who has a sense of belonging to his/her own race or nation.2.Any participant as a cosmopolitan, who has the right of hospitality that enables to exchange one other, tries to establish friendly relations with other participants.3.Any participant, who has the right of hospitality that imposes restrictions on hostility one other, can drive out participants who did an act of hostility or violence.
著者
亀井 文 高橋 遥
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.146, 2017 (Released:2017-07-08)

目的:レジスタントスターチ(RS)は胃や小腸で消化されず大腸に達するでんぷんであり、大腸の健康に重要な役割を果たしている。しかし、でんぷん性食品の加熱調理条件や保存条件によるRS生成の違いを調べている研究、特にさつまいもについての研究は少ない。そこで本研究はさつまいもを試料とし、茹で、蒸し、焼きの調理方法の違いと調理後直ぐ(直後)、24時間冷蔵保存(冷蔵)、冷蔵保存後電子レンジ再加熱(再加熱)のRS量の変化について調べた。 方法:試料は徳島県産なると金時(平成24年11月)で、皮なし直径約4㎝で2㎝厚さのものを用いた。茹では沸騰15分間、蒸しは20分間、焼きはオーブン予熱無しでアルミホイルに包み160℃20分間加熱した。水分量とRS量は各調理方法の、直後、冷蔵、再加熱の3条件を測定した。RS量測定は脱水操作後、Megazyme社のRS測定キットを使用した。 結果:茹でのRS量は直後6.17%、冷蔵7.32%、再加熱7.16%、蒸しのRS量は直後5.45%、冷蔵6.27%、再加熱5.78%、焼きのRS量は直後3.06%、冷蔵3.51%、再加熱3.06%であった。茹でのRS量は、直後、冷蔵、再加熱後の3条件とも一番高く、次いで蒸し、焼きの順であった。また、茹でについては、直後より冷蔵および再加熱後のRS量が有意に高く、蒸しでは直後より冷蔵後のRS量が有意に高い値となった。
著者
谷口 義則
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.991-996, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3
著者
岡部 信彦
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.575-580, 2021-06-01

予防接種の副反応は,ワクチン液そのものによる有害反応としてとらえられることが多かったが,予防接種を行うという行為そのものが多彩な症状を誘発する可能性がある.WHOのワクチンの安全性専門家会議(GACVS)では,「予防接種ストレス関連反応(Immunization Stress-Related Response:ISRR)」という概念を提唱した.ストレスに対する個人の反応は身体的因子,心理的因子および社会的因子が複合的に絡み合って生じた結果であり,これを理解しておくことはストレス反応の予防,診断,そして適切に対応をするうえで重要であり安全な予防接種に結びつく,というものである.
著者
奥田 輔 安田 孝美 水野 政司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.268, pp.1-6, 2011-10-20
参考文献数
12

近年,ソーシャルメディアの普及に伴い,ユーザが情報の発信,受信の双方を手軽に,かつリアルタイムな情報の共有ができるようになった.本研究ではそのようなソーシャルメディアのひとつとして,マイクロブログサービス「Twitter」を取り上げ,その中で特定の商品に対するつぶやき数の推移とその商品の売れ行きとの間にいかなる相関が見て取れるかを検証した.今回,つぶやきの集計期間は2011年1月1日から2011年3月19日までの78日間,集計対象とした商品はiTunes App Storeで有料にて販売されているiPhone・iPod touch・iPad対応のモバイルアプリ, 1235種類である.統計の結果, Twitterのつぶやき数ランキング, iTunes App Storeのランキングの双方が24時間以内に, 1時間あたり10位以上のランク上昇が見られる割合は,全体の49.79%となった.また,つぶやき数ランキングが上昇してからそれに追随してiTunes App Storeのランキングが上昇する割合は37.17%,その時間遅れは平均値で4.9時間後,中央値で6時間後にする傾向が見られた.
著者
砂川 博
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.64-73, 1988

後醍醐天皇、楠木正成、護良親王の間に、西大寺流律僧殊音文観が介在したことは周知の事実である。その文観に対する『太平記』の筆致は概ね好意的で、背後に西大寺流律僧の関与が思われる。また、楠木正成の千早・赤坂合戦談についても同様のことが指摘できる。一方、『太平記』成立に深く関わったと目される恵鎮円観に対する筆致も極めて好意的で、絶賛の趣をもつ。恵鎮は、黒谷流の天台円頓戒を伝持する律僧で、法勝寺は鎮護国家の道場であった。『太平記』は国土安穏・天下泰平の祈祷に従った西大寺流律僧らの様々の語りなどに拠りつつ、同じ職掌をもつ天台系の律僧の手によって、太平への祈りをこめて作られたのではないか。
著者
奥田輔 安田孝美 水野政司
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.565-566, 2012-03-06

近年,ソーシャルメディアの普及に伴い,その情報伝搬性の高さに注目して,実社会への影響や大域的な傾向を解明する試みが盛んになってきた.本研究では,ソーシャルメディアの題材として,マイクロブログサービス"Twitter"を,実社会のモデル例として,モバイルアプリケーションストア"iTunes App Store"を対象とし,Twitterの特定のアプリケーションに対するつぶやき数の増加がもたらすiTunes App Storeランキングへの影響を統計処理を用いて調査,研究を行った.
著者
菊池 そのみ
出版者
筑波大学大学院博士課程人文社会系日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 = Tsukuba Japanese linguistics (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.23, pp.113-134, 2019

本稿は古代語(上代日本語、中古日本語)における「ての(「活用語連用形+て+の+名詞」)の形式について用例を整理し、古代語における活用語の連体形による連体修飾との比較と現代語における「ての」の形式との比較とを実施し、以下の2点を明らかにした。まず、古代語における「ての」は時を表す副詞節(「AてのB」)となる場合に異なる2つの時点をつなぐ働きをするという点で活用語の連体形による連体修飾とは異なる時間関係を表す場合のあることを明らかにした。次に古代語と現代語との比較から現代語の「ての」には動作性名詞と非動作性名詞とがどちらも下接するのに対して古代語の「ての」には非動作性名詞のみが下接することを指摘した。更に「ての」による連体化には下接する名詞によって「連用修飾節の連体化」と「補文の連体化」との2つのタイプがあることを示し、これに照らすと現代語の「ての」は2つのタイプを持つのに対して古代語の「ての」は「補文の連体化」のみを持つことを明らかにした。本稿は日本言語学会第156回大会において口頭発表した内容の一部に加筆し、修正を施したものである。
著者
山本 泰
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.262-281, 1993-12-30 (Released:2010-01-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

一九九二年四月のロサンゼルス事件は、現代アメリカのマイノリティ問題の深刻さを改めて浮き彫りにした.この事件が黒人青年を暴行した警察官に対する無罪判決に端を発している以上、これは差別に対するマイノリティの大衆的抗議である.しかし、その背景についていえば、この事件は、 (1) 現代のマイノリティ問題の焦点は人種 (黒人) 問題ではなく、大規模な《都市アンダークラス》の問題であること、 (2) 都市貧困層=黒人ではもはやなく、そこには、きわめて多様な人種・民族が含まれること、 (3) 都市最下層の貧困は、六〇年代の公民権運動以来、少しも改善されていないこと、を劇的な形で示したのである.このような複合的な抑圧・葛藤関係はどのような構造のなかで、いかにして生み出されるのか、本論では、人種や民族に中立であるはずの自由主義的多元主義体制のもとにある現代のアメリカに、何故、人種や民族間の葛藤・反目がかくも顕在的にあらわれるのかを考察する.人種や民族の線に沿った集団形成やエスニシティの主張は下層の人々が上位者の資源独占に対抗する社会戦略であるが、この戦略は逆に、ルール指向・個人主義・手段主義といった基準になじまないが故に、中産階級が下層に対しておこなう差別に識別標識と正当化根拠を与えてしまうことになる.階層間葛藤は、自由主義的多元主義体制を仲立ちに人種間葛藤へと転態されるのである.
著者
井澤 敏彦 朱宮 昭男 工藤 悟
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.33, pp.33-40, 2001-12
被引用文献数
2

あいちのかおりSBLは、愛知県農業総合試験場において2000年に育成した水稲新品種である。その来歴及び品種特性の概要は以下のとおりである。 1.1987年に「愛知78号(葵の風)」を母本、「あいちのかおり」を父本として最初の交配を行った。その後2回戻し交配した「あいちのかおり*2//愛知78号/あいちのかおり」のF2世代で縞葉枯病抵抗性の検定を行い、抵抗性のF3を父本として更に「あいちのかおり」に1回戻し交配した。1991年に交配を完了し、その後代から選抜育成した固定種である。1996年から「愛知100号」の地方系統名を付して試験を行い、2000年に品種登録出願を行った。 2.早植栽培及び普通期栽培での出穂期、成熟期は「あいちのかおり」とほぼ同じで、愛知県の熟期区分では「中生種」に属する。稈長は「あいちのかおり」とほぼ同じで、穂長は早植栽培では4mm長く、普通期栽培では2mm短い。穂数は「あいちのかおり」とほぼ同じである。草姿、草型は「あいちのかおり」に類似し、草型は中間型から偏穂重型に属する。稈の太さは中茎、耐倒伏性は「やや強」、穂発芽性は「中」で、ともに「あいちのかおり」と同じである。 3.縞葉枯病には抵抗性遺伝子Stvb-iを持ち抵抗性「強」を示す。葉いもち圃場抵抗性は「中~やや弱」で「あいちのかおり」よりわずかに強い。穂いもち圃場抵抗性は「Modan」由来のPblを持ち「強」を示す。白葉枯病には「あいちのかおり」と同程度で「やや強」である。 4.玄米千粒重は「あいちのかおり」と同程度で「やや大」である。腹白米、乳白米の発生は少なく、「あいちのかおり」と同様、玄米の外観品質は「上の下」にランクされる。収量は「あいちのかおり」と同程度かやや多収である。食味は「あいちのかおり」に類似し、極良食味である。 5.本種は、温暖地平たん部の早植え~普通期栽培地帯に適する。本種は「あいちのかおり」に縞葉枯病・穂いもち抵抗性を導入した準同質遺伝子系統である。
著者
川野 江里子 野原 佳代子 ノートン マイケル 那須 聖
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.3_31-3_40, 2020-01-31 (Released:2020-02-25)
参考文献数
34

本研究は理工系大生と美大生の異分野間で協働するイノベーション・ワークショップを対象とし,ワークショップの空間を,参加者が実際にどのように捉え使いこなしているのか,その実態を明らかにすることを目的としたものである。会場のしつらえとアンケートから得られた参加者の印象・評価との関係を考察することでワークショップの物理的環境と議論の進んだ場所についての仮説を構築し,その上で,行動・会話観察をもとに会場における参加者の動きとコミュニケーション出現及び議論の内容との関係を考察した。議論時に思考の外在化を促す仕掛けとして準備したホワイトボード等の活用は,議論の活性化につながるコミュニケーション出現の起点となっており,議論中に思考が拡がるにつれ,使用する空間が面的に広がり,壁や窓,柱などの広い空間を利用しているケースが見られた。また,議論中の場所移動の様子からは,全てのケースに共通していることは見られなかったものの,一部のケースで,ワークショップ空間や空間移動を思考のためのツールやコミュニケーションのきっかけとしている事が確認された。
著者
長嶺 樹 砂川 勝徳
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.137-150, 2017-12-25 (Released:2018-02-21)
参考文献数
28

沖縄で雄ヤギの肉が流通しているのは、去勢ヤギの肉質が非去勢ヤギより劣るからであると推測されるが、雄ヤギの去勢が肉質に及ぼす影響は不明である。また、近年、雄ヤギに特有の臭気が原因でヤギ肉を食べたことがない人が増加しており、臭気の低減が不可欠であるが、雄ヤギの去勢が臭気に及ぼす影響は不明である。本研究では、雄ヤギの去勢が肉質と臭気に及ぼす影響を解明するために2つの実験を行った。実験1では、ヤギ(日本ザーネン×ヌビアンの交雑種、3ヵ月齢、試験開始時平均体重20.7kg)を6頭ずつ2群(非去勢群および去勢群:以下、NCGおよびCG)に配置した。CGのヤギは2.5ヵ月齢時に去勢された。9ヵ月間、ヤギには配合飼料とアルファルファヘイキューブを1日2回(10:00および16:00)給与し、クレイングラス乾草と飲水を不断給与した。体重と体尺を毎月測定した。1歳齢時にヤギを屠殺し、枝肉成績とロース肉の理化学的特性を調べた。実験2では、ヤギ(実験1と同品種、2歳齢、試験開始時平均体重85.1kg)を4頭ずつ2群(NCGおよびCG)に配置した。8ヵ月間、ヤギには10:00にアルファルファヘイキューブ、16:00に配合飼料とクレイングラス乾草を給与した。飲水を不断給与した。採食量を毎日測定し、肉の臭気度を計測した。CGのヤギの腹腔内脂肪重量はNCGのそれより重かった(p<0.05)。CGの肉中のタウリンなどの機能性成分の含量はNCGのそれらより少なかった(p<0.05)。CGの肉の臭気度はNCGのそれより低かった(p<0.05)。本研究の結果、雄ヤギの去勢は肉質を低下させ、臭気を低減できることが示された。
著者
関 陽平
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

1.研究背景<BR><br>天気予報などで耳にする最高気温の前日差は,暑い寒いといった相対的な感覚をわかりやすく理解する指標として広く知られている.前日差は体感温度に関係しており,寒暖差アレルギーや熱中症などの健康面への被害だけではなく,商品の売り上げ等に関連する経済的にも重要な指標である.<BR><br>どの地域,どの季節で前日差が大きいかを気候学的に理解しておくことは重要であるにも関わらず,前日差の地域性・季節性について詳細に検討した研究例は無い.よって,日本全国における気温の前日差の地域性・季節性を統計的に解析した結果を報告する.<BR><br>2.解析手法<BR><br>本研究では,前日差を前日と当日の日最高気温の差で評価する.使用するデータは全国のアメダスデータで得られる日最高気温のデータを用いる.解析期間は1986年から2015年までの30年分とする.海面水温再解析データはアメリカ海洋大気庁(NOAA)のOISST(Optimum Interpolation Sea Surface Temperature)データを使用した.<BR><br>前日差を気候学的に評価するために以下に示す手順で気温急低下指数と気温急上昇指数の二つの指数を定めた.前日差の30年分の各月毎の10パーセンタイル値を求める.その後,10パーセンタイル値以下の前日差の値を条件として標準偏差の計算を行ったものを気温急低下指数とした.同様に,90パーセンタイル値以上の前日差を条件としたものを,気温急上昇指数とする.これらの指数の値が大きいほど,気温の急変時の気温変化が大きいことを示す.<BR><br>3.結果<BR><br>気温急低下指数と気温急上昇指数の月ごとの気候値を求め,全国の地点で平均した.その結果,4月が気温の急変のピークを迎えることがわかった.11月にも第二ピークがあるが,気温急上昇指数は大きくないことが春との大きな違いである.<BR><br>次に,地域性を評価するために,各月の全国マップを作成した.シグナルが強かった地域は北海道東部,中部地方北部,三陸沿岸などが挙げられる.中でも北海道東部は突出している.それらのシグナルが強かった地域に着目すると中部地方北部では4月に,北海道東部では5月にピークを迎える.<BR><br>これらシグナルが強い地域性をもたらす原因を,地形,大気,そして海洋からの3つの視点から探った.地形的原因として,低気圧の通過に伴うフェーン現象が発生しやすい地形である.さらに低気圧の通過後には寒気移流が起こりやすいという大気的特徴を持つ地域である.<BR><br> 春の北海道東部や三陸沿岸で気温の急低下が大きくなる原因は,上記で述べた地形や大気的原因以外に,この季節の海面水温が挙げられる.オホーツク海のこの季節の海面水温は6℃程度であるのに対し,陸上の日最高気温の気候値は15℃にも達する.このように,この季節のこの地域は海陸の温度コントラストが際立って大きい.北海道周辺の海面水温と日最高気温の差は5月にピークを迎える.そのため,北風時には寒気移流による気温低下が著しい.この効果に加えて,地形と大気の原因が重なり,気温の前日差が他の地域を圧倒する地域となっていることが判明した.<BR><br>なお,この地域の海面水温が低い主因は冬季の海氷である.したがって,この地域の大きな気温前日差には,冬季の海氷が間接的に影響している.従って,これは時差を伴った大気海洋相互作用の一つともいえよう.<br>
著者
内田 浩史 郭 チャリ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.428-433, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)

本稿の目的は,日本における創業と創業金融の実態を明らかにすることである。4つの異なるアンケート調査から得られた5つの創業企業サンプルを用いて比較分析を行った結果,創業企業には様々なタイプが存在すること,タイプによって創業金融の実態も異なることが明らかになった。特に,創業企業の多くは創業資金を経営者の自己資金に依存しているが,その程度はサンプルにより異なり,他の資金調達手段の利用にも違いが見られること,資金制約に直面している企業は少数派であるものの,サンプルによりその程度に差があることが示された。本稿ではこうした結果を詳述し,日本における創業の課題に対処するための政策的含意を導く。