著者
福田 大年 前田 弘志 三浦 清隆
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.13-13, 2011

デザイン制作プロセスにおけるアイデア発想段階の言葉の重要性に対する理解促進の手段として、フィールドワークでの実体験をもとに言葉で思考し言葉で表現することを目的とし、講師にプロのコピーライターを招き札幌圏の学生向けに開催した、筆者らが所属する団体「札幌メディア・アート・フォーラム」(以下、SMF)のイベント「SMF2010コトバ・ワークショップ」(以下、コトバWS)について報告する。
著者
田辺 晋 堀 和明 百原 新 中島 礼
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.4, pp.135-153, 2016-04-15 (Released:2016-06-21)
参考文献数
94
被引用文献数
11 15

日本列島における「弥生の小海退」は,その存在が認められる地域と認められない地域が明確になっておらず,その存在が報告された地域においても,海水準インデックス・ポイントが連続的に得られていないことに問題がある.筆者らは,利根川低地最奥部において,水深が約1~2mと推定され,3~2cal kyr BPの海水準上昇に伴って形成されたと考えられる湖沼堆積物を発見した.その堆積年代と分布深度は,水深を推定値の最大の2mと仮定しても,海水準が3.0cal kyr BPには標高-2.2mまで低下したことを示す.この低下量は予想される圧密の総和よりも大きく,また,周辺では大規模なテクトニックな地殻変動は考えにくい.したがって,この事象は利根川低地最奥部に「弥生の小海退」が存在したことを意味する.このような相対的海水準低下の要因としては堆積物荷重の影響を今後最も検討しなければならない.
著者
北川 正義 新濃 隆志 若生 豊
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.970-975, 2000-09-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
9

As one of serial studies on the mechanical properties of spider threads, the effect of viscid droplet on their deformation behavior was investigated. The viscid droplets are regularly spaced on the spiral thread building orb web for capturing insects. It was shown that 1) the most abundant amino acid of the droplet is prolyne, while the component of the capture thread is not so different from that of dragline, 2) its surface tension is about 65mN/m which is comparable to that of water, and 3) although the capture thread deforms like rubber due to the existence of the viscid droplet, it behaves like dragline if the droplets are removed from it.
著者
厳 安生
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学人文科学部論集 (ISSN:13462105)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-22, 2006

本論文はほぼ同じ頃にできた表題ニテキストに対する精読と比較を通して日中両国が開けた世界に面した当初に取った姿勢、見せた差異ならびにしばしの連動風景を考察するものである。分析例に両者の「博覧会」と「営業力」に関する記述および効果を取り上げる。英国などで万国博覧会という産業文明の新制度に開眼し「進歩」史観を刺激された岩倉一行は帰国後すぐ同制度の導入に着手、そして一世紀後の大阪万博につながっていくのだが、それと上海万博(二○一○)との四十年の隔たりは十九世紀後半以降の両国の近代化に見られる時間差にほぼ対応している。その間の、始めは同じ出発の時点に立ち同じ東洋的「先知先覚」の自負に燃えて且つお互い遜色のない見聞や見識を示していながら、郭のそれが国の開化と進歩に何ら役立つことができなかったのは何故か。一方の「営業力」に関しても岩倉使節団がそれを考察の軸にして得た諸々の啓発が後の「殖産興業」に大きな役割を果した傍に、郭による同様の考察と先見性に富む一連の建言は本国の「営業力」開発につながるどころか、建言者本人の自滅ひいて全発言の一世紀余の埋没を招くほかに効果はなかった。この事例、後世に尽きない思考を残すと同時に東アジア比較文化史を研究する上でも恰好なスタディ・ケースになろう。
著者
玉井 郁巳
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.674-678, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
20

医薬品の消化管吸収は血漿中濃度推移に直接的に影響するため,その変動は医薬品の作用・副作用を左右する.飲食物の作用を考えると,肝臓や腎臓など薬物動態を左右する他の組織に比べ,飲食物中成分が管腔内から直接作用し,しかも高濃度に存在する消化管が最も影響を受けやすい状態にある.小腸上皮細胞は薬物動態を決める薬物トランスポーター(輸送体)や薬物代謝酵素の発現が肝細胞と類似しており,相互作用の重大性が指摘されている肝臓と同様に小腸における相互作用を考慮しなければならない.消化管での医薬品と飲食物との相互作用はグレープフルーツジュース(以下,GFJ)の影響の大きさから注目を浴びている.すなわち,GFJは小腸上皮細胞内に存在する薬物代謝酵素CYP3A活性を低下させ,その基質薬物(被害を受けるという意味で以下victimと呼ぶ)となるカルシウムチャネルブロッカーなどの血漿中濃度が増大し,毒性が生じることが20年以上前に見いだされた.本相互作用の原因となるGFJ成分はフラノクマリン類であり,CYP3Aを不可逆的に阻害し,併用されたvictimの血漿中濃度を顕著に上昇させる.一方,相互作用の原因として薬物輸送体の関与も明確になった現在,医薬品の臨床開発における相互作用試験の必要性が指摘される消化管輸送体は,P-糖タンパク質(P-gp,ABCB1)とBreast Cancer Resistance Protein(BCRP,ABCG2)である.いずれも小腸上皮細胞管腔側膜に発現し,相互作用による活性低下はvictimの血漿中濃度増大につながる.したがって,相互作用を惹起する薬物(被害を与えるという意味で以下perpetratorと呼ぶ)の管腔中濃度Ciと阻害定数(KiあるいはIC50)に基づく相互作用評価が必要とされるに至っている.上述のような消化管の特徴を考慮すれば,フルーツジュース(以下,FJ)などの飲食物成分が小腸輸送体に対するperpetratorとなる可能性も十分考えられる.
著者
新山 喜嗣
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.186-196, 2014-09-26 (Released:2017-04-27)

人生の終着点にある死の存在は、われわれにあらためて生の日々の大切さを強く実感させるが、このような死が生にもたらす意義が、われわれの心理的な側面を越えて、未来を指向する人生の価値といったより存在論的な側面にまで及ぶことを、分析哲学の時間論の座標上にわれわれの生を乗せつつ確認することを試みた。その過程で、「永遠に死ぬことがない」という妄想主題をもつコタール症候群に注目したが、本症候群における不死の主題が結びつくのは、生命の活力や未来の希望ではなく、むしろ一切の存在の価値を剥奪された人生に対する深い絶望であり、その理由を現代時間論の視点から検討した。すなわち、不死妄想においては死という視座が欠如するため、死の視座から付与されるはずの未来の輪郭が結像せず、その輪郭が生の価値へと生長することが永久に阻止されたままになると考えられた。このコタール症候群の臨床像は、未来から絶えず現在に収斂する存在論的な生の意義が、死が存在することによってこそもたらされることを、逆説的に示唆するものであると思われる。
著者
溝田 勝彦 村田 伸 堀江 淳 村田 潤 大田尾 浩
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E3O1193, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】わが国では世界に類を見ない速さで高齢化が進んでいるが,高齢者の自殺や閉じこもり,介護者による高齢者の虐待など,必ずしも長生きしている高齢者が幸福に暮らしているとはいえない状況にあり,高齢者のQOL(Quality of life)の向上は大きな課題といえる. これまで,主観的幸福感や日常生活満足度など,QOLの一領域に影響を与える要因分析の報告は多く,その要因の一つとして経済状態や経済状態への満足感が挙げられている.しかし,QOLを多面的に捉え,経済状態の主観的評価が,QOLの各領域にどの程度影響を与えるかについての報告はほとんど見あたらない.そこで今回,福岡県の地域在住高齢者を対象として,実際の収入の程度とは関わりなく,現在の自分の暮らし向きについてどのように感じているかという主観的経済状況感とQOLの各領域(活動能力,主観的健康感,生活満足度,生きがい感,人間関係の満足度)との関係について検討することを目的として調査を実施した.【方法】F町のミニデイサービス事業に登録している高齢者の内,331名(男性66名,女性265名)から調査協力が得られた.調査は2008年8月から9月にかけて実施した.しかし,男性の対象者数が女性の約4分の1と少なかったため,今回は女性高齢者265名(平均年齢は73.5±6.5歳)のみを対象とした.なお,重度の認知症を疑わせる者(Mini-Mental State Examination;MMSEで19点以下)はいなかった. 方法は,個人の基本的属性(氏名,年齢,性別,家族人数,教育年数)に関する情報の収集とMMSEを実施した後,主観的経済状況感として暮らし向きの主観的評価,健康関連QOLの評価として老研式活動能力指標,主観的QOLの評価として主観的健康感,生活満足度,生きがい感,人間関係に関する満足度を質問紙にて評価した.主観的経済状況感の評価は,「ゆとりがあり,まったく心配なく暮らしている」「ゆとりはないが,それほど心配なく暮らしている」「ゆとりがなく,多少心配である」「生活が苦しく,非常に心配である」の4件法で求めた.主観的QOLの評価にはVisual Analogue Scale用いた.統計処理は対応のないt-検定を用いて行った.なお,統計解析ソフトはStatView5.0を用い,有意水準を5%とした.【説明と同意】参加者に対し,研究の趣旨と内容について十分に説明をした後,書面で同意が得られた高齢者のみを対象者とした.また,調査の途中いつでも自由に拒否できることも伝えた.【結果】暮らし向きについては,「ゆとりがあり,まったく心配なく暮らしている」が57名,「ゆとりはないが,それほど心配なく暮らしている」が171名,「ゆとりがなく,多少心配である」が37名で,「生活が苦しく,非常に心配である」と回答した者はいなかった.そこで,「ゆとりがあり,まったく心配なく暮らしている」57名をゆとりあり群,「ゆとりがなく,多少心配である」37名をゆとりなし群として,2群を比較検討した.その結果,年齢,MMSE,健康関連QOLにおいては有意差は認められなかった.一方, 主観的QOLのすべての領域において有意差が認められ,ゆとりあり群がゆとりなし群よりも高い値を示した.また,家族人数はゆとりあり群が有意に多く,教育年数も有意に長かった.【考察】今回の結果から,経済状況の主観的評価が主観的QOLの各領域すべてに影響を与えることが示唆された.このことは,高齢者を取り巻く経済環境が厳しくなり,経済状況についての主観的評価が低下すれば,その結果として高齢者の主観的QOLの各領域(主観的健康感,生活満足度,生きがい感,人間関係の満足度)が低下する可能性があることを示している.2006年度の高齢者の経済生活に関する意識調査では,60歳以上の対象者において「現在の暮らしに経済的に心配がある」者は,5年前の調査より約1 割増加している.さらに今日の日本の経済状況を考えると,高齢者の経済状況についての主観的評価は更に低下することが予想され,高齢者の主観的QOLの低下が危惧される.最後に,今回の対象者は町からの呼びかけに対して自主的に参加した活動的な女性高齢者であることから,今回の結果が高齢者一般に適用できるか否かについては検討する必要がある.【理学療法学研究としての意義】リハビリテーションの究極の目的は,対象者やその関係者のQOLの向上であるといわれており,理学療法においても同様と考えられる.今回の結果は,客観的な経済状況(年収など)のみならず,主観的QOLに影響を与える一因子としての主観的経済状況感も把握しておくことが,理学療法を進めていく上で不可欠である事を示している.
著者
鬼塚 克忠 原 裕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.621-632, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
39
被引用文献数
1 2

吉野ヶ里遺跡の墳丘墓(B. C. 150年頃)は主に層築で構築された我が国最古の巨大盛土構築物である.盛土の構築技術は,レベルの低いものから,堆築,層築,版築の3段階に分類できることを示し,吉野ヶ里墳丘墓の構築技術のルーツであると考えられる中国江南地方の土□墓(西周~戦国時代),と山東半島の墳墓(前漢~後漢時代)と吉野ヶ里墳丘墓の埋葬物の墳墓内の位置など様々な実態の比較,ならびに上記3段階の構築技術のこれら墳墓への適用についての検討を行った.墳丘墓以外の文化・技術のルーツや伝播も考えた結果,江南の土□墓もしくは山東半島の墳墓の構築技術が,朝鮮半島経由ではなく海を経て直接,北部九州の吉野ヶ里に伝播したことを結論とした.
著者
後藤 佑斗 三原 鉄也 永森 光晴
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.192-197, 2021

<p> Web上で提供されるマンガには内容に基づく探索のためにタグやキーワードなどの主題語が付与されているが,意味的な探索のための構造化が不十分で,その活用は限られている.本研究では日本十進分類法(NDC)の持つ主題の意味関係に即した探索のために,Web上でマンガと共にその内容を示すタグおよびマンガのあらすじの2種の情報を利用して,マンガと主題に基づくLinked Data版日本十進分類法(NDC-LD)を機械的に結びつける手法を提案する.タグを利用した手法ではNDC-LDの相関索引語とタグの文字列の類似度に基づいて同一性を判定しリンキングを行った.あらすじを利用した手法ではあらすじ文中のNDCの見出し語と相関索引語についてTF-IDFを用い,特徴語として抽出されたものをリンキング対象とした.更に,マンガ146作品に対してこれらの提案手法を適用し,人手による分類及び機械学習によるNDCの推定手法と比較した結果,提案手法が人手での分類の再現に有効であった.(393文字)</p>

2 0 0 0 OA 台湾文化志

著者
伊能嘉矩 著
出版者
刀江書院
巻号頁・発行日
vol.【下卷】, 1928
著者
友近 晋 TOMOTIKA Susumu
出版者
東京帝國大學航空研究所
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告 = Report of Aeronautical Research Institute, Tokyo Imperial University
巻号頁・発行日
vol.10, no.120, pp.24-44, 1935-04

航空研究所報告第97號(1933)に於いて著者は一つの無限平面壁の近くに置かれた平板に働らく揚力を計算し,色々な數値計算を遂行して,揚力が迎へ角及び平板の壁からの距離によつて如何に變るかを研究した.そしてその理論的結果は,少くとも定性的には,從來しられてゐる實驗結果とかなりよく合ふことを示した.ここに提出する短い報文は上の報告の續きで,更に詳細な數値計算の結果を示すものである.斯様な追加計算を遂行した理由は,前報告發表後に知れた實驗結果と理論とを詳しく比較したい爲である.前報告發表後間もなく著者は瑞西のDATWYLER博士から一書を受け,氏もまた地面効果に就いての或る理論的研究と實驗的研究とを遂行したことを知つた.そして,氏の實驗結果によると,迎へ角が實用的範圍にある場合,平板(翼)の後端が壁に近づくに從つて揚力が非常に増大するが,著者の理論的結果は果して同様な結果を興へるや否やといふ興味ある問題が起つた.しかし,殘念ながら,前報告で遂行した數値計算の範圍では揚力増大の傾向は認められるも,この問題に對して,はつきりした理論的解答を與へることは不可能である.そこで,更に詳しい計算を遂行し,平板の後端がかなり壁に近い場合の揚力を計算し,その結果を著者が着英後に入手したDATWYLERの報文に於ける實驗結果と比較した次第である.計算の結果は第2圖,第3圖,第4圖に示す通りであるが,DATWYLERの實驗結果とかなりよく合ふことが認められる.附録は二つの平行な平面壁の間に置かれた平板に働らく揚力に就いての補遺的計算の結果な示す.即ち,平板の中點が平面壁の丁度中間になくて,それから或る有限な距離だけ離れてゐる場合の揚力の近似式を,平板の幅が壁間距離に比べて小さいといふ假定のもとに導出した結果を示すものである.この様な計算は既にROSENHEADも行つたが,報告第101號(1934)に示した様に揚力に對するROSENHEADの一般式は正しくないから,それから導出された該近似式も亦正しくないのである.
著者
TOMOTIKA Susumu
出版者
東京帝國大學航空研究所
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告 = Report of Aeronautical Research Institute, Tokyo Imperial University
巻号頁・発行日
vol.7, no.94, pp.357-393, 1933-03

§12. In the present paper, we have calculated again, by using the well-known BLASIUS' formula, the moment M of the force acting on a flat plate about its mid-point, which is placed obliquely in a steady irrotational continuous flow of an incompressible perfect fluid bounded by two parallel plane walls, under the supposition that the mid-point of the plate lies on the central line of the channel. The method of analysis used in this paper was slightly different from that employed in my previous paper, but the result obtained was, of course, the same. Considering only the practically important cases in which the ratio of the breadth 2α of the plate to the width D of the channel is fairly smaller than unity, we have arrived at the result that there is always an increase of the moment of the force due to the presence of the channel walls. Approximate expressions for the moment have been given as power series of 2α/D, retaining however only the first two or three important terms. Numerical calculations of the values of M/M_0 have been carried out for the case in which β is equal to 45°, where M_0 is the moment of the force acting on a flat plate with the same breadth 2α placed in an unlimited stream, and the approximate curve for M/M_0 was drawn against the ratio 2α/D. Then, basing upon our results, we have anticipated the tendency of variation of the moment of the force exerting on a RAYLEIGH disc with the ratio of its diameter to that of a tube, in which the disc is suspended obliquely in such a way that its angle of attack is equal to 45°. Lastly, as an addendum, approximate curves for M/M_0 drawn against 2α/D were shown for the cases in which β is equal to 10°, 20°, 30°, 45°and 60°respectively.
著者
木下 康仁
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.194-197, 1988-02-01

人手不足だけが原因ではない老人ケアの“しんどさ” 家庭においてであれ医療・福祉施設であれ,自立した生活が困難になった老人のケアが大変であることは,実際にケアを担っている人々は言うに及ばず,社会一般も等しく認めるところである.確かにこうした老人には手がかかるし,ケア従事者は心身共に消耗しやすい.しかし,ケアの大変さの中身については必ずしも十分に理解されていないのではないだろうか. 例えば,一般の人々は具体的なケア内容についてはあまり知識がないから,ケア従事者の身体的疲労や片時も目を離せない場合などの心理的負担をこの中身と考えがちである.ケアを量的な問題と理解し,この意味で老人のケアは大変であると理解する.そして,この問題が解決されれば「福祉の心」にあふれたケアが可能になるだろうと考える.老人ケアの問題は現在このような論調で語られている.
著者
吉村 征浩
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年、腸内細菌叢が産生した短鎖脂肪酸(SCFA)が宿主の健康状態に非常に重要な役割を担うことが明らかとなっている。SCFAのうち、酢酸を摂取すると生活習慣病の予防に役立つことが示されており、そのような酢酸の機能性は、酢酸代謝および受容体を介したシグナル伝達により発揮されると考えられている。本研究では、酢酸摂取が宿主の腸内細菌叢構成に与える影響を明らかにすることを目的とした。酢酸をSDラットに摂取させると、腸内細菌叢構成が明確に変化することが細菌の16SrRNAのPCR-DGGE法による解析で明らかとなり、メタゲノム解析によって、ある種の乳酸菌が酢酸摂取によって有意に増加することが分かった。
著者
土山 實男
出版者
JAPAN ASSOCIATION OF INTERNATIONAL RELATIONS
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.90, pp.33-53,L8, 1989-03-30 (Released:2010-09-01)
参考文献数
61

This essay reviews the renewed strategic debate, with a particular focusing on the issue of deterrence failure. If nuclear deterrence should fail, how will it fail and why? In other words, what are the obstacles to a successful deterrence strategy? It is theoretically impossible to prove or falsify the success of deterrence strategy as long as no aggressive action is taken by an adversary. Only when an aggressive action is taken do we know that the strategy is not working.Based on the various case studies conducted by Alexander L. George, John D. Steinbruner, Robert Jervis, and Richard Ned Lebow, part one of this paper discusses why and how deterrence failed in the past. The historical cases include the 1914 European crisis, the US-Japanese crisis prior to Pearl Harbor in 1941, and the Middle East conflict in 1973. Special attention is paid to the perceptual and psychological factors in the challenger's decision-making process. The evidence suggests that a deterrence strategy may be ineffective, risky, or, at worst, counter-productive under certain conditions. To avoid the tragedy of deterrence failure in the nuclear era, it is essential to maintain crisis stability so that no party has an incentive to launch a pre-emptive attack. Furthermore, it is argued that a strategy of deterrence must be supplemented by crisis prevention measures.The second part of this paper examines why some strategists believe that strategic stability is undermined. We trace the arguments of Fred Charles Iklé, Colin Gray, and others with critical eyes. We also compare the key logic of the strategies with concept of Mutual Assured Destruction and of Limited Nuclear Options.The last part of this essay examines which strategic concepts are valid for stable deterrence, and which concepts are invalid. Finally, we discuss the possibility of reassuring an adversary through the creation of “security regimes, ” as suggested by as Joseph S. Nye, Jr. and Alexander L. George.